脱水汚泥の全量分析
登録日: 2008年11月14日 最終回答日:2008年12月01日 ごみ・リサイクル リサイクル
No.30305 2008-11-14 18:39:23 ZWlbb4 min
大学院で下水汚泥のリサイクルについて研究を行っているの者ですが、全量分析について疑問に思うことがあり、投稿させていただきました。
現在はマイクロ波湿式分解法を用いて全量分析を行っています。しかし、分析結果を見たところ1N塩酸抽出法での分析結果よりも全量濃度の方が低いという結果になり、全量濃度が信用できる値ではないと考えられます。
下水汚泥に対して適切な全量分析があれば教えてください。
よろしくお願い致します。
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No.30309 【A-1】
Re:脱水汚泥の全量分析
2008-11-14 19:41:39 papa (ZWlbd18
具体的にどの元素がどのくらいなのかの情報開示していただくと良いアドバイスが受けられると思います。
回答に対するお礼・補足
返信が遅くなってしまい申し訳ありません。ホウ素についてですが、塩酸抽出で27.5(mg/kg)全量分析で7.56(mg/kg)という結果となりました。全量の分解条件が適切ではなかった可能性もあり検討中です。
No.30315 【A-2】
Re:脱水汚泥の全量分析
2008-11-14 23:22:51 たそがれ (ZWla61d
A前処理にはどんな酸を添加しましたか。
B分析機器は何ですか。
C酸抽出と全量分析の値はどのくらいだったのですか。
回答に対するお礼・補足
@分析対象元素にきましては、B,Al,Cr,Mn,Fe,Ni,Se,As,Mo,Pbです。
A前処理には試料0.5gに硝酸5mL,超純水5mLを添加しました。
B分析機器はICP質量分析器を用いました。
C濃度差の大きいもので(Fe)酸抽出30000ppm、全量分析7000ppmほどでした。
よろしくお願いいたします。
No.30321 【A-3】
Re:脱水汚泥の全量分析
2008-11-15 23:39:47 火鼠 (ZWl8329
> 現在はマイクロ波湿式分解法を用いて全量分析を行っています。しかし、分析結果を見たところ1N塩酸抽出法での分析結果よりも全量濃度の方が低いという結果になり、全量濃度が信用できる値ではないと考えられます。
> 下水汚泥に対して適切な全量分析があれば教えてください。
> よろしくお願い致します。
院という処は、どんなとこ?考えるところではないのですか?(信用できる値ではないと考えられる。)何故?信用できないと考える。。。
なら考えれば?マイクロウエーブ分解
使用している酸のぐあいでせんさ万別です。どんな金属が、おかしいのか?Hgだったら?ガス抜け?Asだったら?還元抜け?Snは?Crなんか溶けないこともありますよ。
汚泥の分析なら、他のマトリクスもあるのでは?分析機器の選定の間違いとか。分析範囲の選定ミスとか。ましてや、塩酸抽出液をそのまま機器にかけたりされてないでしょうね?
基本的に。汚泥の全量分析って無いのではないのではないでしょうか?
汚泥って、性質がありすぎるので、これで、全溶解できますって方法まずないとおもいますけど。
回答に対するお礼・補足
分析ではICP−MSを使用していますが、塩酸抽出液をそのまま分析していることはありません。確かに分析機器の選定の間違いとか、分析範囲の選定ミスとかというのも考えられるのでその部分については検討を行っています。
全量分析についてはいろいろ調べてはみたのですが、見つかりませんでした。まだまだ勉強不足な事ばかりで課題も多いので頑張っていきたいと思います。
ご指摘ありがとうございました。
No.30401 【A-4】
Re:脱水汚泥の全量分析
2008-11-22 21:33:32 たそがれ (ZWla61d
試料の採取量から前処理方法の選定、そして機器の選定からその条件設定に至るまで極端な話、元素ごとに異なる場合もあります。操作を1サイクル見ればそこそこわかることでもこの紙面でのやり取りで確認するのは本当に難しいのです。分析を専門にしていない方に細かいことを言っても理解していただけるか、また総論ばかりでは何も進まないですし・・・
今回は、全量分析を目指すのか、というお話だけにします。
全量分析とは文字通り目的元素の全含有量を出してしまうという手法ですが、硝酸のみの添加ではどんなに理想的に分解されたとしても全量分析にはなりません。
もともと、スラグや鉱石の成分割合を調べる場合によく用いますが、通常の酸分解ではケイ酸塩からの溶出が不十分であるため、開放系ではフッ化水素酸によるシリカの追い出し、あるいはアルカリ融解でシリカと切り離す手法を用います。
マイクロウェーブの場合は少量のフッ化水素酸を一緒に加えるのが通例のようですが実際は厄介なのです。
分解液中のフッ化水素酸をあとからしっかり除いておかないと機器のガラスで構成されている部分が侵食されてしまいます。
文字数の都合でA-5に続く
No.30402 【A-5】
Re:脱水汚泥の全量分析
2008-11-22 22:03:45 たそがれ (ZWla61d
燃えがら等は通常の熱酸分解と全量分解の値が大きく異なるようですが、下水汚泥でしたら元素にもよりますが、一般に熱酸分解の値は全量分解の値の90〜100%近いということが知られています。
そういった意味から下水汚泥で全量分析をやるということは稀です。食品の含有試験もこのようなやり方です。ただし全量分析値という表現は使えません。硝酸による密閉系加圧分解等の表現になります。
まずはこの辺を理解してほしいのです。
尚、NaやKといったアルカリ金属の場合、水抽出、うすい酸抽出が酸分解の値とほぼ一致する、ということがしばしばありますが、FeやBの値が分析誤差や多少のロスで逆転することはまずないでしょう。
時間がとれたらまた回答します。
回答に対するお礼・補足
ご返事が遅くなりまして大変申し訳ありませんでした。
お忙しい中ご丁寧な回答ありがとうございました。現在研究室の教授とも分析の検討している最中です。またお聞きすることがあるかと思いますがよろしくお願い致します。
No.30472 【A-6】
Re:脱水汚泥の全量分析
2008-12-01 23:03:04 たそがれ (ZWla61d
熱酸分解で前処理すると仮定して基本的な注意事項をまとめてみましたので検討材料に加えてください。
試料の前処理について
マイクロウェーブによる分解ですが、有機試料はひとつのセルに乾物換算値で0.3 gくらいでないと苦しいです。取り過ぎではないですか。それからどんなに分解されてもケイ酸塩の沈殿が出ますので定容後、ろ過が必要です。
Crについて他の方から低値の可能性、という考察がありましたが、確かに鉱石、スラグ、燃えがら等、酸化物の形態になっているものは熱酸ではあまり溶けないといわれています。しかし、有機試料を湿式分解したものではそのような傾向はあまりない、と私は考えます。
Moは硝酸酸性では沈澱すると文献レベルでは言われています。(私の経験ではその限りでないのですが) 分解時の硝酸をほとんどとばして塩酸酸性で機器にかける必要があります。
機器の選定について
大変厄介です。
水素化物発生装置を備えた原子吸光、ICP発光分光分析計等を保有していますでしょうか。
B Al Cr Mn Fe Ni As Mo Pb :
上記は最近のコリジョンリアクションモードのない通常の四重極マスでも何とか分析できます。
一つ目の注意事項ですが、ICP-MSはマトリックス(目的物質以外の成分)濃度が高い場合、目的成分のイオン強度が著しく低下してしまいます。したがって飲料水のようなきれいな試料以外は必ず、内標準物質で補正が必要です。(マトリックス干渉)
紙面の都合でA-7に続く
No.30473 【A-7】
Re:脱水汚泥の全量分析
2008-12-01 23:58:29 たそがれ (ZWla61d
FeはArOと、SeはArArとピークが重なってしまいますが、ともにキャリヤーガスや空気からできるものです。標準試料も同じですので一応測れますが高いバックグラウンドはバラツキも大きいため、低濃度の測定ができないということになります。Feは干渉を考えたら、ICP発光やフレーム原子吸光の方がましです。Seは積分時間を長くとる等の調整が必要です。もしかしたらだめかもしれません。一般的には水素化物発生原子吸光で行います。
AsはArClとのわずかな質量差を区別できませんので、塩酸なんかが残っているといくらでも検出されてしまいますよ。これも塩酸抽出の値と逆転したりするひとつの要素です。他の元素でも同重体分子イオンを拾わないようなるべく複数の質量数で確認する必要があります。(スペクトル干渉)
Asの場合、水素化物発生原子吸光との比較でしかこの手の干渉の有無は確認できません。
本来、B Al Cr Mn Fe あたりはそこそこ含まれていますのでICP発光が有利だと思います。ただしCd Pb Niは微量元素ですので塩をカットしながら濃縮できるキレート抽出が必要です。
以上、散文になってしまいましたが、元素によっては依頼分析に頼る、というのも選択肢のひとつではないでしょうか。(余計なことを書いてしまいました。)
尚、特別な問題がなければお礼は必要ありません。
追記 12/2
下水汚泥は前処理において全分解と通常の熱酸分解での溶出率があまり変わらないであろうと記しましたが、汚泥を焼いたもの(焼成汚泥肥料として利用されています)は元素によってかなり差が出るであろうと予測されます。
また、参考資料についてですが、日本分析化学会の会誌である「分析化学」の2008年8月号で「誘導結合プラズマ質量分析法及び誘導結合プラズマ発光分析法による下水汚泥の多元素同時定量」という論文が投稿されています。かなり今回の件に合致していますのでぜひ入手してください。
回答に対するお礼・補足
返信が遅くなってしまって申し訳ありません。
教えてもらった論文大変参考になりました。
本当にありがとうございます。
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