金属分析の前処理について
登録日: 2009年02月15日 最終回答日:2009年02月18日 水・土壌環境 その他(水・土壌環境)
No.31284 2009-02-15 21:40:52 ZWlc128 金属初心者
はじめて投稿いたします、よろしくお願いいたいます。
最近、とある事情から会社が変わりました。以前はGC−MS、LC−MSといった分析機器を使用して有機物の分析を行っていましたが、現在の職場ではICP−MSを任されています。
金属分析は初心者でわからい事だらけなのですが、一番疑問に思っているのが、前処理についてです。現在は以前から行っていたという、試料に硝酸を添加して、自動前処理装置で一晩加熱分解し、翌日過酸化水素水を添加して3〜4時間加熱分解し測定用液としています。
上水や比較的有機物の少ない河川水ならば問題ないと思います。しかし、土壌の溶出液や廃棄物の溶出液、なんだかよく分からないどす黒い溶液まで、全て同じ方法です。これでしっかり分解でき定量できているのか疑問に思っています。
個人的には、ICPで有機物が残っているとイオン化しにくい元素を、クリーンアップスパイクとして添加して、回収率を確認した方がいいのではないかと思っています。 そういった金属元素は存在するのでしょうか? また、こういう考え方は金属分析に当てはまらないのでしょうか? 尚、現在内部標準はICPのペリポンプで試料と混合させてプラズマに送っています。
長い文章になりましたが、なにか情報がありましたら教えて下さい。
よろしくお願いします。
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No.31285 【A-1】
Re:金属分析の前処理について
2009-02-16 08:40:25 XJY (ZWlba48
分解に問題があるのでは?分解の度合いは溶液の色で判断することが多いと思います。自動分解装置を使用しているのであればメーカーに酸の添加量等を問い合わせてみては、いかがでしょうか?
回答に対するお礼・補足
XJY様
ご返答有難うございます。とりあえず、引き継いだ通りにやっていただけだったので、機器の性能を十分検討していませんでした。取扱説明書をよく読み、メーカーに問い合わせて確認いたします。
No.31287 【A-2】
Re:金属分析の前処理について
2009-02-16 12:03:31 たそがれ (ZWla61d
本題から少しそれますが、固形物等を溶液化して機器にかける場合、無機でも当然、回収率は問題になります。しかし、熱酸分解や乾式灰化、抽出分離等についてこれる元素があまり検討されていないこと、また、無機では回収率は良好であることが前提であることから、ダイオキシンのようにクリーンアップスパイクを加えるのではなく、濃度既知の目的元素を添加し回収を確認、というのがどちらかといえば通例です。
貴殿の言われる自動前処理装置がどんなものか私にはわからないのですが、廃棄物の溶出液やなんだかわからないどす黒い液は極めて危険です。
残存有機物による噴霧効率の低下やコーンへの目詰まり、炭素を含む同重体分子イオンの生成等、さまざまな不具合が起こります。
汚い試料は分解の検討、複数の質量数での確認等は大いなる一般論ですが、実際には水道水や環境水以外は数値の信頼性や機器のメンテを考えるとICP発光や原子吸光での分析をお勧めします。
回答に対するお礼・補足
たそがれ様
貴重なご返答ありがとうございます。おっしゃる通り回収率と干渉を混同しておりました。その上でお聞きしたいのですが、干渉しているかどうかの判断基準の様なものはありますでしょうか? もしご存じでしたら教えていただければ幸いです。
情報を補足します。
廃棄物の溶出液などを分析すると、内部標準の強度は明らかに低下しています。その後もしばらくは低下し続けていますが、低下した状態のQCを確認すると内標補正はされています。MSの測定はコリジョンモードで行い、ある程度の分子イオンの妨害は緩和されていると思います。 よろしくお願いします。
No.31291 【A-3】
Re:金属分析の前処理について
2009-02-16 19:55:12 筑波山麓 (ZWl7b25
「たそがれ」さんが良い回答をされているので、補足として回答します。
「キーワードを指定欄」に、「金属分析」等を入力し過去のQ&Aを見てください。
一例を下に記します。
http://www.eic.or.jp/qa/?word=%8B%E0%91%AE%95%AA%90%CD&x=16&y=10
http://www.eic.or.jp/qa/?act=view&serial=16650
あなたと同様な質問に対する諸先輩の多くの回答があります。
また、ご質問で言及されている自動前処理装置の性能は?、添加する分解剤等は、硝酸、過酸化水素のみなのでしょうか?
酸の種類により分解の用途が違います。以下に、酸分解における酸の働きを記します。
塩酸は、酸化力は無く、Hよりイオン化傾向が高い物を溶解します。還元力を有し、Clが金属と錯化体形成します。
硝酸は、酸化力が強く、有機物を分解し、多くの金属の溶解に向きます。
硫酸は、濃硫酸は酸化力があり、希硫酸は酸化力がない。高温での濃硫酸はきわめて強力です。粘性が高く、沸点が高いので、試料の分解温度を高くするので有益ですが、カドミウムと不溶性の沈殿を生じると言われており、注意を要します。
過塩素酸は、常温では酸化力が無いが、高温で極めて強い酸化力を有します。難分解性の試料の分解に適します。爆発性で危険なので、硝酸存在下で使用します。
フッ酸は、ガラスなどのケイ酸化合物の分解に有効です。酸化力はないので、硝酸と併用します。Fが金属と錯化体を形成します。
王水は、市販の濃塩酸と濃硝酸の混合液(塩酸:硝酸=3:1)で、酸化力が高く、貴金属の溶解に向いています。
過酸化水素は、発生期の酸素を発生し、有機物の分解に有効ですが、単独では分解能力が瞬間的、かつ、弱いといわれております。私の経験でも、プラスチックの分解で、硝酸+過酸化水素では3日間実施しても分解できなかった試料が、硫酸で高温にしたところに過酸化水素を滴下させて簡単に十数分間で分解できた例があります。
これらの酸を単独で、又は組み合わせて湿式分解に使用します。
したがって、有機物が多いサンプルでは、硝酸+過酸化水素水のみでは不十分と考えます。過塩素酸の使用等が必要なのではないでしょうか?下記は、ネットで見つけたものです。参考までにお知らせします。
http://www.jsac.or.jp/bunseki/pdf/bunseki2008/200802nyuumon.PDF
No.31293 【A-4】
Re:金属分析の前処理について
2009-02-16 20:37:05 火鼠 (ZWl8329
過塩素酸+硝酸は、かなり分解能力は、高いのですが。5mlの過塩素酸5gの汚泥で、ドラフト1台壊れたの見たことあります。
分解液が、黒いのであれば、それは、未分解です。そんなもの、機械にかけたって、意味ないのではないでしょうか?
分解するときは、夾雑物を良くみて、使用する酸をえらばないとあぶないですよ。何でも、ワンパターンは、無理だとおもいますけど。
前処理設備が、判りません。マイクロウエーブかもしれませんが。マイクロウエーブなら、目的金属で、使用する酸も、加熱条件も変わると思います。メーカに確認されたほうが、いいとおもいます。
前処理装置を、使われているとのことですから、こんな情報は、いらないと思いますが。わたしは、硝酸、過酸化水素分解で、爆発が起き怪我をした経験があります。
回答に対するお礼・補足
火鼠様
ご返答有難うございます。
事故には十分気をつけて前処理するようにいたします。まだ金属分析を始めたばかりなので、有機物の多そうな試料は酸の種類を変えて検討していきたいと思います。
No.31300 【A-5】
Re:金属分析の前処理について
2009-02-17 00:35:00 筑波山麓 (ZWl7b25
ということなので、「マイクロウエーブ」ではないと思います。「分解フラスコ法」の自動化版、又は「ダイジェスダール法」と推測しています。どちらにしても、分解原理上、難分解性サンプルを硝酸+過酸化水素では完全分解は困難であろうと推測しています。
「たそがれ」さんの回答にあるように、「廃棄物の溶出液やなんだかわからないどす黒い液は極めて危険です。残存有機物による噴霧効率の低下やコーンへの目詰まり、炭素を含む同重体分子イオンの生成等、さまざまな不具合が起こります。」ので、完全分解できる方法を検討されることをお奨めします。
「火鼠」さんが言われる「硝酸、過酸化水素分解で、爆発が起き怪我をした経験」に関しては、私自身がそのような危険な目にあった経験はありませんが、飛散または付着すると、皮膚が脱色され、かつ、いつまでもピリピリ痛みますし、目に入ると失明の可能性もありますので十二分に注意し、保護具を着用の上作業を行うようにしてください。
また、過塩素酸に関しては、もし、使用されるならば、その危険性は十分に聞かれているだろうと思いますが、硝酸との混在下で、かつ、密閉容器を避けて、保護具を着用の上、また、過去の災害事例を十分に学習の上使用してください。
私の経験でも、分解作業中に爆発(経験がない若い頃のものですが、突沸の大きいものから容器の破損・飛散まで)の経験があります。ただし、十分に過塩素酸の危険性を熟知し、保護具を着用し、注意事項を守って行えば、事故にいたる可能性は低いと考えております。私の経験からいえば、マイクロウェーブ分解の方が、突沸〜爆発〜火災〜機械の破壊まで、過塩素酸よりも大きい事故を目撃しております。
回答に対するお礼・補足
筑波山麓 様
2度にわたりご丁寧に返答頂きまして、ありがとうございます。
また紹介頂いた資料は、知りたい情報が詰まっていて勉強になります。もう少し酸の性質を理解し、資料を読み、色々試してみようと思います。また質問する事もあると思いますので、よろしくお願いたします。
No.31327 【A-6】
Re:金属分析の前処理について
2009-02-18 09:48:20 火鼠 (ZWl8329
試料 シリコンオイルを含むと思われる塗料
分析項目 鉛
分析 至急
私の判断
分析項目が鉛なので、硫酸は使いたくない。しかし、塗料なので有機物は多いだろう。でも、用途形状からいって、シリコンオイルが含まれると考えられる。過塩素酸硝酸の分解は、危険と思われた。
分解方法
試料を0.5gテフロンビーカーに取り、NaOH+純水を加えて、煮込む(これにより、シリコンオイルを分解)次に、硝酸で酸性にしてから、フッ酸を加えてシリカを飛ばす。フッ酸を飛ばしてから、ト−ルビーカにあけ変え、硝酸+過酸化水素で分解。
結果
3種類の試料のうち2つは旨く分解できたのですが、1種類だけ、分解が遅く、なにか、嫌な感じがしました。しかし、納期も忙しいので、少し無理をして、加熱したところ。爆発しました。
はねた時の状況
100mlのトールビーカで時計皿使用。硝酸の還流状態で、過酸化水素があるので内部は透明。急にビーカー内に霧が発生し、ドカン。
100mlビーカ粉々。ドラフト内だったので、ガラスにさえぎられ外部への飛散はよけられました。
なぜ?
アルカリ分解が不十分だったと思われる。(この分解方法は、電気材料か?シリコンオイルの分析法?の古い小冊子に載っていたと思う(今は絶版で手に入らないかも))
雑な説明ですが、訳のわからないものに、酸を加えると爆弾に変わることもあることを、判っていただければと思いました。
試料分解は、静かな燃焼です。激しい燃焼は、爆発となります。
私の、失敗例です。(アルカリ分解は、Hg、Asには、使えないと思います)
回答に対するお礼・補足
火鼠様
二度にわたりご返答を頂きまして、ありがとうございます。なるほど、アルカリ分解という処理方法もあったのですね。私も生物試料中の環境ホルモン物質を分析する際使っていたのですが、すっかり抜け落ちていました。勉強になります。
酸分解の恐ろしさも分かりました。試料の性状や測定項目も十分に見極め、前処理するように心がけていきます。
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