一般財団法人環境イノベーション情報機構
IPCC 気候変動対策に関する報告書を公表
【地球環境 地球温暖化】 【掲載日】2001.04.10 【情報源】/2001.03.05 発表
IPCCは、気候変動対策について検討を進めてきた第3作業部会の報告書「気候変動2001年:緩和策(Climate Change 2001:Mitigation)」を公表した。同報告書では、気候変動対策として、再生可能エネルギーなどの技術的対策にとどまらず、排出取引などの経済的対策も含めた総合的な評価が行われている。
報告書のポイントは以下のとおり。
・技術的な対策については、風力発電や燃料電池など大きな進展がみられ、これらを積み上げると全世界の排出レベルを、2010〜2020年において2000年の水準にできる潜在的な可能性がある。対策コストは、排出削減量の半分を達成すると予測される2020年までは、省エネなどで直接的な利益が得られるとしているが、残り半分については、炭素1トン当たり100ドル(11,000円)がかかるとしている。
・森林、農地によるCO2吸収などの「生物学的な緩和策(biological mitigation)」については、必ずしも永続的なものではないが、他の対策を開発するまでの時間を稼ぐことができるとしている。生物学的な緩和策の可能性は、2050年までに概ね100ギガトン(炭素換算)規模と推定され、化石燃料による排出予測値の10〜20%に相当する。対策コストについては、熱帯諸国では炭素1トン当たり0.1ドル(11円)だが、それ以外の国々では炭素1トン当たり100ドル(11,000円)を要する。
・排出量取引については、取引が行われない場合には、先進国のGDPが2010年には0.2〜2%減ると予測されているのに対し、取引が実施された場合のGDP損失は0.1〜1.1%程度と予測されている。
なお、既に第1部会、第2部会報告書が公表されており、今回第3部会の報告書が公表されたことで、IPCCの第3次評価に関する全報告書が揃ったことになる。今後、最終的に、2001年4月のIPCC第17回総会で報告書全体が承認される見通しである。
気候変動交渉再開の地となるドイツでは、環境大臣が、今年7月の会議で方向転換に向けた突破口を開くことが必要だ、と改めて強調するとともに、気候変動を抑えるために重要なのは、変動を抑制するための技術を開発し、これに依存するよりことも、先進工業国の人々の生活や消費のあり方を変えていくことであろうと述べた。【IPCC】