一般財団法人環境イノベーション情報機構

H教授の環境行政時評環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。

No.032

Issued: 2005.09.01

第32講 ミニミニアセスへの挑戦

目次
解散・総選挙
経験的ボランティア考
アスベスト補遺
アセスの課題
アセスと環境配慮
ミニミニアセスへの挑戦前史

解散・総選挙

Aさんセンセイ、ついにまさかの解散総選挙になっちゃいましたねえ。暑い夏が一層暑くなっちゃいます。

H教授うん、いままでの常識ではありえないことが起きちゃったねえ。郵政法案が参院で否決されたからといって衆院を解散したというんだから。

Aさんコイズミさんは信念の人とみるべきなんですか、それとも超ワガママの変人とみるべきなんですか。

H教授うーん、でもそれはどうでもいいことだ。問題は、従来は党内調整が最優先だった自民党内だけではなく、かなりの国民が現時点では支持しているように見えることだ。それがなにを意味しているかを考えるべきだろうな。


Aさんセンセイの評価は?

H教授生臭くなるからここでは遠慮しておこう。興味があれば8月11日のボクのブログでもみてくれ。
ただ、こうした手法がまかり通ったということ自体、日本社会のバブル崩壊以降の政治的・経済的な一種の閉塞感と、それへのいらだちを象徴しているんだろうな。そしてそれまで戦後日本の成長を支え続けてきたある種の日本的なるものは死んだということなんじゃないかな。
自民党はもはや昔の自民党じゃなくなった。野党も...。

Aさんなんだか随分抽象的ですね。ま、これ以上はどうせ編集でカットされちゃうからいいか。
要はコイズミ改革は新たな方向性を打ち出したということですか。

H教授正しいかどうかは別にしてね。だから反対するなら別の方向性、ビジョンと価値観を提示しなければいけないんだけど、よい代替案が出てくるかどうか...。

Aさんま、いずれにせよ、あと半月ですね。
さ、今講は予告どおり31講までの2年半の総括ですか。

H教授うーん、それも選挙結果をみてからにした方がいいだろう。

Aさんなんだ、また延期ですか。

H教授ところでぼちぼち8月も終わりだけど、どこか行ったのか。

Aさん(機嫌悪く)行ってません! こう見えてもアタシャ院生ですからね、図書館に立て篭もりです。

H教授(小さく)またフラれたか。

Aさんほっといてください! それよりセンセイは?


経験的ボランティア考

H教授ゼミ生を何箇所かの実習に行かせているんだけど、それの視察にちょこちょこ行ったくらいかなあ。

Aさんああ、ワタシも学部時代にセンセイに勧められて行きました。楽しかったなあ。もう今年で7年目ですね。どういう意図で始められたんですか。

H教授実習とはいってもこちらで準備したプログラムはなにもない。
環境保全や環境教育の最前線で取り組んでいる組織や人のお手伝いを1週間から10日間するということだ。
そうすることで実際の環境保全や環境教育に外在的にではなく内在的に触れられる貴重なチャンスになるかなと思って、始めたんだ。
ゼミ独自のインターンシップというか、ボクの人脈をたどっての押しかけボランティアだけど。
今年の場合、5コースを増やして一気に倍増、9コース設定した。ゼミ生25人で延べ250人日だ。

Aさん今もゼミ生たちは喜んで行っているんですか?

H教授うん、それなりに環境マインドを満足させられるし、なにより珍しい体験ができるっていうんで、希望者はいっぱいいるよ。
それも山間僻地ほど人気は高い。交通費の一部をゼミの運営経費から補助しているんだけど、やはり参加者には相当の持ち出しになるから、当初遠方はさけていたんだけど、関係なかったみたいだ。学生って結構カネがあるんだなあと感心した。
おかげでボクは6月、7月と手配師みたいな作業に追われてしまったけど。

Aさん受け入れ先の方はどうなんですか。


H教授安い宿泊施設や食事の提供が受けられるかどうかということと、ボランティアを受け入れて有効に活用したいと思っているかどうかが受け入れの条件になる。組織的に対応してくれるところはいいんだけど、レンジャーのところだと、レンジャー個人の考え方に左右されちゃうし、レンジャーも忙しいからね。
でも、アクティブ・レンジャー制度がスタートしたことだし、現地に配属されたアクティブ・レンジャーが取りまとめ役、つまり、NGOやボランティアのコーディネーターになって、スキルのあるパークボランティアやNGOと、スキルはないけど熱意だけはある学生ボランティアをうまく組み合わせて使ってほしいねえ。
ボクのゼミだけで今夏延べにすりゃあ250人日なんだぜ。全国でシステマチックにやれば、人手不足なんかは一気に解消すると思うけどねえ。

Aさんま、ワタシも一所懸命、海岸のごみ拾いやトイレ掃除をしたおかげで、自分のごみだけは確実に持ち帰るようになりました。

H教授うん、それが一番の教育的効果だし、そういう体験をさせてもらった機関のシンパつくりにもなると思うよ。
阪神淡路大震災や昨年の水害・地震のときもそうだったけど、ボランティアのポテンシャルは随分あるんだ。日本の財政はもうどうしようもないところまで来ているんだけど、一方では行政ニーズは膨れあがるばかり。
その解決のキーになるのがNGOやボランティアとの連携だと思うなあ。


Aさんえー、ご高説はそこまでにして、今はどういうところに出しているんですか。

H教授いろいろだよ。国立環境研究所の地球環境研究センター【1】、環境省では生物多様性センター【2】や何箇所かの自然保護事務所【3】やその出先のレンジャー事務所などだ。それに通勤可能なところでは大阪の財団法人地球環境セン【4】
地球環境研究センターじゃFさんという旧知の研究者が7年間にわたって献身的に実習プログラムを作ってくれているし、多様性センターじゃ多様性祭という一般開放行事を担っている。国立公園じゃレンジャーがからんでいる清掃や野外教室の運営補助など。
新規開設したコースでもお客さん扱いせずにそれなりに有効活用してもらえればいいんだけどねえ。
ユニークなケースとしては、阿蘇国立公園【5】で「阿蘇の草原環境を学ぶツアー」に参加するというのがある。自然保護事務所主催なんだけど、行程のなかには地元農家の指導のもとに採草作業の手伝いなども入ったツアーらしい。
実習=押しかけボランティアは要りませんかと売り込んだら、事務所のほうでこういう企画を立てたから参加しませんかと言ってきたんだ。実習の受け皿として企画してくれたんじゃないかなと感謝してるんだけど。

Aさん中央省庁本省や自治体の環境部局はないんですか。

H教授霞ヶ関の場合、廉価な宿泊施設がないよね。一方、自治体の場合は、守秘義務の点や机の確保などクリアしなければいけない問題がいっぱいある。
まあ、そうしたところはきちんとした機関としての大学のインターンシップ制度に任せておこうということかな。

Aさん問題点は?

H教授受け入れ条件のところでもっとも基本的な点は廉価な宿泊施設があるかどうかだ。それがないと実際に派遣はできない。そういう施設があればいいんだけど、なければないでホテルとかの従業員宿舎の空き部屋を使わせてくれるようにセットしてもらえればいいんだけどねえ。夏休み中だと、そういうところも簡単には見つからないんだ。
食事に関しては休暇村が近いところでは休暇村の従業員食堂を実費で利用させてもらったりしている。
それとこういうボランティアの活用という業務を一部の熱心なレンジャーの余技というか趣味にとどめちゃいけない。きちんとした業務として位置づけ、評価の対象にすることも必要だと思うよ。
あとね、期間も場所によっちゃあ1週間じゃ短いと思う。公共機関は土日が休みだからなんだけど、使いこなす現地リーダーなどがいて、うまくクリアしてくれればもっと長期間、地に足の着いたボランティアができると思う。

Aさんただ事故がこわいですよね。

H教授うん、くれぐれも安全に注意するよう口を酸っぱくしていっているし、全員にボランティア保険はかけているけど、なにかあればボクが責任を背負わなければ仕方がないし、そういう念書を入れているところだってある。

Aさん実習先にセンセイがいく場合の旅費なんかは学校で出してくれるんですか。

H教授いや、全部ポケットマネーだよ。どうも大学というところは教育と研究の二本柱だって言うのは建前だけで、学会旅費とか研究旅費というのはあっても教育指導旅費というのは出してくれない。
ま、ボクの趣味みたいなものだからいいんだけどねえ。

Aさんさ、その話題はこの程度にしておきましょう。


アスベスト補遺

H教授そうそう、前講(「アスベストのすべて」)【6】ではいろいろお手紙をいただいた。好意的なものが多かったけど、なかには不興を買い、ボクの退場勧告をされた方もいた。
それらはいずれまとめて紹介するとして、お二人より事実関係の間違いのご指摘があった。
「廃アスベストは廃棄物処理法の特別管理一般廃棄物【7】ではない」という点と、「ダイオキシンで死者は出ていない」と言ったけどカネミ油症の原因が今ではPCBでなくダイオキシンだとされているというご指摘だ。
どうもご指摘ありがとうございました。いずれも修正しておきました。
それと一通だけ、なんともやるせないお便りをいただいたので紹介しておこう。固有名詞は伏せるよ。


「祈る 健闘! 実は義兄が×年×月に亡くなった。本日、なんと腹膜腫瘍という診断書をみた。昭和30年からアスベストを吸入する環境にあった。小職も昭和40年から少なくも6年はアスベストの環境で仕事をした。今年で40年になる。検査を申請する。ちなみに義兄も小職も○○工業(株)で仕事をした。義兄は同居の義父が△△工場の製造部、小職はアスベストのバイヤーと生産管理で合計6年△△工場に勤務した。親戚もかなり心配している。今回の31講は最も身にしみる。新聞にあるように○○労働基準局は「基準以上の職場がある」と公文書に残しているという。個人はどのように対処すべきであろうか。」

Aさんお気の毒ですねえ。新聞では行政の不作為責任だという論調ですけど。

H教授直接の責任は違法行為の有無にかかわらず工場にある。でもそれだけじゃない。行政はなによりも結果責任だから、責任を問われてもしかたがない。
立法、つまり与野党を問わず政治もそうだ。産業界もそうだし、医学界もそうだ。マスコミだって不作為を問われても仕方がないんじゃないだろうか。
責任をとるのは被害者の救済に全力を尽くすしかないねえ。

Aさん同じようなリスクの高い物質でほかにも放置されているものはないでしょうねえ。

H教授いろいろあるよ。代表的なものはクルマにアルコールにタバコだ。いずれもそれによる死者はアスベストの比じゃないだろう。
でもこれらはいずれもリスクが高い一方で、利便性や効用も高いことをみんな知っているし、個人の努力でリスクを大幅に低減することが可能だという点がアスベストと違う。
ま、タバコに関しては副煙流の問題が騒がれ出してからは、公共の場所での禁煙の圧力は強くなったけどね。

Aさん米国じゃ愛煙家がガンになってタバコ会社を裁判所に訴え、勝訴したなんて話がありますね。

H教授自己責任、自己責任と言っている国で、変な話だよねえ。


アセスの課題

H教授ま、それはともかくとして、今日は久々にアセスの話題でいこう。

Aさんえ? なにか大きな動きがありましたっけ。

H教授政府レベルじゃ聞いてないな。ただ、ある自治体で面白い試みを始めようとしているから、その話をしてみよう。
アセスに関しては第2講や17講でも取り上げたけど、日本のアセスの問題点を挙げてごらん。

Aさんひとつはアセスの時期を事業段階でなく、もっと以前の構想段階でもすべきじゃないかという話があります。つまりSEA(戦略的環境アセスメント)ですね。

H教授うん、でSEAというのはまだ決められた形があるわけでなく、一部の自治体レベルで試行錯誤している段階なんだけど、いわゆる公共事業に関しては、施策の事前評価だとか、政策の意思決定プロセスの見直しなどの課題と密接不可分だという話をしたよね。
ほかには?

Aさんやはり現行アセスというのは国が関与する超巨大な公共事業に限定されていますよね。しかもアセスとはいっても、その結果、対象事業そのものの見直しということにはまずならないため、“アワスメント”と揶揄されることもあります。

H教授後者の問題は日本型の密室での事前調整システムの問題で、決して悪いことばかりじゃないんだけど、これから先いつまでもそれで通用するかという問題で、SEAの問題とも通底するね。
ところで超巨大な公共事業っていうとどれくらい?

Aさん鉄道とか道路とかいろいろありますけど、大雑把に面積規模でいうと100haを越すような開発ですね。

H教授うん、だから年に何件も出てこない。それを補完するものとして自治体アセスがある。条例でやるアセスなんだけど、都道府県条例では面積規模でいうと50ha以上というのが一般的だね。ゴルフ場なんかの非公共事業も対象にしている。

Aさん50haというのも結構大きいですね。

H教授うん、ボクもある大きな自治体のアセスの委員をしているんだけど、やはり年に1つ〜2つだね。

Aさんどの程度のアセス調査をやっているんですか。

H教授専門のコンサルタントを使って、最低でも1年以上の調査をやり、おそろしく分厚いアセス書が出てくる。
ボクの経験では出てくる案件はすべて地元調整も終わっていて、基本的にはアワスメント。随分オカネもかけていると思うよ。
とてもスコーピングを生かしたメリハリのあるアセスだとは思えないなあ。

Aさん市町村ではやってないんですか。

H教授やはり条例アセスをやっているところがあるようだけど、都道府県が50ha以上だから市町村じゃ30ha以上というのが常識なんだろうなあ。


アセスと環境配慮

Aさん30haというと500メートル×600メートルですね。それでもやっぱり大きいですね。市町村レベルじゃもっとフレキシブルな対応ができないんですかねえ。
もっと小さい規模のものでもアセスをさせる、その代わりにもっと簡単なアセスでいいというわけにはいかないんですか。だって、件数じゃ小さいものが圧倒的なんでしょう。

H教授うん、それをやろうとしているのが、大阪府の豊中市なんだ。1ha以上のものをアセス対象事業とすることにして、来年3月に条例が施行される。本邦初じゃないかなあ。

Aさんえー、たったの1ha? じゃマンションの建替みたいなものもですか。反発もすごいんじゃないですか。


H教授もちろんゼロから制度設計したわけじゃない。そのずーっと前から伏線というか前史があった。
豊中市では以前から500平方メートル以上、ものによっては1,000平方メートル以上の開発や再開発に際しては、環境配慮指針というのを定めていたんだ。条例に根拠をもたないガイドラインだけどね。
指針では数十にわたる環境配慮項目を定めていて──それも抽象的なものじゃなく、緑被率など定量的な基準も随分入ったものだ──、建築基準法の建築確認などと連動させ、「環境配慮届出書」を出させて、環境配慮項目を守るよう行政指導していたんだ。
もちろんお願いベースで、罰則もなにもないから遵守率も高いものじゃなかったんだけどね。

Aさんでもそれって一種の要綱行政でしょう。市民の権利義務にかかわることを要綱や指導でやるのって、今じゃ批判の対象ですよね。
...あ、そうか、だからそれを条例化しようというんですね。

H教授うん、それと建築確認自体が民間でもできるようになったので、それとの連動での行政指導というのがやりにくくなったということもある。

Aさんでも、それとアセスと関係ないじゃないですか。アセスのほうはどうなっていたんですか。

H教授アセスは環境基本条例上、抽象的にはできることになっていたし、また一種のミニアセスのようなものをさせたこともあったんだけど、具体的な規定が皆無だった。これに関してもなんとかしなきゃいけないという問題意識を環境部局は持っていた。


ミニミニアセスへの挑戦前史

Aさんへえ、それでドッキングさせたってわけですか。具体的にはどうやったんですか。他部局との調整もたいへんだったでしょうに。

H教授ま、それ以前から他部局との関係は「環境配慮届出書」を他法令と連動させるなどしていて良好だったから、初めからオープンにした。
つまり外郭団体というか市のシンクタンクに制度のありかたの検討を委託し、その団体が学識経験者を集めて研究会をつくった。
研究会には幹事メンバーとして市の環境部局のみならず、他関係部局の担当者も必ず出席するとともに、平行して市内部でもその幹事メンバーによる庁内検討会を設置。研究会と庁内検討会が交互に行われ、相互にフィードバックさせるようにした。
だから研究会の議論も理想論や空論に走らず、実行可能性というのを第一義的に考えたし、他部局の担当者も漠然と持っていたアセスへの恐怖心やアレルギーが薄らいでいったんだ。
で、研究会の報告書を2年がかりでまとめ、それを踏まえて市の審議会の答申が出され、環境基本条例の実施条例として「豊中市環境の保全等の推進に関する条例」をこの3月に制定した【8】。環境配慮指針やアセスはその一部だ。

Aさん環境配慮指針も条例に明記したんですね。

H教授うん、そして1,000平方メートル以上のものについて「環境配慮対象事業」として環境配慮指針を遵守するよう努めるものとし、手続き的には従来の環境配慮届出書に代えて「環境配慮申出協議書」を提出させることを条例に明記した。もっとも努力規定だから指針を100%遵守できなくてもしかたがないとしているんだけどね。

Aさんふうん、でも従来は500平方メートル以上のものも一部環境配慮項目のチェックをしていたんですね。じゃあそうした500平方メートル以上1,000平方メートル未満のものはどうなるんですか?


H教授条例化に伴う一種の割り切りで、1,000平方メートル以上ということで統一した。
今後1,000平方メートル未満のものについてチェックはしないけど、環境配慮の必要性、重要性についてこれまで以上に普及啓発に力を入れることで対応することにしたんだ。

Aさんへえ。で、1ha(10,000平方メートル)以上のものをアセス対象にするとしたんですね。でも新たな環境影響があまりないようなマンションの建替までアセス調査をやらせるのって、酷じゃないですか。

H教授そうしたものはコンサルに頼むまでもないごく簡単でカネもかからないアセスとして、アセスをやらせる主眼を先日(2005年7月)改定告示した環境配慮指針の遵守に置いたんだ。
つまり簡単でもアセスをやってもらうことによって環境配慮指針の遵守率をアップさせようというわけだ。
アセスの効能のひとつは自主的な環境配慮の徹底をうながすということで、それに特化したアセスといっていい。

Aさんで、もうスタートしているんですか。

H教授うん、条例自体はこの3月にできたし、7月には新たな環境配慮指針も制定告示された。
ただアセスの具体的なやりかたについてはさらに審議を重ねるとして、アセスのお目付け役として設置した環境保全審査会で議論した。
その結果が「環境影響評価技術指針」として9月に制定告示されることになり、アセスに関しては来3月から施行ということになった。


ミニミニアセスのスタート

Aさんふうん、じゃあもうまもなく決まるんだ。で、そのやり方は?

H教授レベルをI、II、IIIと分けている。5ha未満で土地利用や事業種別から環境影響が極小と思われるもの、例えば市街地のマンション建替などはレベルIとして既存資料のとりまとめなどの最低限の文献調査と環境配慮指針との対応関係を詳細に記述したものがいわゆるアセス書になる。いわばミニミニアセスだね。
それ以外の5ha未満のものはレベルIIとして若干なりとも環境影響が懸念される項目について簡単な現地調査も行ったうえで予測評価を行わせる。ま、こちらのほうはミニアセスってとこかな。
5ha以上のものがレベルIIIになるんだけど、これは事業の実態に即して、スコーピングを徹底させて、項目を限定しての本格アセスをやらせるとした。
もちろんレベルIIIの場合、必要があれば多くの項目を対象にするようなフルアセスに近いものもやらせることもあり得べしなんだけど、豊中市の場合、もうほとんど開発され尽くしているから、まずないだろうということだった。


Aさん公聴会とか縦覧告示とかは?

H教授計画書、準備書、報告書という三段階ロケット方式はアセス法アセスや府条例アセスの方法書、準備書、評価書と同じだけど、途中環境保全審査会のチェックを入れるだけで公聴会規定や縦覧告示はなしでスタートさせることにした。
ほとんどの事業がレベルIかせいぜいIIだろうと予測されたし、他法令での事前調整などをおおむね終え、事業そのものの可否自体が問題にならないものだけがアセスにあがってくるという想定で、自主的な環境配慮の徹底と審査のスピードアップを図ったんだ。

Aさんところで罰則とかはあるんですか。

H教授手続き違反には罰則がかかる。また、内容上では市に勧告権があってそれに従わない場合は公表するとしている。一方、顕彰規定も条例では設けたので、環境配慮やアセスの優等生にはそうした顕彰規定を大いに活用しようということのようだ。

Aさんなるほどねえ。ところでセンセイ、妙に詳しいけどこの件に係わったんですか。

H教授うん、頼まれてアドバイスはいろいろした。
国や府県は規模が大きい分、外部のアドバイスで軌道修正というのはなかなかしないんだけど、市町村になるといろんなアイデアを容れてくれるというのを実感したね。
ま、事務局の熱意と首長の姿勢次第だろうとは思うけど。


Aさんでも豊中市ってスゴイですね。

H教授うん、環境都市戦略ってのをスローガンにしているもんな。

Aさんそうじゃなくて、センセイにアドバイスを求めたことですよ。ものすごい勇気が要ったと思いますよ。それともただ単に無知なだけだったのか。

H教授う、うるさい。やはり行政経験というのを重視したんだろう。

Aさんえ? それがダメだったから大学に転身せざるをえなかったんじゃないですか。

H教授ふん、キミも早く院から転身を図ったら?

注釈

【1】国立環境研究所 地球環境研究センター
【2】環境省生物多様性センター
【3】自然保護事務所
【4】財団法人地球環境センター
【5】阿蘇国立公園
【6】「アスベストのすべて」
【7】特別管理一般廃棄物
【8】豊中市環境の保全等の推進に関する条例

(2005年8月21日執筆 同月末日編集了)
★本講の見解は環境省およびEICの公的見解とは一切関係ありません。