ガスクロマトグラフの測定精度、再現性、測定範囲、定量下限値、検出下限値について
登録日: 2011年11月03日 最終回答日:2011年11月28日 エネルギー その他(エネルギー)
No.37623 2011-11-03 08:01:11 ZWl3e3c ken
化学プラントでオンライン測定を行うガスクロマトグラフ(TCD/FID)を使用しています。先日、メーカーエンジニアの方が調整に来られた際に
測定精度、再現性(繰り返し精度)、測定範囲、定量下限値、検出限界を尋ねたところ下記のような回答でした。
測定精度→標準ガスを繰り返し測定した際の変動係数。
再現性→計器とは違い、分析計なのでそのような定義はない。
測定範囲→ダイナミックレンジなのでサンプルにあった濃度で校正する。測定範囲は分からない。標準ガス濃度で1点検量線を立てているが、検量線の直線性が保証されているものではない。
定量下限値→メーカーとして公式なものはない。
検出限界→ノイズと見極められるピークの濃度。
私は下記のように理解しているのですが、メーカーエンジニアの方のご見解が正しいのでしょうか。
測定精度→標準ガス濃度に対する誤差。
再現性→繰り返し測定を行った際のばらつき。
測定範囲→測定精度を満たす測定値の範囲。
定量下限値→測定範囲の下限値。
検出限界→ある1点で測定できる限界値。
絶対検量線である以上、この5項目が不明確では正確な測定は行えないと考えているのですが、どなたか教えて頂けないでしょうか。
No.37722 【A-15】
Re:ガスクロマトグラフの測定精度、再現性、測定範囲、定量下限値、検出下限値について
2011-11-28 21:13:32 筑波山麓 (ZWl7b25
とりあえず、検量線に関することで気づいたことをお知らせします。
『測定精度は高、中、低で確認するのですね』は、検量線の高、中、低での試験の不確かさを見積もるための試験であり、毎回の検量線の評価のためにあるわけではありません。
相関係数の2乗(決定係数と言います)で直線性を確認する場合、検量線の幅(標準液の最小濃度〜最大濃度の大きさ)に注意する必要があります。最大濃度/最小濃度が100倍程度以上に大きい場合、決定係数で判断することは非常に危険になります。米国の試験方法には、最大濃度/最小濃度を10倍程度以下にするように決めた試験方法があるほどです。また、標準液の濃度による重みをつけた決定係数で判断する測定機関もありますが、これはこれでその判断が難しい場合があります。
それは、一般に高濃度であるほど、その希釈率、希釈段階が少なく、不確かさが小さくなる、一方、高濃度の方が決定係数への影響が低濃度より大きくなることによります。
したがって、効果的な管理方法は、
@ 毎回、必ず検量線をプロットし、目視での確認を併用する、
A または、検量線そのものの不確かさを評価する必要があります。
また、検量線の傾き、Y切片も重要な情報です。検量線の傾きが、毎回、大きく相違する、、または通常示す範囲を逸脱してる場合は、試験方法、試験そのものに異常があると考えられます。
Y切片が、毎回、大きく変動する、または通常示す範囲を逸脱してる場合は、試験方法の異常、試験そのものにコンタミがあることが疑われます。
回答に対するお礼・補足
筑波山麓さん、ご回答ありがとうございます。
決定係数で管理する場合の検量線の幅について、大変参考になりました。今後ともご指導のほど、よろしくお願い致します。
No.37709 【A-14】
Re:ガスクロマトグラフの測定精度、再現性、測定範囲、定量下限値、検出下限値について
2011-11-24 22:54:11 筑波山麓 (ZWl7b25
皆さんが親切に回答してくださっているので、補足的に回答させていただきます。字数が限られているので、要約して説明するので、あるいは、ご理解いただけない部分、または誤解が生じるかもしれません。その場合は、また、ご質問ください。
・ 測定精度→標準ガス濃度に対する誤差。
これまで、計測の信頼性の表現として「誤差 (error)」「精度 (accuracy)」などという言葉が用いられてきましたが、分野や国によって、その意味するところや用いられ方が異なっていたため、国際度量衡委員会 (CIPM) の主導で「不確かさ (uncertainty)」という言葉が用いられています。一般に、GCの場合であれば、参照標準ガスなどを繰り返し測定を行い、そのバラツキの程度(ランダム誤差)を求めます。例えば、測定範囲(または検量線)の高、中、低の3ケ所に相当する標準ガスを10回程度測定し、「その標準偏差/平均値×100%」を不確かさとしております。
・再現性→繰り返し測定を行った際のばらつき。
この通りですが、再現性には、試験室間、機器間、測定者間、測定日間など、必要とする各要因ごとの再現性を求めます。
・ 測定範囲→測定精度を満たす測定値の範囲。
要求する不確かさ以下で測定できる範囲を言います。例えば、不確かさ10%以下で測定できる範囲を測定範囲とします。
・定量下限値→測定範囲の下限値。
測定しようとする物質を確実にブランクと識別して定量できる量を定量下限値とします。種々の方法がありますが、すべて統計的な裏付けを持った方法で求めます。例えば、完全に求める物質を含まないもの(Std.0など)を10〜20回程度以上測定し、その平均値+10σを検量線に挿入し、定量下限値とします。
・検出限界→ある1点で測定できる限界値。
測定しようとする物質を確実にブランクと識別して検出できる量を検出限界(検出下限値)とします。種々の方法がありますが、すべて統計的な裏付けを持った方法で求めます。例えば、完全に求める物質を含まないもの(Std.0など)を10〜20回程度以上測定し、その平均値+3σを検量線に挿入し、定量下限値とします。
とりあえず、簡略にご説明いたしました。不明な点があれば、再度、お聞きください。
回答に対するお礼・補足
筑波山麓さん、ご回答ありがとうございます。
測定精度は高、中、低で確認するのですね。相関係数の2乗で直線性を確認した上で、測定精度は1点で確認すれば良いと考えていました。大変参考になりました。今後の計量管理に活かしたいと思います。
No.37707 【A-13】
こんなのはどうですか?
2011-11-23 22:49:55 Lake (ZWla752
http://www.env.go.jp/air/osen/manual1/14.pdf
自治体が大気汚染防止法に基づき大気の常時監視を行う機器の「仕様」です。
対象は大気中の炭化水素(メタンと非メタンを分けて測定)で、測定原理はGC-FIDです。
測定対象がはっきりとしていれば、ガスクロでも仕様を定めることができます。(もっとも、ガスクロの仕様ではなく、「炭化水素自動測定機」としての仕様ですが)
回答に対するお礼・補足
Lakeさん、ありがとうございます。
JISで計測機器の仕様が決まっているってすごいですね。大変参考になりました。
No.37690 【A-12】
Re:ガスクロマトグラフの測定精度、再現性、測定範囲、定量下限値、検出下限値について
2011-11-20 16:28:48 瓶寧 (ZWle255
>測定精度、再現性(繰り返し精度)、測定範囲、定量下限値、検出限界を尋ねたところ下記のような回答でした。
>
>測定精度→標準ガスを繰り返し測定した際の変動係数。
>再現性→計器とは違い、分析計なのでそのような定義はない。
>測定範囲→ダイナミックレンジなのでサンプルにあった濃度で校正する。測定範囲は分からない。標準ガス濃度で1点検量線を立てているが、検量線の直線性が保証されているものではない。
>定量下限値→メーカーとして公式なものはない。
>検出限界→ノイズと見極められるピークの濃度。
>
>私は下記のように理解しているのですが、メーカーエンジニアの方のご見解が正しいのでしょうか。
>
>測定精度→標準ガス濃度に対する誤差。
>再現性→繰り返し測定を行った際のばらつき。
>測定範囲→測定精度を満たす測定値の範囲。
>定量下限値→測定範囲の下限値。
>検出限界→ある1点で測定できる限界値。
>
>絶対検量線である以上、この5項目が不明確では正確な測定は行えないと考えているのですが、どなたか教えて頂けないでしょうか。
まずどの程度の測定値の信頼性が求められているのでしょう。
測定範囲の共通認識が不十分なのでは?メーカーエンジニアさんは一点検量線の不確かさを云っているのではないでしょうか。多分に想定よりかなり低濃度の測定だったのではないでしょうか。それだと0校正点(BL)と校正点一点では十分な信頼性のある直線性が得られないので定量限界、検出限界を試料濃度に即して設定決定しなければならないと思います。オカシナ表現ですが十分な低濃度から、場合によってはS/N比から、若しくはBLレスポンスの標準偏差から定量下限点(検出下限からでも)を求めなくてはならないのでしょう。
回答に対するお礼・補足
ご回答ありがとうございます。
弊社が測定したいオーダーは1ppmです。測定精度CV3%で測定範囲1-10ppmくらいの信頼性があれば良いと考えています。そのくらいであれば、弊社がサンプルを測定したときにCV10%くらいに収まるのではないかと思っています。
瓶寧さんが仰るように、メーカーエンジニアの方は一点検量線の不確かさを言われたと思います。20ppmで校正されていたので、私としては十分に直線性があると思って尋ねたのですが、前述のような回答だったので「ガスクロには本当に測定範囲や再現性(繰り返し性)といった概念は無いの?」と思い質問させて頂きました。
ご回答頂いた多くの方がご自分で設定されているようなので、標準ガスを購入して自分で求めなければならないのかなと感じています。
No.37680 【A-11】
Re:ガスクロマトグラフの測定精度、再現性、測定範囲、定量下限値、検出下限値について
2011-11-18 17:58:40 なり (ZWl8331
ちょっと私の勘違いかも知れませんが、メーカーからは分析装置だけでなく分析法なども導入されているのでしょうか?
メーカーが標準的な分析法を定めているのであれば、定量限界や検出限界を知らないのはあり得ませんが、分析法自体を御社で作っているのであればメーカーに定量限界や検出限界を聞いても応えられるわけはありません。
と言うか、他の項目も「一般的には…」程度でしか応えられない物ばかりです。
夾雑物などによって定量限界や検出限界は変わります。
我々が検出限界を簡単に求める場合は、他の方も仰られておりますが、S/N比が3以上、定量限界はS/N比は10以上です。
また、検量線を作成し、レスポンスの標準偏差をσ、検量線の傾きをSはとした場合に、「3.3σ/S」を検出限界、「10σ/S」を定量限界として、実際にその濃度のサンプルを繰り返し測定いたします。
実際に測定を繰り返し、検出限界の場合は毎回検出されるかを、定量限界の場合は繰り返し測定して得られた真度と精度が許容される範囲かを確認します。
もし実際にどうやっているの?と興味があれば下のPDFファイルを見て貰えれば良いかと。
http://www.pmda.go.jp/ich/q/q2b_97_10_28.pdf
不明な点があれば聞いてください。
まぁ以前、医薬品の「バリデート」について色々と仰っていた方がいらっしゃいましたが、何かの役に立てばと思いましたので。
回答に対するお礼・補足
すいません、2ページ目があることに気付きませんでした。
全体的に、求めていた回答内容で大変参考になりました。ただ、アスベスト分析屋さんからも分析法と測定機器自体の違いを指摘されたのですが、この2つを別々に議論される概念がよく分からないので教えて頂けないでしょうか。GC(ガスクロマトグラフィー)というのが気体と気体を分離する手法で、それにTCDやFIDといった検出器を付けたものが測定機器ですので同じことだと思っています。違うのは、測定するものの共存物質だと思います。
弊社は、1ppmオーダーの無機ガスと炭化水素を測定したいと要望を出し、GC-TCD/FIDが選定されました。メーカーエンジニアの方が調整に来られた際に20ppmの標準ガスで校正されていましたので、直線性、測定範囲を確認したところこのような回答でした。メーカーの標準品を使用していますので当然出てくる仕様だと思っていました。
医薬業界ほど高い計量管理は求められていませんが、教えて頂いた資料も使って勉強したいと思います。
No.37679 【A-10】
Re:ガスクロマトグラフの測定精度、再現性、測定範囲、定量下限値、検出下限値について
2011-11-18 17:52:28 なり (ZWl8331
他業種の話でもお役に立てればと思いましたのでカキコミいたします。
まず、医薬品の分析においては必ずバリデーションと言う物が行われ、その中で特異性・直線性・範囲・真度・精度・検出限界・定量限界・頑健性などを評価いたします。
別にオンラインだからと関係ないと思いますが、
精度については皆さんが既に仰られておりますが、医薬品の場合は併行精度(3濃度で3回または100%濃度で6回繰り返し)、室内再現精度(試験日、試験者、装置等の条件を変えて精度を確認)、室間再現精度(違う場所で同じ試験なを行う場合などで実施)の3種類があります。
通常は繰り返し分析を実施し、標準偏差、相対標準偏差及び標準偏差の信頼区間で評価します。
質問者さんの繰り返し精度と言うのが併行精度で、再現性が室内再現精度や室間再現精度ですね。
これらを考えると「計器とは違い、分析計なのでそのような定義はない」と言う回答はちょっとおかしいですね。
違う日に測定を実施したり、違う条件で行えば十分確認できると思います。
測定範囲については、医薬品の場合はまず直線性を評価し、直線性、真度及び精度が容認できる濃度を範囲として設定します。
ここで直線性の話ですが、「1点検量線を立てているが、検量線の直線性が保証されているものではない」と言うのは機器メーカー的にはそうかと思いますが、例え1点検量線であろうとも直線性はあります。
と言うか直線性が無いような1点検量線であればどうやって濃度を出すのでしょうか??
ダイナミックレンジであろうとなかろうと、直線に乗る範囲は必ずあり、その下限が定量限界であり、定量限界から上が測定範囲になります。
長くなったので続きます。
回答に対するお礼・補足
ご回答ありがとうございます。大変参考になりました。
バリデーションの評価基準はメーカーの仕様値でしょうか。もしそうであれば、私が考えているメンテナンスや測定値の信頼性評価に合致するのですが。
No.37675 【A-9】
Re:ガスクロマトグラフの測定精度、再現性、測定範囲、定量下限値、検出下限値について
2011-11-18 02:50:13 たそがれ (ZWla61d
しかし、メーカーがある条件でこれらの能力を出してくることは多いです。なぜならこれらは機器本来の能力、あるいはその時の状態等にも大きく依存するからです。
同様な条件でこれらが大きく変動しないか、定期的なチェックが必要です。
回答に対するお礼・補足
ご回答ありがとうございます。
これらの仕様は、メーカーが推奨する測定条件下での機器本来の能力を表すものではないでしょうか。これらの仕様を満たすように、定期的に校正を行ったり、カラムの交換時期を判断すると思います。
妨害物質が多いとこれらの仕様を満たせないということは分かるのですが、メーカーの推奨する室温に設置し、推奨するキャリアーガス純度を使用しても、標準ガスを前提としたこれらの仕様は個々の分析条件での特性になるのでしょうか。
No.37674 【A-8】
「ガスクロ」だから・・・
2011-11-17 23:57:11 Lake (ZWla752
それなら、測定下限が○○mg、測定範囲が○○mg〜□g、という仕様を明記できます。
ガスクロの場合、その装置を使って何を測定するのかはユーザーにより様々ですよね。カラムも違えば媒体も違い、測定する物質も違う…
そのような装置の「検出下限」、「測定範囲」って、何を指すのでしょう?
当然、メーカーも様々な条件での検出下限や測定範囲は調べているでしょうが、すべてのユーザーに合うような「仕様」として示せるものではないとおもいます。
A-2のご回答で「極端な例ですが、25ppmの標準ガスを測定して30ppmで再現性が良ければいいとなるのではないかと懸念しています。」とのことですが、それを25ppmに調整するのがメンテナンスであり、測定だと思うのですが…
回答に対するお礼・補足
ご回答ありがとうございます。
GC-MSであれば、いろいろな測定対象があると思いますが、それでも代表的な物質で検出下限や測定範囲は出せるのではないでしょうか。GC-TCDは無機ガスを、GC-FIDは炭化水素を対象としていますので、それらの中から標準物質が決まると思います。基本的に、標準品ではカラムやキャリアガスはメーカーが決定すると思いますから、システムとして仕様がないことに違和感を感じます。メンテナンスをする上でも、それらの仕様を満たすように調整するのではないのでしょうか。例えば、測定精度がCV3%なので24.25〜25.75ppmに調整するというように。
あくまで、メーカーが推奨する測定条件で決められた仕様です。
No.37666 【A-7】
肯定、否定とは違うような
2011-11-14 12:42:06 アスベスト分析屋 (ZWla85f
そもそも根っこからの違いだと思いますよ。
前にも話しましたが、あなたの認識で定量下限値等を決定することが必要です。
回答に対するお礼・補足
いろいろ調べていくうちに、違うメーカーのサイトで丁寧に説明されているものを見つけました。
http://www.chem.agilent.com/Library/technicaloverviews/Public/5989-3423JAJP.pdf
これによると、「感度、直線性、選択性、繰り返し精度が主に注目すべき仕様」であり、「ダイナミックレンジとは検出器が使用できる有効な試料濃度範囲」とあります。「これらの仕様は、同じ検出器タイプの複数の装置からデータを取り、平均値よりも高い値に設定されているためすべての装置で仕様を満足する動作を実現することができる」そうです。あくまで「コンディショニングされたカラムとクリーンガスが備わっている制御された環境で測定されたもの」ですが。
分析計だから、ガスクロだからという理由でこれらの仕様が無くなるということは無いようです。装置の特性として、これらの仕様を出しているメーカーもあるようです。
No.37661 【A-6】
そうすると
2011-11-09 12:46:28 アスベスト分析屋 (ZWla85f
あなたが考えているものは、あなたが回答の返事に書かれた通りあなたが決めることですね。つまり測定条件等はユーザー側が決めることになります。あなたも仰られているように機器によって定量下限値等は変わりますから。
詳細は今まで議論されているので省略します。
回答に対するお礼・補足
測定範囲の無い計測機器というものが初めてなので、メーカー見解を肯定される意見が多いことに驚いています。貴重なご意見ありがとうございました。