一般財団法人 環境イノベーション情報機構

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EICピックアップ環境を巡る最新の動きや特定のテーマをピックアップし、わかりやすくご紹介します。

No.266

Issued: 2017.12.28

2018年を展望する ──2017年環境重大ニュース

 2017年もさまざまなできごとがあった。直接環境にかかわるトピックスは本編に譲るとして、米国のトランプ大統領の就任による自国第一主義への舵きりは、支持基盤層である石炭産業の復権をめざした保護策の打ち出しなど、環境政策にも大きな影響が及んでいる。EUでもイギリスによるEU離脱交渉が進展し、エネルギー政策や産業への影響が懸念される。極東では、北朝鮮による弾道ミサイルの相次ぐ発射と国連による経済制裁や中国・習近平国家主席による権力集中化など、日本にとって安穏としていられない状況が続いている。中東では、過激派組織「イスラム国(IS)」が“首都”と称してきた最大拠点のラッカ旧市街をシリア民主軍が9月に奪還し、国土の大半を制圧したことになる。イスラム国は、2014年6月の国家樹立宣言から約3年で事実上の崩壊を迎えたが、残党が各地に分散し、地域の安定の回復はまだ遠い。さらに、中東は米国によるエルサルムの首都認定および大使館移設宣言も新たな火種になっている。
 国内では、6月に天皇陛下の生前退位に関する法案が可決され、約1年半後の2019年4月30日をもって30年間に及ぶ「平成」時代が幕を閉じることとなった。天皇の生前退位は200年ぶりのことである。
 上野動物園で誕生したジャイアントパンダの赤ちゃん・シャンシャン(香香)が一般公開されたのは年の瀬も押し迫った12月19日、多くの人が殺到するパンダフィーバーを巻き起こしている。8月に長崎県対馬で発見されたカワウソも話題になった。本編では選外となったが、かつては国内に広く生息していたカワウソの生息が国内で確認されたのは1979年の高知での目撃例以来、38年ぶりのことだった。その後の全島調査の結果、ユーラシアカワウソの糞やカワウソの足跡が発見され、対馬では少数の個体が河川や海岸を利用しながら生息していることが確認できたと発表された。2017年の日本はやはり平和だったといえるのかもしれない。

 今回は、そんな2017年を環境の視点からふりかえりたい。本稿が、環境問題や環境政策について考えるためのきっかけの一つになると幸いである。
 なお、選定はEICネット環境ニュース編集部の独断によるもの。もっとこんなニュースもあっただろうなど、異論もあるかと思われる。ぜひ、文末のアンケートフォームを通じて、ご意見・ご感想などをお寄せいただきたい。

COP23が開催され、タラノア対話の実施など国際的なルールづくりに向け一歩前進 ─米国トランプ大統領はパリ協定からの離脱を宣言

 11月6日(月)から17日(金)にかけてドイツ・ボンで開催された国連気候変動枠組条約第23回締約国会議(COP23)では、2020年から始まるパリ協定の運用ルールづくりに向けた交渉の土台となる文書の作成とともに、1年後の2018年12月にポーランドのカトウィツェで開催されるCOP24までの1年間で世界の気候変動対策の進捗状況をチェックして交渉を加速化させるため、タラノア対話(促進的対話)と呼ばれる新たな取り組みの開催とその進め方などについて合意した。これによって、パリ協定の実施に向けて一歩前進が見られたといえる。
 一方で、具体的な運用ルールづくりの作業そのものは大半が次回COP24に積み残されることとなった。

 そのパリ協定からの離脱を宣言したのが、アメリカ合衆国の第45代大統領のドナルド・トランプ氏。就任前の公約通りの宣言だが、世界第1位の経済大国であり、中国に次ぐ世界第2位の温室効果ガス排出国である米国の離脱表明には、国際社会はもちろん米国内からも多くの批判が寄せられた。企業や州政府、自治体、大学機関、環境NPOなどの非国家アクターによって結成された、パリ協定の順守をアピールするイニシアティブ「WE ARE STILL IN(われわれはパリ協定にとどまっている)」は、気候変動のない未来を願うアメリカの人々を結束させ、よりアクティブな行動へと突き動かしている。COP23の会期中には、自主的な温暖化対策の宣言と削減目標の定量化をめざす報告書「America's Pledge(アメリカの誓い)」を発表して国連に提出した。
 なお、離脱宣言はされたものの、パリ協定の規定によって、離脱が可能になるのは発効日から4年後の2020年11月4日以降となる。その前日に当たる11月3日には米国次期大統領選が予定されており、パリ協定からの離脱を決めるのは、再選するかもしれないトランプ氏の可能性を含む、次期大統領の役割となる。


外来種の脅威 ─ヒアリに震え上がった2017年夏

 特定外来生物である「ヒアリ(Solenopsis invicta)」の国内侵入が初めて確認されたのは、2017年6月のことだった。5月26日に兵庫県尼崎市のコンテナ内で発見されたアリが、専門機関による種の同定の結果、ヒアリであると報道されたのを皮切りに、平成29年12月6日現在までに、12都府県で26の確認事例の報告がされてきた。
 南米原産で攻撃性が高く、強い毒性を持つヒアリは、刺された際に、軽度の場合は痛みやかゆみ等の症状を起こすだけで済むが、アレルギー反応の一つのアナフィラキシーショックを起こすことで命の危険があるケースもあるとして、砂場で遊ぶ子どもたちを含めて広く警戒が呼びかけられた。
 また、IUCN(国際自然保護連合)の種の保全員会が定めた「世界の侵略的外来種ワースト100」にも選定され、世界各地でいったん定着すると根絶するのは困難であると、早期発見・駆除による水際対策が重要と強調されたこともあり、2017年を代表する社会問題の一つとして大きな関心を呼んだ。

 その後、発見場所のコンテナ等では燻蒸消毒されるとともに、発見個体は殺虫処分され、周辺のモニタリング調査及び2km調査と厳重な監視・対策がなされてきた。現在までにアリ塚などは確認されず、定着はしていないとみられているが、11月に入ってもコンテナ内や積み荷の中からヒアリの発見が相次ぐ。寒くなるにつれて市民の関心は徐々に薄れてきているが、春に向かうとヒアリの活動が活発化するので、引き続き行政や研究者だけでなく市民も含む監視体制をとって適切な対処を施していくことが必要とされる。

 なお、外来生物に関するトピックスとしては、10月に小笠原諸島で、外来種のヒモムシが在来の生態系に深刻な影響を与えていることが東北大などの研究チームによって報告された。森林内の落葉を分解するワラジムシ類やヨコエビ類などの在来土壌生物が、1980年代以降、父島全域及び母島の広い範囲で忽然と姿を消していたという。長い間その原因は不明なままだったが、その“犯人”が1980年代初めに侵入した外来性の陸生ヒモムシの1種であるとして報告した。落葉等の分解者が壊滅的被害を受けていることで、将来的には森林そのものの環境にも影響を及ぼす懸念もあるという。
 侵略的外来生物による人間生活や生態系への影響の大きさと対処の難しさを象徴する2つの種の事例といえる。


チバニアン命名へ ─“地球の磁場が最後に逆転した証拠”の意味すること

 「第四紀中期更新世」といわれてピンとくるだろうか。地球の歴史で約77万〜12万6千年前の年代に当たる地質区分だという。北京原人やネアンデルタール人が生きた時代だが、生物群の変化はそれほど大きくないため化石の変化で年代区分を決めるのが難しく、地球のN極とS極が逆転する地磁気の逆転現象が最後に起きた約77万年前を境にしているという。
 前期更新期と中期更新期の境界となる約77万年前の標準地に適した地層が、千葉県市原市の養老川沿いにあるとして、日本の研究チームが国際地質科学連合(International Union of Geological Sciences、IUGS)の専門部会に対して、「チバニアン(Chibanian)」(ラテン語で「千葉時代」を意味する)の命名とともに申請したのが、2017年6月のことだった。

 地球の歴史46億年間の地質時代は、当時の気候変動や生態系などの変化をもとに115に区分されている。国際地質科学連合では、各年代の境界となる最も代表的な「国際標準模式地(Global Boundary Stratotype Section and Point、GSSP)」を世界で1か所だけ選定し、選ばれた場合には地名にちなんだ地質時代の命名権が与えられるとともに、金の杭を意味する「ゴールデンスパイク」が打たれる。これまで世界で66か所が選ばれているが、日本の地名が選ばれたことはなかった。
 千葉県市原市の地層は、地磁気の逆転が起こった当時、深さ約1000メートルの海底で堆積(たいせき)物が安定して固まって形成されたことで、磁性鉱物が地磁気の向きを正確に「記憶」しているのが特徴だという。その後、プレートの衝突による隆起で地上に現れ、観測できるようになった。
 11月に入って、イタリアが申請した2つの地層以上にその妥当性が認められたと報道がされている。今後、正式な手続きを経て決定される見込みだ。

 なお、環境重大ニュースとしては、地磁気逆転という現象が当時又は今後起きた場合に環境に対してどのような影響を及ぼすかを考えておく必要がある。発生のメカニズムもはっきりと解明されているわけではないため、その影響も推測に頼らざるを得ないが、いくつか考えられることはある。
 宇宙空間には、宇宙線と呼ばれる高エネルギー放射線が飛び交っていて、地球にも常時飛来してきている。宇宙線が地表面まで達すると、生物の死滅や突然変異をもたらすことになる。地磁気は大気とともに、宇宙線から地球上の生物を守っているわけだ。実際、過去に起きた地磁気逆転の時代には、ある種の放散虫が絶滅したことも確認されているとされ、地磁気逆転と生物の進化・生存の関連性を唱える説もある。

世界的な脱化石燃料の流れが顕著に ─ヨーロッパ諸国を中心に急進的なEV推進策が打ち出される

 2017年7月、フランス政府は、パリ協定の目標達成に向けた計画を発表。目玉政策の一つとして打ち出されたのが、2040年までにガソリン及びディーゼルエンジンを搭載した自動車の新車販売を終了させるという方針だった。同月下旬には、イギリス政府も自動車排ガスによる大気汚染防止対策の新たな計画として、同様の方針を打ち出している。
 ヨーロッパでは、ノルウェーやオランダも、2025年以降の新車販売をすべてEV(電気自動車)もしくは充電可能なPHEV(プラグインハイブリッド電気自動車)にするという方針を示し、またドイツでも連邦議会が、2030年までにガソリン・ディーゼル車の新規登録を禁止する決議案を採択した。ノルウェーはすでに国内のEV及びPHEVのシェアが2017年1月にそれぞれ20%と17.5%となり、合計約4割にまで伸びている。ガソリン及びディーゼル車のシェアは世界で初めて5割を切っている。

 これまでヨーロッパでは燃費性能のよいディーゼル車の方がガソリン車よりも多く利用されてきたが、近年は排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)による大気汚染が深刻化して、排ガス規制は強化されてきた。一方で、地球温暖化対策として燃費規制も強化されてきたが、燃費と排ガス規制の両立が難しくなってきたことが、2015年に発覚したドイツの大手自動車メーカーのフォルクスワーゲン社による排出ガス規制不正問題の原因になったとされる。不正は他メーカーにも広がり、急進的なEV推進策を後押しする一因となった。
 これに加えて、世界の潮流となってきた脱化石燃料を加速化させる政治的な思惑もうかがえる。米国のトランプ大統領によるパリ協定からの離脱宣言に対する牽制の意味も込められているとの指摘もある。

 こうした流れはヨーロッパだけにとどまらない。2016年の世界の新車販売台数約9千万台のうち28百万台を占めて8年連続世界最大の市場となった中国は、2019年から国内自動車メーカーが生産・輸入する乗用車の一定割合をEVなどの新エネルギー車にするよう義務付ける規制を始めると発表した。深刻な大気汚染対策にもつなげることが期待されている。
 さらに同年の新車販売台数366万台(世界5位)のインドでも、2030年までに国内販売の自動車をEVのみにする政策を発表している。

 なお、国際エネルギー機関(IEA)は、2016年のEV台数が累計で過去最大の200万台を記録したと発表した。
地球温暖化対策や大気汚染対策に向けて、ガソリン及びディーゼルのエンジン自動車から、電気自動車をはじめとする新エネルギー自動車への転換に向けて大きく舵切られた2017年だった。

復興に向けた新たなステージへ ─環境省に“循環”を冠した「環境再生・資源循環局」が誕生

 東京電力福島第1原子力発電所事故の発生から6年が経ち、国が直轄で行う面的除染である、避難地域での除染を完了し、復興に向けた新たなステージへと突入するターニングポイントの年となった。
 6月に閣議決定した環境省組織令の一部を改正する政令により、7月から新たな組織体制が発足。これまでトロイカ体制で進められてきた「除染」、「除染物を集約しておく中間貯蔵施設」、「放射性廃棄物の処理」を組織的にも一元化して、中間貯蔵を中心に有機的に連携をする中で復興を加速化させようというわけだ。
 新しく“循環”を冠した「環境再生・資源循環局」が誕生し、また福島環境再生事務所は地方支分部局の一つとして福島地方環境事務所に格上げされた。
 「環境再生・資源循環局」を中心に、大臣以下、環境省の最重要課題として省を挙げて被災地の環境再生に取り組み、復興創生を一層加速化するとしている。
 またあわせて、総合環境政策局を改組し、新たに設置した「総合環境政策統括官」の下で統括することで、国連持続可能な開発目標(SDGs)の採択等を踏まえ、分野横断的な省全体の企画立案機能を強化することも組織改革のポイントの一つにあげられている。

オゾン層破壊に危機回避の兆しあり ─モントリオール議定書採択30年目を迎えて

 1987年にモントリオール議定書(オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書)が採択されてからちょうど30年目を迎えた2017年。
 同議定書では、エアコンや冷蔵庫の冷媒などとして広く使われていたクロロフルオロカーボン(CFC)を先進国は1996年までに、途上国も2010年までに全廃、またCFCの代替ガスとして登場したハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)について、先進国は2020年までに、途上国でも2030年までに全廃することを決めている。原因の究明と規制等による対策が功を奏して、オゾン濃度に改善の兆しがみられるようになった。

 気象庁の12月1日付けの更新情報によると、2017年のオゾンホールの状況について、「2017年のオゾンホールは8月上旬に観測され、11月19日に例年より早く消滅」、「その面積は、8月中旬以降、最近10年間の平均値よりも小さく、9月中旬から下旬にかけては最近10年間の最小値より小さく推移」とされる。
 ただし、保護対策が進展している一方で、毎年オゾンホールの発生は見られ、オゾン層の回復は2040〜60年頃との見通しもある。特にすでに出回っている機器からのフロンの回収・破壊による大気中への放出の対処など課題はまだ多い。

 なお、2016年10月にルワンダ・キガリで開催されたモントリオール議定書第28回締約国会合(MOP28)において、オゾン層破壊物質ではないものの温室効果の高い代替フロンであるハイドロフルオロカーボン(HFC)を、規制対象に追加するという議定書の改正(キガリ改正)が採択された。これに対応するため、環境省では10月に「モントリオール議定書キガリ改正を踏まえた今後のHFC規制のあり方について(案)」を取りまとめている。

環境省が萌えキャラ起用 ─国民運動「COOL CHOICE(賢い選択)」の推進に向けて

 エコとは程遠い生活をしているぐうたらで不摂生な女子高生・君野イマと、見た目もそっくりなクールで知的なしっかり者・君野ミライ。イマが暮らす世界の温暖化を止めるため、鏡写しの関係にある並行世界「クールワールド」からやってきて、ぐうたらなイマを地球温暖化対策の国民運動「COOL CHOICE(賢い選択)」の伝道師にすることをめざす──そんな設定の萌えキャラを、環境省が発表。
 お役所らしからぬ取り組みの背景には、「COOL CHOICE」に対して、10〜20代の認知度が低かったこともある。若者に馴染みやすく、かつ活用されやすいキャラクターを起用することで、認知度を上げていこうというねらいだ。奇しくも、環境省の英語名称「Ministry of the Environment」は、頭文字にするとMOEとなる。そんな偶然にちなんだ「萌え」キャラを──というわけだ。

 環境大臣がチーム長となって、経済界などをメンバーとして効果的な普及啓発を行うための「COOL CHOICE推進チーム」が設置されたのは2016年5月。幅広い立場のチーム員から、普及啓発を抜本的に強化するための基本的な方針や戦略についての意見をもらいながら、戦略的な普及啓発を実施していくとしている。環境省の萌えキャラも、この取り組みから生まれた。2017年2月に開催された第2回会合に合わせて、「環境省『COOL CHOICE』MOE萌えキャラクターコンセプト&キャラデザイン公募コンテスト」表彰式が実施され、決定したキャラクター「君野イマ」と「君野ミライ」のイラストなどのお披露目がされた。
 なお、COOL CHOICE推進チームでは、「省エネ家電」、「ライフスタイル」、「省エネ住宅」、「低炭素物流」、「エコカー」の5つの作業グループを推進チームの下に設置して、特に重点的に普及啓発を進めるテーマについて、実務者レベルで議論を行っている。
 宅配便の再配達防止を呼びかける「COOL CHOICE できるだけ1回で受け取りませんかキャンペーン 〜みんなで宅配便再配達防止に取り組むプロジェクト〜」もスタートした他、省エネ住宅大使として“高断熱・高気密”のメリットを“だん”&“みつ”と迫るようにアピールするタレントの壇蜜さんの起用も発表された。

水銀に関する水俣条約が発効 ─公害病の原点といえる「水俣病」の教訓を活かすために

 日本の公害病の原点で、四大公害病の一つ「水俣病」の原因となったメチル水銀による汚染への対策を国際的に進めることを目的とした「水銀に関する水俣条約」が2017年8月16日に発効した。
 2013年10月に水俣市・熊本市で開催された外交会議で採択され、条約発効要件である「50か国が締結した日の後90日目の日」を5月14日に満たしていた。
 地球規模での水銀汚染を防止すべく、各国が連携して水銀のライフサイクル全体を通じた適正管理や排出削減を目指すための国際環境条約で、背景には、金採掘のための水銀使用など世界各地で今も大量の水銀が使用され新たな健康被害につながりかねない環境汚染が広がっている実態があることがあげられる。
 条約では、水銀及び水銀化合物の人為的排出から人の健康及び環境を保護するための規制措置をとることとしており、採掘から流通、使用、廃棄に至る水銀のライフサイクルにわたる適正な管理と排出の削減を定める。
 国内法「水銀汚染防止法」の改正も施行
 国内では、条約に対応するための国内法として、水銀汚染防止法を制定するとともに大気汚染防止法や廃棄物処理法施行令等の改正が行われてきたが、水俣条約の発効を受け、一部を除いて条約発効日の8月16日に施行された。

2017年も甚大な被害をもたらした各地の気象災害と、危惧されるインフラの老朽化

 2017年8月、東京では月初めから21日間連続の降水(0.0mm以上)を観測した。途切れない雨模様に心晴れない日々を送った人も少なくはなかったのではないか。21日間連続は、1977年の22日間連続に次ぐもので、40年ぶり、観測史上歴代2位のことだった。  2017年の天候不順を示すデータの一つだが、同月の東京の日照時間は合計83.7時間となり、8月としては観測史上最短となっている。1977年の85.8時間を40年ぶりに更新したことになる。  また、7月には九州北部集中豪雨が発生し、死者37名・行方不明者4名の人的被害の他、家屋の倒壊や床上・下浸水など甚大な被害を生じた。半年経った2017年末になってもまだ復興の見通しが立たない被災集落もある。

 毎年のように発生する豪雨の発生状況について、気象庁ではアメダスで観測した1時間降水量50mm以上の「非常に激しい雨」及び同80mm以上の「猛烈な雨」の年間発生回数の長期変化について発表している。  最近10年間(2007〜2016年)の平均年間発生回数と、統計期間の最初の10年間(1976〜1985 年)の平均年間発生回数を比べると、50mm以上の非常に激しい雨が173.8回から232.1回の約1.3倍に、また80mm以上の猛烈な雨が10.7回から17.9回の約1.7倍にそれぞれ増加している。  こうした気象災害の激甚化に伴って心配されているのが、戦後から高度成長期にかけて多くの整備が進んだ道路や橋、トンネル、上下水道などのインフラの老朽化だ。耐用年数の目安である50年を経過してきている今日、その対策も喫急の課題となっている。

 なお、海外でも異常気象等による気象災害が多発した。エルニーニョ現象の影響を受けて異常高温が頻発した2016年に続き、2017年も世界各地で異常高温が発生。台風や大雨などによる大きな気象災害も多く発生した。主なものに、南米・コロンビア南西部〜ペルーの大雨(2〜4月)、中国南部の大雨・台風(6〜8月)、南アジア〜アフガニスタン北東部の大雨(6〜9月)、米国南東部〜カリブ海諸国のハリケーン(8〜9月)、ベトナムの台風・大雨(9〜11月)、フィリピン南部を直撃した台風27号などがあり、多数の死者の出たことが報じられた。

里山保全運動の象徴・オオタカが国内希少種の指定解除 ─野生動植物種の保護・保存をめぐるエポックとなった2017年

 8月29日、猛禽類のオオタカを国内希少野生動植物種(国内希少種)から指定解除するとの環境省報道がなされた。個体数の回復が見られたとの判断による。
 オオタカは、日本国内では南西・南方諸島を除く列島全域に生息するが、生息地の大規模開発などによってその数が激減し、1984年の調査では推定400羽ほどとなった。里山を象徴する生態系上位種として、自然保護・里山保全運動の象徴となり、保護対策の重要性が訴えられた。1998年の第2次レッドリストでは、絶滅危惧II類(VU)に記載されている。その後、1993年に施行された種の保存法に基づいて、国内希少野生動植物種に指定され、保護対象となったことで、生息数が急速に回復していった。
 2006年の第3次及び2012年の第4次レッドリストでは、連続して「絶滅のおそれがある」とされるカテゴリーから外れ、準絶滅危惧(NT)に記載された。2014年に全国のオオタカ調査実施者等を対象としたアンケート等による情報収集を踏まえた検討の結果でも、絶滅のおそれがある状況ではないとされ、2016年10月に中央環境審議会自然環境部会野生生物小委員会で指定解除の方針について合意を得て、指定解除後の対応についても検討が重ねられてきた。

 なお、これに先立つ2月28日には種の保存法(絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律)の一部改正法案が閣議決定され、希少種の保護に向けた対策の強化が図られている。改正法では、(1)国内希少種の保護を進める「特定第二種国内希少野生動植物種」制度の創設、(2)希少種の域外保全を進めるための「認定希少種保全動植物園等」制度の創設、(3)国際希少種の保護を進めるために個体の登録制度の改善、象牙に係る事業者登録制度の創設──などの改正事項をまとめている。国会審議では、附帯決議として、2030年度までに(総計)700種の国内希少種の指定を目指して、候補種の選定について検討することなどが求められた。環境省では、国内希少種の指定について、指定による種の保存の効果を勘案するとともに、国による指定が地域における保全活動を阻害したり、マニアを誘引したりすることのないよう、専門家をはじめ、自治体やNPOなどの関係団体と丁寧に調整して進めることが必要としている。

 野生動植物の保護・保全を巡って、一つの節目を迎えるとともに、今後ともさらなる対策を進めていくための体制の強化が進められた2017年といえる。

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