一般財団法人環境イノベーション情報機構
ドイツ 交通部門における排出削減対策に関する研究報告書を公表
【大気環境 大気汚染】 【掲載日】2013.05.14 【情報源】ドイツ/2013.04.29 発表
ドイツ連邦環境庁は、研究報告書「交通部門における排出量削減のための非技術的対策の経済的観点」を公表した。これは、交通部門における排出削減のための5つの対策とその経済的影響を調査したもので、国内総生産、雇用、投資への対策の影響と総合的な経済的利点、それぞれの交通機関に対する影響がまとめられている。研究結果では、自動車、バス、鉄道、自転車の利用組み合わせの促進、交通流制御の強化、自転車交通の拡張の必要性が強調され、さらに持続可能なモビリティは環境や気候に利があるだけでなく、経済力や雇用にも効果があることを示しており、また定期的な徒歩や自転車利用、公共交通機関の利用は、節約にもつながることがまとめられている。概要は次のとおり。●旅客交通におけるCO2排出量の約4分の3が、中小規模の都市とその周辺地域で発生しており特に対策が必要。交通コンセプトが自動車を重点に構成されていることが問題であり、自動車交通により広い面積の土地が必要となっている。そのため、子供や老人といった交通弱者は、日常的に自動車による危機に晒されている。
●モビリティの形態を環境に配慮し、相互に組み合わせるための包括的なアプローチに言及。交通コンセプトの新たな策定において中心的役割を果たすのは自転車交通であるとし、自転車交通の条件を大幅に改善することを求めている。さらに近距離公共交通やカーシェアリング、自転車交通の相互の組み合わせが必要であり、それに適した交通手段の強化と十分な拡張を求めており、これにより排出量の削減だけでなく持続可能なモビリティコンセプトの経済的利点も増加するとしている。
●近距離公共交通機関の拡張はそのもののシェアを増やすだけでなく、自転車交通と徒歩の増加にもつながるとしている。持続可能な交通政策の中心は、自動車やバス、鉄道に対する環境に配慮した価格・料金だとしている。
●研究の結論として、モビリティ体系と交通体系を環境に配慮したものに転換することは、経済的にも成立する。調査対象となったほぼ全ての対策において、国内総生産と雇用はポジティブな発展を示している。
●交通コンセプトにおいて電気自転車の重要度が増しており、研究ではこれを、「気候保全のために自転車交通が持つ可能性」だとしている。電気自転車により、地形上困難な地域における自転車走行を可能にし、これによりドイツ全国における自転車モビリティが実現するとしている。自転車走行と徒歩による健康上の利点は年間一人あたり2000ユーロ。また、公共交通機関が充実していると個人自動車は必要とならず、さらに年間数千ユーロの節約が可能という。自転車交通の促進はCO2排出削減をもたらし、特定の条件のもとでは、ドイツ国内におけるCO2排出削減量は年間400万トンから1350万トンとなるという。【ドイツ連邦環境庁】