一般財団法人環境イノベーション情報機構
日本製鉄、常圧二酸化炭素からプラスチックの直接合成に世界で初めて成功
【エコビジネス 環境技術】 【掲載日】2021.08.23 【情報源】企業/2021.07.27 発表
大阪市立大学人工光合成研究センター 田村正純准教授、東北大学大学院工学研究科応用化学専攻冨重圭一教授、日本製鉄株式会社先端技術研究所 中尾憲治課長らは、脱水剤を用いずに、常圧二酸化炭素とジオールから脂肪族ポリカーボネートジオールの直接合成を行う触媒プロセスの開発に世界で初めて成功し、酸化セリウム触媒を組み合わせることで、高収率かつ高選択率で脂肪族ポリカーボネートジオールを合成できることを学会誌「Green Chemistry」上で発表。ポリカーボネートジオールは、プラスチックに代表されるポリウレタン合成の重要中間体であり、現在、ホスゲンや一酸化炭素を原料にして合成されているが、これら原料は有毒なため、グリーンケミストリーの観点から原料を代替する技術の開発が求められている。代替原料に二酸化炭素を用い、ジオールと反応させてポリカーボネートジオールを合成する手法は、水のみを副生するグリーンな反応系として注目されているものの、高収率を得るには、高圧二酸化炭素や脱水剤を用いる必要があった。この研究で見出した手法はこれら課題を克服するもので、酸化セリウム触媒を用い、ジオールに常圧の二酸化炭素を吹き込むことにより、生成した水を反応系外に除去することが可能になり、目的のポリカーボネートジオールを高選択率かつ高収率で得ることに成功した。
この技術により、添加剤を用いず、常圧の二酸化炭素を化学変換できる新しい触媒プロセスを提供し、同技術は沸点が水の沸点よりも十分高い基質であれば適用可能であると考えられ、リチウムイオンバッテリーの添加剤やポリマー合成用原料として有用な有機カーボネート、カーバメート、尿素などの合成にも展開可能と考えられ、二酸化炭素から様々な化学品合成ルートを確立することで、二酸化炭素の化学固定化に寄与する触媒プロセスになると期待される。
【日本製鉄株式会社】