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環境風

2022.08.22

第1回 SDGsの今、進捗状況は ~SDGsと地球環境~

自然エネルギーネットまつもと 平島 安人

目次
SDGsは参照リストに過ぎない
SDGsの本質は何か?
社会を根本から転換する、という認識の根拠
SDGsの基盤となるのは地球環境
地球環境の今
日本のSDGs達成状況
2030年に向けて

平島 安人(ひらしま やすひと)プロフィール

  • 長野県諏訪市出身・在住。
  • 会社勤め(2022年2月に定年退職)の傍ら、1997年(京都でUNFCCC COP3を開催した年)から環境問題に取り組む市民活動を開始。
  • 「自反而縮雖千萬人吾往矣」、「吾唯足知」をモットーに、啓発・提言・実践を通して“地域にあるものを活かすくらし”の実現を目指している。
  • 自然エネルギーネットまつもと代表、自然エネルギー信州ネット理事、NPO法人森倶楽部21理事、環境カウンセラー、など

電通が2022年1月に実施した調査【1】によるとSDGsの認知率は86%となり、ほとんどの人がこの言葉を知っていると言える状況になってきました。その一方、7月に相次いで開催されたSDGsに関する2つの国際的会議【2】では、SDGs・気候変動ともに目標達成への軌道に乗っていないとされました。「知っている」と「やっている」は別のもの、さらには正しく知ることが大切です。SDGsとは何か、地球環境との関係性とともに確認し、進捗状況をチェックしてみましょう。

SDGsは参照リストに過ぎない

SDGsは2015年9月の国連サミットで国連加盟193ヶ国が全会一致で採択した、よく見聞きするこの説明は厳密には間違いで、採択したのは2030アジェンダ【3】です。これは2016年スタート、2030年を達成期限とする行動計画で、SDGsはその中に書かれた参照リストに過ぎません。

2030アジェンダにはなぜSDGsをやるのか、どのように考えて達成させるのが書いてあります。SDGsを見てわかるのは取り組む項目とそのレベルだけです。2030アジェンダの前文と宣言を読み、目的と理由を理解してSDGsに取り組まなければ、的外れなSDGsとなってしまいます。

“Transforming our world”で始まる2030アジェンダの正式名称は、世界を変革(大転換)する決意と必要性を示しています。現在の延長線上のわずかな変化ではなく、今までのやり方と考え方を根本から転換させることに取り組みたいですね。

SDGsの本質は何か?

2030アジェンダに書かれた前文と宣言の中でも最重要と考えられる部分を見てみましょう。
前文の冒頭部分を図1に示します。貧困が人権を阻害する最大要因であることを考えると、SDGsの本質は人権の確立であることが見えてきます。

図1 2030アジェンダより、前文(一部)[画像クリックで拡大]

続いては全91条の宣言の中から第50条です(図2)。
「まだ貧困を撲滅できていない(人権確立のための必須条件が満たせていない)」、「今が地球環境問題を解決できるラストチャンスである」という2つの重要な認識を明らかにしています。さて、どれだけの組織や個人が、ラストチャンスという認識とともに取り組んでいるのでしょうか?

図2 2030アジェンダより、宣言第50条 [画像クリックで拡大]

2030アジェンダを読み込むことで、SDGsの本質と目指すことは図3に示す内容であることがわかります。では、貧困のない社会と深く関わりのある地球環境について見ていきましょう。

図3 SDGsの本質、SDGsが目指すもの [画像クリックで拡大]

社会を根本から転換する、という認識の根拠

SDGsの基盤となる概念にプラネタリー・バウンダリー(地球の限界:図4)があります。
この評価は、このままでは人類の生存基盤である地球環境が立ち行かなくなることを明確にしました。「このままでは」という認識が2030アジェンダの“Transforming our world”に反映されています。
すでに4つの領域が危険な状態ですが、気候変動よりも危険状態にある生物多様性と窒素・リンの循環がなぜか注目されていません。これは大きな問題です。

図4 プラネタリー・バウンダリー [画像クリックで拡大]

人間の営みが自然の許容量を超えることで危険状態が生じます。
1750-2010年にかけて人間活動によって社会経済と自然(地球環境)が大きく変化していることを調べた「大加速」【4】(図5)を見ると、1950年頃から社会経済が急激に拡大し、結果として自然への脅威も爆発的に高まっていることがよくわかります。

許容量を超えた負荷により生じるのが地球環境問題であり、代表的なものが気候変動と生物多様性喪失です。今は注目度の低い生物多様性は、実は気候変動より深刻な問題になるとの多くの指摘があります。MacKay氏のツイートはこれを端的に示しています【5】

図5 大加速(The Great Acceleration) [画像クリックで拡大]

図5-1 図5の一部拡大(一次エネルギー) [画像クリックで拡大]

SDGsの基盤となるのは地球環境

2030アジェンダの理念はSDGsの17個のゴールとして具体化され、ゴールの意味を“SDGs Wedding Cake”がわかりやすく体系的に説明しています(図6)。人類の生存基盤である生物圏を健全な状態にすることで、安心して暮らすことができる社会を形成することができ、経済はそのような社会があってこそ成立することがわかります。そして17番目のゴールであるパートナーシップによって、この状態を実現していくという考えですね。今まではこれが逆になっていたと考えざるを得ません。

図6 SDGs Wedding Cake [画像クリックで拡大]

環境問題の取り組みにおいては、「経済と社会と環境のバランスをとって」という主張をよく聞きます(図7)。しかしこれらを満たした部分(スウィートスポット)は狭く、現実には経済に引っ張られてしまう場合が多いように思えます。バランスを取ることは大切ですが、図の右側に示すように、これからはSDGsのWedding Cakeを踏襲した考え方を根底に置くことが求められるでしょう。

図7 環境は社会の基盤 概念図 [画像クリックで拡大]

地球環境の今

気候変動に関しては、COVID-19によるパンデミックで経済活動が劇的に縮小した2020年はCO2排出量が約5%減りました(図8)。排出量は減ったものの大気中のCO2濃度は2020年も増加を続け、さらには2021年には排出量も過去の延長線上に戻ってしまったのです。1.5℃目標達成のためには、2030年に2010年比でほぼ半減の必要があり、これは2020年と同様の削減を毎年続けることを意味します。

図8 CO2排出量の推移と2030年への必要経路 [画像クリックで拡大]

生物多様性については、生態系の健全性を測る指標である「生きている地球指数」が1970-2016年だけで68%減少しています【6】。この回復に向けてネイチャー・ポジティブという取り組みが始まりました(図9)。図が示すようにこのままでは生物多様性は減少の一途です。
そこを食い止め、増加・回復に向かわせ、2030年には2020年レベルまで戻す、これがネイチャー・ボジティブです。

図9 ネイチャー・ポジティブ [画像クリックで拡大]

日本のSDGs達成状況

持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)とベルテルスマン財団が、各国のSDGs達成状況を調査し、ランキング形式で毎年発表しています。2022年6月の最新報告書【7】によれば、日本のSDGs達成状況は2017年の11位から年々順位が下がり、今回は163ヶ国中19位となりました。他国との比較や順位の上下はともかくとして、同報告ではSDGsの17ゴールのうち次の6ゴールについて日本において深刻な課題があるとしました。

  • ・SDG5「ジェンダー平等を実現しよう」
  • ・SDG12「つくる責任 つかう責任」
  • ・SDG13「気候変動に具体的な対策を」
  • ・SDG14「海の豊かさを守ろう」
  • ・SDG15「陸の豊かさも守ろう」
  • ・SDG17「パートナーシップで目標を達成しよう」

言うまでもなくSDG 13~15の3ゴールは地球環境のゴールです。これも現実として受け入れが必要ですね。

2030年に向けて

SDGs達成の目標年限は2030年です。気候変動については、2050ゼロカーボンを表明する企業や自治体が相次いでいますが【8】、まず大切なのは2030年までの取り組みです。CO2排出を現状からほぼ半減しなければなりません。これと2050ゼロカーボンがセットで達成できなければ1.5℃目標に到達できないのです。生物多様性についても前述の通り2030年ネイチャー・ポジティブが必須です。2030年は今までになく重みを持った年限であることを、政治、行政、企業、個人など全ての主体が強く意識しなければなりません。
2020年のCO2排出量5%減という事実を、今度は人類自らの意思と本気で実現し続けたいと思います。

SDGsの本質である「人権確立」は、現世代はもとより将来世代の人権確立を意味します。現世代の行いが将来世代の人権を決定づけていくことを認識し、やれることをやるのは当然として、やらなければならないことを真剣に考え実行していくことがSDGsの達成にも地球環境問題の解決にも欠かせないでしょう。

2030アジェンダの“Transforming our world”へとつなげるには、図10のように取り組むことが大切だと思います。2030年に間に合わせることは容易なことではありませんが、今からすぐ取り組めば間に合う可能性が残っています。将来世代の人権を守るために、わずかに残った可能性を最大限に広げましょう。

図10 これから必要な取り組み [画像クリックで拡大]

【1】電通が2022年1月に実施した調査
第5回「SDGsに関する生活者調査」
【2】SDGsに関する2つの国際的会議
High-Level Political Forum 2022UN Climate and SDG Synergies Conference
【3】2030アジェンダ
Transforming our world:the 2030 Agenda for Sustainable Development
【4】大加速
Great Acceleration
【5】MacKay氏のツイート
The third wave.
【6】「生きている地球指数」が1970-2016年だけで68%減少
Living Planet Report 2020
【7】2022年6月の最新報告書
Sustainable Development Report 2022
【8】2050ゼロカーボンを表明する企業や自治体
例えば、地方公共団体における2050年二酸化炭素排出実質ゼロ表明の状況(環境省)

※掲載記事の内容や意見等はすべて執筆者個人に属し、EICネットまたは一般財団法人環境イノベーション情報機構の公式見解を示すものではありません。