水の自浄作用
登録日: 2008年07月02日 最終回答日:2008年07月11日 水・土壌環境 水質汚濁
No.28543 2008-07-02 11:47:07 ZWlb610 匿名
微生物による水の浄化について質問させていただきます。
特に閉鎖性水域において、カキの貝殻や炭素チューブを水の中でぶら下げて微生物を繁殖させ水をきれいにする。
という方法があるようですが
排水(有機物)によって富栄養化になるとそれを食べる好気性微生物が増えて溶存酸素を使い切り貧酸素化。
嫌気性微生物によるメタンアンモニア硫化水素を防ぐために
ばっきなど行ない酸素を送って好気性微生物を増やす。
という方法とアプローチというか考え方がちがいますよね?
上の貝殻の場合、貧酸素化という問題は解決できていないように思えるのですがどういう仕組みなのでしょうか?
それと、恥ずかしい質問なのですが、
東京湾などのヘドロ汚れと呼ばれるものは嫌気性微生物の分解が追いつかない有機物がたまったものと考えてよろしいのでしょうか?
それとも微生物が分解できない物質による汚れなのですか?
初歩的な質問で申し訳ないのですがどなたかよろしくお願いします
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No.28566 【A-1】
Re:水の自浄作用
2008-07-03 21:49:27 papa (ZWl998
繁殖した微生物のバイオマスの分は水系から回収されたことになり、ミクロな視点では汚濁物質の減少になりますが、繁殖した微生物を回収しなければ何の意味もない装置です。
水処理の単位装置としての汚泥保持担体には、様々な素材があります。過去に遡れば、同じような趣旨で乳酸菌飲料容器とかPVDCのひもとか火山礫とか様々な担体が提案・開発され、大学の環境系の先生から「画期的」と賞用されてきたものもあります。
しかし、もう少しマクロな視点から見ると、生成したバイオマスを回収する効率的な装置を考案しない限り工学的には水系の汚濁除去装置としては全く無意味な装置です。
>嫌気性微生物によるメタンアンモニア硫化水素を防ぐために
>ばっきなど行ない酸素を送って好気性微生物を増やす。
>という方法とアプローチというか考え方がちがいますよね?
最初の質問と同じような視点からのお考えかと思います。バイオマスの回収を考慮しない水処理装置はどうやっても汚泥処理のツケ回しでしかありません。さらに、ばっきなどを行うには動力源が必要になりその分の環境負荷を考慮することが必要です。
>上の貝殻の場合、貧酸素化という問題は解決できていないように思えるのですがどういう仕組みなのでしょうか?
貧酸素化というレベルではなく、水処理装置としての基本的仕組みが成り立っていません。
>東京湾などのヘドロ汚れと呼ばれるものは嫌気性微生物の分解が追いつかない有機物がたまったものと考えてよろしいのでしょうか?
嫌気性であれ好気性であれ生物処理ですべての有機物が分解消滅することはありません。したがってヘドロは有機物と無機物の混合物であり、その割合は地点ごとに異なっていると考えるのがふつうです。
夢のような水処理というのは妄想にすぎません。生物処理で汚濁物質が「消滅」すると考えるのは、物質循環の基本的理解が足りないと思います。私たちが「処理」と言っているのは高々「効率のよい回収方法」という程度の意味と考えてください。
青い鳥のような話には懐疑的になって、このようなQAに質問をしていただくことは、科学的なものの考え方をすすめる第1歩だと思います。
回答に対するお礼・補足
丁寧な回答ありがとうございます。
>私たちが「処理」と言っているのは高々「効率のよい回収方法」という程度の意味と考えてください。
まさにその通りだと感じました。
人がきれい汚いと感じ方が違うだけで、有機物の量が変化するわけではないですよね。
水処理について考えるということは効率的な回収とその利用法を考えていく事だと感じました。
これからもう少し勉強していこうとおもいます。
No.28574 【A-2】
Re:水の自浄作用
2008-07-04 13:33:04 あお (ZWl8051
ある程度、流れ(酸素供給)がある前提での浄化作用です。
水処理システムで言う「接触酸化」と同じ考え方です。
活性汚泥法と比べると、かなり低い負荷しか浄化できません。
また、付着しすぎて目詰まりしたり、嫌気になれば、これ自体が負荷源ともなりかねません。
> 東京湾などのヘドロ汚れと呼ばれるものは
> 嫌気性微生物の分解が追いつかない有機物がたまったものと考えてよろしいのでしょうか?
追いつかないもの、分解できないものなどなどの塊と考えてよいかと思います。
ある程度視野を広く取って、負荷の動きや、絶対量を考えてみてください。
日本とその近海という器があります。
その器の中で、自給自足しているならまだしも、
海外から食糧や飼料を輸入するということは、
その器の中にどんどん有機物を投入してるということです。
その有機物の出口が無ければ、その器の中に蓄積するしかないんです。
これまでは、海に流して希釈したり、燃やして大気中に拡散させてました。
でも、大気中に拡散させることについても、見直す必要が出てきた訳です。
そしたら、器の中で有機物として出来るだけ循環させるか、
固形化して、別なことに利用するしかないですよね?
どんな負荷も、形を変えるだけで、消えてなくなることは無いんです。
そいういった視点で物事を見れると、
いろいろ答え(状況)が見えてくるものが沢山あると思いますよ。
回答に対するお礼・補足
回答ありがとうございます!!
>海外から食糧や飼料を輸入するということは、
その器の中にどんどん有機物を投入してるということです。
まさにそのとおりですね!!
>どんな負荷も、形を変えるだけで、消えてなくなることは無いんです。
お二人の回答から、有機物が消えてなくなるということはなく、形をかえているだけということがよくわかりました。
よく考えたら、食物連鎖自体も有機物の移動にすぎないんですよね。
これからはもうすこしマクロな視点で物事を見れるよう努力してみようと思います。
ありがとうございました。
No.28665 【A-3】
Re:水の自浄作用
2008-07-11 00:01:34 おせんち (ZWlb24a
どうも私は、楽観的に考えすぎるのでいけないのですが、参加させてください。
まず、質問内容を誤解しないように、幾つか確認させてください。
・「排水(有機物)によって富栄養化」という表現はしない約束です。無機物の栄養塩類による汚染を富栄養化と言う方が適切です。
また、富栄養化状態では、「好気性微生物が増えて溶存酸素を使い切り」ではありません。水面近くでは、植物性プランクトンが増加して、光合成・炭素同化作用により溶存酸素が過飽和になります。植物プランクトンは、水中の炭酸ガスと栄養塩類から有機物を光合成してしまうのです。排水中に含まれる有機物のみによって汚染されるのではないのです。合成された有機物が沈殿し、好気性分解するときは、合成されたときに放出した酸素が必要になりますが、その時は既に無くなっています。 ここから嫌気性分解になります。好気性であっても、嫌気性であっても、どちらも重要な水の自浄作用に違いありません。
・「東京湾などのヘドロ汚れと呼ばれるものは嫌気性微生物の分解が追いつかない有機物がたまったものと考えてよろしいのでしょうか?」
「嫌気性生物の分解が追いつかない」だけではなく「好気性生物の分解も追いつかない」ものがたまったものだったはずです。ヘドロは、今まさに嫌気性分解による自浄作用が盛んに行われているところなのです。
それに、追いつかないのではなく、有機物が供給される、それが分解されるという動的平衡状態にあるのです。追い越せないので何時までたってもきれいにならないのでしょう。
科学は、定義された用語を正確に積み上げて真実を表現しようとしています。聴いた側は、少々間違っていても、何が言いたいのか理解できますが、できる限り正確なやり取りをしながら相互の理解を深めていくことが大事ですね。
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