No.086
Issued: 20xx.07.12
第86講 ポスト2010年目標 ―― 生物多様性保全の新たな展開に向けて
Aさんセンセイ、大変です。チリで大地震、マグニチュード8.8ですって。何百人もの犠牲者が出ています。
H教授うん、亡くなられた方にはお悔み申し上げるし、被災者の方には心からお見舞い申し上げよう。
日本でも津波が広い範囲で観測された。幸い、大被害にはならなかったが。
Aさんただの津波警報じゃなく、大津波警報ってあったんですね。知らなかったわ。
H教授うん、ボクもはじめて知った。
ところでチリへの災害救助は迅速かつ的確にやってほしいねえ。ハイチのときのような後出しジャンケンはみっともないからね。
このままでは2度上昇の範囲に抑えることは困難との見通し
Aさんさて、本論ですが、温暖化では、何か動きはありましたか。
H教授まあ、一番ホットな話ではあるから、動きがあるのは当然だ。でも、毎回毎回温暖化の話題じゃああきてくるから、ごく簡単に国際的な動きと国内の動きを見てみるにとどめよう。国際的な動きの方をひとつ挙げるとすれば?
Aさんその前にひとつだけ。オランダの低地率、つまり海水面より低い陸地は26%なんですが、IPCC第四次報告書ではそれが55%と間違って記載されていたということが発覚しましたね。
H教授ふふ、ほんとに仕方がないねえ。みな鵜の目鷹の目でみているんだから、こういうケアレスミスは徹底的にチェックする必要があるね。
ところで世界には内陸部に海水面より低い地域がいくつかある。死海、カスピ海や米国のデスバレー、豪州のエーア湖等々だけど、驚いたことに、中国の思いっきり内陸部、新疆ウイグル自治区のトルファン盆地がそうで、海抜マイナス154mだって。
Aさんそんなどうでもいい雑学をひけらかせないでください。
さて、コペンハーゲン合意に基づき、各国が1月末までに2020年に向けての削減計画を提出、その削減計画を前提に、世界のいくつかの研究機関が計算した結果をUNEPが発表しました【1】。
現在の温暖化対策の前提は2050年までに産業革命前からの温度上昇を2度以下にとどめようというものでしたが、UNEPの報告書によると、現在の削減計画では不可能になるというものでした。
H教授うん、50%の確率で「2度以内」を達成するには、2007年時点で約290億トンとされる世界の温室効果ガス排出量を、20年に400億〜483億トン(二酸化炭素換算)に抑え、さらに50年まで毎年3%ほど削減していく必要があるんだ。
ところが各国・地域が条約事務局に提出した中期目標をもとに計算すると、20年に排出される温室効果ガスは世界で488億〜512億トン(同)で、削減量が数十億トン足りない見通しとなったということだ。
もちろんいろんな仮定を置いての推計だけどね。
温暖化対策基本法制定?
Aさん(困惑して)国内の動きの方なんですけど、なんだか、一向に進んでいるように思えないんですけど。
H教授うん、まず国内での削減目標が依然として定まっていない。
つまり、「2020年に25%カットする」っていうんだけど、これ自体条件付なのはさておくとしても、国内対策でどれだけカットするのかの目標値、つまり真水分が決まっていない。
環境大臣は15%から25%の間で検討すると言っているけど、実現可能な目標値でなければいけないし、他省庁や産業界からの異論続出で、いつまでにどういう方法で決めるのかがどうにも見えてこない。
Aさんでも温暖化対策基本法が決まるんでしょう。前講でそうおっしゃいましたよね【2】。
H教授うん、環境省案は固まったようだ。2020年の再生可能エネルギー供給目標は一次エネルギーの10%としていたが、その後さらにアップ、「最終エネルギー消費の20%程度」とするようだ。
ただ、温暖化対策基本法の根本的な部分で政府部内でも異論が出て、調整が難航していたようだ。今でも難航しているのかもしれないが。
Aさん何が一番の問題なんですか。
H教授そもそも2020年目標の25%カット自体が条件付になっている。つまり25%というのは「公平かつ実効性のある国際的な枠組構築と積極的な目標の合意」がなされるという国際的な条件というか前提のもとでの、中期目標だ。
その前提が満たされるかどうかわからないし、今も言ったように真水分も決まらないのに、キャップ&トレードのキャップが設定できるかという問題だ。
また、政府予算案作成過程で財源問題が深刻化。消費増税の議論も出てきたから、温暖化対策税についてもそもそもの位置づけから考え直すという方向だって出てくるかもしれない。
Aさんということは、温暖化対策基本法が決まるのはもっと先になるということですか。
H教授わからない。
でも2月24日付けの新聞では3月5日に法案を閣議決定の予定とあったから、水面下で調整がついたのかもしれない。
「ポスト2010年目標」に向けて
Aさんで、今回のメインディッシュは?
H教授今年は生物多様性条約COP10が10月に名古屋で開催されるので、それに関連する話題でいこう。
AさんこのCOPは隔年開催ですよね。COP10は何が特別なんですか。
H教授うん、2002年のハーグで開かれたCOP6で「2010年目標」というのを定めた。
「生物多様性の損失速度を2010年までに顕著に減少させる」というもので、7つの目標分野で、11の最終目標が設定されている。また、これらの目標分野ごとに、2010年目標の進捗状況を評価するための指標案が整理・提示されているんだ【3】。
今年はまさにその目標年にあたるんだ。
Aさんそうか、すると「ポスト京都」じゃないけど、「ポスト2010年目標」、つまり新たな目標も議論することになるんですね【4】。
H教授うん、そしてカナダのモントリオールにある条約事務局の作成した「2020年目標」の原案が明らかになったそうだ。
Aさんへえ、どんな原案なんですか。
H教授「生物への脅威を減らし、種の絶滅を防ぎ、生態系の復元を目指す」としているそうだ。
Aさんなんだか、随分抽象的ですね。
H教授ま、そう早まるな。で、達成のための具体策として「陸域や海域の少なくとも15%以上を保護区(保護地域)とする」だとか、「生物多様性を損なうような事業への補助金を廃止する」だとかの20項目を挙げているそうだ。
「生物多様性国家戦略2010」まもなく決定
Aさん日本の国内の動きとしてはどんなもんがあるんですか。
H教授COP10に向けて、生物多様性国家戦略の改正案、つまり「生物多様性国家戦略2010」がほぼまとまった。
まもなく中環審からの答申がなされ、閣議決定される手筈だ。
Aさんへえ、その「国家戦略2010」はどんなものなんですか。
H教授全文(案)は環境省生物多様性センターのホームページで紹介されている【5】。
例によってお経の文句みたいなものが多いんだけど、目新しいところとして「海洋生物多様性保全戦略」を策定するとしている。また、それだけでなく「海洋保護区」を設定する方向のようだ。
Aさん先日、海域の保全強化のために自然公園法を改正しましたが【6】、そのことではないんですか。
H教授いや「海洋保護区の設定の推進や、自然公園法と自然環境保全法の改正を受けた海洋の保全・再生の取組を強化する」としているから、また別だろう。具体的にどの程度まで設定の検討が進んでいるかは知らないが、海洋基本計画でも明記している【7】。
あと、第三次国家戦略では、「第二部 行動計画」で、今後5年間の具体的施策660と数値目標34を挙げている【8】。「戦略2010」では、660を720に増やし、数値目標を35に増やすそうだ。
Aさんへえ、その中身は?
H教授原文を読んでくれ。第三次国家戦略からの見え消しで表記している。
保護地域面積15%をめぐって
Aさんあ、また逃げた。
ところで、陸域海域の15%を保護地域にするというのが、条約事務局の原案のようですが、日本は今どの程度なんですか。
H教授それはちょっと言うのが難しい。なぜかというと、そもそも保護地域って何かという定義が問題になってくる。
Aさん国際的な定義はないんですか。
H教授法律や公的権威に基づいて自然環境やそれに密接に関連する景観、生物、地物や事象について、人為による改変から完全にあるいは一定程度保護が図られている地域を“Protected Area”といい、日本語では「保護地域」とか「保護区」だとか言われているけど、以下では「保護地域」と呼ぼう。
保護地域の管理カテゴリーとして国際自然保護連合IUCNでは、Ia、Ib、II〜VIまでの7通りのカテゴリーに区分している。
例えば国立公園はIIというカテゴリーに入っている。国定公園や都道府県立自然公園も設定目的はほぼ同じだから、日本の自然公園はすべてこのIUCNのIIという保護地域のカテゴリーに属するとすれば、その陸域指定面積は国土の約14%に達する。
鳥獣保護区だとか、天然記念物だとかもカウントすると15%どころか20%は軽く超えるだろう。保安林なども保護地域に含めれば30%を越すかもしれない。
Aさんだったら問題ないんじゃないんですか。
H教授保護地域と言った場合、国際的な主流の考え方は、土地の所有権管理権に基づいて設定された地域なんだ。これを営造物制という。
一方、日本の自然公園をはじめとする各種の保護地域は土地の所有権管理権に基づくんじゃなくて、法律によって指定し、法律によって規制しているんだ。これを「地域制」という【9】。
ちなみに日本の国立公園の土地所有別比率は国有地62%公有地26%民有地12%だが、国立公園ごとに大きな差がある。また、国定公園、都道府県立自然公園となるともっと民有地の割合が増えてきて都道府県立自然公園だと半分近くが民有地だ【10】。
しかも国有地とは言っても、そのほとんどは国有林として林野庁が管理している。そして、森林経営、つまり林業を行っていて、環境省にしてみれば、民有地とさして変わらない。
Aさんでも規制しているんだから、同じように保護していると言えるんじゃないですか。
つまり保護地域だって言えばいいんじゃないですか。
H教授日本国憲法は土地の所有権を保証している。だから社会的にみて公共の福祉のための必要最低限の規制しかできないようになっているんだ。
しかも自然公園法には規制によって蒙る損害は補償するという規定だってあるし、公益との調整規定だってある。
そんな補償のための予算だって持ってないから、徹底した規制はきわめて難しく、許可基準を守らせるのがやっとだ。
Aさんあ、そうか。だから普通地域だとか特別地域だとか、特別保護地区だとかの規制の強弱をつけているんですね。
H教授うん、普通地域なんかは規制ったって超大規模開発に届け出義務を課しているだけで、規制していないのとさして変わらない。これを保護地域と言えるか。
Aさん…。
H教授特別地域だって、一定の行為に要許可制を科しているが、一方じゃ、許可基準を決めていて、第一種特別地域を除けば、建物だって道路だって農地開発だって許可基準内であればできてしまう。これでも、保護地域だって胸を張って言えるか。
Aさんじゃ、胸張って保護地域と言えるところって?
H教授陸域じゃあ、特別保護地区と第一種特別地域。あと環境省が土地管理を行っている集団施設地区。
第三種特別地域になると森林施業に具体的な制限を科しておらず、実質的にフリーパスだから、保護地域と言えるかどうかはかなり疑問だ。
第二種特別地域はまあ保護地域と言って言えないことはない程度かな。
Aさんその自然公園の特別保護地区と第一種特別地域を合わせて国土面積に占める比率はどのくらいなんですか。
H教授2%くらいじゃなかったかな。ほとんど全てが国公有地だ。
そもそも都道府県立自然公園なんて、特別保護地区は設定できないようになっているんだ。
Aさん自然公園以外の保護地域だってあるでしょう。
H教授うん、ただ基本的にみな仕組みは同じで、いわゆる「地域制」。
土地の所有権・管理権に基づくんじゃなくて、法律による公用制限で法の目的に即した最低限の保護を行おうとするものだ。
自然環境保全法に基づく保護地域は代表的なというか自然環境の保護に特化した保護地域だが、面積はぐっと少なくなる【11】。
都市緑地法による保護地域も面積はきわめて小さく、ほぼ無視できる広さでしかない。
Aさん鳥獣保護区はどうですか。たしか鳥獣保護法が根拠法ですよね。
H教授「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」が正式名称。鳥獣保護区は国土の約10%を占めている。
だけど開発自体を規制していて、自然公園の特別地域に相当する鳥獣保護区特別保護地区は国土面積の1%以下に過ぎないし、自然公園の特別保護地区に相当するような特別保護指定区域に至ってはわずか7千haに過ぎない【12】。
つまりほとんどの鳥獣保護区は単に狩猟行為を禁止しているだけだ。
これを胸張って保護地域と言えるか。
Aさん…。
じゃあ、文化財保護法による天然記念物は? これはいっぱいあるでしょう。
H教授うん、いっぱいあるし、天然記念物指定地域は厳しい規制が科されているはずなんだけど…、はたして保護地域といえるのかなあ。
Aさんどういうことですか。
H教授そもそも天然記念物の数自体は明確なんだけど、具体的な地域の面積などは統計がない。
屋久島原生林だとか上高地だとかの、一定の広い面積で指定している天然記念物もあるにはあるが、むしろそれは例外で、動植物の種指定だとか「植物の自生地」だとかという漠然とした指定の方が多く、どれだけの地域が指定されているのかわからないものも多い。
Aさん…。
H教授それに屋久島原生林にしても上高地にしても国立公園に指定されている。鳥獣保護区でも特別保護区のような開発を規制している地域の相当部分は自然公園にも指定されていて、自然公園の管理に実質的に委ねている面もあるんじゃないかな。
Aさんそういう重複というのは結構あるんですか。
H教授国立公園をはじめとする自然公園は、風景地の保護という観点から指定されるんだけど、そうした場所には学術的に貴重な動植物や地形、自然現象にも富んでいるのが普通で、それらは天然記念物に指定されたり、野生鳥獣の宝庫として鳥獣保護区にもなったりすることも多い。
三種類の自然公園と三種類の自然環境保全法による指定地域は相互に重複しない旨の規定はあるけど、それ以外はむしろ重複する方が自然だろう。
Aさん重複の状況はきちんと把握されているのですか。
H教授ある程度の推定はされているけど、ちゃんとした統計はないはずだ。それこそ生物多様性国家戦略2010の具体的な施策の中で、重複状況の公的な把握というのを入れて欲しいね。
Aさんうーん、そうか。じゃ、まずは保護地域概念の明確化というのが必要になりそうですね。
H教授日本のような地域制のシステムでは、各種保護地域の指定の意図とその指定による効果との間にとんでもない齟齬が生じるのが普通なんだ。だからIUCNのカテゴリーに簡単に当てはめるわけにはいかない。
Aさん今までの話は陸域ですね。海域はどうなんですか。
H教授条約事務局の言う15%というのはその分母がよくわからないのでなんとも言えない。
領海なのか、沿岸浅海域なのか。そうだったら面積比ということになる。
沿岸の前面海域のことなら、海岸線延長の15%という長さで表わされるものかも知れない。
Aさんま、どれでもいいですから現在保護されているのはどの程度なんですか。
H教授水産資源保護の観点からは水産資源保護法や各県の漁業調整規則があって、漁業を妨げるような行為に関しては一定の規制がなされているが、漁業のもたらす環境へのインパクトに対する規制はなされていない。
生態系保全の観点からの規制という意味では、自然公園法や自然環境保全法の指定しかないんだけど、漁業との調整がきわめて難しく、ホントの意味の規制がされている地区はいわば点的にあるだけで、あとはきわめて緩い規制しかされていないのがほとんど。
Aさんいわゆる海面普通地域ですね。
この間、自然公園法が改正され、その点的な方は海中公園地区から海域公園地区になりましたけど【13】、その具体的な成果はありました。
H教授そりゃあ、あまりにも気が早すぎる。もう少し時間が必要だろう。
Aさんだって生物多様性COP10はもうすぐですよ。
えーと、じゃあ、ほとんどは普通地域でしょうけど、国立国定公園に指定されている水域はどの程度なんですか。
H教授以前にも言ったように、公的な統計はない。
ただ環境省の推計では、ほとんどが普通地域なんだけど、国立公園国定公園合わせて陸域面積の半分程度の170万haが指定されているそうだ。
別の言い方をすれば、海岸線延長の前面海域という意味では、日本の海岸線延長3万2千キロの半分弱の前面海域が指定されている。ただ、そのほとんどは普通地域だ。
中身でいうと、藻場では5割、サンゴ礁の4割が指定されているが、干潟はわずか1割しか指定されていないし、指定されているとは言ってもほとんどが普通地域で保護地域(水域)と胸を張れるようなものじゃあない。
クロマグロ、そしてクジラ
Aさんなるほど前途多難ですねえ。
ところで、生物多様性の話とも関係しますが、大西洋・地中海クロマグロの国際取引禁止に、漁業振興の観点から慎重だったEU欧州委員会がEUとして取引禁止を支持するよう提案しました。
カタールで今月開催されるワシントン条約締結国会議では、取引禁止が決まる可能性が強そうだとのことです。
ということは、大西洋・地中海マグロはもう食べられなくなるということですか。
H教授日本政府は猛反対しているし、仮に国際取引禁止の対象となったとしても、留保することは可能で、同じように留保した国から輸入を続けることは可能だ。
Aさんでも本当に科学的データで、クロマグロが減少しているんだったら、そんなことしない方がいいんじゃないですか。
H教授国際非難を浴びるのは必至だものなあ。資源減少に歯止めのかけられる説得力のある代案を出すべきだと思うよ。
大西洋・地中海クロマグロだけでなく、太平洋の話だってでてきそうだ【14】。
Aさんクジラについては新しい動きがいろいろあるようですね。
H教授うん、日本は従来調査捕鯨を進める一方で、沿岸でのミンククジラについて商業捕鯨再開を主張してきたんだけど、方針変換。沿岸でのミンククジラ商業捕鯨再開の条件として調査捕鯨の縮小を提案するそうだ。
Aさん調査捕鯨の廃止じゃないんですね。
H教授ま、交渉ごとだから最後は廃止を飲むかもしれないが、最初は縮小で行こうということだろう。
AさんIWCの方も新しい議長提案を準備したそうですね。
H教授うん、日本の南極海での調査捕鯨を停止する代わりに、10年間に渡って海域やクジラの種類ごとに毎年の捕獲数の上限を設定し、全体としての捕獲数を削減するというものだ。日本沿岸でのミンククジラ捕獲も容認するとのことだ。
Aさんへえ、日本側は大歓迎ですね。
H教授まあ、ミンククジラに関しては科学的には増加していることは事実らしいからなあ。6月にモロッコでIWC総会が開かれるんだが、クジラに関しては情緒的な捕鯨反対論が強いから厄介だ。
欧米ではかつて鯨油を取るためだけにクジラを乱獲した歴史があるんだけどねえ【15】。
Aさんセンセイはどう思われます。
H教授調査捕鯨と称して豪州沖合いで行う捕鯨には賛成しがたい。そりゃあ、領海ではなく公海だろうが、豪州国民の神経を逆なでするようなものだし、事実上の商業捕鯨と言われても仕方がない。
Aさん沿岸捕鯨は?
H教授理屈の上で賛成といえば賛成だが、あまり積極的に賛成する気にはなれないなあ。
沿岸捕鯨ができるくらいミンククジラがいるんなら、ホエールウォッチングでもした方が村おこし町おこしになるんじゃないかな。
Aさんつまり反対ですか。
H教授いや、沿岸捕鯨の伝統や鯨食文化の保全という意味でも一概に反対するものではないし、昔よく食べたクジラ肉のベーコンの味も忘れられない。
だけど、母クジラ子クジラは捕獲を禁止するとか、残酷ではない捕鯨方法を開発するとか、思いっきり制限をかけた方がいいような気はする。
Aさんなんだか煮え切らないなあ。
ところでオーストラリアのラッド首相は調査捕鯨の中止を求めて、外交的手段でやめさせられない場合には国際司法裁判所に提訴するそうですよ。
H教授国民向けへのパフォーマンスだね。ラッドさんもGHG排出量取引制度導入法案が否決されるなど苦しい局面に追い込まれていて、国民向けに強い姿勢で臨もうとしているんだろう。
Aさんそんなバカな!
H教授ラッドさんは裁判に負けたって構わないと思ってるんだろう。だから…。
Aさんだから?
H教授そう、目クジラを立てなさんな。
Aさんまたオジンギャグか…。
注釈
- 【1】コペンハーゲン合意に基づく各国の2020年削減計画
- 海外ニュース「55カ国が2020年までの温室効果ガス排出削減目標を提出」
- 【2】温暖化対策基本法の制定
- 第85講「温暖化対策基本法創設へ」
- 【3】2010年目標
- 第83講「生物多様性COP10に向けて」
- 【4】ポスト2010年目標
- 生物多様性条約ポスト2010年目標 日本提案(平成21年度中央環境審議会自然環境・野生生物合同部会 第4回生物多様性国家戦略小委員会 資料3)
- 【5】生物多様性国家戦略2010(案)
- 全文
概要 - 【6】自然公園法改正と海域の保全強化
- 第75講「自然公園法の改正と海域保護の課題」
- 【7】海洋基本法と海洋保護区の設定
- 第70講「海洋保護区の設定、検討開始」
- 【8】第三次生物多様性国家戦略
- 第57講「第三次生物多様性国家戦略案まとまる」
- 【9】これを「地域制」という
- 第41講「自然公園体系の課題と展望」
- 【10】国立公園等の土地所有別比率
- 自然公園土地所有別面積総括表
- 【11】自然環境保全法に基づく保護地域や、都市緑地法による保護地域
- 第26講「自然環境保全地域等の蹉跌」
- 【12】鳥獣保護区のうち、特別保護地区・特別保護指定区域の指定状況
- 鳥獣保護区制度の概要(環境省)
- 【13】自然公園法改正による海域公園地区の設定
- 第75講「自然公園法の改正と海域保護の課題」
- 【14】クロマグロとクジラの保全
- 第71講「マグロとクジラ」
第66講「捕鯨小論」 - 【15】捕鯨問題について
- 第50講「我、疑う故に我あり―「水伝」ブーム」
第15講「獲るべきか獲らざるべきかそれが問題だ 〜クジラ〜」
この記事についてのご意見・ご感想をお寄せ下さい。今後の参考にさせていただきます。
なお、いただいたご意見は、氏名等を特定しない形で抜粋・紹介する場合もあります。あらかじめご了承下さい。
(平成22年2月28日執筆、同年3月2日編集了)
註:本講の見解は環境省およびEICの見解とはまったく関係ありません。また、本講で用いた情報は朝日新聞と「エネルギーと環境」(週刊)に多くを負っています。
※掲載記事の内容や意見等はすべて執筆者個人に属し、EICネットまたは一般財団法人環境イノベーション情報機構の公式見解を示すものではありません。