No.017
Issued: 2013.05.08
佐渡・トキ・雪割草
- 田部井 淳子(たべい じゅんこ)さん
- 登山家。
1975年、世界最高峰エベレストに登頂(女性世界初)。
1992年、女性世界初の七大陸最高峰登頂者となる。
現在までに61か国の最高峰に登頂。山岳環境保護団体NPO法人日本ヒマラヤン・アドベンチャー・トラスト(HAT-J)所属。
佐渡のNPO法人さど自然保護観察サポート隊主催の講演会に招かれ、久しぶりに佐渡を訪れました。
初めて佐渡の山を登ったのは1960年ですから半世紀も前のことになりますが、その時は知らなかったことが今回たくさんありました。
田んぼの中でエサを食べている「トキ」にも出会いびっくりです。
その昔トキがたくさん生息していた頃は、トキは田んぼを荒らすやっかいものの一つだったのですね。
絶滅しかけた今、野生で子育てするトキの姿を私たちはテレビでドキドキしながら見ていますが、実際に佐渡に来てみたら普通に田んぼでエサをとり、悠々と飛んでいる姿を見ることができ、びっくりです。
広げた羽の裏側は美しい朱色。写真を撮るのは素人の私たちには無理ですが自分の目で見た姿は忘れられないものです。
民家のすぐ後ろの屋敷林の中に巣作りしているのもよくわかります。
やはり実際に来て出会えるのが一番ですね。
もう一つびっくりしたのは「雪割草」の群落です。ちょうど3月中旬すぎでしたが、二ツ亀海岸近くの鷲崎には車道からも見える斜面の土手に色とりどりの雪割草がたくさん咲いています。地元の自然愛好者の方たちが土手の道を整備してくれるので、私たちも安心して歩けます。
この雪割草、一時は盗掘が多かったと聞き、これもびっくり。
自然の中で出会うからこそ美しく、感動も大きいのに、それを根こそぎ持っていってしまうという行為は私には理解できません。
雪割草がなくなってしまうことを心配した花好きの地元の方がそれを種から播いて育て、山に戻すこともしていると聞き、お宅に伺いました。
農作業の合間に……と言っておられましたが、大きいビニールハウスの中は何年もかけて育てた雪割草が所狭しと並んでいました。咲いた花に孫の名前をつけ大事にされていましたが、ピンセットで作業する根気のいる仕事ですね。ほしい方はどうぞお持ち下さい、と分けています。
盗掘防止の一環ですと言っていましたが、小さい命を大切にする優しさには感動です。
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記事・写真:田部井淳子
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