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環境Q&A

汚泥乾燥排気の共通項 

登録日: 2006年09月28日 最終回答日:2006年10月04日 大気環境 悪臭

No.18735 2006-09-28 12:33:33 脱臭屋

 最近,水処理施設の汚泥乾燥排気について脱臭を考える機会が多く,悩んでいます。
 汚泥と一口に言ってもその成分は千差万別なので,当然臭気成分分析を行うのですが,活性汚泥法で処理された汚泥の乾燥排気中の成分に良く見かけられるのがアンモニアです。
 これは,し尿処理施設の様な安易に予想がつくケースに限らず,食品工場や産廃処分場等,活性汚泥法を使用している施設全般に言える事なのですが,汚泥に熱を加える過程でアンモニアが生成されるプロセスについて何か知見,文献などありましたら教えてください。

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No.18755 【A-1】

Re:汚泥乾燥排気の共通項

2006-09-29 19:21:52 イニシャル泥

活性汚泥処理の余剰汚泥は菌体がメインですので、これをコンポスト化するということは、菌体を分解して新たな菌体を生成する行為と言えます。微生物の活動にはエネルギーが必用ですので、全量が新たな菌体に置き換えられるのではなく、分解された有機物の一部は呼吸により消費され、生成菌体量<分解菌体量となります。当然ながら分解過程で生成したアンモニウムの全部を新たな菌体として固定できなくなります。アンモニウムの残存により、同時にpHも上昇しますので、アンモニアとしての大気への揮散も促されます。さらに水分低下により液相中の濃度が上昇することも、揮散を促すと考えられます。汚泥のコンポスト化が進むにつれ、pHが上昇しアンモニア臭が強くなるのはこのためだと考えられます。参考になるかどうかわかりませんが臭気対策研究協会から出ている『悪臭防止技術の手引き(14)コンポスト化施設編』を一読されてはと思います。
なお、昨今のし尿処理では、硝化脱窒処理が主流ですので、し尿処理の余剰汚泥だけがC/N比が低いということはありませんし、初沈もないので、投入し尿中のアンモニアや尿素が影響することもありません。し尿のみアンモニアが出やすいイメージはどうかと思います。

回答に対するお礼・補足

ありがとうございます。コンポスト化施設は汚泥乾燥の比ではない程のアンモニア濃度が検出される事が多々あるので,コストと脱臭性能の狭間での検討は非常に悩ましい限りです。。。
それはさておき,乾燥とは言えコンポストも少なからずヒントになりました。色々な方向で検討してみます。ありがとうございました。
追記
以前あるし尿処理施設の脱臭を計画した際,汚泥系では無く全体の処理を生物脱臭で行ったのですが,硫化水素濃度とアンモニア濃度の比率が1:1かそれ以上で,日変動が予想以上に激しく非常に苦い思いをした経験から,し尿処理施設=アンモニア共存下の厳しい条件というイメージでおりました。語弊がありましたので訂正致します。

No.18766 【A-2】

Re:汚泥乾燥排気の共通項

2006-09-30 09:22:15 マッシー・ナナ

活性汚泥法で発生する有機汚泥は、微生物の働きにより内部が嫌気になりやすい(いわゆる腐る)ので、アンモニアなどの悪臭成分を発生しやすくなります。しかし、トリメチルアミン、メチルメルカプタンなどと比較するとアンモニア臭は閾値が低いので、通常あまり臭気対策が問題になりません。ご質問では乾燥空気でアンモニアを関知するとのことですが、施設の脱臭操作はどのようにしているのでしょうか。もしかしたら御社のシステムでは閾値の高く問題になりやすいメチルメルカプタン、トリメチルアミンなどのみ除去する装置が設置されているかもしれません。
お調べいただいて、アンモニア対策が取られていても乾燥空気からアンモニア臭が発生するのであれば他に原因があることになります。有機汚泥からの発生臭気は私も調査したことがあり、調査文献を示せればよいのですが、実名で記載していますので、他のURLを参考に記載します。
http://www.gastec.co.jp/fp_top_japan.htm
http://www.aqcnet.com/item_odo/item_odo01.htm
http://www.suiki.co.jp/hensen/75_84/79_1.htm

回答に対するお礼・補足

マッシー・ナナ様
お答え頂き有り難うございました。
有機物の腐敗によってアンモニアが発生するというメカニズムは理解出来るのですが,むしろ含硫黄タンパク質の嫌気腐敗による硫化水素発生が主要因で,ナナ様もおっしゃるように,アンモニアの嗅覚閾値は1.5ppm(日環センター資料)と高いので問題にならないケースが多いです。
当方は水処理から発生する臭気をメインに仕事をしておりますが,アンモニアを考慮しなければならない施設はし尿処理施設か,動物飼育施設の排水位でほとんどは不必要です。
汚泥乾燥の機械は小〜中規模程度の場合,排出臭気のコントロールについては全く考慮されておらず,「乾燥排気が臭う」という形で脱臭を依頼されるケースばかりです。
乾燥機は,汚泥に熱を加える際に水蒸気と共にアンモニアが十数ppm〜100ppm以上検出されるケースがほとんどです。トリメチルアミンは現場によりけりで何とも言えません。メチルメルカプタンの存在は更に希少です。もっとも,メチルメルカプタンが存在する場合は硫化水素が発生しているケースがほとんどなので,大体わかります。それよりもアセトアルデヒドなど厄介な物質の他,温度が下がれば結露水に悩まされ,乾燥物から分離する粉塵という強敵が居るので設計は大変です。
ある化学工場の汚泥乾燥臭は普通じゃないものが含まれているのでアンモニアこそ出ませんが,非常にミステリアスです・・・
という訳で,燃やしちゃうのが手っ取り早く確実というのは分かるのですが,「何で汚泥を100℃〜200℃くらいで乾燥するとアンモニアが発生しちゃうんですか?」に対して明確な答えを持ち合わせていなかったので質問させていただいた次第です。

No.18773 【A-3】

Re:汚泥乾燥排気の共通項

2006-10-02 09:45:42 papa

マッシー・ナナさんのおっしゃるとおり
>乾燥空気からアンモニア臭が発生するのであれば他に原因がある
というご回答が適切ではないかと思います。
プラントメーカーさんの設計ではなぜかアンモニアにこだわるご担当が多くいらっしゃいます。
しかし、アンモニアの閾値は他の悪臭物質に比べて数桁も閾値が高く、かつ不快臭というより刺激臭であることを設計者はご存じないのだと思います。従って、アンモニアの分析値が大きくなっても着地で閾値以下であれば大した影響はありません。
余剰汚泥であれば汚泥臭はカビ臭に近いものですし、混合汚泥であればVFAやイオウ系臭気の混合臭気が主たる不快臭物質となります。焼却の排出口ではいわゆるこげ臭のアルデヒド類が主たるものと思います。いずれも閾値が低く不快臭として認知されやすいものです。
ユーザーの立場からは、アンモニアに過度にこだわらず、VFAやイオウ系臭気対策が汚泥処理系の共通項である思います。二次処理水がふんだんに使える処理場では、生物脱臭+活性炭処理が現時点では最も使いやすいと思います。

回答に対するお礼・補足

papa様
ご指摘有り難うございます。
当方も嗅覚閾値は存分に理解しているつもりです。アンモニアが数ppm程度であれば無視するか,吸着かで対応しますし,濃度がある程度で常温であれば中和処理で対応します。その他の条件は土壌という提案も出来ますが,NOx対策が必要でも燃焼で処理します。
それよりアンモニアの生物脱臭はとにかく難しいです。バランスが少しでも崩れると全く機能しなくなってしまうので。これはアンモニアを栄養源に活動する微生物の倍加時間が長い事に始終します。また硫化水素等と共存した場合も濃度によりますが上手く行きません。アンモニア濃度が高いと,せっかくの微生物がpHの上昇で機能しなくなるので,気がつくとアンモニアスクラバーが完成していたりします。まあこれでも硫化水素だけは中和反応で落ちるんですが,処理臭はとにかくアンモニア臭いです。硝化菌よ何処へという感じなのですが,水処理の様に滞留時間が稼げないのも一つにはあるかもしれません。これはオゾン脱臭,プラズマ脱臭,酸素クラスター脱臭などにも言えます。アンモニアに効果があるよ〜なんですが,工業脱臭には徹底的に向きません。
問題は,乾燥機の排気臭なので,高温多湿で粉塵,アンモニアが主成分で問題になる位の濃度と言うことです。乾燥なので乾燥物が炉に付着してしまったケース以外はアセトアルデヒドは定量限界値付近とごく微量で,主成分とはとても言えない程度です。
汚泥を乾燥機させている乾燥機の排気によくみかけられる現象で,有機物を対象とした水処理の汚泥乾燥であれば,ほとんどと言って良いくらい同じ傾向になります。この共通項から,アンモニアの生成ルートが分かれば防臭(前処理)対策が打てると思ったので質問させて頂きました。

No.18788 【A-4】

Re:汚泥乾燥排気の共通項

2006-10-02 21:23:59 マッシー・ナナ

テニスの旅行から帰宅してみますと、脱臭屋さんとpapaさんとで高度な応答あり、少し当惑気味ですが、早速仲間に入れてください。当方の汚泥臭気の調査は、酸腐汚泥でしたので、汚泥の臭気原因は閾値の関係で含硫黄系物質が主体でした。その際はご指摘のとおり、硫化水素は、濃度が高く且つ自動測定が容易なので、指標として利用できました。
ところで、脱臭屋さんの本来のご質問に戻ります。私の経験では、新鮮な?硝化した活性汚泥は乾燥・加温してもアンモニア臭は発生しなかったと記憶しています。しかし、濃縮汚泥等は、乾燥・加温するとアンモニア臭が発生します。ですので、脱臭屋さんのご質問については、期待に応えられませんが、私には元々汚泥に存在していたアンモニア分が乾燥・加温により顕在化したものと思います。乾燥・加温行程もさることながら、アルカリ系薬剤を使用する汚泥処理施設内部では、特に目にしみるほどアンモニア臭がしていたと記憶しています。脱臭屋さんは仕事柄、アンモニアの発生原因を明快にしておきたいとのこと、当方の早とちりで閾値を持ち出して回答がかみ合わなくなったこと、並びに当方の文中で、閾値の高低をうっかり逆に記載したことをお詫びいたします。
なお、乾燥・加温のアンモニアにつきましては、当方でもさらに調べまして何かわかりましたら回答させてください。

回答に対するお礼・補足

ナナ様
非常に興味深いご意見有り難うございます。
確かに新鮮な汚泥ではアンモニアは発生せず,濃縮汚泥の乾燥に顕著にアンモニアが検出される傾向にあります。元々産廃としての汚泥を減容化させる為に濃縮→乾燥工程がありますので,これは致し方ないのですが。
更に「アルカリ系薬剤」と言われれば頷ける要素が多々あります。ともあれ,汚泥に潜在的にアンモニアが含まれているのであれば,もう少し掘下げて考えれば何か手がかりがありそうです。そう簡単にはいかないと思いますが経路を立証し,理論的にある程度詰めれば,理由付けも明確で対策も立てやすいです。
また,何か参考文献等ご存じでしたらご一報下さい。
取り急ぎお礼まで

No.18796 【A-5】

Re:汚泥乾燥排気の共通項

2006-10-03 14:39:42 papa

わずかな滞留時間で生物反応によりアンモニアが発生することはないと考えております。
脱水ケーキを嫌気的にホッパーなどで貯留してもアンモニアが発生することはまずありません。主たる臭気はVFAとイオウ化合物です。
嫌気過程(発酵)で含窒素化合物からアンモニアを生成する菌種もある(酪酸菌など)と記載されている本もありますが、同時に多量、多種類のVFAを生成するのでアンモニア以外の臭気物質対策が必要になります。くさやの干物の臭いはどう考えてもVFAで、アンモニア臭はあまり感じません。
好気過程では高校教科書程度にも記載があるとうり、アミノ酸の脱アミノ化でアンモニアが遊離し、残基は呼吸代謝に組み込まれていきます。コンポスト化は好気過程ですのでC/N比の低い原料からは大量のアンモニアが発生するのは当然です。
乾燥工程では通常は酵素系が失活する程度の温度となっているはずなので生物反応によるものとは思えません。但し、耐熱性のある枯草菌などでは滞留時間があれば乾燥温度でも好気性発酵となる可能性はありますし、SRTの長い活性汚泥には枯草菌がかなり含まれています。
軟骨魚類など窒素代謝がアンモニア排出となっているものがあります。活性汚泥以外にしさや厨芥が混入している性状なら原料由来の可能性もあります。し尿のアンモニア濃度が高いのは、人間の排出した尿素由来と教えていただいたことがあります。
下水の消化汚泥では、そのままだとアンモニア臭はありませんが、消石灰などを添加して加圧脱水するときはアンモニア臭があるので、pHが高くなると溶存状態から揮散してくるものもあります。アルカリ添加で含窒素有機物を加熱すると加水分解でアンモニアを生成する化学反応もあります。(尿素などは加熱するだけでアンモニアが発生します)
ありそうなケースを羅列し、どれが当ってるかはわかりませんが参考までに。

回答に対するお礼・補足

papa様
再びのアドバイス重ねて有り難うございます。
まず,話を整理致しますと,生物反応→アンモニア発生ではなく,生物脱臭でアンモニア除去が出来ないと言う事です。pH,温度,濃度変化にとても有効幅が非常に狭いので。硫黄化合物系の臭気に対応する生物(チオバチルス属)もアンモニア共存下では脱臭装置の生物担持層でのpHの影響を大きく受ける事から,活性が非常に悪い或いは生息環境として不適切である事から,アンモニアに引きずられる形で脱臭性能が発揮させない事が周知の事実であり,アンモニアの存在は生物脱臭を考える上での重要なファクターです。ここで言うアンモニアの存在とは臭うか臭わないかの発生量では無く,臭気強度で言えば4以上位の値です。
しかし,公共事業のいわゆる下水道に分類される水処理施設ではおしゃる通りアンモニアの脱臭を考える必要のある現場は殆どありません。とはいえ千差万別なんで語弊があるかもしれませんが,大方は硫黄化合物主体で十分対応が可能だと私は考えております。設計検討もまず乾式の脱臭装置です。
民間工場の廃水などは水処理からの発生臭も汚泥の乾燥排気も難しいです。特に化学系工場などは複合臭の意味が違うので,検討し甲斐があります。
 コンポストなども家畜糞由来ならばご指摘の通りですが,そうでないケースもあります。
 汲取りをしてきたし尿を受けるピットはアンモニアと表現してしまうのは確かに語弊があり,実はインドール系の臭いもかなりだと思います。でも,ごめんなんさいインドール,スカトール等は窒素化合物であり,アンモニアと一括りにしちゃってます。事実として把握している事は非常にアンモニア濃度が高い傾向である事です。航空機や列車などから抜き取ったブツのピットは結構強烈です。それでもニワトリ系には及びませんが。。。その辺は石黒辰吉先生監修の「防脱臭技術集成」あたりに色々記載されておりますし,実際現場に行くと,帰りはお湯につからないと帰宅できない位たっぷりアンモニア臭が体に染みつきます。
VFAに関してはメタンの基質でもあり,メタン発酵施設や畜産系糞尿の嫌気状態における臭気の代表例とまで言われていますが,家畜の種類によって異なると思います。また食物残渣系の堆肥化はさらに進んで酢酸になったりしている傾向もあったり,一括りには出来ませんよね。あまりお店を広げても仕方ないので論じませんが。
 それと魚介などで悪臭を扱う場合はVFAもそうなんですが,アミン類も結構なもんです。クサヤは知見がありませんが,ある現場では貝殻を2週間ほど熟成したブツの乾燥排気を取扱いましたが,とんでもない濃度のDMA,TMAでした。まあ,支配的な律則因子としては吉草酸系や酪酸系もそれなりに低い閾値を持っているので何とも言えませんが,DMAは別としてもTMAの存在は易水溶性の脂肪酸と比較して臭いとして手強い感触がします。
いずれにせよ,消石灰などを添加して加圧脱水するケースは考えられます。アルカリ添加で含窒素有機物を加熱すると加水分解でアンモニアを生成する化学反応もあるという事象は非常に頷けます。
 汚泥と言っても様々ですが,私が問題意識を持って共通項にしている乾燥設備は全て民間の施設です。ゴミの中間処分施設だったり,食品工場だったり,色々です。
汚泥を濃縮し,消石灰などで減容化を促進させた汚泥を更に乾燥というプロセスが高濃度アンモニア発生の共通項かもしれません。これも全ての乾燥設備という訳ではなくアンモニアが高濃度で発生している事例が多業種にまたがって非常に多いと言う事です。
色々とコメントを頂き,普段偏りがちな見解についても知識を広げる結果になった事感謝しております。
本当にありがとうございます。

No.18814 【A-6】

Re:汚泥乾燥排気の共通項

2006-10-04 18:15:45 イニシャル泥

すいません。A−1ですが、コンポスト化と勘違いしてました。ご指摘いただいた通り、乾燥だけでは微生物の影響をうけませんので、C/N比は関係なかったです。乾燥前の段階で腐敗していれば硫黄系になりますが、乾燥汚泥=アンモニア・アミン臭というイメージは私もあります。濃縮とpHの移動で、アンモニア・アミンが揮散しやすくなるのが原因だと思います。残念ながら汚泥乾燥プロセスでの臭気発生に関する文献等は見たことがありません。コンポストに較べると発生濃度も低く、アンモニア自体の閾値も高いので、あまり問題にされないからではないでしょうか。

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