作成日 | 2026.07.23 更新日 | 2026.07.27
排出ギャップ報告書
ハイシュツギャップホウコクショ 【英】Emissions Gap Report [略]EGR
解説
国連環境計画(UNEP)が発行する「排出ギャップ報告書(EGR)」は、2010年の創刊以来、世界の気候変動対策における重要な指針となってきた。その端緒は、2009年のCOP15で合意された「世界の気温上昇を2℃以内に抑える」という目標達成を科学的に支援することにあり、2015年のパリ協定以降は、焦点を「1.5℃目標」の実現へとシフトさせている。
本報告書の核心は、各国がボトムアップで提示する「国が決定する貢献(NDC)」の予測排出量と、科学が求める「1.5℃目標」達成に必要なトップダウンの排出経路との乖離(ギャップ)を、最新データに基づき毎年厳密に評価することにある。
EGRは、UNEPコペンハーゲン気候センター(UNEP-CCC)を中核に、世界約100名の第一線の専門家による執筆と厳格な外部査読を経て作成される。数年周期でまとめられるIPCC評価報告書やパリ協定のグローバル・ストックテイク(GST)に対し、EGRは「年次更新されるリアルタイムの通知表」としての役割を担う。毎年COP(国連気候変動枠組条約締約国会議)の開催直前に公表されることで、国際交渉の現場に即時性の高い科学的根拠を提供し続けてきた。
単なる現状分析に留まらず、ギャップを埋めるための具体的な処方箋を提示している点も大きな特徴である。近年では、化石燃料補助金の撤廃や金融システムの刷新、都市・交通構造の転換、さらには個人の行動変容まで、多岐にわたる政策課題を深く分析している。
その影響力は極めて大きく、2021年のCOP26において「1.5℃目標は危機的状況にある」という強い危機感を各国が共有する決定的な要因となった。また、2023年のCOP28で採択された「2030年までに再エネを3倍、省エネ改善率を2倍にする」という歴史的な「UAE合意」の形成においても、科学的根拠を与え多大な貢献をした。(2026年5月作成)
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関連Webサイト
- Emissions Gap Report(UNEP/国連環境計画):https://www.unep.org/resources/emissions-gap-report
- EMISSIONS GAP REPORTS(UNEP Copenhagen Climate Centre/国連環境計画コペンハーゲン気候センター):https://unepccc.org/emissions-gap-reports/
- 排出ギャップ報告書2025(エグゼクティブ・サマリー):目標未達 継続的な集団的不作為が地球温暖化目標を危険にさらす(日本語翻訳版)(地球環境戦略研究機関):https://www.iges.or.jp/jp/pub/unep-emissions-gap-report-2025/ja