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環境さんぽ道

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様々な分野でご活躍されている方々の環境にまつわるエッセイをご紹介するコーナーです。

No.80

Issued: 2018.08.10

ものさし

堤江実(つつみえみ)さん

堤 江実(つつみえみ)さん
詩人・絵本作家。詩の朗読コンサート、日本語についての講演などで活躍。
詩集「つたえたいことがあります」、絵本「水のミーシャ」他著書多数。

ものさし

どちらが正しいか正しくないか
どちらが善いか悪いか
どちらが優れているか劣っているか

そんなまっすぐなものさしでは
世界を計ることはできません

空のひろさ
空の大きさ
空の深さを計るには

人の美しさ
人のいとしさ
人の尊さを計るには

まあるい愛のものさしが必要です

詩集「つたえたいことがあります」(三五館)

こちらで、堤江実様ご自身による朗読をお聞きいただけます。
詩、朗読:堤 江実 作曲、演奏:小久保 隆(CDアルバム「ありがとう」より。)

 ある朝の新聞で、海岸にうち上げられた鯨のお腹の中に、プラスチックの袋が60枚という記事を読みました。
 かわいそうな鯨!どんなに苦しかったことでしょう。
 クラゲのように、幻想的なすがたでゆらゆら漂っていたのを、何かおいしいものと勘違いしてつい食べてしまったのでしょうか。
 海に捨てられ、海岸に打ち寄せられたレジ袋やペットボトルなどのプラスチックごみは、紫外線で劣化して細かく砕け、微小なマイクロプラスチックとなって、世界中の海を汚染し、生態系への影響は計り知れず、世界的な大問題です。
カナダで6月に開かれたG7では、具体的な目標数値をきめた「海洋プラスチック憲章」がまとまりましたが、またまた、アメリカと日本は署名をしませんでした。
物事を計る、私たちのものさしは、まず何よりも、いのちある人間として、どう生きることができるかを計るものでなければならないのに、経済的利益、効率といった尺度で、世界を図る人がいるということなのでしょう。
 この宇宙に地球が誕生して46億年。そうして、生命が生まれ…。何度もの絶滅を生き延びて、今、私たちホモサピエンスは、ある種の繁栄を謳歌しています。
 でも、隕石の衝突や、地球のプレートの動き、大きな気候変動などによる、これまでの生物の絶滅とはちがって、今、私たちが直面しているのは、ほかならぬ私たちホモサピエンスの創りだすものたちが、自然環境を取り返しのつかないところに追い込んでいるということのようです。
 農薬が世界の飢餓をなくす救世主とばかりにもてはやされたグリーンレボリューション。夢のエネルギーと喧伝された原子力。そして、もっと快適に、便利にと世界中を覆い始めたプラスチック。
 どれも、世界を救い、人類の未来を輝かせると、世界は熱狂しました。
 でも、実は、地球を破壊し、いのちを破壊し、人類の未来を危うくすることがわかってきました。
これまで自然界になかったもの、自然の循環のサイクルを逸脱したものを、人の知性が制御できると、おごり高ぶり、気づけば、いのちの生態系に取返しのつかないダメージを与えています。

 環境問題とは、私たちの生きる上でのものさしのありようなのだということに、真剣に立ち向かわなければならない瀬戸際に私たちは立っているのだという気がします。
 未来は、私たちのものではありません。これから生まれてくる世界中の子どもたちのものです。
 死んだ鯨を思う時、周囲に溢れるプラスチックごみを私はどう考えればいいのかと呆然としてしまいます。

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