No.186
Issued: 2010.12.28
2010年環境重大ニュース
2010年は皆さんにとってどんな一年でしたか。
2010年の1年間のできごとについてEICネットの環境ニュースを中心にふりかえってみたいと思います。
皆さんにとっての重大ニュースと較べて、いかがでしょうか。ぜひ、ご意見などをお寄せください。お待ちしています。
環境重大ニュース
- 愛知ターゲットと名古屋議定書、まとまる 〜COP10名古屋会議の開催
- 記憶に新しい、今夏の記録的な猛暑 〜「今年の漢字」にも選ばれた、『暑』の一字
- 拘束力のないコペンハーゲン合意 〜注目される「ポスト京都議定書」の枠組
- ネジレ国会で頓挫 アセス法改正と温暖化基本法の制定
- 2010年は「国際生物多様性年」 〜節目の年2010年を迎えて
- 2010年目標は未達成 〜2010年目標の評価と、ポスト2010年目標
- 生物多様性国家戦略の策定と改定 〜各国の生物多様性関連政策の取りまとめ
- サッカーのワールドカップ、南アフリカで開催 〜ベスト16に入った日本代表の闘いの裏で 【付】バンクーバー五輪での環境対応等
- 高速道路の一部無料化実験が開始し、エコカー補助金は予算枠を使い切って終了へ
- 住宅エコポイントが創設
愛知ターゲットと名古屋議定書、まとまる 〜COP10名古屋会議の開催
10月に名古屋で開催された、生物多様性条約COP10。179の締約国と国際機関、NGO/NPOなど約1万3000人が参加して「生物多様性」や「ABS」などに対する一般の認知と関心を高めたのと同時に、47の決議を採択するなど大きな成果を上げて、無事に閉幕しました。中でも最大の成果とされるのが、開催地の地名を冠した「愛知ターゲット」と「名古屋議定書」の採択。
愛知ターゲットは、ポスト2010年目標となる新たな戦略計画で、生物多様性の保全と持続的利用を進めるため「2020年までに生物多様性の損失を止めるための行動を起こす」ことを掲げ、その下に、陸域17%、海域10%を目標とする保護地域の設定など20の個別目標を示したもの。一方、「名古屋議定書」は、新品種の開発などに必要な遺伝資源へのアクセスとそこから生じる利益を衡平に配分するために定める国際ルール。
COP10の開催前後の環境ニュースを読み返してみて、COP10の残したものが何だったのか、ふりかえってみてはいかがでしょうか。
余談ながら、生物多様性条約の以前から世界の自然保護・野生生物保護に関する国際ルールを定めていたワシントン条約が、2010年7月1日に発効から35周年を迎えました。発効当時には10カ国に過ぎなかった締約国も現在は176カ国と増加。発効35周年を記念して、野生動植物の国際取引の主要指標がオンラインで一覧できるウェブサイト「CITESトレードデータ・ダッシュボード」が公開されています。
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- COP10の残したもの 〜名古屋議定書 愛知ターゲット〜
記憶に新しい、今夏の記録的な猛暑 〜「今年の漢字」にも選ばれた、『暑』の一字
今年の夏は暑かった! そんな実感を強くする人も少なくないでしょう。データもその感覚を裏付けます。気象庁では、9月に「夏の異常気象分析検討会」を開催し、今夏(6〜8月)の日本に極端な高温をもたらした大規模な大気の流れについて、その要因を分析しています。また、12/22に発表した「2010年の日本の天候(速報)」では、今年の天候は、(1)平均気温が全国的に高く、降水量が多い傾向にあったこと、(2)春の気温変動が大きかったこと、(3)夏の平均気温が過去113年でもっとも高かったこと、(4)台風の発生数が1951年の統計開始以来もっとも少なかったことをあげています。
さて、今年の冬は、今のところ冬を感じさせない暖かな陽気や少ない(遅れている)積雪が報告されていますが、これから先、どうなっていくことでしょうか。天候・気候の状況が気になる昨今です。
拘束力のないコペンハーゲン合意 〜注目される「ポスト京都議定書」の枠組
「生物多様性」が注目を集めた2010年、“双子の条約”のもう一方の温暖化関係でもポスト京都議定書の枠組みに向けた協議が続いています。
昨年末のCOP15(於 デンマークの都市コペンハーゲン)でまとまった「コペンハーゲン合意」を受けて、各国・地域では、2020年の削減目標(附属書I国)や削減行動(非附属書I国)をとりまとめ、条約事務所に提出することになっていました。日本政府が打ち出した削減目標は、「90年比で25%の削減」。ただし、「すべての主要国による公平かつ実効性のある国際枠組みの構築及び意欲的な目標の合意」が前提の条件付き目標です。
一方、拘束力のない自主的な目標から一歩先にと、2013年以降の国際的な法的枠組みを定めるべく、今年の年末にメキシコのカンクンで開催されたCOP16でも引き続き議論が交わされました。米国や中国が参加しないままの現行の京都議定書を延長するのか、すべての主要国が参加する新たな枠組みのもとでのルールづくりに舵を切るかが議論の焦点になりましたが、いまだ結論が出るには至りませんでした。今後も、各国の思惑をはらんだ交渉が続きます。
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ネジレ国会で頓挫 アセス法改正と温暖化基本法の制定
衆参両院での与野党が占める過半数が逆転するネジレ国会の影響もあって、法案審議が停滞しています。
環境法の中で、特に期待と注目を集めたのは、計画段階での戦略的アセスの導入を盛り込んだ環境アセス法改正案と、温暖化対策税や国内排出量取引制度、FIT(固定価格買取制度)の創設などを盛り込んだ温暖化対策基本法案でしたが、ともにいまだ成立していません。
環境アセス法改正案は、今年の通常国会(第174回)で参議院を通過。その後、臨時国会(第176回)で衆議院で可決したものの、同じ国会での衆参両院の議決を得られなかったために不成立という異例の展開。一方、温暖化対策基本法は、通常国会では審議未了のため廃案となり、第176回臨時国会に再度提出されています。
2010年は「国際生物多様性年」 〜節目の年2010年を迎えて
国連で採択・決議された国際年のひとつに当たる「国際生物多様性年」となった2010年は、2つの意味で節目の年となりました。1つは、「2010年目標」のターゲット年として。そしてもう1つには、日本の名古屋市でCOP10が開催される(た)という意味で。国際生物多様性年を記念して、国内外でさまざまな式典が開催されました。環境ニュースでも、多くの関連記事を紹介しています。
なお、毎年5月22日は国連によって「国際生物多様性の日」として制定されいます。今年も国内外で記念の行事が催されました。
余談ですが、年が明けて2011年は、「国際森林年」として国連総会決議されています。趣旨としては、現在・未来の世代のため、全てのタイプの森林の持続可能な森林経営、保全、持続可能な開発を強化することについて、あらゆるレベルでの認識を高めるよう努力すべきというもの。生物多様性保全・自然保護への取り組みはまだまだ終わりません。
【関連ニュース】
2010年目標は未達成 〜2010年目標の評価と、ポスト2010年目標
2002年のCOP6で採択された条約戦略計画には、「現在の生物多様性の損失速度を2010年までに顕著に減少させる」といういわゆる“2010年目標”を含んでいました。その2010年目標は、しかし、顕著な現象には至らなかったとの結論が残念ながら出されることになりました。条約事務局が取りまとめ、5/10に公表されたGBO3によると、2010年目標の21項目すべてが達成できなかったと評価しています。
市民意識の中に、生物多様性への認識や危機感が十分に浸透できていなかったと言えるのかもしれません。COP10を契機に、そうした状況が少しでも改善され、ポスト2010年目標となった“愛知ターゲット”がその目標年を迎えた時、よい評価を下せる状況ができていることを願いつつ…。
【関連ニュース】
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- 国連総会、生物多様性の損失を食い止めるための行動を促進
- 欧州議会、生物多様性2020年目標を含めた決議文を採択
- EU、生物多様性2010年目標の達成状況を評価する報告書を公表
生物多様性国家戦略の策定と改定 〜各国の生物多様性関連政策の取りまとめ
1995年10月に初めての生物多様性国家戦略を策定した日本政府。その後、2002年3月の新・生物多様性国家戦略、2007年11月の第三次生物多様性国家戦略と改定したのに続き、今年3月、2008年6月に施行した「生物多様性基本法」第11条に基づいて「生物多様性国家戦略2010」を策定しています。内容は、第3次国家戦略をほぼ踏襲したものになっていますが、COP10での議論が予定されていたポスト2010年目標を踏まえて、中長期目標を設定しています。
一方、海外でもCOP10に向けて国家戦略を策定作業が進んでいます。海外ニュースでもそうした動きの一端がうかがえました。
サッカーのワールドカップ、南アフリカで開催 〜ベスト16に入った日本代表の闘いの裏で 【付】バンクーバー五輪での環境対応等
環境分野を越えて2010年上半期の大きな注目を集めたことのひとつに、4年に一度のサッカー・ワールドカップがありました。開催国はアフリカ大陸初となる南アフリカ共和国。日本代表も、事前の下馬評を覆す快進撃をみせ、見事、決勝トーナメント進出を果たしました。
そのワールドカップ、環境面のニュースもいくつか発表されています。
また、同じスポーツの祭典では、カナダのバンクーバーで開催された冬季五輪も注目を集めました。この大会も、昨今の潮流に沿って、“環境にやさしい大会”をめざした取り組みがなされていました。
高速道路の一部無料化実験が開始し、エコカー補助金は予算枠を使い切って終了へ
民主党マニュフェストに掲げられた高速道路の原則無料化。今年、一部無料化社会実験が開始しました。
自民党政権時代に導入された「高速道路上限1000円」策は、特に都市部における高速道路の混雑を誘導するなどの影響も見られるなど、環境対策としてはむしろ自動車利用を促進することになるとの指摘・批判もあります。
今年2月に政府が発表した「高速道路無料化社会実験計画(案)」で対象37路線が公表され、5月には社会実験によるCO2排出量の検討結果が公表されました。6月には実施期間と対象区間についての発表があり、37路線1652km(開始時は1626km)が無料化されることになりました。
一方、人気を博した「エコカー補助金(環境対応車普及促進事業補助金)」制度は今年9月に申請受付が終了しました。当初予定していた予算枠に達する見込として、約3週間前倒しでの打ち切り発表でした。
住宅エコポイントが創設
家電エコポイント制度の注目と広まりを追い風に、昨年末の12/8に「明日の安心と成長のための緊急経済対策」が閣議決定され、エコリフォームまたはエコ住宅の新築によってさまざまな商品等と交換可能なポイントを取得できる住宅エコポイントが創設されました。
今年1月に入って、基金の設置・管理の業務並びにエコポイントシステムの運用業務を行う実施団体の公募と、エコポイント交換商品の募集があり、2月に入ってこれらの決定が相次いで発表、3月から申請受付が開始しています。さらに9月には期間延長、10月には対象商品の拡充について発表されています。
果たして、この制度は環境対策としてプラスに機能するでしょうか…。
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