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H教授の環境行政時評環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。

No.060

Issued: 2008.01.16

第60講 京都議定書第一約束期間初年

目次
UFOが政治問題に
霞ヶ関に埋蔵金?
検証:COP13
COP13の後に―目達計画見直し最終報告案
COP13の後に―ついに政府の方針転換か
C型肝炎と水俣病
道路特定財源の結末
来年度政府予算案と今後の見通し
2008年の見所
Think Globally, Act Locally
遠慮がちのPR

H教授よお、オメデトウ。いよいよ京都議定書第一約束期間の初年になったな。

Aさん別におめでたくもないんじゃないですか。世の中、暗い話ばっかりだし…。

H教授挨拶とはそういうものなんだぜ。"How are you?" と聞かれれば、たとえ風邪を引いて体調が悪くても、"Fine thank you, and you?" と答えるだろう?

Aさんわかりましたよ。(渋々)明けましてオメデトウございます。

H教授随分ご機嫌斜めだな。あ、そうか、今年もカウントダウンは侘しくひとりで迎えたのか。まったく世の男どもは見る目がないねえ。

Aさんそうですよね。ホント、見る目がないですよね。
(間を置いて)違います! 環境問題の行方を憂いているんです。
そんなことより、さっさと時評に入りましょう。

H教授うん、まずは前講以降の出来事をざあっとおさらいしておこう。


UFOが政治問題に

Aさんそうですねえ。はじめて政府内部で「UFO」に関する統一見解が出されたそうですけど、それに対して官房長官や防衛大臣が異論を述べ、閣内不一致だとして話題になりました。

H教授ばかげているねえ。もとはと言えば、こんなバカな質問主意書を出した民主党の議員の方に問題があるんだが、それでもなんとか政府としての統一見解をつくった。
ところがその後、官房長官は「UFOはいるにちがいない、そうでなければナスカの地上絵などできるはずがない」だとか記者の前で持論を展開。加えて、防衛大臣は長々と「UFOが到来したときは領空侵犯に該当するか法的な検討が必要だ」などと記者会見でしゃべり出す。
UFO論よりもっと他にやるべきことがあると思うけどねえ。

AさんセンセイはUFOのことはどう思うんですか。

H教授Unidentified Flying Object つまり未確認の飛行物体がしばしば目撃されていることに疑いはない。だけど、それは未確認、つまり正体が現時点では不明だというだけの話。
UFOが「空飛ぶ円盤」だとか、異星人の乗り物だとするのは飛躍しすぎというか、はっきり言えば妄想の産物だと思うよ。
まあ、世の中にはUFO信者がいて、ロズウェル事件やらMJ12やらといった、おどろおどろしいトンデモ話が流布されている。ボクはそういうトンデモ本大好き人間なんだけど、そういった話は与太話として笑い飛ばしながら読むものなのさ。
間違っても国会で議論するような話じゃない。


Aさんそんなこと言い切っていいんですか。万が一、それが妄想でなく、事実だとしたらどうするんですか。

H教授そりゃあ、「空飛ぶ円盤」が国会前に着陸、異星人が降り立ったりして、紛れもない物理的な実在として確認できたなら、その事実を認めるし、喜んで自らの不明を詫びるさ。
実はボクはそうであることを望んでいるし、一度でいいからこの目で見てみたいと昔から思っているんだ。
でもねえ、昔っからこういう話が山のようにありながら、空飛ぶ円盤の残骸や異星人の遺体だとかいった確実な物理的証拠が、いまだに何ひとつないことこそが、この手の話がデタラメな妄想であることの経験的な証拠だと思っているよ。
幽霊と同じさ。いや、もっと言ってしまえば「神」とかいうようなものも同じかもしれない。

Aさんじゃあ、センセイは宇宙人の存在も否定するんですか。


H教授「宇宙人」とか「異星人」という言い方自体、人間の変な思い込みが入ってくるから使わない方がいい。「地球外(知的)生命体」とでも言うべきだろう。
生命とは何かというのがまずは定義されなきゃならないんだけど、一般的な意味の生命体が地球以外に存在するかどうかについては、どちらかいうと生物学者は否定的だけど、宇宙科学者は肯定的だね。
ボク自身は間違いなくいると思うし、さっきも言ったように早く見てみたい。
ただし、水、たんぱく質、核酸からなる地球型生命が地球以外にあるかどうかわからないし、直感的に言えば、それ以外にも生命の存在様式は多様なものがあると思う。
もっともそういった非地球型生命の場合、それらを「生命体」としてボクらが認識できるかどうかだってわからない。


霞ヶ関に埋蔵金?

Aさんはい、この話はここまで。
UFO話が出てくるかと思えば、霞ヶ関の地下深くに「埋蔵金」があるんじゃないかというのも囁かれていますね。
赤城山麓だとか、多田鉱山跡だとか立山ザラ峠だとか全国各地に埋蔵金伝説があることは知ってましたけど、霞ヶ関の地下だなんて、ホント灯台下暗しですね。

H教授おい、それマジで言ってるのか?

Aさんははは、冗談に決まってるじゃないですか(実はマジだった)。
でも埋蔵金って何のことなんです。

H教授今、政府の抱えている借金は膨大なものがある。国債残高だけで600兆円だと言われている。来年度政府予算案でも歳入の方は税収が53兆円だのに、歳出は83兆円と、30兆円の赤字だ。その大半は新たな借金、つまり国債ということになる。
あまりにも赤字が大きすぎるんで、少々の歳出削減ではどうにもならない。だから消費税を引き上げたいというのが、財務省の本音だろう。

Aさんええ、でも政治家は選挙のことがあるから、歳出削減をいやがって大判振る舞いをやりたがる一方で、増税には世論の手前消極的なんですね。

H教授ところが、実は霞ヶ関──つまり政府には膨大な隠し金というか、資産がある。それが「埋蔵金」と言われているものなんだ。

Aさんホントなんですか。

H教授うん、多くの特別会計の中に、不要不急の積立金のようなものがあって、毎年の余剰金はその積立金に積まれるようになっている。
これを反財務省の議員たちは埋蔵金と呼んでいるようだ。一説では4〜50兆円もあるんじゃないかという話だ。これを出せば、増税は不要だという。

Aさん他にも埋蔵金はあるんですか。


H教授埋蔵金の定義がなされているわけじゃないので何とも言えない。
ただ、膨大な資産があることは事実だ。
例えば、政府日銀は米国の国債をしこたま買わされて塩漬けにしたままだ。これを売り払えば相当のものになるだろう。ま、できるかどうかは別にしてね。
それだけじゃない、単に資産ということだけで言えば、国有林の面積は国土の約2割をも占めている。これを資産で評価すれば膨大なものになるだろう。
国道にしたって、港湾にしたって、河川やダムにしたってそうだ。
こうしたものまで埋蔵金と強弁することもあながち不可能じゃない。

Aさんそんなあ。まさか国道を売り払うわけにはいかないでしょう。

H教授サッチャリズムというか夜警国家論を極限まで追及するとそういうことになってしまう。刑務所まで民営化する時代になったんだ。
だったら国道も多国籍企業にでも売っ払って、その多国籍企業は元の国道で通行料をとって商売すればいいじゃないか、という考えも成り立たないわけじゃない。

Aさんまさかセンセイはそうしろと言うんじゃないでしょうね。

H教授もちろん違うさ。ボクは夜警国家論者じゃないからねえ。
ただねえ、マトモな企業の経営陣なら年商だけじゃなくて、資産貸借表だとか、いろんな財務諸表で、借金や貸金、資産の現在額等の企業の実態を把握しているはずだ。
だけど政府の閣僚たちトップが、それをどこまできちんと把握しているか疑わしい。
そういう意味では増税に踏み切る前に、もっとわかりやすく資産公開をきちんとした方がいい。特に特別会計はわかりにくいからねえ。


検証:COP13

Aさんところで12月の話題は何といってもCOP13、それに来年度の予算・税制でしょう。
COP13&COP/MOP3についてはいかがですか。

H教授もういろんなところで言われているから、さらっと済ませるけど、インドネシアのバリ島で12月3日から始まり、予定より1日会期を延長して12月15日に閉幕した。
具体的な成果はバリ・ロードマップ(Bali Action Plan)が採択されたことが挙げられる【1】

Aさん来年末までにポスト京都の枠組みを作り、それをCOP15で合意するということですね。

H教授うん、で、そのために気候変動枠組条約の下で特別作業部会を作ることと、現在の京都議定書の下での特別作業部会も引き続き存続させることが決められた。これを2トラック方式というらしい。後者には当然のことだけど米国が入っていないことに注意しておく必要があるだろう。

Aさんでも来年末までにポスト京都の枠組みを決めるということは、前から決まってたんじゃないですか。


H教授COPの場で採択されたということに意味がある。それに、その枠組みをどういうふうに作っていくかまでは決まってなかったんだ。
今回の会議では、今後の交渉の前提となる共通の認識を合意文書に盛り込もうということで、先にEUが仕掛けた。
つまり、最初の議長提案では、以前から言われていた「2050半減」以外にも、「先進国は2020年に90年比で25から40%のGHGの削減が必要」と明記していたし、さらに途上国の削減の必要性も述べていた。
だけど、前者には日米が反対、後者には途上国が反対。すったもんだの末、枠組み条約の下での特別作業部会に関する文書では、2050半減も含めてすべて消えた。
「途上国の削減の必要性」の明記に最後までこだわったのが米国で、こちらは途上国のすべてから激しいブーイングを浴びせられ、最後には口をつぐむしかなかったようだ。
合意文書に辛うじて残ったのは、IPCCの第4次統合報告書を尊重するという趣旨の表現。
だから名を捨てて実をとったといえるかもしれないし、それゆえに貧しい途上国はEUの主張に頷いたんじゃないかな。
それに京都議定書の下での特別作業部会に関する文書では「25〜40%削減」は明記された。これには米国は関与できないし、日本も反対しきれなかったようだ。
あと途上国でも中国、インドのような急成長真っ盛りの排出大国と、ツバルのような小島嶼国や最貧国とではかなり対応が違うことも明らかになったようだ。

Aさん米国と日本は同じ主張だったんですか。

H教授米国が京都議定書のような拘束力のある削減目標を掲げること自体に反対したのに対して、日本は削減目標やその性格は特別作業部会で議論すべきという主張だとして、その違いを強調しているらしいんだけど、対外的には同じ穴の狢に見えたんじゃないかな。

Aさんなぜ日本はそんな主張をしたんですか。

H教授経済産業省や経団連の主張はどちらかというと米国と同じで、環境省の意見はEUに近い。つまり日本としての統一見解がないんだから、数値目標については先送りを主張するしかなかったんだろう。

Aさんなんだか情けないなあ。

H教授だから不名誉な化石賞の1位から3位までを日本が独占したんだ。

Aさん化石賞って、温暖化対策にもっとも後ろ向きな発言をした国に環境NGOが与える賞ですね。恥ずかしくなってくるわ。日本の代表団の自己評価はどうなんですか。

H教授12月17日にCOP13&COP/MOP3の概要と評価について公表しているんだけど、概ね日本の主張が世界に認められたみたいな自画自賛をしているよ【2】


Aさんへ?(しばし絶句)…。その他には何かなかったんですか。

H教授途上国からは適応策に対する支援強化の訴えが相次ぎ、CDMクレジットの2%を原資とする「適応基金」の運営理事会設置を決めた。また、08年末のCOP14開催国がポーランドに決まった。
あ、それから森林の減少・劣化に由来するGHGの削減策を次期枠組みに組み込むことについて検討を開始することが決められた。

Aさんそれはどういうことですか。吸収源対策のことは決まっていたんじゃないですか。

H教授依然として途上国の森林伐採は続いており、これに由来するGHGは人為による排出量全体の2割にも達するという試算があるらしい。
この対策として、植林についてはCDMにカウントされる一方で、既存の森林の保護のための支援はCDMにカウントされてなかったんだ。
あ、そうそう、これと直接は関係ないけど、カーボンニュートラルということで急速に需要が高まっているバイオ燃料については、その一つであるパーム油を抽出するアブラヤシの耕作地も急速に増えている。
耕作地にするために泥炭地の樹木を伐採したり、水路を掘ったりするんだけど、これが結果的にカーボンニュートラルどころか、パーム油で代替される化石燃料起源のGHGより3から10倍のGHGを放出することになると国際湿地保全連合が先月発表したそうだ。

Aさん食糧との競合も深刻ですよね。トウモロコシのバイオ燃料化がメキシコの主食ソルティージャの値の急騰をもたらし、貧しい人たちを直撃しているという話もありますから、手放しでバイオ燃料・バイオ燃料と騒いじゃいけないですよね。
やはりエネルギー総需要の抑制をまず考えなくちゃいけないんでしょうね。


COP13の後に―目達計画見直し最終報告案

H教授だいぶわかってきたじゃないか。また話を元に戻すけど、国内でもCOP13以降、いくつかの動きがあった。

Aさんひとつは京都議定書目標達成計画、いわゆる目達計画の見直しについて中央環境審議会と産業構造審議会の合同審議会で最終報告書案をまとめたことですね【3】
それによると、京都議定書の達成は環境税や国内排出量取引制度自然エネルギー固定価格買取制度の導入等の抜本的な対策なしでも達成可能だそうですね。

H教授まあ、いっぱい条件をつけた上でのことだし、その条件がクリアされる担保は何にもないけどね。

Aさんセンセイはどう思われます。

H教授そりゃあ、そういう条件がクリアされれば達成は可能だと思うよ。でも、その条件は到底クリアできそうにないし、数字の辻褄合せにすぎないと思うボクは思うけどね。

Aさん他にも何かあるんですか。


COP13の後に―ついに政府の方針転換か

H教授福田ソーリが日本独自の中長期的な削減目標の設について、1月末のダボス会議の場で明言することにしたそうだ【4】
COP13の日本の不甲斐ない対応、途上国からの評判の悪さが相当に利いたんだろうね。
年末の4大臣会合で、環境大臣、外務大臣、官房長官が方針転換を主張。経済産業大臣は沈黙を決め込む中、方針転換が決まったと新聞にはあった。事実とすれば朗報だね。

Aさんへえ、具体的な数値まで明示するんでしょうか。

H教授いや、それは間に合わないから、7月の洞爺湖サミットまでに詰めるそうだ。
とすると経済産業省と環境省との猛烈なバトルが始まるだろうし、いよいよ福田サンの真価が問われるね。

Aさんどうしてですか。

H教授経済産業省や経団連は、国別の削減目標を明示することに一貫して反対してきた。そしてそれに代わる指標として、拘束力のない産業部門別の省エネ効率目標だとか単位GDP当たりの排出量とかを模索してきた。
そうした予想される国内の反対を突破できるかどうか、突破したとしてどの程度の削減目標を明示できるか、明示できても削減のための有効な政策手段として、毎年検討課題とするだけで先送りしてきた環境税や国内排出量取引制度や国内CDM制度、さらには自然エネルギー固定価格買取制度などの導入を打ち出せるかどうかだ。


Aさんセンセイの予想は?

H教授そりゃあ、福田サンにはリーダーシップをとってがんばってほしいけど、それまで福田内閣自体が持つかどうかという問題がある。
両院での与野党ねじれの中で、税制だって予算だって強行突破できるかどうか。不安材料は山ほどあるよ。
ただねえ、民主党は温暖化対策として「国内排出量取引市場創設法案」を出すそうだ。また税制改革では「温暖化対策税」の創設も提出するそうだ。
国際的にもポストブッシュで米国の政策転換もほぼ確実だ。
だったら、政局安定のために、ここで民主党案を取り込むという手法もあるんじゃないかと思うんだけどねえ。


C型肝炎と水俣病

Aさん福田サンの発案かどうかは知りませんが、血液製剤によるC型肝炎問題については、厚生労働省の頭越しに、議員立法で全員の救済と国の責任を認めようという方向を打ち出して、ようやく解決の兆しが見えてきたじゃないですか。あれと同じような方法は取れないんですか。

H教授C型肝炎の場合、相手は製薬会社だけだったけど、温暖化の場合は産業界全部を敵に回すことになるんだぜ。だから簡単にはいかないと思うよ。
でもねえ、実際には産業界だって一枚岩じゃないはずで、経済同友会は国際的な波に乗り遅れまいとしているみたいだから、ウルトラCの可能性もあるかもしれない。
事実、諸外国ではその方向で動いている。前講ので述べた米国の「気候安全保障法案」【5】は、下院のみならず上院委員会でも可決されたらしいし、ドイツじゃあ2020年までにGHGの4割削減という目標を定め、そのために14の法案や通達をまとめたエネルギー・環境包括案を閣議決定したそうだ。今年中に議会承認を得て、来年度から実施していく方針みたいだぜ。
まあ、そうは言ってもC型肝炎と同じ手法は、日本の場合、温暖化問題じゃ難しいと思うな。ただ、この手法がすぐに使える環境問題が他にあると思うんだ。なんだかわかるか。


Aさんわかった! 水俣病ですね。

H教授ピーンポン。その通り。だって構造が実によく似ている。
どちらも国の責任を認めるかどうか、時効だとか判断基準にとらわれず被害者全員の救済を認めるかどうかが争われてきたんだ。
これをやれば福田サンの評価はもっと上がると思うんだけど、非公式にそういう知恵をつける奴が環境省にはいないのかなあ。まあ、財務省はいやがるだろうけど。



道路特定財源の結末

Aさんセンセイ、ところで前講のでおっしゃってた道路特定財源の話の結末はどうなったんですか【6】

H教授まあ、予想通りだねえ。というか、ほぼ国土交通省の描いた絵図通りだったんじゃないかな。
国土交通省の言う「真に必要な道路」の整備費総額は1割縮小して59兆円になったけど、国土交通省にとっては当初から織り込み済みだったんじゃないかな。
そして暫定税率は十年間延長。余剰分は一般財源化ということで、来年度はとりあえず今年度の1800億円を上回る額を一般財源化するそうだ。
ただねえ、今までだったらこれで決まりだったけど、そう簡単にいくかどうかはわからない。

Aさんどうしてですか。

H教授参院与党の民主党が真っ向から反対している。
年末に発表した民主党の税制改革大綱によると、暫定税率を全廃するだけじゃなく、道路特定財源自体も廃止する。揮発油税は温暖化対策税に吸収し、自動車取得税は廃止、重量税と自動車税は地方税である保有税に一本化し、地方の一般財源にするそうだ。

Aさんすごくドラスティックじゃないですか。もう道路整備で毎年何兆円も使わないという脱道路宣言といっていいんじゃないんですか。

H教授はは、ところがそうじゃないらしい。現在の整備水準を維持するとしているから、財源をどうするのか摩訶不思議だね。

Aさんで、今後どうなるんですか。

H教授このまま行けば、衆院で政府案が可決されても、参院で否決。そのあと衆院で再可決すれば強行突破できるが、対立法案を片っ端からそうやって強行突破するわけにはいかないだろう。
次の衆院選で与野党逆転すれば、ネジレはなくなって民主党政権が誕生するし、運よく自民党が勝ったとしてもネジレ状態が続くだけだから、福田サンも薄氷を踏む思いの毎日じゃないかな。


来年度政府予算案と今後の見通し

Aさんじゃ、来年度予算も政府原案はできたけど、波乱含みというわけですね。
その政府原案の方はどう見ていますか。

H教授以前言ったことがほぼそのまま通用するんじゃないかなあ。つまり温暖化対策にある程度“気配りの跡”が見えるが、あとはさして変わりばえがしない【7】

Aさん気配りって?

H教授吸収源整備ということで300億円、排出枠購入にも300億円を充当するそうだ。
低炭素社会にふさわしい住宅やビルを建てる事業者への助成制度も新設するそうだ。
あと、温暖化対策ということでODA関連では「環境プログラム無償」という枠をつくるらしい。
ただ、ODA全体に関しては来年度も対前年4%カット。これだけマイナスが続けば、途上国に信頼されようたってムリじゃないかな。
一方じゃ、整備新幹線に引き続き国費700億円を充てていて、地方負担分と併せた事業費全体では3000億円と過去最高になるそうだ。

Aさん組織絡みでは何かありました。

H教授第56講ので言った観光庁はボクの予測が外れて、新設が決まったそうだ【8】
国土交通大臣は公明党の人だけど、自民党以上に官僚ベッタリで、すっかり取り込まれたような気がするなあ。


2008年の見所

Aさんじゃ、そろそろ今年の見所といきましょうか。
やっぱりまずは温暖化対策の国際的、国内的な対応なんでしょうねえ。特にフォローした方がいい会議はありますか。

H教授うん、まずは今月下旬のダボス会議、次いで今月末のブッシュ教書演説。3月には「G20対話」という20カ国の閣僚級会合が気候変動・クリーンエネルギー・持続可能な開発をテーマに千葉で開催されるし、4月からは7月までは毎月のようにG8絡みの重要な会議がある。もちろん本番は7月の洞爺湖サミットだが、5月には神戸で環境相会合が開催される。
この時点までに削減目標に対する国内のコンセンサスがどの程度得られているかが見ものだな。
その後、12月にはCOP14がポーランドのポズナニで開かれる。
それからお隣の韓国では大統領選が行われた。環境政策に急激な変化がないかどうかフォローしておいた方がいいだろうし、言うまでもなく米国大統領選の動向にも関心を持っておいた方がいい。

Aさん温暖化以外では?

H教授5月にドイツのボンで生物多様性条約のCOP9が開かれる。そのときに多分COP10の名古屋開催が決定されるだろう。
もうひとつ、やはり5月から6月まで国際捕鯨委員会の年次総会がチリのサンチアゴで行われる。日本では、オーストラリアの強い抗議もあって、年末の調査捕鯨を見送ったんだが、この動向も見守る必要があるだろう【9】

Aさんセンセイ、センセイ。Think Globally, Act Locallyってよく言うじゃないですか。これまでグローバルな話ばっかりでしたが、ローカルな話も何かないんですか。


Think Globally, Act Locally

H教授そうだなあ。第45講ので「M川上流ルネッサンス懇談会」の話をしただろう【10】
あの時点で、事務局である県のS土木事務所は、管理費のやりくりによってミニ自然再生に回せるオカネが年にウン百万円は産み出せると踏んでいたらしいんだけど、その後、県の方針として予算の一律2割カットが決まり、それすらできなくなってしまった。
でも、とにかく何かしなくちゃいけないというんで、地元の小学校に呼びかけて、オオサンショウウオの遡上の妨げになっている堰に石を積み上げるような、ほとんどオカネのかからないマイクロ自然再生事業を、博物館の若手研究者とタイアップして実施した。
これが某テレビ局で大きく取り上げられ、ついには何とかっていう賞をいただき、大晦日には再放映までされた。
つまり、オカネがほとんどなくてもできることがあるということで、懇談会の性格自体も変わってきた。
逆に言うと、座長に祭り上げられたばっかりに、会議の司会進行だけでなく、ボランティアとして肉体労働までしなければならなくなりそうだ。
今月にもオオサンショウウオの遡上のために別の堰の石積み作業をしなくちゃいけない。
それと、ニュータウンの端を流れる三面張りの河川に、辛うじてホタルが生息しているところがあるんだけど、それを増やすための簡単な河川工事や植栽も、事務局と懇談会メンバーのボランティアでやることになりそうなんだ。

Aさんいいじゃないですか。ジムに通うよりずっと健康的ですよ。センセイのメタボ化も進行する一方なんだから。

H教授何を他人事みたいに言ってるんだ。ゼミ生も参加するんだ。キミも参加しろよ。ビリーズブートキャンプよりもずっとダイエットになるかもしれないぞ。


Aさん…(小さく)わかりました。


遠慮がちのPR

H教授あ、最後になったけど、ひとつだけキミと読者のみなさまに知らせておこう。「Hキョージュ」が本になりました。

Aさん(急に上機嫌に)え、ホントですか。なんだ、もっと早く教えてくれればよかったのに。実は遊びすぎて財布がピンチだったんです。当然、印税は山分けですよね。

H教授はは、残念だったな。本になったのはこの時評じゃないんだ。ま、出版ったって、アングラもので、書店では入手できないし、発行部数もごくわずか。
でも、考えようによっちゃ、はじめから稀覯本になることが約束されたようなものだから、万一の将来の高値を見越して通販で買う選択肢もあると思うよ。


『Hキョージュの鉱物冗報通信』

A5判 92ページ フルカラー表紙 1冊 1500円

<目次>

コレクター学 序説
… 10
ひすいのかわりに沸石を−新潟沸石採集紀行
… 17
転がる石のように−益富壽之助先生と奥様を偲んで
… 24
伊豆採集記
… 35
コレクター学序説2
… 43
ガーネット紀行
… 48
西沢鉱山紀行
… 5
グリーンツアー顛末記−新緑の甲信路採石行
… 64
雄黄と柿本人麻呂−故・益富壽之助先生に捧ぐ−
… 80
解題
… 86
あとがき(久野武)

Aさんなんだ、鉱物のオタク本か。そんなマニアックな本買う人いませんよ。大赤字に決まってます。アタシャ絶対に買いませんからね。

H教授キミに買ってもらうことなんて端っから期待してないよ。
ただねえ、万一奇特な読者がいて、一部でも売れて赤字幅が減ればいいなあと紹介させてもらったんだ。それも遠慮して最後に持ってきたんだぜ。

Aさんそんな下らないこと、公的なホームページに書くなってお叱りが届きますよ。アタシャ、知りませんからねえ。

H教授お叱りがくれば、あ、まだこの時評を読んでくれている人がいるんだと感謝すればいい。なんせ、このところ読者からのおたよりがほとんどなくなったからなあ。

Aさん(小さく)やっぱりこのセンセイにはついていけそうにないわ。

H教授Aさんじゃあ、読者の皆さん。本年もよろしくこの時評をご贔屓のほどお願いします。


注釈

【1】
COP13/MOP3 バリ・ロードマップを採択して閉幕
【2】
気候変動枠組条約第13回締約国会議(COP13)及び京都議定書第3回締約国会合(COP/MOP3)の結果について(平成19年12月17日 環境省報道発表)
【3】
京都議定書目標達成計画の評価・見直しに関する最終報告(案)
【4】ダボス会議
世界経済フォーラム(World Economic Forum;略称WEF)の年次総会のこと。
第49講「IPCC第四次報告書の波紋」
【5】気候安全保障法案
第59講「温暖化をめぐる攻防―バリを目前にして」
【6】道路特定財源の結末
第59講「道路特定財源をめぐる混迷」
【7】政府予算案に対するキョージュの講評
第48講「07年度政府予算案決定」
【8】観光庁の創設について
第56講「観光庁創設?」
【9】調査捕鯨の動向
第50講「我、疑う故に我あり―「水伝」ブーム」
第15講「獲るべきか獲らざるべきかそれが問題だ 〜クジラ〜」
【10】M川上流ルネッサンス懇談会
第45講「新たな河川行政の芽生え」

(平成20年1月4日執筆、同年1月14日編集了)

注:本講の見解は環境省およびEICの見解とはまったく関係ありません。また、本講で用いた情報は朝日新聞と「エネルギーと環境」(週刊)に多くを負っています。