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環境Q&A

検量線の不確かさについて 

登録日: 2007年01月15日 最終回答日:2007年02月04日 水・土壌環境 その他(水・土壌環境)

No.20425 2007-01-15 06:24:40 筑波山麓

不確かさについて。「なんちゃって計量士」さんの要望、及び不確かさに関する私の疑問点について興味をお持ちの方と交流をもちたく掲載することにしました。内容が複雑なので長くなることをお断りしておきます。

計量証明事業の開始時点においては、零細企業が多く、計量証明事業者に不確かさを追及するという余裕(人、物、金)もなく、かつ、顧客側も規制値を超えているかどうかという、より重要な要求もあり、不確かさを追求するという考えはほとんどありませんでした。

しかし、種々の精度上の問題が生じ、年々精度に関する顧客側の要求も増し、業界の取組も年々増えています。また、近年、ISO17025の考え方が普及し、従来の分析方法の評価、技術的ノウハウの文書化、新分析法の開発、機器の自動化等にあたって不確かさ(精度)を把握する必要もあり、徐々に不確かさを求める考えが根付いてきました。

しかし、検量線のアルゴリズム(最小二乗法等)の不確かさについては、評価がしにくいという事情もあり、(日本での)報告が全くないといっていいほどない状況下でした。従来、検量線の妥当性は、相関係数又は決定係数(寄与率ともいう、相関係数の二乗)で評価され、相関係数が「0.99以上」程度であれば良い、あるから良いという報告が多く、この相関係数と不確かさや精度との関係は追及されておらず、単に、この程度であれば良いだろうというものであった。

しかし、最小二乗法で作製した検量線に標準液の吸光度等の測定値を代入し、標準液の濃度を計算すればすぐに分かることですが、相関係数が0.999程度であっても、調整濃度と測定値が「7〜8%程度乖離(検量線の最小濃度で)」することがあることは自明のことであった(ご不審があれば、ご自分で計算してみて下さい)。

このような状況下にあって、日本環境測定分析協会の「環境と測定技術」に四角目和広氏(財団法人化学物質評価研究機構)、佐藤寿邦氏(横浜国立大学大学院工学研究員)等が検量線と不確かさについて「技術報文」として発表しています。 −つづく−

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No.20892 【A-11】

Re:検量線の不確かさについて

2007-02-02 19:39:09 筑波山麓

−つづき−
さて、不確かさには、MFそのものが持つ不確かさと、そのMFを使用するときの不確かさがあります。

MFそのものが持つ不確かさは、購入した又は/及び自分たちが使用するMFの不確かさです。

例えば、100mlMFはJIS R 3505でその許容差が0.1mlと決められています。メーカーが出荷時の検査を行っているかいないかで不確かさが相違します(出荷時の検査は実施されているはずです)。メーカーが出荷時の検査を行い仕様が外れたのを除いている場合のMFは、100.0mlを中心に100.0mlから外れるほどMFの数(確率)が少なくなり、99.9〜100.1mlの範囲を超えるMFは「0」となるガウス分布(近似:三角形分布)をします。この場合の不確かさは、u=0.1/√6/100=0.00041となります。

そうでない場合は、99.9〜100.1mlまでその数(確率)が同じになる、99.9〜100.1mlの範囲を超えるMFは「0」となる矩形分布(私訳;四角分布)をします。この場合の不確かさは、u=許容差/√3/MF容量=0.00058となります。

一方、JIS R 3505の方法で校正する場合、この校正操作を10回以上繰り返します(測定者間再現性は5回以上でも良い)。その平均値が100.02ml、その標準偏差が0.00030であったとする。校正の不確かさは、標準偏差(σ)を平均値(A)で割った数値になりますから、u=0.00030/100.02=0.0000030(これが、校正時の人の操作の不確かさです)となります。一方、MFの容量の不確かさは、真値からのズレですから、u=(100.02−100)/100=0.0002となります。合成不確かさはu=√(0.0000030^2+0.0002^2)=0.00020となります。これには、上記で言った校正時の人の操作の不確かさが含まれています。
−更に、つづく−

回答に対するお礼・補足

−つづき2回目−
したがって、校正した結果、MFの実体積が100.0mlから大きく相違すれば不確かさがかえって大きくなることがあります。しかし、標線(100mlの位置を示すMFについている線)を100.0mlの位置に正しく付け替えれば、又は標線での量を100.02mlと補正(ファクター=1.0002を付けるなど)すれば、不確かさはσ/A=0.0000030となる等必ず小さくなります。これがあなたの疑問への回答となります。

次に、使用時の不確かさについて説明します。使用時の不確かさには、その要因として、「測定者(MF使用者)間再現性」、「水温」、「室温」、「容器からの汚染」、「環境からの汚染」、「水・試薬等からの汚染」等々が考えれます。

「容器からの汚染」、「環境からの汚染」、「水・試薬等からの汚染」については、「試薬ブランク試験」、「操作ブランク試験」からその有無が確認できます。一般に、試験方法を導入するときに検討を行い汚染がない方法を採用し、試験操作で毎回その有無を確認し、あれば補正等を実施します。したがって、ここではその不確かさに関する検討に関する説明は除きます。私が計算・実験により求めた結果は相当小さい結果が得られました。

「測定者(MF使用者)間再現性」は、上記の「MFの校正(ただし、繰返し測定は5回以上であれば良い)」を各測定者が行い、その平均値及び標準偏差(σ)から求めます。求める方法の詳細は、「JAB NOTE1」を参照ください。ここでは説明を略します。

以下は、私(独自)の考えです。私が浅学かも知れませんが、一般の書籍でこのように記載されているのを私は見たことがありませんことをお断りしておきます。

「水温」、「室温」の不確かさは、年間を通しての使用時の水温、室温を測定し、その標準偏差(σ)/平均(A)を計算します。現在は、温湿度をデジタル的に自動記録してくれる「おんどとりくん」のような測定装置がありますので、ISO/IEC17025を取得しているような事業所であれば入手可能です。また、実験室は空調等である狭い範囲内で温湿度管理をされているので、入手できなければ、その管理範囲から推測可能です。
−つづく−

No.20893 【A-12】

Re:検量線の不確かさについて

2007-02-02 19:44:17 筑波山麓

−つづき3回目−
このA±σ間の室温での空気比重による浮力差、水温での水比重差を使用時の不確かさに換算して計算します。なお、水温は室内にタンクが置かれている場合は水温=室温としても良い場合があります。

校正時の不確かさと使用時の不確かさを合成して全体の不確かさとして求めます。

なお、以上はMFのみの不確かさの求め方です。たかがMFにここまでと考える方もあると思います。また、ここまで労力と金を費やす無駄を心配される方も多いと思います。MFでここまで実施するのならば、もっと不確かさの大きい要因その他はどうするのかという方もいらっしゃるでしょう。

しかし、実は、MFの不確かさは、MF単独では実施することはなく、試験方法導入、妥当性の確認、不確かさの推測の試験の中に組み込まれて実施されます。時間的にも全て併せても、恐らく2日程度以下と考えられます。

一方、今日、計量証明事業所のみならず実験において、天秤、MF、プッシュボタン(デジタル)式体積計は頻繁に多用されている基本的な機器・器具の一つであり、「標準液作製」、「試料の調製」及び「各種試薬の調製」に繰返し、何度も使用され、その結果、その不確かさは幾度も加算(合成)されます。一つ一つは小さくとも、幾度も繰返し使用されることによりその不確かさは大きくなっていきます。これらの不確かさを正確に把握していなければ、全体の不確かさを正確に見積もることは不可能なことを考えれば、この程度の時間を1度くらい投資することは、有益な投資と考えますが、「修習計量士」さん初め、皆さんはどう考えられますか。

興味を持たれる方は、ご連絡ください。

No.20930 【A-14】

Re:検量線の不確かさについて

2007-02-04 07:31:44 修習計量士

まず最初に、提起された問題と違うことを書いてしまい貴重なお時間を使わせしまったことをお詫び申し上げます。
筑波山麓様の言うとおり、些細と思えることでも積み重なれば、大きな問題です。これからの仕事において、常に意識するように心がけることとします。
どうもありがとうございました。

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