一般財団法人環境イノベーション情報機構
エコチャレンジャー 環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

No.062

Issued: 2017.02.20

第62回 公益財団法人地球環境戦略研究機関・浜中裕徳理事長に聞く、環境を巡る国内外の状況と、今後の方向性

浜中 裕徳(はまなか ひろのり)さん

実施日時:平成29年2月1日(水)15:30〜
聞き手:一般財団法人環境イノベーション情報機構 理事長 大塚柳太郎
ゲスト:浜中 裕徳(はまなか ひろのり)さん

  • 1967年東京大学工学部都市工学科卒業、1969年厚生省(当時)入省。
  • 1971年より環境庁(当時)に勤務し、大気・水質保全、環境影響評価等の環境政策分野で活躍。また、京都議定書をはじめとする政府間交渉に携わる。
  • 2001年に環境省地球環境審議官、2004年に環境省を退職。
  • 2007年4月より現職。
目次
アジア太平洋地域に焦点をあて、持続可能な開発の実現に向け、革新的でかつ実践的な政策研究を目指す
ヨハネスブルグ・サミットが開かれた2002年ころから、アジアの人びとに向け、持続可能なライフスタイル・持続可能な消費を呼びかけてきた
パリのCOP21もマラケシュのCOP22も、大変な熱気の中で、「我々はやるのだ」という主張が繰り広げられた
各国に対するCO2排出削減強化への国際的なプレッシャーはものすごいものになる
温暖化のリスクとそれらへの対応(適応)策を、皆で共有する必要がある
昔は魚がいた湖は枯渇し魚もいない、その上で、どうしたらいいかを考えなくてはならない

アジア太平洋地域に焦点をあて、持続可能な開発の実現に向け、革新的でかつ実践的な政策研究を目指す

大塚理事長(以下、大塚)― 本日は、公益財団法人地球環境戦略研究機関理事長の浜中裕徳さんにお出ましいただきました。浜中さんは、地球温暖化をはじめとするグローバルな環境問題に関わられ、昨年マラケシュで開催されたCOP22にも参加されておられます。本日は、温暖化対策を含む環境を巡る国内外の状況と、今後の方向性などについてお伺いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
はじめに、公益財団法人地球環境戦略研究機関、通称IGESの紹介から始めていただけますでしょうか。

浜中さん― IGESは1998年、「京都議定書」が採択されたCOP3(気候変動枠組条約第3回締約国会議)が終わってすぐに、日本政府のイニシアティブのもとで神奈川県のご支援を得て設立され、2012年に公益財団法人に移行しました。
アジア太平洋地域に焦点をあて、持続可能な開発の実現に向け、革新的でかつ実践的な政策研究を目指しています。「革新的」で「実践的」というのはちょっと欲張っているかもしれませんが、環境を中心とした持続可能な開発の課題に取組む上では大変重要と考えています。
アジアはご存知の通り、中国やインドなどに見られるように、急速な経済発展、都市化、ライフスタイルの変化、富裕層や中産階級の膨張などが進み、あっという間に大都市にショッピングモールがつくられ、森林は伐採され農地、大規模なアブラヤシ・プランテーションなどに転換されています。それに伴い、資源の大量消費と枯渇が進み、大気汚染、水質汚濁、廃棄物の増加、CO2の排出が増加し、一方で貧富の格差も大きな問題になっています。
アジア各国の政府や関係機関も、このような状況を克服し持続可能な発展の軌道に乗せようとしているのですが、能力不足などの課題を抱えています。従来型とは違う新たな発展モデルを追求する必要があると思うのですが、各国の指導層は欧米に留学し従来型の経済発展のパラダイムの下での教育を受けており、その発想に基づき経済発展計画を作成し実施していることが多いのです。

IGES本部(神奈川県三浦郡葉山町)

IGES本部(神奈川県三浦郡葉山町)


ヨハネスブルグ・サミットが開かれた2002年ころから、アジアの人びとに向け、持続可能なライフスタイル・持続可能な消費を呼びかけてきた

大塚― 欧米型の発展モデルと違うモデルについて、もう少しご説明ください。

浜中さん― 変わるべき新たなモデルが必ずしも具体的になっているわけではないのですが、たとえば日本は、欧米型発展モデルの弊害ともいえる公害による健康被害に直面し、それを克服してきました。アジアの多くの国の状況は当時の日本と共通する点があると思います。まずは経済発展が必要で、経済基盤がしっかりしなければ環境対策はできない、と考えがちですが、そのように固定的に考えるのではなく、グリーン成長【1】に基づくモデルを模索する必要があり、実際一部の国では興味深い事例が見られます。
たとえば、タイでは「足るを知る経済」【2】という考えが知識層や指導層の一部で認められ始めています。また、IGESの研究顧問をされている西岡秀三さん【3】は、アジアの伝統的な価値観に注目し、ブータンの人たちと「もったいない」意識の価値について考え、それに基づくライフスタイルを模索しておられます。
IGESでは、「持続可能な消費と生産」という研究グループが活動しています。ヨハネスブルグ・サミットが開かれた2002年ころから、アジアの人びとに向け、持続可能なライフスタイル・持続可能な消費を呼びかけてきました。その当初は途上国の人たちから「何を言っているのか、それは先進国の課題であり、我々の問題ではない」と言われましたが、最近では取組むべき大事な課題と認識されています。
また、2012年にリオデジャネイロで開かれた、「リオ+20」と通称される国連持続可能な開発会議で採択された「国連持続可能な消費と生産10年枠組み」【4】の1つのプログラムである「持続可能なライフスタイルと教育」において、IGESは日本政府を手伝い、スウェーデンとともに共同幹事国の役割を担っています。

大塚― アジア諸国は変わりつつあるように感じています。

浜中さん― その通りです。昨年10月、インド・エネルギー資源研究所(TERI)が定期的に開催している国際フォーラムのため、20か月ぶりにニューデリーを訪れる機会がありましたが、インドが大きく変わっていると感じました。以前は、たとえばPM2.5などの大気汚染について、インドの方がこれは「霧(fog)」で、スモッグではないと言っていたのですが、昨年訪問したときには政府も企業も大気汚染など環境への取組みを前向きに進めようとしており、主要紙がその動きを報道していました。そのような変化の中で、菜食主義などのインドの良き伝統を残しながら、新たなライフスタイルを求めようとする、少なくともその兆しが出てきていると実感しました。

大塚― IGESは、まさに国際的な活動を展開されているのですね。

低炭素社会に向けた長期戦略策定に関する連続提言に関する意見交換会(2016年12月)

低炭素社会に向けた長期戦略策定に関する連続提言に関する意見交換会(2016年12月)

浜中さん― IGESが従来から重視しているのは、さまざまな組織との連携です。国際機関、各国の政府、国立環境研究所をはじめとする国内外の研究機関はもちろん、最近はさらに企業、NGO、市民との連携を強化しています。
3Rを例にとりますと、IGESはその国際展開にかかわる政策プロセスにずっと前から関わっており、アジア太平洋3R推進フォーラムの活動に名古屋にある国連地域開発センターと共同して取組んでいます。そうした活動を進める中で、各国政府やさまざまな組織から学ぶことが非常に多いのです。現実を踏まえ、どういう政策が適切かを私どもが一方的に提案するのではなく、関係者との議論を踏まえ有効な政策を紡ぎ出すというやり方です。持続可能な社会をつくり、そして人びとの生活の質が良くなるよう、チェンジエージェントになることを目指しています。
私たちのパートナーである4つの国連機関とは、施設を提供し共同して活動しています。一番古いのは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の温室効果ガスインベントリープログラム技術支援ユニット(TSU)で、1999年に葉山のIGES本部に置いています。比較的最近、一昨年の9月には、UNFCCC(気候変動に関する国連枠組み条約)のアジア太平洋地域のためのコラボレーションセンター(RCC)を、バンコクにあるIGES地域センターに設置しました。また、IPCCの生物多様性条約版ともいえるIPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム)のアジア・オセアニア地域アセスメント技術支援機関(TSU-AP)をこの東京事務所に、大阪にあるUNEP国際環境技術センター(IETC)とのコラボレーションセンターを葉山の本部に置いています。


パリのCOP21もマラケシュのCOP22も、大変な熱気の中で、「我々はやるのだ」という主張が繰り広げられた

大塚― 少し話題を変えさせてください。昨年、パリ協定が発効しマラケシュでCOP22とパリ協定第1回締約国会議であるCMA1が開かれました。この半年ほどの地球温暖化対策の動きを、浜中さんはどのように見ておられますか。

浜中さん― パリ協定は一昨年12月の採択後わずか10ヶ月で発効要件を満たしました。振り返りますと、協定つくりに向けて機運が盛り上がってきたのは2014年にペルーのリマで開かれたCOP20あたりからだったと思います。私は2014年9月にニューヨークを訪れたのですが、そこで、企業・金融機関・投資家・自治体・NGO・研究機関など実に多くの人びとが大集合し、街頭で一緒になって手をとり、気候変動への強力な取り組みをアピールしながら歩くクライメート・マーチを繰り広げていたのです。国連事務総長が参加していたことなどもあり、私を含め日本からの出張者も世界が大変なことになっていると実感しました。
パリ協定の合意には、アメリカのオバマ政権の主要国への働きかけが大きかったと思います。大統領選挙の結果が見通せないので、その前に発効させたいと、伊勢志摩サミットの時から仕掛けていたのです。中国やインドがそれに乗り、びっくりするぐらい早いタイミングでパリ協定を批准し、EUも批准を急ぎ、発効に間に合いましたが、日本は批准手続きが遅れ、山本大臣は早期国会承認を得るためご苦労されていました。

大塚― COPの会場の様子や、会議の成果などについてもご紹介ください。

浜中さん― パリのCOP21もマラケシュのCOP22も、本当に多くの参加者で膨れ上がりました。政府間交渉が行われるブルーゾーンに入れる方は限られているのですが、その外側には、世界中からビジネス界の代表、自治体の代表、NGOの代表など、ものすごい数の人が集まりました。大変な熱気の中で、「我々は行動を始めている、その輪を広げよう」という声が次々と出されたのです。政府に対しては、「我々の行動をサポートして欲しい」というようなことを求めていました。
発効が想定以上に早かったために、CMA1(パリ協定第1回締約国会議)での取り決めはやや特異なことになりました。マラケシュではCMA1の第1部だけを行い、2017年のCOP23の第2部で検討の進捗状況をレビューし、2018年のCOP24の第3部で作業を終えることになったのです。このように中身は地味でしたが、アメリカでトランプ政権が誕生したこともあり、前に進む機運を高めようという強い意思が感じられました。その象徴が、ハイレベル会合参加者一同の名前で出されたマラケシュ行動宣言で、「世界中の政府、ビジネスなどあらゆる主体、あらゆるレベルでの気候変動行動の非常な盛り上がりは元に戻せない」とし、気候・持続可能な開発に関する行動に舵を切るというシグナルを世界に発するものでした。
もう1つの大きな成果は、今回ビジネス、自治体、NGO等と政府との協働を促進するため、取り組みの進展や課題を持ち寄り、発信する会合を開催したのですが、今後も毎年のCOPで同じことをやろうと、恒久的な枠組みであるマラケシュ・パートーナーシップができたことです。このパートーナーシップ会合では、その年と前年のCOPの議長国、今年で言えばフィジーとモロッコになりますが、両国の代表がハイレベル気候チャンピオンズとして企画を立て、実施することになったのです。マラケシュ会合は、気候変動に対し、各国政府に加え、自治体、ビジネスなど国家以外の主体の取り組みを盛り上げた点で大成功でした。

COP21でのパリ協定採択

COP21でのパリ協定採択

COP22のサイドイベントに登壇する浜中理事長

COP22のサイドイベントに登壇する浜中理事長


各国に対するCO2排出削減強化への国際的なプレッシャーはものすごいものになる

大塚― 国際的な視点から少し離れ、国内対策についてお伺いします。国内対策の中でも、特に2030年度にCO2の排出を2013年度比で26%削減することを、浜中さんはどのように捉えておられますか。

浜中さん― 2013年度比で温室効果ガス26%削減という2030年目標は、決して楽に達成できるものではないと思います。特に福島での原発事故を経験した後の日本の社会経済状況を考えると、容易なことではないと思いますね。家庭・民生部門での40%削減についても、実現するための手段・手法が政府の計画にも十分に示されているとは言えないように感じます。
とはいえ、パリ協定は各国に対し、地球温暖化対策の「計画を作り」「作った計画とその実施状況を報告し」「5年後に更新し」、そして「更新する新たな約束は前の約束より前進したものとする」ことを求めており、不履行に対しいわゆる制裁は科さないものの、長期的に温暖化問題を解決するための大変高い目標を掲げ、今世紀後半には正味の排出量をゼロにすることを目指し、各国に取り組みの段階的強化を求めているのです。したがって、各国に対するCO2排出削減強化への国際的なプレッシャーはものすごいものになると思います。

大塚― 具体的な対応策の準備を始めないといけないということですね。

浜中さん― その通りです。IGESとしても取組まなければならないことがいっぱいありますが、既に研究した成果に基づいて問題提起したことが1つございます。電力部門の対策に関することです。電力自由化に伴い、従来の電力会社に加えて、新電力として多くの事業者が参入し自前の低コストの電源を持とうとする動きの中で、石炭火力の新設計画が続いているわけです。私たちが将来の状況を予測し分析した結果、今計画されている通りに石炭火力発電所が建設され稼働すると、温室効果ガスの排出を80%削減するという2050年目標の達成は厳しくなり、2030年26%削減目標の達成にも課題が生ずるというのが結論です。

大塚― 大きな問題ですね。

浜中さん― ほかにも多くの課題があります。最近、読売新聞社にお勤めの河野博子さんが『里地里山エネルギー』という本を出されたのですが、その中に重要な指摘があるので紹介させていただきたいと思います。
1つは、特に家庭で電力消費を抑えCO2排出量を減少させることに関係しています。電気やガスを作るときに発生するCO2の量を、全量電気事業やガス事業からの排出として計算するやり方と、電気・ガスの消費量に応じ、産業、家庭などから排出するとして計算するやり方があります。国連気候変動枠組み条約事務局に提出する政府のCO2排出量は前者のやり方で計算されていますが、国内では後者のやり方で発表されます。たとえば、2014年における家庭部門のCO2排出量を2005年の値と比較すると、条約事務局に提出した報告書では21%も減っているのですが、国内で発表されているデータでは原発事故以降火力発電への依存が増大しているために6.6%増えています。つまり、家庭での省エネに加え、エネルギー供給側での低炭素化の取り組みが重要なのです。
このエネルギー供給側での低炭素化に関連してエネルギー地産地消の重要性について指摘したいと思います。河野さんの本でも多くの例をあげ説明されており、大震災の被害にあった宮城県東松島市では、災害時にも電力を自給できるよう、環境省の補助金を得て、自前電源の確保に取り組んでいます。独立した送配電網も作り、東北電力に託送料金を支払う必要もなくなりました。私たちのエネルギー費用は、電力会社などへ、そして最終的に中東などの産油国に流出しますが、地産地消でそうした費用の節約にもなります。
また、エネルギーの地産地消は、地域の雇用の創出にもつながります。たとえば、岡山県真庭市では、木材業の端材や里山の間伐材をバイオマスとして利用する取り組みにより、間伐や燃料調達にかかわる雇用が増え、地域経済の活性化につながったのです。環境省もこのような動きを重視し推進しようと力を入れており、さらに広がることを期待したいと思います。

大塚― 地域の特性を活かす地産地消は、大いに発展させてほしいですね。

浜中さん― 私どもは、北九州市にあるIGESアーバンセンターを中心に、自治体によるエネルギー地産地消の取り組みの課題を抽出し、どうしたらそれらを克服できるかという研究プロジェクトを進めています。なんとか自治体や地域の関係者と一緒になって、この動きを盛り上げていければと思っています。

温暖化のリスクとそれらへの対応(適応)策を、皆で共有する必要がある

大塚― IGESが行っている国際的な活動、そして国内での活動をご紹介いただいていますが、長期的な見通しについてもお話しいただけますか。

浜中さん― 長期的な見通しやビジョンに関係することとして、社会の大きな変化という意味で、今重要な分かれ道に来ていると感じています。
パリ協定についても、非常に重要な国際合意ができたのは間違いないのですが、それを実行するには、私たちの暮らしを含め、経済や社会の在り方の将来像をはっきりさせる必要があると思います。温暖化対策だけを考えるのではなく、日本ですと、人口減少、高齢化、地方経済の疲弊、子どもの保育、福祉など、多くの課題があるわけです。難しいのですが、統合的な解決策を見つけることが不可欠だと思います。
とはいえ、温暖化対策に焦点をあてると、日本では注目すべき変化が少しずつ見られるとはいえ、世界の多くの国々と比べ盛り上がりに欠けるように感じています。その1つの理由は、温暖化が進むと私たちの社会の安定を揺るがす大きなリスクになることへの理解不足があるように思います。世界各国の新聞記事やWebサイトを見ると、グリーンランドの氷床が物凄い勢いで溶け出している様子、アメリカ・フロリダ州の海岸が海面上昇し高潮時に別荘などの建物が浸水している様子が、生々しく映し出されています。
日本でも、農業などの一次産業の従事者は、温暖化の影響をひしひしと感じていると思います。ほかにも、地球温暖化による異常気象の脅威を身近に感じている人や、熱帯感染症のリスクを感じている人も多いと思います。さらに言えば、開発途上国の住民をはじめ、もっと大きな温暖化のリスクにさらされている人びともいるのです。このようなリスクをもたらす脅威とそれらへの対応(適応)策を、皆で共有する必要があるのです。昨年、環境省のイニシアティブにより、気候変動に適応するための情報を発信する「気候変動適応情報プラットフォーム」【5】が、国立環境研究所に設置されました。IGESも国立環境研究所に協力し、アジアをはじめとする国際的な課題、そして国内の課題の解決に向け貢献していきたいと考えています。

大塚― よろしくお願いします。

昔は魚がいた湖は枯渇し魚もいない、その上で、どうしたらいいかを考えなくてはならない

大塚― 最後になりますが、EICネットをご覧の皆さまに向け、浜中さんからのメッセージをお願いいたします。

浜中さん― いろいろと申し上げたいことがあるのですが、最近私が見聞きしたことの中で、特に印象的だったことをお話ししたいと思います。
最近、あるシンポジウムの席でNHKの「クローズアップ現代」のキャスターを長年なさった国谷裕子さんから、ニューヨークにある国連本部で現国連副事務総長であるナイジェリア出身のアミナ・モハメドさんに対するインタビューをしたときの話を聞く機会がありました。これまで、途上国援助の際に注意すべきこととして、「食糧が不足しているから食糧を支援する」のではなく、「作物の栽培の仕方、魚の獲り方、井戸の掘り方を教える」ことが重要と考えられていたところ、モハメドさんから、「昔は魚がいた湖は消えかかり、魚もいなくなろうとしている」「その上で、どうしたらいいかを考えなくてはならない」という発言があり、国谷さんは、気候変動を含め社会の持続可能性を脅かす危機的な状況の厳しさ、そしてそこでどのような取り組みが必要なのかを分かりやすく伝えることの重要性を改めて認識したというのです。このような世界の状況に対し、私たちは多くの人たちと協力し合いながら、皆がなるほどと思えるような解決策を目指し、できる限りの努力をしたいと思います。

大塚― 浜中さんからIGESの活動を中心にお話しいただく中で、私たちが世界の状況をどのように理解し、どのように行動すべきかについても多くの示唆をいただきました。本日は、どうもありがとうございました。

公益財団法人地球環境戦略研究機関理事長の浜中裕徳さん(右)と、一般財団法人環境イノベーション情報機構理事長の大塚柳太郎(左)。

公益財団法人地球環境戦略研究機関理事長の浜中裕徳さん(右)と、一般財団法人環境イノベーション情報機構理事長の大塚柳太郎(左)。


注釈

【1】グリーン成長(green growth)
 グリーン成長とは、経済的な成長を実現しながら、人びとの暮らしを支えている自然資源と自然環境の恵みを受け続けることを意味します。その重要な要素として、生産性の向上、環境問題に対処するための投資の促進や技術革新、新しい市場の創造、投資家の信頼、マクロ経済条件の安定などが指摘されています。 https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/zu/h24/html/hj12010102.html
【2】「足るを知る経済」(sufficiency economy)
 タイ国王のラーマ9世(通称、プーミポン・アドゥンヤデート、1927.12.5―2016.10.13)が、1997年に起きたアジア通貨危機の反省を踏まえて提唱した経済指針。富への貪欲さを見直し経済活動にも道徳心を持つべきという主旨で、仏教の教えに倣っている。
【3】西岡秀三氏
 慶應義塾大学教授、国立環境研究所理事などを経て、現在はIGES研究顧問。環境システム学・環境政策学が専門で、気候変化影響や対策シナリオ研究に取組む。
【4】国連持続可能な消費と生産10年計画枠組み(10-Year Framework of Programmes on Sustainable Consumption and Production Patterns: 10YFP)
 2012年6月にブラジル・リオデジャネイロで開催された国連持続可能な開発会議(リオ+20)で採択されたプログラムで、各国からの拠出金で設立された基金により、世界全体として低炭素型ライフスタイル・社会システムの確立を目指す。
【5】気候変動適応情報プラットフォーム
 環境省が関係府省庁と連携し、気候変動の影響への適応に関する情報を一元的に発信することを目的に作ったポータルサイトで、国立環境研究所に平成28年8月29日に開設された。

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