No.075
Issued: 2018.03.09
Mt.エベレスト空撮
- 岡内完治(おかうちかんじ)さん
- (株)共立理化学研究所 会長
「誰でもどこでも使える、水質の簡易分析器」の研究・開発、製造・販売に従事。開発した簡易器材を使用して、現地で水質調査、指導…日本各地、中国、タイ、台湾、ベトナム、タイなど。
日本化学会会員、日本水環境学会会員、日本分析化学会会員…2011年技術功績賞受賞、大田区異業種交流グループ連絡会「産学連携広場」事務局長
著書:「だれでもできるパックテストで環境測定」…合同出版(株)
趣味:写真撮影…SSP会員、農作業、旅行、その他
世界的に地球温暖化が問題になり、氷河が海に崩れ落ちている瞬間の映像とか、アルプスの氷河が10年でこれほど短くなったとか、いろいろ報道されています。温暖化を表す良い例だと思いますが、自分自身では実際に氷河を見たことはありません。本物を一度は見てみたい、そういう願望を持ったことはありませんか。この願望が思わぬことから実現しましたので、ご報告させて頂きます。
切っ掛けは一冊のヒマラヤ山系の空撮写真集でした。見せてくれたのは撮影した本人、大森弘一郎氏です。私も写真撮影を趣味としておりますので、画像の壮大さ、そして鮮明さにも驚かされました。つい「こんな所に行って見たいですね〜」とつぶやいたところ、「一緒に行きますか」の言葉に、反射的に「行きたい!」と言ってしまったのです。
それから1ヶ月、「岡内さん、4月に決まったから一緒に行きませんか」と言われ、ホントに行くことになったのです。夢が実現できそうな、出発まで1ヶ月前でした。
それから準備に追われていましたが、「チャーターした飛行機の窓が開けられるかが問題」とか。エエッ!窓を開ける?車ではないのに。考えてみれば写真は窓越しでは撮れません。操縦席の窓は開けられるのですが。
それからいろいろ準備して、ネパールのヒマラヤの入り口、ルクラ空港に着きました。到着後、すぐチャーター機の点検。写真撮影の目的を伝えて交渉の末、窓は開けられないがドアは開けてもいいこのこと。上昇中と両側同時には開けないようと注意がありました。
翌日快晴、朝6時に空港へ。搭乗前にパラシュート用のワイヤーハーネスを体に取り付けられ、席に座ってからもシートベルトだけではなく、機体本体のフックにも固定されました。酸素供給のマスクを着け、緊張の頂点です。下り坂の滑走路を一気に加速、崖から飛び降りるような飛行場です。やがて陽が昇り、山々からは光芒が差し、さらに上昇…。そしてドア開けOKが出たのです。ノブのロックを外し、ドアを開ける。冷たい風と轟音、つま先から地上までは3000m位の落差。しかし、全く恐怖感はありません。あまりの荘厳さと、美しさで白い神々の世界に飛び込んだ感じで、寒さも、騒音も、気圧差も全く感じません。しばし、呆然とした後、その後は夢中でシャッターを切り始めました。最高高度8000mで飛行機のドアを開けての撮影。気温は-30℃。少し落ち着いてきて、じっくりと山肌を見ればいずれも岩石、それも横に一直線の断層があるとか、紙を皺にしたような褶曲の層があり、地球活動の激動が至る所で見て取れ、その時の地震はどれほどだったのだろうと思ってしまいます。とても人智の及ぶところではないことを感じます。
翌日、前日のフライトを修正して再度、挑戦です。昨日はエベレストの南側を何度も旋回したのですが、この飛行機は高翼機のため、エベレストに近づきすぎると翼が邪魔をして頂上が見えない。パイロットに撮影の時には紐を引くから、その時は右の翼を上げてくれ…。経験がなければそんなこと指示できません。そのままでは旋回してしまうので5秒間だけ。そうして写したエベレストの写真です。
2時間フライトを2日間、満喫しました。翌日は朝から雨。ラッキーだったのです。帰りには高山病になり、さらにお腹も下って、一時はどうなるかと思いました。
カトマンズの病院で点滴を受けることになりましたが貴重な体験は全てを良し、として帰途につきました。
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(記事・図版:岡内完治)
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