一般財団法人環境イノベーション情報機構
EPA SO2、NOx排出枠取引をオンライン化
【大気環境 大気汚染】 【掲載日】2001.12.12 【情報源】アメリカ/2001.12.03 発表
12月3日、EPAは、排出枠取引をインターネット上で行う「オンライン・アラウアンス移転システム(the Online Allowance Transfer System: OATS)」を発表した。これまでは、EPAに書類を提出しなければならなかったが、新たなオンライン・システムによって、SO2およびNOx市場の取引を直接インターネット上で記録することができるようになる。取引単位は、アラウアンスと呼ばれ、1アラウアンスが排出ガス1トンと等しい。EPAのトラッキング・システムは、既存のキャップ・アンド・トレード・プログラム(*)の下、SO2およびNOxの移転を記録しているが、現在、200億ドル相当(2兆4000億円)以上のアラウアンスが登録されている。世界中の誰でも、この市場に参加することができ、既に、数百の企業、ブローカーおよび個人が取引に参入している。
ホイットマンEPA長官は、「EPAは、このオンライン・システムが、産業界および政府の時間とお金を節約することによって、排出枠取引を合理化し、促進することを期待している」とコメントした。
*キャップ・アンド・トレード・プログラム
キャップ・アンド・トレード・プログラムは、排出について一定の上限値を設定し、この範囲内での排出取引を許容するもの。EPAが酸性雨対策としてSO2削減のために導入したのが始まりで、現在、同様のシステムが、北東部州のNOx削減プログラム(NOxバジェット・プログラム)、南カリフォルニアでのSO2・NOx削減プログラム、シカゴの揮発性有機物質削減プログラムで活用されている。
このシステムは、規制的手法よりも迅速、かつ低コストで汚染物質を削減することができると言われている。実際に、EPAの酸性雨プログラムは、1980年レベルから毎年600万トンのSO2を削減しており、コストについても産業界の当初の試算を75%下回ったという。
なお、EPAは、取引の前段階として、厳格なモニタリングおよび報告基準を要求し、企業が上限を超えて排出した場合、政府に罰金を支払うことを要請している。厳格なモニタリングは、このプログラムの確実性および一貫性を確保するために必須であり、取引されたアラウアンスが1トンの排出に相当することを確認するものである。
EPAは今後も、このシステムを重視していく予定で、NOxの排出取引プログラムは2004年に19州に拡大される。また、アメリカにおける電気産業の排出を削減するために、追加的な排出枠取引プログラムが議会で提案されている。【EPA】