一般財団法人環境イノベーション情報機構
世界資源研究所、劣化した土地の回復への投資拡大への道を提示
【水・土壌環境 その他(水・土壌環境)】 【掲載日】2018.01.12 【情報源】研究機関/2017.12.19 発表
世界資源研究所(WRI)は、グローバル・ランドスケープ・フォーラム2017で発表した新たな報告書「Roots of Prosperity(繁栄の根源)」で、劣化した土地を回復させる投資の必要性とその方法について報告した。現在、土地の劣化によって世界が被る損失は年間6兆3000億ドルを上回るという。これは2016年の世界GDPの8.3%に相当する。森林や土地の資源に頼る多くの人々には死活問題である。劣化した土地を回復させることは経済にも環境にも有益で、森林再生に投じる1ドルが、最大30ドルの経済的利益を生むという研究もある。しかし現状の投資は必要額に遠く及ばない。たとえば、2016年の政府気候資金1410億ドルのうち、土地利用分野に充てられたのは2%未満、土地の回復はさらに少なかった。しかし、森林や湿地の保全と再生で生まれる削減効果は、2030年までに必要とされる全削減量の37%になるという報告もあり、排出削減においても土地回復への投資は有効だという。
報告書では土地回復への投資が進まない理由として、環境・社会的利益は市場価値で表されない、気候資金が利用しにくい、土地回復プロジェクトは小規模なものが多く投資対象として魅力不足で投資期間も10〜20年と長い、などを指摘。対策として、リスク低減のため複数の土地回復プロジェクトを組み合わせることや、財政・農業・環境・エネルギーの各省庁の連携強化、一部の農業補助金の廃止、炭素税の実施、税額控除などの民間投資促進策の活用などを挙げている。【世界資源研究所】