一般財団法人 環境イノベーション情報機構

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環境さんぽ道

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様々な分野でご活躍されている方々の環境にまつわるエッセイをご紹介するコーナーです。

No.033

Issued: 2014.09.08

環境問題の根っこに切り込む!

枝廣淳子(えだひろじゅんこ)さん

枝廣淳子(えだひろじゅんこ)さん
 環境ジャーナリスト・翻訳家・幸せ経済社会研究所所長
『不都合な真実』(アル・ゴア氏著)の翻訳をはじめ、環境問題に関する講演や執筆、企業コンサルティング、異業種勉強会等を通じて「伝えること」でうねりを広げつつ、変化を創り、広げるしくみづくりを研究。社会のさまざまなセクターによる「つながり」と「対話」で、しなやかに強く、幸せな未来の共創をめざす。

 2011年1月、「あらゆる環境問題の根源・原動力である「本丸」にいよいよ切り込みます」と宣言して、「幸せ経済社会研究所」を設立し、活動を始めました。

2011年3月に開催した「幸せ経済社会研究所」設立シンポジウムより 2011年3月に開催した「幸せ経済社会研究所」設立シンポジウムより

2011年3月に開催した「幸せ経済社会研究所」設立シンポジウムより


 地球温暖化も生物多様性の減少も、問題の「症状」のひとつです。こうした多くの問題を引き起こしているのは、有限の地球のうえで、無限の経済成長を求める構造ではないか、という問題意識です。
 これまで、世界の大部分では、経済成長はなくてはならないものだと(無意識・意識的に)考えられてきました。しかし、温暖化をはじめとする環境問題の影響が明らかになるにつれ、“経済成長”について問い直す必要があります。
 しかし一方で、現在の社会や経済の構造が“成長”を基盤としているかぎり、現状の構造のまま、経済成長をやめることは、社会が不安定になるという側面もあります。

 「現在の経済・社会システムの中では経済成長を続けないと雇用や生活が不安定になってしまう」一方、「地球の資源やエネルギー、CO2吸収源などの限界を考えれば、永遠に経済成長を続けることは不可能である」という、「経済成長のジレンマ」です。
 この課題は、この数年、サルコジ仏大統領の諮問によりGDPが経済指標として適切であるかを問い直す委員会の報告が出され、英国政府の持続可能な社会委員会からも「成長なき繁栄」レポートなどが出されるなど、政治的にも大きく取り上げられるようになってきました。研究者の間でも、「GDP以外の指標づくり」や「脱経済成長」(de-growth)の研究が盛んに行われるようになっています。
 「社会や経済を不安定にすることなく、どう地球の限界と折り合いをつけ、真に幸せな社会を築いていくか」「社会の真の進歩や幸せを何によって測るのか」は、今後の政府、自治体、企業をはじめとするあらゆる組織、そして私たち一人ひとりにとって避けることのできない課題です。
 幸せ経済社会研究所は、このチャレンジに正面から向き合いたいと、勉強会・調査研究・情報発信・世論形成・対話・世界の動きとのネットワークづくりといった活動を展開してきました。毎月読書会形式の勉強会を開催していますので、よろしければぜひどうぞ。

幸せ経済社会研究会 勉強会より 幸せ経済社会研究会 勉強会より

幸せ経済社会研究会 勉強会より


 最近では、パタゴニアの協力を得て、「経済成長についての7つの質問」を100人にインタビューするというプロジェクトを展開しています。温暖化科学者、経済学者、哲学者、一般の方など、いま20人ぐらいのインタビューがアップされています。経済と経済成長について考えていく、さまざまなヒントをいただくことができ、いろいろと考えさせられます。

パタゴニアさんとの共同サイト「レスポンシブル・エコノミーを考える」

パタゴニアさんとの共同サイト「レスポンシブル・エコノミーを考える」

経済成長について100人にインタビューを展開中!

経済成長について100人にインタビューを展開中!


ハーマン・デイリー氏にインタビュー

ハーマン・デイリー氏にインタビュー

旭硝子財団さんと「定常経済を考える」サイトを立ち上げました

旭硝子財団さんと「定常経済を考える」サイトを立ち上げました

 「有限の地球と経済の折り合いをどうつけたら良いのか?」という難題に対する、ひとつの答えとして、「定常経済」という考え方があるのをご存じでしたか? 定常経済とは「経済成長を目標としない経済」、つまり「活発な経済活動が繰り広げられているものの、その規模自体は拡大していかない経済」のことです。世界銀行のシニア・エコノミストを務めたハーマン・デイリー氏が主唱・展開しています。
 この春、幸せ研の連続勉強会でハーマン・デイリー氏の「定常経済」についてみんなで勉強し、4月にはデイリーさんのお宅にお邪魔してインタビューさせていただきました。

 そのハーマン・デイリーさんが今年のブループラネット賞を受賞されました。よい機会なので、ぜひ日本で「定常経済」についての考え方を多くの方々に知ってほしい、考えてほしいと思い、ブループラネット賞を主宰する旭硝子財団の協力を得て、「定常経済を考える」というウェブコーナーを立ち上げました。

 そして、ハーマン・デイリー氏ブループラネット賞受賞を記念して、「定常経済」をテーマとした懸賞論文も募集しています!(懸賞金額30万円)
 多くの研究者、学生・院生、関心ある方々の応募をお待ちしていますので、お知り合いやご関心のありそうな方々・ネットワークにぜひお知らせ下さい!
 私はもともとは同時通訳者でした。通訳の仕事の中でも、「これは大事!」と思った環境分野の勉強を始めて、人の話の通訳だけではなく、自分でも講演したり執筆したりするようになり、通訳をやめて、環境問題の分野で活動してきました。
 主に、講演や執筆、メールニュースの発信など、“伝える”活動を続けてきましたが、しばらく前から、“伝える”だけではなく、「これが大事!」と信じる、問題の本丸(だと自分が思っている)部分に切り込んでいくための取り組みもいくつか展開中です。
 今後もどういう形でどういう活動を展開していくことになるのか、自分でもわかりませんが、「これが大事!」ということを追って、できるかぎり進んでいきたいと思っています。
 どこかでお会いする機会があれば、ぜひ声を掛けて下さいね!


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(記事・写真:枝廣淳子)

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