一般財団法人環境イノベーション情報機構
中国土壌モニタリングが本格的段階に モニタリング体系・基準の整備が課題
【水・土壌環境 地下水/土壌汚染】 【掲載日】2007.06.20 【情報源】中国/2006.05.09 発表
中国の土壌調査モニタリング事業が今年から大きく前進し、本格的な実施段階に入る見込みになった。これについて専門家は関連分野の専門家は土壌調査要綱を制定し、市や県レベルの環境モニタリング部門の土壌モニタリング能力を増強する必要があり、統一した評価体系と総合分析技術・方法を制定し、技術条件を統一させ、実施のための経費を確保する必要があるという。中国では土壌モニタリング分野で関連の基準が整備されていない問題がある。特に有機汚染物質については準拠すべき基準がない。分析事業中の土壌測定方法が科学的でなく、実証調査での農産物の検体数が少なく、作業時間などの制限もある。実証モニタリング過程では農業部門や水利部門など、関連部門の横の連携が不足しており、土壌調査資金の支援も停滞している。また実証モニタリングでは土壌汚染と汚染物質の特徴に関して対象の選定が曖昧で、下位の環境モニタリング機関は能力が不足している。
この状況に対応するため、専門家は政府に向け、全国土壌環境状況調査を実施する組織や経費、技術、基準、確認調査などの面で適切な対応を徹底するよう提言している。具体的には、環境モニタリング能力の現状を正確に把握し、技術方案を調査モニタリングの目的に適合させると同時に、全国のモニタリング能力・水準での地域格差に配慮することが重要だとした。また地方各級環境モニタリング部門の調査における職責と分担を明確に規定し、作業内容を具体化することが必要だとした。そのほか全国範囲の土壌調査モニタリングは、市や県の環境モニタリング部門が担当すべきだとした。調査内容の質・量ともに確保するため、土壌モニタリング研修活動を実施すべきだとした。同時に土壌分析に関する評価基準の研究を強化し、調査の質を確保するための措置を講じる必要もあると述べた。
中国は国土が広大で、土壌モニタリング監督検査の実施には、国による専門家調査のほか、各地で一部を互いに検査させ、早期に問題を発見し、これを解決できるよう長所を取り短所を補う体制を目指すべきだと提案した。また土壌に関するデータベースを構築し、調査結果の利用効率を向上させることも重要だとした。そのほかサンプリングの深度を大きくし、土壌汚染が農作物に及ぼす危害についてより正確にデータを取るとともに、土壌汚染と農作物の生長との間の関連性を的確に理解し、重度汚染地域では検体数を増やすことも必要になると述べた。
国家環境保護総局は05年11月、『全国土壌現状調査・汚染防止特別実施方案』を開始し、1省・3市で土壌モニタリングを開始した。中国環境モニタリング統合ステーションの専門家によると、中国には現在、2200ヵ所の環境モニタリングステーションがあるが、土壌環境モニタリングを実施している機関は少ない。
これらの原因は、第一に土壌汚染の深刻さに対し適切な理解と認識が不足していることが挙げられる。第二に土壌汚染モニタリングと対策に関する法制度の欠点もあり、土壌環境質規制項目が少なく、評価が困難であることである。しかし一方で土壌と人体間の物質循環は複雑で、多くの要素の影響を受けるため、土壌汚染物質の環境状態に関する基準制定は困難である。一部の指標はモニタリング可能ながらも評価することは難しい。第三に、現在、ほとんどの環境影響評価報告で土壌環境の評価内容が欠落していることも挙げられる。第四に、国家環境保護総局が04年12月に公布した『土壌環境モニタリング技術規範』の宣伝もうまくいっておらず、下位の環境モニタリングステーションは現在でも同『規範』を知らないことがあることである。【中国環境報】