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H教授の環境行政時評環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。

No.035

Issued: 2005.12.01

第35講 本時評の2年半を振り返る(その3)付:アスベスト最前線その他

目次
耐震強度偽装事件
フェロシルト事件
ラムサール条約登録湿地
環境税と特会見直しと第二約束期間
アスベスト最前線
2年半を振り返るPart3

Aさんセンセイ、さわやかな秋ですねえ。窓の外の紅葉が映えてとてもきれい(うっとり)。

H教授ところが世間は騒がしくなる一方。石原産業のフェロシルト事件が起きたり、在日米軍再編成案が急遽まとまり【1】、普天間飛行場の移転先が辺野古沖から辺野古崎へ頭越しに決まった。フランスで移民の若者が暴動を起した【2】し、アジアでは鳥インフルエンザが流行の兆しを見せている【3】。今度のは毒性も強いようだし、鳥からの感染だけでなく、人からの感染というのがあるんだったら大変なことになりかねない。


Aさんうーん、心配ですねえ。
そのほかにもブッシュさんが来日したかと思うと、プーチンさんまでやってきました【4】

H教授ブッシュさんの来日のときは、大阪空港からヘリで京都御苑に降り立ったらしい。物々しい警備や着陸場所なども含めて、受け入れ側の対応も大変だったらしい。...と、先日京都に行った折りに、御所の所長さんが話してくれた

耐震強度偽装事件

H教授でも最新のお騒がせは、なんと言っても耐震強度偽装事件だな【5】

Aさん構造計算書が偽造されたマンションに倒壊のおそれあり──という報道ですね。確かに、あれはヒドイですねえ。あの姉歯あねは某とかいう計算書を偽造した建築士もとんでもない奴ですけど、偽造を見抜けなかった検査機関もお粗末ですよねえ。建築確認を民間の検査機関にやらせるようになったからじゃないですか。センセイが以前言ってたように、なんでもかんでも官から民へというのも考えものですねえ。

H教授うーん、でもあの件では官のほうは不幸中の幸いとホッとしているかもしれない。

Aさんえー、なんでですか。

H教授昔ながらの役所がやる建築確認だったら偽造を見抜けたという保証はない。見抜けなかったかもしれないぜ。

Aさんえー、そんなあ。

H教授建築基準法では、ああいうとんでもないインチキはそもそも想定外だったんだ。想定外のことに対応しづらいのは官も民も同じだ。こういう想定外のことが起きるということは時代が変わった証拠なんだねえ。
それに姉歯某は実行犯だけど単なる下請け。元請けの設計会社やゼネコンがどう絡んでいるのか、全体像を早く解明してほしいね。

Aさんこれが極めて特異な事件なのか、氷山の一角なのか...。


H教授おっかないことを言うなあ。特異な事件であってほしいよねえ。
施工業者だって問題だと思うよ。いくら設計図どおりだからって、鉄筋の量が大幅に少なかったり、柱や梁の太さがふつうより細かったりすりゃあ気付きそうなもんだ。
いい意味での職人気質っていうか、プロ意識が日本にはどんどんなくなっていってるんだねえ。
消費者も自衛のため、相場よりあまりにも廉い買い物は、一応は粗悪品じゃないかと疑うべきなんだろうな。
キミもそうだぞ。オトコはみてくれだけで選んだんじゃダメなんだ。

Aさんワタシはそんなオンナじゃありません。第一みてくれだけで指導教員を決めるようなオンナだったら、センセイの下に来るはずがないじゃないですか!

H教授...(ほめられたのか、けなされたのかと複雑な表情)。


フェロシルト事件

Aさん暗いニュースはさっさと片付けちゃいましょう。石原産業のフェロシルト事件。

H教授塗料やインキに用いられる酸化チタンの製造工程で大量に出る廃硫酸を無害化し土壌埋め戻し材として再利用できるという触れ込みの製品が「フェロシルト」。
シルトとは砂より細かく粘土より粗い土のことだ。ちなみに酸化チタンTiO2は天然界にも存在していて、温度と圧力により、ルチル(金紅石)、アナテース(鋭錐石)、ブルッカイト(板チタン石)の3種類があるけど、どれもきれいな結晶をしているよ。日本では...。

Aさん(遮って)鉱物オタクの話はいいです。
じゃフェロは? フェロモンなんていいますよね。関係あるんですか。

H教授いや、全然関係ない。鉄のことだろう。鉄の元素記号はFeだ。チタンはチタン鉄鉱のように鉄とチタンとの酸化物から取り出すのがふつうなんだ。
このフェロシルトは、リサイクル製品として三重県が推奨していたんだが、これに基準値以上の六価クロムが含まれていた。しかも意図的に県の目を盗んで別の廃液を混入させていたらしい。
新聞によると、石原産業は子会社を通して、これをリサイクル製品として販売していたんだが、実際は購入した中間業者に売値よりはるかに高い額を運搬費として「加工費」などの名目で支払っていたらしい。つまりどうみても逆有償だから、製品じゃなくて、産業廃棄物そのものだということが発覚したんだ。産廃処理費をちょっとでも廉くあげようとしたんだね。

Aさん石原産業って一部上場の化学会社でしょう。世間にばれないって思ったのかしら。

H教授副工場長個人の責任ってことで切り抜けようとしているみたいだけど、そりゃあムリってもんだろう。石原産業っていえば、四日市ぜんそくの加害者企業のひとつだし、港への廃液垂れ流しを港則法【6】違反で海上保安庁の田尻さん【7】が検挙して一躍田尻さんが有名人になったのも石原産業が相手だった。
ぜんぜん懲りてないようにみえるけど、それだけ産廃の世界はどろどろした話があるということなんだろうなあ。

Aさんセンセイ、明るい話にいきましょう。ラムサール条約登録湿地が増えたそうですね。


ラムサール条約登録湿地

H教授うん、ラムサール条約の第9回締結国会議つまりCOP9が先月アフリカのウガンダで開かれ、国内20箇所が新たに登録湿地としての基準を満たしているとして登録された。これで合計33箇所になった【8】

AさんCOP9? それって温暖化の話じゃないんですか。

H教授COPはConference Of the Parties、単なる条約の締約国の会議という意味だ。気候変動条約の締結国会議を単にCOPと略すのは略しすぎってもんだ。

Aさん自分だって使ってるくせに。

H教授そりゃあ、文脈による。

Aさんまったくご都合主義なんだから。でも、このなかにはウミガメで有名な屋久島の永田浜まで入ってるんですね。こんなの湿地というんですか?

H教授ウェットランド(Wetland)を「湿地」と訳すから誤解が起きるんだけど、Wetlandはもっと概念が広い。水環境とか水空間みたいな意味で、水田まで含まれるし、滋賀県だったら琵琶湖とその周辺の平野域が登録湿地になっている。
そもそもラムサール条約では、沼沢地、湿原、泥炭地または水域、海域でも低潮位で水深が6mより浅いところはウェットランドに含まれると定義しているんだ。だから、今回登録された中には屋久島の永田浜ばかりでなく、秋吉台の地下水系や串本沿岸海域、慶良間諸島海域など、一般的には湿地と呼ぶには首を傾げるようなところも入っている。
欧米ではWetland同様、Estuaryというのも保全の対象として大事にしている。このEstuaryを日本語ではしばしば「河口域」なんて訳しちゃうんだけど、「浅海域」というのがもっとも近い。瀬戸内海なんて全域Estuaryになる。

Aさんふうん。じゃ、これで日本の重要なウェットランドはすべて登録湿地になったんですか。

H教授そんなことはないさ。環境省が発表した日本の重要な湿地リスト「日本の重要湿地500」って聞いたことないか? 今回の登録地を含めてもまだまだ一部だよ。
。登録湿地は自然的資質が条約に定める基準を満たしていなけりゃいけないけど、基準を満たしているからってすべて登録されるわけじゃない。
登録湿地はやはり保全するのが望ましいということになるから、基準を満たしていても開発計画が走っているところなんかは政府の提出するリストからは外されちゃう。
今回だって千葉の三番瀬は外された。やはり地元が納得しなけりゃダメなんだ。


Aさんところで最近、どこか登録湿地に行かれましたか?

H教授ああ、先週の日曜(11月20日)に近江八幡に行き、ラムサール条約登録湿地の一つ、琵琶湖の畔で休暇村に泊まってきた。
環境行政学会【9】の第4回総会があったんだ。

Aさん例の環境庁OB大学人の飲み会ですね。

H教授こらこら。情報交換、意見交換の場なんだ。

Aさん一番大事なのが盃交換だったりして。

H教授まったくキミって奴は...。
ま、いいか。天候に恵まれたし、閑静な入り江の先には沖ノ島そして比良の山並みが望め、幽玄な雰囲気だったよ。でもねえ、休暇村はお年寄りの方々で満杯だったし、近江八幡の八幡堀界隈も観光客で賑わってたけど、高齢者が大半で、高齢化時代を実感した。
実は文化財保護法が改正されて、史跡名勝天然記念物以外に「重要文化的景観」という制度が誕生した【10】。ボクらが行った前々日にその第一号として「近江八幡の水郷」が文化審議会で答申されたんだ。

Aさんへえ、いいなあ。フナ寿司食べたんでしょう?

H教授へへ、珍味だったよ。
で、翌日がエクスカーションで、京都御所の中を参観させてもらったんだ。


環境税と特会見直しと第二約束期間

Aさんところで先月の漫才の翌日、環境省が環境税の案を出しましたねえ【11】

H教授あまり迫力のない案だったなあ。基本的に去年のものと同じだったけど、ガソリンの値上がりなどを気にして、ガソリンなどは当面の間非課税だそうで、税収見込みは3700億円で昨年の見込みの半分以下だって。
もちろん産業界はさっそく反対って打ち出したんだけど、まったく別のところから、別の話がでてきて、面白くなりそうだ。


Aさんへえ、なんですか。

H教授前回も言った特別会計の見直しの話があれよあれよという間に進展してしまった【12】。なかでも道路特会の話はもう結論が半ば以上出ちゃったみたいなんだ。
ガソリンにかかる税は暫定税率といって、道路整備という特別の目的のために高くなっている。これが目的税として道路特別会計の重要な財源になっているんだ。
それを一般財源化するって方針が出たみたいなんだ。道路特別会計をやめて特定財源から一般財源化するんだったら、暫定税率の分は税率を下げるのが筋なんだけど、コイズミ改革はもはや筋がどうとかじゃないみたいで、下げないってことで政府税調もOKの答申をした。
税を下げない理屈として税収不足だけでなく、環境対策を持ち出すことになるんじゃないかな。だとすると、環境税自体はどうやら今年も見送りの方向らしいんだけど、環境省案にあった温暖化対策としての財源に充てるというのは一定程度実現の可能性が出てきたんだ。

Aさんだったら実質的に環境税は採用されたに等しいことになるんじゃないですか。

H教授うーん、そう簡単に言えるのかなあ。
だってコイズミさんと財務省の本音は税収不足を補うためだろう? まあ、道路族と国土交通省の力を削ぐという意味もあるのかもしれないけど、いずれにせよ一般財源化された場合、暫定税率分数兆円をまるまる温暖化対策に回すとは考えられない。
そりゃあ、数兆円のなかの3700億円くらいだったらお安い御用ということになるのかもしれないけどね。だけど3700億円が温暖化対策予算として認められりゃそれでいいって話じゃない。
化石燃料の使用の抑制という環境税本来の目的はどうなってしまうんだということになる。
それにクルマはCO2発生源のひとつだけど、もうひとつの大発生源、発電のほうは現在のままだというんならまったく理屈のとおらない話になっちゃうよね。
エネルギー特別会計の見直しのほうはどうなっているのかわからないけど、道路特別会計とエネルギー特別会計はガラポンし、これらに関連する税と環境税の問題をこの際すっきりわかりやすく目的税化すべきだと思う。
そして化石燃料使用を控えれば控えるだけ得することが実感できるようにして、CO2抑制の道筋をこれにより付けるべきだと思う。
ま、いずれにせよこの問題がどう決着がつくか、お手並み拝見だけど、どうもこの税で、節約効果がでてくるとは思えない。国内排出量取引制度の構築とかそれとCDMとのリンクだとか、或いは一般国民の節約意欲を刺激するような大胆な電気料金の累進制とかを導入しなければどうにもならない。

Aさん京都議定書目標達成のためですか。


H教授もうそんな時期はとうに過ぎた。EU諸国のように超長期的な排出抑制ビジョンを確立し、それに向けての対策ということだ。
そういう意味では第二約束期間に向けてのはじめての国際会議、COP/MOP1が11月28日からカナダのモントリオールで開催される【13】んだけど、十分に注目しておかなければいけない。
多分立場の違いを反映して喧々囂々でまとまらないんだろうけど。

AさんMOPって議定書批准国会議でしょう? 米国も出るんですか? それに日本のスタンスは?

H教授条約批准国と議定書批准国は大体同じだから一緒にやることになっていてそれでCOP/MOPというんだ。米国はMOPにはオブザーバー参加ということになる。
日本のスタンスは、まだ固まってないんだろう。だからとりあえずは様子見じゃないかな。「すべての国が参加する実効ある枠組みを」というのが日本の公式見解だ。そりゃあ、正しすぎるほど正しいけど、こんなもの、方針とかスタンスとか到底言えない。


アスベスト最前線

Aさんところで31講はアスベスト特集だったけど、依然としてアスベスト騒ぎはおさまらないですねえ。
最新の動きを紹介してくださいよ。

H教授まずアスベスト被害者救済法ができるのは確実だ【14】中皮腫で死亡された方の全員を対象にするようだ。
問題は補償額をどうするか、そしてその財源をどうするか。アスベスト業界だけでは到底対応できない額だからねえ。
それから中皮腫は8,9割がアスベストが原因なんだろうけど、肺がんで死亡されたかたの場合は、アスベストとの接点があったかどうかということでなんらかの線引きが必要だろう。

Aさん現在の一般環境中でのアスベストのリスクはどの程度なんですか。

H教授うん、実はそれが大問題。
大気汚染防止法では工場の敷地境界濃度を10本/リットル以下にしている。これは1986年のWHOが出した見解「一般環境中の濃度(都市部でリットル当り1〜10本)では一般住民に対するアスベストのリスクを定量的に検出するのは困難であり、危険は検出不可能なほど低い」に拠ったらしいんだ。

Aさん確か、発がん物質については生涯過剰死亡率が10万人にひとりから100万人にひとりぐらいだったら許容できるということじゃなかったんですか。

H教授うん、それが(その後出され、)国際的に定着した現在の実質安全濃度(VSD)の考え方だ。
で、先日リスク研究学会の大会にいって、勉強してきたんだけど、この考え方でいくと、1リットル当たり0.1本とか0.2本程度になってしまうらしい。


Aさんだったら国際的な考え方にしたがって、1リットル当たり0.1本オーダーの基準にすればいいじゃないですか。
ところで一般環境中濃度は増えているんですか。

H教授80年代半ばにボクらがやった調査では、1リットル当たり0.1本から10本くらいまでデータのばらつきも見られたものの、0.5〜1本くらいが多かった。現在は0.2本から0.5本程度が多いようだ。

Aさんえー、減ってきているんですか。じゃあセンセイがやった調査を踏まえてなされた大気汚染防止法の規制効果があったんですね。

H教授そうだといいんだけどねえ。

Aさんなんだか奥歯にモノが挟まったような言い方ですね。

H教授1リットル中、0コンマ数本なんて低濃度じゃ、どの程度測定数値が信頼できるか疑問に思ってるんだ。なんせフィルター上の繊維の数を顕微鏡を通した人の目で測るんだから個人差もある。
屈折率が一定範囲の5ミクロン以上の長さの繊維を図るんだけど、発ガンは5ミクロン以上のものが原因だと決まっているわけじゃない。
もともと発ガンのメカニズムは定かでないんだけど、もっと微小なアスベストが原因かもしれないし、5ミクロン以上の数が微小アスベストを含めた総アスベストの数を代表しているかどうかもわからない。
この測定法では屈折率を量的に一番多いクリソタイルに合わせているんだけど、似たような屈折率を持つ非アスベスト繊維も数えてしまう可能性もあるし、逆に発ガン性が高いといわれる青石綿は見逃してしまうことにもなる。
そんなことをあれやこれや考えると、0.1本とか0.2本と言われたってなあって感じが拭えない。
かといって、物質の同定がきちんとできる電顕はオカネがかかるから、それほど簡単にはやれないだろうしなあ。

Aさん測定技術や測定感度の話とリスク評価の話、それに発ガンメカニズムの話が噛み合ってないって感じですね。

H教授まあ、そうだ。

Aさんあと、環境省がアスベストを原因とする中皮腫と肺がんの死亡者数が、2010年までの今後5年間で、最大で1万5000人を超えるとする初の試算をまとめたそうじゃないですか。2039年までに中皮腫で10万人が死ぬという予測もあったそうですし。

H教授うん、ただこれらの予測は「最大」とあるだろう。つまり、潜伏期間を40年とし、アスベストの取扱量に比例して発散量も増え、それに伴って死者が増えるという仮定での予測なんだ。ほんとうは取扱量じゃなくて、アスベスト粉塵の未処理発生量や発散量に比例してなんだろうだけど、大昔のものは推測不可能だからそうしたんだ。だけど、実際には70年代後半以降は、それなりに工場内でも各種対策を講じてきて、アスベスト粉塵がもうもうという感じじゃなくなってたろうし、規制もどんどん強化していったから、実際はもっと死者は少なくなると思うけどねえ。


Aさんそうあってほしいですねえ。


2年半を振り返るPart3

H教授じゃあ、いよいよ「2年半を振り返るPart3」にいくか。

Aさんもう2年半じゃなくて3年でしょう。第19講からですね。

Aさん去年の夏の暑さは異常だったから、温暖化が関係してるのかと聞けば、「それはわからないけど、この異常気象が温暖化を加速させる」という驚くべき答えが導入部でした。
で、日本は環境先進国か後進国かという問いには、玉虫色の答えで、のらりくらり。
参院選で二大政党制を彷彿とする結果の感想を問えば、二大政党制は嫌いだとトンチンカンな答え。つくづくセンセイについたこと後悔しました。

H教授あ、そう、引き取ってくれる先生がいるんだったらいつだってどうぞ。

Aさん某先生から、「ほんとうは引き取りたいんだけど、Hサンに恨まれるからなあ」と体よく断られちゃいました。
ちょっと落ち込んだけど、EICネットの「環境Q&A」で「H教授の原発論に異議あり!」【14】という投稿があって、盛り上がってますよと話したら、センセイ、可哀想なほどマッツアオになってましたよね。あれでスッとしたから、もういいんです。

H教授そんな投稿、あったっけ(とぼける)。


Aさん(無視して)その後、センセイお得意の役人生態学の一端を披露してくれましたけど、今じゃ通用しない内容でした。
で、やっと本題。パラダイムシフトといわれている90年前後のセンセイの生態を教えてくれました。ミニ下克上の話はちょっと面白かったけど、愕然としたのはパラダイムシフトを実感したのはいつでなにがきっかけですかという問いに対するホント情けないお答。

H教授今日は手厳しいなあ。また振られたか。

Aさん(再び無視)読者の反応はいかがでしたか。

H教授内容に直接関連したお便りはなかった。強いていえば、役人生態学に関連して、
「環境行政の裏側など、普段あまり手に入らない情報を知ることができ、面白かったです(笑)。環境行政の中心的役割を果たすところ(環境省など)でも、環境問題に「熱い」人は、やはり少ないもんなんでしょうか?環境Q&Aに「環境省に入りたい!」という高校生がいましたが、そんな人ばっかりだと、環境省も楽しくなるのではないでしょうか。。。」
──くらいかな。

Aさんで、第20講です。

Aさんソウルのオリンピックでみんな熱狂していたのに、センセイひとりショービジネスがどうのこうのと詰まんない話で水をかけてました。

H教授打ち水の話はそのあとだ。大体ショービジネスじゃないだろう、ショービズム!
これで院生かと思えば情けなくなる。

Aさんちょっと言い間違えただけでしょう、揚げ足をとるのはやめてください。
その頃起きた関電美浜原発の事故の話題では、日本の二重構造、大企業正社員と、下請け→孫請け→臨時工という差別構造は変わっていないというお話でした。その後が打ち水の話だったんですけど、この最後に数寄屋橋の話をしてくれましたよね。汚濁河川を暗渠化したのが間違いで、もう取り返しがつかないことだって。
でもお隣の韓国、ソウルでは5キロメートルにおよぶ高架道路を撤去し、川を掘って、都心に美しい清渓川(チョンゲチョン)という川を復活させたそうです【15】。簡単にあきらめちゃあダメです。

H教授まあ、そりゃあそうかもしれない。でも随分カネがかかったろうなあ。未来の世代に借金をしないでやるのなら大賛成だけどね。


Aさんそのあとが、資源は枯渇するかというテーマのお話。「成長の限界」の悲観論と、ロンボルグ流の超楽観論の両方を批判してました。石油=非化石燃料説はちょっと面白かったです。

H教授先日、山口大学で地質学の教授をしている高校の後輩に聞いたんだけど、やはり石油のほとんどは化石燃料と考えるのがリーズナブルだろうという話だった。

Aさんそのあと温泉の不当表示の話から、国立公園の利用者数が減少していることへの論評。三位一体改革でごみ処理施設整備の補助金がなくなるかもしれないと危機感を露わにされてました

H教授結局は、交付金化ということで実態上生き延びたけど、またぞろ今年も同じ話が蒸し返されている。コイズミさんも今はやりたい放題だから、そうなってしまうかもなあ。

Aさん読者の反応はどうでした?

H教授ま、おおむね好評だった。

化石燃料の可採年数について、勉強になりました。非化石燃料説は初めて知りました。また、地方分権とゴミ処理施設の話は非常に興味深く読ませていただきました。地方分権の議論はこういうところ(ゴミ処理など)で環境行政と関わっているのですね。環境行政を捉える視点を広げることができました。

──のようにね。
ただ、酷評する意見もあったよ。以前にも紹介したから省略するけど、「うすらぼけの与太話」と延々と罵倒したお便りがあったし、

基本的には非常に楽しみにしています。しかし、Aさんの存在があまりにステレオタイプで、いつも邪魔に思っています。今回は1ページ目は何のためにあるのかまったく理解できませんでした。全体の論調も何が言いたいのか良くわからず、今回はかなり不満です。今後も楽しみにしています。

──というお便りもあった。
キミがしっかりしてないからだ!


Aさん八つ当たりしないでください!
さて、もうすっかり秋になり、第21講です。

Aさん米大統領選の話や、ロシアが京都議定書を批准しないんじゃないかというピントはずれの予測、なかなか進まない温暖化対策大綱の話が導入でした。ま、大綱はできたし、今じゃ京都議定書目標達成計画として閣議決定されています。

H教授だからといってCO2の排出抑制が進んだわけじゃない。そのあとが普天間飛行場の辺野古沖移設の話だったな。最近の新聞によれば、どうやら在日米軍再編の話がまとまったみたいで、地元住民や自治体の頭越しに辺野古沖から辺野古崎にほぼ決まったらしい。サンゴ礁やジュゴンへの影響は少なくなるかもしれないけどねえ...。

Aさんそのあとが諫早干拓工事中止仮処分決定の話と核燃サイクルの話で、前者は「高裁でひっくり返るだろう」、後者は「核燃サイクル継続でいくだろう」という予測でしたが、珍しくドンピシャリでした。

H教授それだけじゃない、「プロ野球2リーグ制維持、新規参入容認」という予測も当たったぞ!

Aさん(無視して)そのあと環境省3Rプロジェクトの結末の報告があって、本論はそれに関連した役人生態学の本丸、人事とシマ・システムの話。現役時代の仲間内での酒場の話題を恥じらいもなく書いてました。

H教授いちいちトゲがある言い方だなあ。

Aさんへへ、美しい薔薇にはトゲはつきものです。

H教授で、トゲのせいでオトコはみんな逃げ出すってわけか。

Aさん...(ぐっと詰まる)。
そんな“バラ話”よりも、読者の反応はどうだったんですか。


H教授バラ話? キミのほうがおじんギャグだぞ、いやおばんギャグか(嘲笑)。

Aさん(ふくれる)おばんギャグで悪かったですねえ。

H教授はは、ふくれるな。ビボーが台無しだ。いやビンボウ暇無しか。
ま、それはさておき、21講では内容に関連するお便りはなかったが、

どんな議論でもそうですが、初めから±拮抗しており、その大半は議論終了後も同意見です。そんな時救われるのは「ENJOY」出来る意見です。その意味でこの時評は抜群です。「分かりやすい時事評論的視点」として高く評価しています。頑張ってください!!

──といううれしいお便りがあった。
また、これはつぎの22講に対するお便りなんだけど、沖縄の話を取り上げたせいか、

私は現在修士2年で、沖縄の海岸管理や計画に関することを卒業研究のテーマとしてとりくんでいます。調査といっても、行政・議員・住民・NPOなどの方々に話をきくヒアリングなのですが、H先生のいう「役人生態学」の一面がみれました。たとえば、「関係機関との調整をおこなった」=「勉強会等をおこなったのではなく、回覧版でまわしてハンコをおしてもらった」ということとか。(そればっかりではないと思いますが^^;)沖縄の抱える問題は基地や政治やらなんだか複雑ですが、機会があれば前回のように沖縄に対するコメントをじゃんじゃんのっけてください!

──というのがあった。

Aさん次、22講です。

Aさん昨年は異常気象で各地に台風や豪雨の自然災害が起きましたが、10月は台風23号が襲来、兵庫県豊岡市などで堤防が決壊して大被害、そして中越地震と大災害がつづきました。こういう天災時に家屋を失った人たちに復興支援金を送るのは国家の責務だと吼えてましたね。
そしてこうした異常気象のなかでツキノワグマが人里に出没する事件が相次ぎました。この原因、遠因、給餌の是非などについて論じてくれました。そのあと総合治水という考え方を紹介してくれました。


H教授でも、手厳しいご批判もあった。

第22講の中で、以下の文章は、問題ありと考えます。*が私の意見です。
1頁
H教授―あるNGOが市民に呼びかけ、都会のドングリを集めて山に戻そうとしたみたいだ。
*「都会のドングリを集めて」は「山に戻す」ではなく、「山に持ち込む」ではないでしょうか。「野生生物の餌付けを行ってはならない」という原則と合わせ、結果的に野生生物の生存を危機に追いやり、クマを銃殺に追いやる行為であるから、多くの人々が反対したはずです。このあたりは、きちんと書いてください。
2頁
山に広葉樹を植えて侵食を抑えるとともに保水力を高め、都市や町の舗装を透水性にして雨水を地下浸透させたり、それに山に広葉樹を植えることは保水力アップだけでなく、炭酸ガスの吸収源にもなって、温暖化対策になる。クマのためにもいいと思うよ。
*何との比較で言っておられるのでしょうか?ハゲ山と比較するような場所は、現在の日本にはほとんど無いはずです。広葉樹のみが侵食を抑え、保水力を増加させるという事実は何処にもありません。明治以来、多くの比較実験が行われ、ことごとく失敗しています。崩壊、保水力というのは土壌の厚さ、性質の問題であって、植生は、土壌の保持に関係しています。
*温暖化対策も同様で、成長の良い針葉樹造林地の二酸化炭素吸収量が多いという説と同様の間違いと言えるでしょう。。また、「炭酸ガス」という呼称は、現在は用いられません

Aさん前段はご指摘どおりですね。後段はコトバ足らずで、「放置林化した人工林をそのままにせずに手入れして針広混交林などに」という意味だとお応えし、もう少し調べてからきちんと書くとおっしゃってましたよね。

H教授忘れてました。ゴメンなさい。

Aさんそのあとロシアがようやく京都議定書の批准を決めたことに言及、ちょうど米国大統領選たけなわの頃でした。また、関西水俣病訴訟では国敗訴の最高裁判決が出たんですけど、水俣病の歴史と教訓を振り返りました。


H教授でも、未だに環境省は水俣病の認定基準は変えてないみたいだ。ダブルスタンダードといわれても仕方がないね。

Aさんあとは混迷する廃棄物問題をさらっと触れたあと、共著の宣伝。共著たってセンセイが書いたのは序文だけだったんですけどね。
そして、いよいよ去年の今ごろ、ちょうど一年前の第23講です。

Aさんブッシュさんが再選されてだいぶふくれてましたね。そのうっぷん晴らしか、環境省の環境税の提案に対してもシビアで、道路特会をガラポンしろとか言ってました。結局またもや先送りになりましたけど、一年後思わぬ形で道路特会の話が出てきました。
そして話題の三位一体改革について手厳しい批判。“惨身痛い改革”だなんて言ってました。日頃は地方主権論者だとかおっしゃってたのに。

H教授仕方ないだろう。官邸・財務省は財政の論理からの地方切り捨てが見え見えだったし、自主財源がほしいっていう地方側も開発の論理を丸出し。そんな中で、環境が犠牲になるのは目に見えてたもの。
ただ、このときは党内力学から中途半端に終わり、いくつかの補助金は切られたものの、ごみ処理施設は交付金という形で延命。
勢いにのったコイズミさんが今年はどこまでやるかだね。

Aさんセンセイの評価は?

H教授道路特会のガラポンはいいことだけど、あとのものは、やはりネガテイブなもののほうが多いなあ。郵政民営化会社の社長に民間人を登用したって評判になったけど、元銀行頭取なんて特権官僚など比べ物にならないほどのカネと権限を持った人たちだぜ。

Aさんはいはい、そういう話はその程度でおしまい。で、メインディッシュは国立公園と地方分権の話。レンジャーとしての自己史を振り返って国立公園は国、県、市町村、住民など関係者すべてでつくっていく「くに=country」の公園なのに、国=環境省だけが管理するという誤った地方分権論が、国立公園をガタガタにしてしまうんじゃないかと嘆いておられました。
それから環境ホルモンについては前提になる低用量仮説自体が学会では否定的だと第16講で言ったばかりなのに、低用量仮説を裏付けるかのようなTV放映に目をシロクロ。研究者はコメントを発表しろと喚いていました。

H教授さっそく琉球大学の山口先生がお便りをくださって、23講に載せさせてもらった。最後で中西準子先生の著書に対する疑問を述べた。
これに対しては、

「従来の環境行政には、環境リスクに対する費用対効果の視点が薄い。」と言う批判は的を得ているとしても、費用対効果からのみ環境リスクを論ずることの方がよりリスキーであると思っており、H教授の中西批判は全面的に支持したい。とくに中西先生の発言に誰が喜んでいるのかと考えると、昔の中西先生を知るものには悲しくさびしいものがある。

──というお便りがあった。
だけど、実はぼくの批判というか疑問は誤読だったことが先生のホームページ【16】を読んでて判明しちゃった。ただ、同じようなお便りが中西先生のところに多数寄せられたそうだから、誤読した人がたくさんいたみたいだ。

Aさんふう、やっとこれで去年の分が終了。そしてわれわれも今年はお役ゴメンですね。

H教授連載の都合上はね。実際には年末にもう一回あるけどね。

Aさんクリスマスのときはやめてくださいよ。アタシャ、今年こそ素晴らしいイブを...。

H教授(遮って)去年も最初はそう言ってて、結局行くところがないからイブの日に漫才したんじゃないか。

Aさん(赤面)...。

注釈

【1】在日米軍再編案(中間報告)
【2】フランスの移民暴動
11月1日深夜にパリ郊外で起きた移民系若者らによる暴動は数日間でフランス全土に広がり、発生後約2週間で、車が6000台が放火され、1500人が逮捕されるという深刻な状況を招いた。フランス政府は11月6日に北部アミアンと中部オルレアンなど数都市で夜間外出禁止令を発動。アルジェリア戦争当時の1961年以来、44年ぶりの適用。
【3】鳥インフルエンザ情報
【4】ブッシュ大統領(米)とプーチン大統領(露)の来日
ブッシュ米大統領は11月15日夕、ローラ夫人とともに大統領専用機で大阪空港に到着、2003年10月以来2年ぶりの来日だった。16日午前、京都迎賓館で小泉純一郎首相との首脳会談。会談を行う京都迎賓館は今春完成したてで、大統領夫妻が主賓室の第1号の客となった。
一方、ロシアのプーチン大統領が11月20日、専用機で羽田空港に到着。同大統領の来日は2000年9月以来、約5年ぶり。21日午後に小泉純一郎首相と会談、22日には天皇、皇后両陛下と会見し、同日午後に帰国した。
【5】耐震強度偽装事件
【6】港則法
【7】海上保安庁の田尻さん
【8】ラムサール条約COP9と、国内の登録湿地
【9】環境行政学会
【10】文化財保護法「重要文化的景観」と、近江八幡の水郷
【11】環境省の環境税案
【12】特別会計の見直し
【13】COP/MOP1
会期は、11月28日から12月9日まで。会場はカナダのモントリオール。この会議は、京都議定書締約国156カ国の最初の締約国会議であり、また、国連気候変動枠組条約締約国189カ国の第11回締約国会議と同時開催される。
【14】アスベスト被害者救済法
脱稿後、11月29日の「第4回アスベスト問題に関する関係閣僚による会合」で、石綿による健康被害の救済に関する法律(仮称)案大綱が示されている。
【15】清渓川(チョンゲチョン)の復元(韓国、ソウル市)
【16】中西先生の生態系リスク論を誤読

(平成17年11月25日執筆、同月末日編集了)
★本講の見解はEICや環境省の公式見解とは一切関係ありません。