排ガスのHCl分析(イオンクロマトグラフ)で吸収液に水を使う理由?
登録日: 2019年09月24日 最終回答日:2019年10月03日 大気環境 大気汚染
No.41457 2019-09-24 10:01:50 ZWlf93d 環境補欠
JIS K0107 排ガス中の塩化水素の分析でイオンクロマトグラフ法では吸収液に水を使用することになっています。この理由をご存知の方がおられましたらご教示いただけないでしょうか?
公定法が指定されている場合に吸収液に水を使用していますが、HClが低くCO2が高いガスでは先にCO2が飽和してしまい、吸収液が酸性になるためHClの吸収が悪くない低めにでる可能性があります。そういった目でJISの解説を読むと共同測定実験結果(解説表4)ではHCl濃度が低い発電所や製鉄所(0.2mg/ℓ程度では)吸収液がH2O2と水でかなりのバイアス(×0.6程度)が見られます。
問題がそれが分かっていながらHClの吸収液にH2O2やNaOHが採用されず、水が採用されている理由が分からないのです。ちなみにですが焼却場などの高いHCl(50mg/ℓ程度)では吸収液による差は小さくなります(CO2が入ってくる前にHClが吸収されるため?)
当方分析実務経験がなく、もしかしたら常識なのかもしれませんが何とぞ教示くださいますようお願いいたします。
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No.41470 【A-3】
Re:排ガスのHCl分析(イオンクロマトグラフ)で吸収液に水を使う理由?
2019-10-03 14:16:37 まるに (ZWl992c
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bunsekikagaku/65/11/65_625/_pdf
中和滴定法などの分析法で用いられているHClの吸収液は、NaOH溶液又は硝酸カリウム溶液で、この溶液を用いてイオンクロで分析するには「吸収液の方が溶離液よりも塩類濃度が高いため測定することができない」とありますね。
その他、排ガスの温度や水分(廃棄物焼却炉なら10%以上の場合もありますね)、廃棄物の燃焼に伴い排出される物質も多いと思われるので、吸収液については多面的に考えられていると思います。
なお、誤解の無いようにいいますが「JIS法は排出基準が適用される設備を想定しており、これ以外が正しく測定できるかどうかは考慮されていないということ」というのではなく、大気汚染防止法施行規則で、塩化水素の測定法をJIS K0107としているので、当該JISは、(最低でも)同法での塩化水素測定するにあたっては問題はないと考えた次第です。
回答に対するお礼・補足
まるに様
文献のご紹介をありがとうございました。当方は分析の実務経験がないため大変勉強になります。イオンクロマトグラフの吸収液と溶離液の関係までは考えが至りませんでした。
今回の皆様に教えていただいたおかげでお願いしている測定の理解が一層深まりました。自分自身はサンプリングや分析に対して手を出しているわけではないですが、多面的に検討がなされていることがよくわかりました。重ねてお礼申し上げます。
追伸 お礼のメールが遅れてしまい大変失礼いたしました。
No.41468 【A-2】
Re:排ガスのHCl分析(イオンクロマトグラフ)で吸収液に水を使う理由?
2019-10-02 16:37:26 SSS (ZWlbd9
微量の塩化物イオンをイオンクロマトで測定するということなので、
アルカリ性の吸収液では問題が大きいです。
炭酸ガスが事前に吸着されるとのことですが、
pH値は4.8程度で止まりますし、その後の炭酸ガスは吸収されません。
微量の塩化水素の吸収で炭酸が残っている間はpH値が4.8より下がることがありません。
あくまでもイオンクロマトで分析できる程度の塩化水素の吸収なので問題がないと判断されているのでしょう。
実際は私には経験がありませんが。
回答に対するお礼・補足
SSS様
回答をありがとうございます。塩化物が微量なところでイオンクロマトグラフを使う際は、アルカリ吸収液での問題が出てくるということですね。確かにCO2が溶解しても電離するCO2分が限られているのでpHは4.8程度で留まり、結果としては、むしろ水の方が好ましいということですね。
大変よく理解できました。ありがとうございました。
追伸 ワールドカップ観戦で家を空けており、お礼のメールが遅くなり大変申し訳ありませんでした。
No.41464 【A-1】
Re:排ガスのHCl分析(イオンクロマトグラフ)で吸収液に水を使う理由?
2019-09-27 10:28:29 まるに (ZWl992c
>公定法が指定されている場合に吸収液に水を使用していますが、HClが低くCO2が高いガスでは先にCO2が飽和してしまい、吸収液が酸性になるためHClの吸収が悪くない低めにでる可能性があります。そういった目でJISの解説を読むと共同測定実験結果(解説表4)ではHCl濃度が低い発電所や製鉄所(0.2mg/ℓ程度では)吸収液がH2O2と水でかなりのバイアス(×0.6程度)が見られます。
あくまで想像ですが・・・。
そもそも論としては、大気汚染防止法で塩化水素の排出基準が適用される施設は、同令別表第一でいう「廃棄物焼却炉」「塩素エチレンの製造の用に供する塩素急速冷却施設」等です。これらの施設の排ガスで適切に塩化水素が図ることができればよいわけです。
質問者が例示している発電所(たぶんボイラー)や製鉄所(焼結炉、高炉または金属加熱炉?)は、適用される施設ではありません。よって、「JIS K0107 排ガス中の塩化水素の分析でイオンクロマトグラフ法」では、適用されない施設についての排ガス測定は考慮されていないものと考えます。
回答に対するお礼・補足
まるに様
回答をありがとうございます。
JIS法は排出基準が適用される設備を想定しており、これ以外が正しく測定できるかどうかは考慮されていないということということですね。。その可能性はもちろんあると思われます。
しかしながらJISK0107(2012)の解説(規格原本の31P以降)の2.今回の改正の趣旨に低濃度の塩化物イオンに対応できるようにするためにイオンクロマトが採用されたことや、解説表4-イオンクロマトグラフ法による煙道排ガス中の塩化水素及び硫黄酸化物の分析において低濃度のHClについても共同実験が行われていることを見ると、必ずしも排出基準がある比較的高濃度のHClのみを想定したものではないのではないかとも見えます(共同実験データはむしろ低濃度の方が多いように見えます)。
またCO2吸収によるpH低下懸念であれば吸収液にNaOHを使えば問題ないように思えます(附属書SOXとの同時測定では吸収液にNaOHを使っています。また硝酸銀電極法でもNaOHが吸収液)。それなのになぜわざわざ定量下限が低いイオンクロマトだけが吸収液を水にするように規格本文で規定されている理由がどうしてもわからないのです。
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