一般財団法人 環境イノベーション情報機構

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No.156

Issued: 2009.01.07

2008年環境重大ニュース

 2008年上半期の話題をさらった洞爺湖サミットと北京オリンピック。オリンピックでは、日本選手の活躍など、数々の真剣勝負が茶の間を賑わせました。
一方、原油高によるガソリン等の価格高騰が、日々の暮らしや産業を直撃。5月の連休直前には、暫定税率の失効・復活に伴う混乱なんてこともありました。また、ミャンマーの大型サイクロンや中国四川省の大地震など大規模災害の発生、中国産食品や国内業者等による産地等の偽装事件など食の安全・信頼を揺るがす事件の頻発など、世相に暗い影を落とすことになりました。
政治面では、アメリカ合衆国の大統領選挙が行われ、オバマ候補が当選。初の黒人大統領誕生という話題性に加え、効果的に使われた「CHANGE!」というキーワードからは、米国環境政策の大きな転回が期待されます。日本では、福田首相が辞任して、麻生内閣が発足しています。

 さて、そんな2008年でしたが、皆さんにとって、どんな一年だったでしょうか。
 EICネットの環境ニュース編集部では、2008年の環境行政を賑わした国内外の環境ニュースの中から、国内編・海外編 各10件ずつを「重大ニュース」として選定しました。
 さて、そんな2008年でしたが、皆さんにとって、どんな一年だったでしょうか。
 やや偏りはあるかも知れませんが、08年の環境政策をふりかえるきっかけにしていただけると幸いです。本記事を参考に、皆さん独自の「重大ニュース」を選んでみるなど、ご意見・ご感想もお待ちしています。ぜひお寄せください。


 本2008年は、1997年に決まった「京都議定書」から丸10年を経て、いよいよ年初1月1日から第一約束期間に突入することになりました。この第一約束期間では、2012年までの5年間の平均排出量により、日本の目標値「マイナス6%」の達成が求められることになります。こうした流れを受けて、日本政府は7月に「低炭素社会づくり行動計画」を閣議決定。これにもとづいて準備を進めてきた「排出量取引の国内統合市場」が10月に試行的実施の決定し、「オフセット・クレジット(J-VER)制度」も11月に創設されました。なお、7月の洞爺湖サミットでは、より中長期の目標となる「2050年までに温室効果ガスの50%削減」に対する各国のビジョン共有が図られるなど、08年も地球温暖化の話題が大きく取り上げられてきました。
 一方、「生物多様性」に関わるいくつかの重大なできごとがあった年と、後にふりかえることになるかも知れません。5月にドイツのボンで開催された生物多様性条約締約国会議では、2010年の次回会議(COP10)の開催地が名古屋市に決定しました。国内では、5月末に「生物多様性基本法」が議員立法で成立した他、エコツーリズム推進法の施行(4月)や基本方針の閣議決定(5月)などもありました。7月のサミットでも、日本の豊かな自然をアピールしつつ、生物多様性保全に向けた気運を高めようといった取り組みも重ねられています。また、2月のアホウドリ聟島移送、9月のトキ放鳥など、野生生物保護の上でエポックとなるできごともありました。この他、年間を通して「国際サンゴ礁年」として、サンゴ礁に対する理解促進や保護の推進が図られてきています。
 
 洞爺湖サミットと並んで(いえ、それ以上に)世間の耳目を集めたことといえば、8月の北京オリンピック開催だったでしょうか。大気汚染をはじめとする環境汚染や民族問題などスポーツの祭典の影にある事件や問題にスポットが当たることもいくつかありました。国内ニュースでは、北京オリンピックを契機にした普及啓発の面で、いくつか関連する環境ニュースを紹介しています。

第1位:洞爺湖サミットの開催

 2008年最大の話題といえば、洞爺湖サミットの開催だったたと言えます。サミットに向けて、日本政府としても、国内各省および経済界との調整を進め、日本国としての目標が掲げられることになりました。サミットに先立つ5月には神戸市でG8環境大臣会合が開催されたことも併せて、関係市町などを中心に環境政策(特に温暖化政策)の普及啓発に大きく寄与する契機となったことでしょう。
 国内ニュースでは、洞爺湖サミット自体についての具体的なニュースはほとんど取り上げていませんが、先行したG8環境大臣会合の詳細や総括、またサミットに向けた普及啓発の取り組みなどに関するニュースを中心に、取り上げています。
 これらの記事を読み返しながら、サミットから半年を経た今、サミットのもたらしたものを思い起こしつつ、08年の環境政策についてふりかえってみてはいかがでしょうか。

洞爺湖サミット特設ページのロゴ(Copyright© : Ministry of Foreign Affairs of Japan)


第2位:排出量取引の国内統合市場、試行的実施が決定

 2008年12月、産業界から猛反発を受けていた国内排出量取引市場がいよいよ動き出しはじめました。
 05年1月にスタートしたEUの排出量取引市場。07年10月には、EU主要国と米国・カナダの数州、ニュージーランド等が、国際炭素行動パートナーシップ(ICAP)を創設。そうした状況の中で、排出量取引の日本国内統合市場の試行的実施が決定したわけです。これは、国内の省庁間調整や産業界との折衝を経て、7月29日に閣議決定した「低炭素社会づくり行動計画」において実施が定められたものでした。いわば、洞爺湖サミットに向けた日本政府としての約束事項のひとつとして掲げられたもので、同サミットの開催が進展に一役買ったということが言えるのかも知れません。
 いずれにしろ、日本の都市名を冠した「京都議定書」の第一約束期間が開始した2008年、日本の目標「マイナス6%」を達成するためにももはや待ったなしの状況のなか、温暖化対策と企業の経営課題を結びつけていくための第一歩が踏み出されたといえるでしょう。

排出量取引の国内統合市場の試行的実施の概要(環境省提供)

排出量取引の国内統合市場の試行的実施の概要(環境省提供)


第3位:佐渡で、トキの野生復帰に向けた試験放鳥が実施される

 2008年秋、新潟県佐渡島にある、佐渡トキ保護センターの野生復帰ステーションで訓練中のトキの中から、10羽のトキが野に放たれました。Nipponia nippon という象徴的な学名を持つトキ。1981年1月に佐渡に残された野生のトキ5羽が捕獲されて、野生のトキが日本の野山から姿を消して以来、丸27年の時を経て再び朱鷺色の羽をはばたかせることになった記念すべきできごとだったといえます。12月に入って10羽のうち1羽の死骸が佐渡市内の山中で発見されましたが、佐渡海峡を越えて本州側に渡った個体も発見されるなど、トキたちの元気な姿が見守られています。
 また、今後の野生復帰の取り組みに向けて、12月には佐渡以外の分散飼育実施地の決定もありました。
 国内ニュースでは、放鳥の記念式典などのほか、放鳥後の確認情報などについて取り上げています。

新穂山中にて飛翔するNo.07(写真:環境省提供)


第4位:“ゲリラ豪雨”が猛威をふるう

 2008年の流行語にもなった「ゲリラ豪雨」。ここ数年、猛暑などの異常気象が毎年の話題となっていますが、08年の夏は短時間で局所的な激しい雨を降らせた“集中豪雨”が各地で多発しました。突然の雨にずぶ濡れになった方もいらっしゃったのではないでしょうか。
 気象庁では、8月26日から31日に発生した豪雨について「平成20年8月末豪雨」と命名し、この気象現象をもたらした地球規模の大気の流に関する解析結果を取りまとめて発表しています。この他、西日本を中心にした夏の高温・少雨の異常気象についての分析検討結果についても発表しています。人為影響による地球規模の気候変動との関連性なども含めて、日々の暮らしに直接的な影響を及ぼす異常気象への関心が年々高まってきているといえます。

第5位:COP10の開催地が名古屋市に決定! 〜生物多様性条約のCOP9がドイツのボンで開催される

 5月19日〜30日の開期にドイツ・ボンで開催された生物多様性条約第9回締約国会議(COP9)は、海外で開催された会議ながら、日本政府や地方公共団体、また企業やNGOなど関係者の関心を集めた注目の会議だったといえます。
 次回会議は2010年に開催されることが決まっていますが、その生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)は、いくつかの意味で大きな契機になることが期待されています。
 ひとつには、生物多様性の損失速度を顕著に減少させるという「2010年目標」(2002年のCOP6で採択)の目標年であること。また国連が定める「国際生物多様性年」にもなっています。日本にとって重要な意味を持つのは、その節目の年に開催される記念すべき第10回締約国会議が、愛知県名古屋市において開催されることが決定したことです。日本国内および世界各国の注目が集まることで、生物多様性の取り組みに関して大きな進展が期待されます。

 なお、2008年は、奇しくも環境省生物多様性センターが設立10周年でもありました。「生物多様性」というわかるようでわかりにくい概念を浸透させるためにも、生物多様性センターの発信や取り組みがますます重要になってくることと期待されます。

主会場のマリティム:昼の光景(第145回 シリーズ・もっと身近に!生物多様性(第11回)記事より)


第6位:アホウドリ、新繁殖地の聟島へヒナ10羽を移送

 2008年下半期の野生生物行政ではトキの野生放鳥が大きな注目を集めましたが、上半期の話題として、アホウドリの新天地への移送が話題になりました。
 一時は絶滅の危機に瀕していたアホウドリは、主に伊豆諸島・鳥島の燕崎と呼ばれる斜面でのみ繁殖していましたが、降雨などで火山灰が泥流となって流れ出す危険があったことなどから、より危険の少ない新たな繁殖地を形成するため、同繁殖地の裏側に位置する、火山灰の流出及び堆積が少ない初寝崎側の斜面にデコイ(アホウドリの模型)やアホウドリの鳴き声の再生装置を設置してアホウドリの繁殖個体の誘導に取り組んできていました。
 今回の移送は、鳥島以外の繁殖適地にアホウドリの繁殖地を分散させる計画として、かつて繁殖していた小笠原諸島の聟島での繁殖・定着を目的に実施されたものです。
 その後、移送ヒナの巣立ちが確認され、聟島から約3,900キロの地点(カムチャッカ半島基部の東方)まで飛来するなど、順調な成育がみられたとの報告も発表されています。
 なお、そのアホウドリは、1993年にスタートした保護増殖事業計画の結果、同年に約600羽だった推定個体数が、05〜06年のヒナ巣立ち数195羽(調査開始以来最高)、推定生息個体数(総計)約1,830羽に達したと報告されています。

衛星追跡の結果(環境省提供)


第7位:古紙パルプ配合率の偽装事件が発覚 〜脆くも崩れ去った“環境にやさしい”の幻想

 近年はメールやインターネットなどによって年始の挨拶を済ませる人も増えてきているようですが、まだまだ年始の挨拶として年賀状が果たす役割は小さくないようです。日本郵便によると、2009年の年賀はがきの当初発行枚数は39億5000万枚。これは、2008年比で約98.2%(2008年の最終発行枚数は約40億2105万枚)だそうです。また、カーボンオフセット年賀(販売価格55円/枚)も6000万枚発行されています。
 ところで、2008年始にその年賀はがきの古紙配合率偽装事件が発覚したことを記憶されている方も少なくないことでしょう。その後、はがきのみならず、コピー用紙や一般印刷用紙など、製紙業界で広く蔓延する再生紙パルプ配合率の偽装が明らかになっています。さまざまな偽装事件が世の中に跋扈する中で、「製紙業界よ、おまえもか!」といったところでしょうか。当事者に迫られるべき責任と猛省はさることながら、一方で消費サイドのありように見直すべき点があると迫られるできごとだと言えそうです。

第8位:家庭部門の温室効果ガス削減の切り札、エコ・アクション・ポイントが事業発足

 「マイナス6%」の目標達成に向けてさまざまな取り組みがされていますが、家庭部門の温室効果ガス削減の“切り札”として導入された、「エコ・アクション・ポイント」制度。消費者による温暖化対策型の商品・サービスの購入や省エネ行動を経済的インセンティブを付与することにより誘導する仕組みと説明されます。商品・サービスの購入等によって、さまざまな業種が発行する共通のエコ・アクション・ポイントを貯めることで、商品と交換できるものです。今後、より幅広い普及と利用が期待されます。

エコ・アクション・ポイント事業発表会(環境省提供)


第9位:世界初!ニホンウナギの成熟個体を海洋で捕獲 〜ニホンウナギの産卵生態調査で

 国内産ウナギを含め、食品の産地偽装事件が相次いだ2008年でしたが、同年に水産庁が実施したニホンウナギの産卵生態調査は大きな成果を残したと発表されています。マリアナ諸島西方の太平洋における同生態調査で、大型の中層トロール網によって、ニホンウナギ4個体とオオウナギ1個体及び仔魚が捕獲されたと報告。これは、ウナギ属の成熟個体としては世界ではじめての海洋における捕獲事例であり、ウナギの回遊や産卵生態の解明への大きな前進として評価されています。

第10位:北京オリンピックが開催 メダリストらが普及啓発に一肌脱ぐ

 世間一般のニュースとしては、2008年最大のイベントだったといえる「北京オリンピック」。北京市内の大気汚染や中国の民族問題など、新聞報道などでは環境に関わる報道もいくつかみられましたが、国内ニュースでは、あまり取り上げていません。関連する記事としては、北京オリンピック後に、メダリストを中心とした日本代表選手による環境政策の普及啓発への協力などに関する報道発表程度にとどまっています。
 この他、やや間接的ながら、スポーツつながりの関連のニュースとして、10月には「“スポーツと環境”グリーンアクションフォーラム」というイベントも開催されています。スポーツをきっかけとした環境問題の普及啓発への取り組みに、より一層の注目と期待が寄せられます。

 2008年は、皆様にとって、どのような1年間でしたでしょうか。また、2009年はどのような1年になりますでしょうか?
 国際的な面では、2008年は、地球温暖化交渉の最終目的地である2009年末のコペンハーゲン会議(COP15/COP5)に向けた中間地点でした。これまで1年をかけて、地球規模の長期的な協力行動や、京都議定書の第一約束期間終了後(2013年以降)の先進国の削減目標などについて、各国が話し合いを進めてきましたが、12月のポズナニ会議(COP14/MOP4)では、先進国と途上国、また先進国間の意見の隔たりが大きく、長期・中期の削減目標、途上国の参加などについて具体的な合意には至りませんでした。
 残り1年で全ての交渉をまとめることができるのか、かなり不安も残りますが、2009年から全面「交渉モード」に入るということなので、応援していきましょう。
 また、2008年は4年に一度のアメリカ大統領選挙の年でもありました。民主党のオバマ候補が選出され、国内外での地球温暖化対策の進展に期待がかかります。温室効果ガス排出量世界一のアメリカが変われば、世界も変わると信じて。
 そして、ミャンマーでのサイクロン、カリブ諸国を襲ったハリケーンなどの異常気象、さらに世界を震撼させた金融危機など、大変なニュースも多い一年でした。金融危機に対しては、これを環境対策を遅らせる言い訳にさせず、環境やクリーンエネルギー分野への投資を重点的に行い、雇用拡大を目指す「環境版ニューディール政策」を展開するようUNEPなどが提唱しています。エコで経済復興を実現、新しい大きなチャレンジになりそうです。
 この他にもいろいろな出来事のあった2008年、海外ニュースでも振り返ってみたいと思います。

第1位:アメリカ オバマ次期大統領 地球温暖化対策に強い決意

 11月のアメリカ大統領選挙で「チェンジ(変革)」の大旋風を巻き起こした、オバマ次期大統領。
 ブッシュ政権下で京都議定書から離脱してしまったアメリカですが、オバマ氏は、「アメリカは再度、交渉に精力的に参加し、気候変動に関する国際協力の新しい時代をリードする」と国際交渉への強い決意を表明しています。また、国内では、風力発電ソーラー発電などクリーンエネルギーを促進して雇用創出を図るというビジョンを掲げ、CO2排出量取引制度にも前向きです。閣僚人事でも、ホワイトハウスに新たにエネルギー・気候変動問題担当の大統領補佐官を置き、クリントン政権でEPA長官として活躍したキャロル・ブラウナー氏を起用するなど、今後が楽しみです。
 やや停滞気味の気候変動交渉にも「チェンジ」をもたらしてくれるのか、2009年に向けて期待が高まっています。

第2位:EU 気候・エネルギー政策パッケージに合意

 EUが1年をかけて合意に漕ぎ着けた「気候・エネルギー政策パッケージ」。
 「20-20-20」といわれる3つの目標((1)温室効果ガス排出量を2020年までに20%削減、(2)エネルギー消費量に占める再生可能エネルギーのシェアを20%に拡大、(3)エネルギー効率を20%アップ)の達成を目指し、EUの温室効果ガス排出量取引制度(EU-ETS)の改定、再生可能エネルギーの導入促進、環境に配慮した炭素回収・貯留(CCS)のための法的枠組み、自動車からのCO2排出量削減といった対策が、まさに、てんこ盛りです。
 1月に案が発表されてから、EU加盟国や欧州議会を巻き込んだ喧々諤々の議論を経て、なんとか年内にまとめきれたのは、EU議長国を務めていたフランスの力量も大きかったように思います。

ブリュッセル EU本部


第3位:相次ぐ異常気象

 2008年は、5月のミャンマーのサイクロン、9月のカリブ海やアメリカのハリケーンなど異常気象が相次いだ一年でした。ミャンマーのサイクロンは8万4500人が命を落とす大惨事となり、四川大地震の死亡者数を上回ってしまいました。気象関連の自然災害による損害は、今や地震による損害を上回る勢いだそうで、地球温暖化が進むとさらに異常気象が頻発するおそれも懸念されています。
 この他、2008年は、北極の海氷量が観測史上2番目に少なかったことが、世界気象機関(WMO)のデータで明らかになっています。北極の海氷面積は100年前の9000km2から、現在はなんと1000km2にまで縮小しているのだとか。
 また、気温も観測史上10番目に暖かい年にランクインする見込みです。実は2008年はラニーニャ現象(太平洋赤道域からペルー沿岸にかけて、海面水温が低い状態が続く現象)のため、例年よりは涼しかったはずなんですけどね。
 2009年の地球温暖化交渉は、待ったなしの状況です。

第4位:ドイツ 生物多様性条約第9回締約国会議

 ドイツのボンで、5月19〜30日まで、生物多様性条約第9回締約国会議(COP9)が開催されました。
 「2010年までに、生物多様性の損失速度を顕著に減少させる」というなかなか大変な目標(2010年目標)に向けて、課題や対策の強化について話し合った他、特に途上国からの要望が強い「遺伝子資源へのアクセスと利益の配分」をめぐる国際的な枠組づくりについて、2010年までに交渉をまとめるためのスケジュールを決定しました。
 また、企業による生物多様性保全を目的にした国際イニシアティブ「企業と生物多様性」が発足したり、「生物多様性の喪失による経済損失(生物多様性版スターンレビュー)」の中間報告が公表されたり といった点でも注目を集めた会議でした。
 生物多様性条約の締約国会議は2年に1度の開催ですが、次回、2010年のCOP10は日本の名古屋で開催されます。大きな節目の年の会議に、世界中が注目!

生物多様性条約第9回締約国会議のポスター(ドイツ連邦環境省提供)


第5位:「金融危機」を環境に配慮した経済成長の契機に

 アメリカのサブプライム問題に端を発し、世界中を揺るがせている金融危機、一見、環境問題とは縁遠いようにも思えますが…「金融危機」で地球温暖化対策や省エネ対策が後退してしまうのではないか という懸念が駆け巡りました。
 こうした事態を受けて、気候変動枠組条約事務局のデ・ブア事務局長やアメリカのゴア元副大統領らは、むしろ、金融危機を契機として、短期的な利益を追い求めてきたこれまでの投資の方針や経済成長のあり方を見直し、長期的な視野に立った環境投資やクリーンエネルギー投資に方向転換するよう呼びかけました。
 世界各国で景気対策が急がれていますが、国連環境計画(UNEP)では、世界恐慌を克服するためにアメリカのルーズベルト大統領が実施した「ニューディール政策」に倣って、環境分野への投資を重点的に行い、雇用拡大を目指す「環境版ニューディール政策」を提唱しています。

第6位:中国 北京オリンピック 環境技術も活躍中

 8月には中国で北京オリンピックが開催されました。
 北京の大気汚染を心配して、マラソンを辞退する選手も出ましたが…自動車交通量を半減するナンバープレート規制(末尾の数が奇数か偶数かで、走行できる日を規制)、周辺の工場の閉鎖といった対策が効果を上げ、澄み切った青空が広がりました。なお、一部、雨のお陰だという説もあります。
 ところで、会場では、ソーラーエネルギーや風力発電、環境配慮型照明など最新の環境技術が秘かに活躍していたのをご存知でしょうか?
 通称「鳥の巣」と呼ばれていたメインスタジアムでは照明にソーラー発電が利用され、水泳競技の会場だった「水立方」では透光性の天井や壁で自然光を取り入れる工夫がされていました。現在、急成長中の中国の再生可能エネルギー、環境技術市場ですが、その一端を垣間見ることができました。

第7位:EU REACH規制が本格始動

 EUの新しい化学物質規制「REACH」が、6月から本格的にスタートしました。
 REACHは、化学物質の登録、評価、認可及び制限に関する規則で、約3万もの化学物質をカバー。1トン以上の化学物質を製造・輸入する企業は、安全性等を示すデータを欧州化学物質庁(ECHA)に登録しなければなりません。
 化学業界の反対もあり、制定まで大いにもめたREACHでしたが、欧州化学物質庁もフィンランドのヘルシンキに新設され、6月1日から、企業による化学物質の予備登録の受付を開始しました。予備登録の期限である12月1日を過ぎると、企業は直ちに必要な文書を全て準備して正式登録するか、さもなければ市場から即時撤退するか という選択を迫られるため、EU各国は予備登録に遅れないよう呼びかけるのに躍起になっていました。

ヘルシンキに設置された欧州化学物質庁(ECHA) (©EU)


第8位:イギリス 気候変動法案 温室効果ガスを2050年までに1990年比80%減

 地球温暖化防止に熱心に取り組んでいるイギリスですが、またまた大胆なことをやってくれました。
 2050年までの気候変動対策を盛り込んだ「気候変動法案」が議会に提出されていたのですが、「CO2排出量を1990年レベルから、2050年までに60%削減する」としていた目標をさらに強化。「1990年レベルから、2050年までに80%削減する」としたのです。法的拘束力のある目標ということなので、これは驚きでした。
 また、10月の内閣改造では、エネルギー・気候変動省を新設。これまで環境・食糧・農村地域省(DEFRA)が担当していた気候変動分野と、ビジネス・企業・規制改革省(BERR)が担当していたエネルギー分野を統合し、強力な行政機関を誕生させました。

第9位:フランス 環境グルネル実施法が成立

 フランスでは、昨年、サルコジ大統領が有識者を集めて設置した「環境グルネル」(環境懇談会)が、地球温暖化、生物多様性の保全といったテーマに関する様々な行動プログラムを提言しました。
 2008年は、この提言を具体化する年。環境グルネルの約束を実施するプログラム法案(グルネル第1法案)はその柱となるもので、地球温暖化、生物多様性・自然環境の保全、環境・健康リスクの防止、ガバナンス等の分野について、目標と対策が盛り込まれています。10月には、議会でほぼ全会一致で可決されました。
 この他にも、環境グルネルの提言を実行に移して、CO2排出量が少ない自動車に報奨金・多い自動車に課徴金を課す制度(ボーナス・ペナルティ制度)、全国再生可能エネルギー計画、白熱電球の削減や省エネ電球の普及、容器包装の削減・リサイクルの強化、光害対策など様々な取り組みを打ち出しました。
 EU議長国としても奮闘していましたが、国内でも大車輪の活躍のフランスでした。

再生可能エネルギーの利用も促進


第10位:バイオ燃料は本当に環境にやさしいのか?

 地球温暖化防止に役立つクリーンな燃料として、期待を集めていたバイオ燃料。欧米諸国ではガソリンへの混合率を決め、その割合を引き上げて促進を図ってきました。
 ところが、食糧生産と競合してしまい、食糧価格の高騰を招く、森林や草原を開墾して燃料作物を生産するとかえってCO2排出量が増え、生物多様性の喪失にもつながるといった問題点が次々と明らかになってきました。
 このため、EUでは、12月に合意された再生可能エネルギー指令の中で、バイオ燃料の持続可能性基準が盛り込まれました。生物多様性や炭素吸収源(森林、湿原など)への配慮が義務付けられ、企業は、CO2削減効果、その他の環境影響、社会的な影響等についても報告を求められる予定です。また、欧州委員会でも2年に1度、こうした事項に関する報告を取りまとめることになりました。
 バイオ燃料と生物多様性の問題は、ドイツで開催された生物多様性条約第9回締約国会議でも重点の一つとなりました。
 この問題、環境問題は常に大きな視野で、トータルに考える必要があることを教えてくれる問題です。一つの面だけ解決できた様に思えても、他の面にとんでもないツケが出てくるのでは困りますよね。

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(EICネット 国内ニュース編集部・EICネット海外ニュース担当 源氏田尚子)

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