一般財団法人環境イノベーション情報機構
IHI、大型船舶用の低速エンジンの燃費を改善する可変圧縮比機構を開発、世界初
【大気環境 交通問題】 【掲載日】2017.10.25 【情報源】企業/2017.10.17 発表
IHIは、大型船舶用の低速エンジンの燃費性能を大きく改善する可変圧縮比(VCR)機構を開発した。世界で初めてという。エンジン出力や使用する燃料に応じて最適な圧縮比に調整でき、運航時の燃料費と排ガスの削減を実現する。グループ企業でディーゼルエンジンと関連機器の製造を手掛けるディーゼルユナイテッド(DU)と開発した。圧縮比は、エンジンでピストンによって圧縮されるシリンダー内の最も大きい容積と最も小さい容積の比率を指し、圧縮比が高いほど燃料消費率(燃費)が良くなる。従来のエンジンの圧縮比は構造上固定され、燃費の改善は限定されていた。VCR機構は構造を工夫し、エンジンの出力に合わせた最適な圧縮比に自動で変更できるようにした。
これによって燃費が向上し、年間7000時間運航する大型コンテナ船で年間最大1億円の燃料費が削減できる。CO2排出量は年間8800tの削減が可能になる。船舶用の燃料は燃料成分が細かく規格化されていないため、効率よく燃焼できるよう、成分に応じた異なる圧縮比が必要になる。VCR機構を搭載すると最適な圧縮比でエンジンを運転する。
規制が強化されている排気中の窒素酸化物(NOx)の排出率も、電子制御エンジンとの組み合わせで国際規制値をクリアする。圧縮比を可変にする効果は知られていたが、複雑な構造によるさまざまな制約があり、これまで技術的に開発が難しかった。IHIとDUは実機同様の大型エンジンでの実証試験に成功し、早期の製品化を目指している。
【株式会社IHI】