一般財団法人環境イノベーション情報機構
王子製紙グループ会社、飛散した放射性セシウムを吸着するゼオライト不織布開発
【エネルギー 原子力】 【掲載日】2012.05.10 【情報源】企業/2012.05.07 発表
王子製紙のグループ会社で不織布製造・販売の王子キノクロスは、原子力発電所の事故で飛散した放射性セシウムの吸着材料に使用できる可能性がある、セシウム除染用のゼオライト(沸石)不織布を開発した。評価の結果、効果が認められた。使用が容易でコンパクトにできる利点があり、セシウム汚染水の除染が必要になる場面で活用できるという。ゼオライトはさまざまなイオンを交換・吸着する性質から水質改良材に利用されている。汚染水の処理で放射性セシウムを吸着する研究報告例があることから、王子キノクロスは、原発事故で発生した汚染水の除染への活用が期待できると判断。独自技術で製造したゼオライト不織布が放射性セシウムの吸着性に優れ、除染効果があると考えて開発した。
独自技術は「TDSプロセス」と呼び、繊維などの機能を損なうことなくシートにする不織布の製法。不織布内部に多量のゼオライトを保持し、ゼオライトの機能が最大限に発揮できる。ゼオライトの含有量をコントロールできるうえ、用途に合わせて不織布の表・裏の素材を選択することなどによって柔軟性、強度、耐水性の調整も可能になる。
ゼオライトでの放射性セシウム除染を研究している東北大学大学院の三村均教授に性能評価を依頼したところ、海水、アルカリ性液体、酸性液体の各汚染水からセシウムを吸着できることが分かった。実際の放射性セシウムを使った評価でも吸着性能を確認した。汚染水だけでなく、土壌や樹木も水を介在させて除染できる可能性があり、実用評価を進める。【王子製紙(株)】