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H教授の環境行政時評環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。

No.016

Issued: 2004.05.06

第16講 環境ホルモンのいま

目次
自己責任論とエリート
冷房は街を暖めるか―再説
BSEと鶏インフルエンザ雑感2
環境ホルモンのいま

自己責任論とエリート

Aさんセンセイ、イラク情勢がますます混沌としてきましたね。
ま、人質が無事解放されてよかったですけど。

H教授その人質についてだけど、行くべきじゃなかっただとか、救出の費用は自己負担すべきだとかいうバッシングが「自己責任論」という形で姦しいね。キミ、どう思う。


Aさんうーん、なんか、おかしいような、でも一理あるような気がしないこともなくもないことも...。よく、わかんない。センセイ、どう思われるんですか。

H教授キミ、エリートってなんだと思う?

Aさんは、なんですか、いきなり。えーと高学歴とか選良ですか。階層で言えば指導階層。

H教授ぜんぜんちがう。エリートはもともとラテン語で「神に選ばれしもの」ということなんだ。
それが意味するものは自分の利害得失と関係なく「自分以外の人や物事のために命を捨てられる人」という意味なんだ。

Aさんへえ、でもラテン語知らないセンセイが言っても説得力ないなあ。

H教授昔仕えたI先生に教えてもらったんだ。で、I先生は、いまの日本では政治家も官僚も経営者にもエリートがほとんどいない、そしてエリートなき社会や国は衰亡すると嘆いておられる。もちろん、ブレヒトをもじって「エリートのいない国家は不幸だが、エリートを必要とする国家はもっと不幸だ」って言い方もできるかも知れないけど。

Aさんそれがどうかしたんですか。

H教授人質になった3人、あるいはその後の2人。かれらはいずれも危険を承知で、支援活動をしようとしたり、官製報道に出てこない真実を探り、それを訴えようとした。そういう意味ではかれらこそエリートあるいはその卵じゃないか。

Aさんそれはそうかもしれないけど、そのおかげで沢山の費用がかかったし、多くの人に迷惑をかけたんじゃないですか?

H教授日本の若者のなかにそういう人たちがいるってことを国際的に知らしめた。そのことのメリットの方がはるかに大きいよ。
本来かれらの活動方向に敵対的なはずのパウエル国務長官ですら「よりよい目的のため、みずから危険を冒した日本人たちがいたことを私はうれしく思う」って言い、日本の人々は誇りに思うべきだって語ってるよ。かれの方がよほど日本のトップよりわかってるよ。


Aさんうーん、じゃ、ワタシはエリートになれそうにないな。センセイもそうでしょ?

H教授だれしもがエリートになれるわけじゃない。ほとんどの人は自分の利害とか安全とかで自分を守ろうとするし、ボクだってそうだ。つまり、99.9%の人は凡人、俗物だ。
だからこそ、せめても足を引っ張るようなことをしちゃいけないというのが、ボクらのような凡人、俗物の矜持ってものなんだ。

Aさんハイ、ハイ。

冷房は街を暖めるか―再説

H教授ところで大学院に入ってどうだ? しっかり勉強してるか?

Aさん専門以外に英語や数学もしっかりやらなくっちゃとがんばってますよ。

H教授お、それはえらいえらい。


Aさんなんせ、指導教員が英語も数学もまるでダメってきてるからたいへんなんですよ。

H教授うるさい。ただなあ、環境問題をやるってのなら高校初級程度の理科や社会は完全にマスターしておかなくちゃだめだぞ。

Aさん馬鹿にしないでください。入試の難関もみごとクリアしたんですよ!

H教授受験科目に理科や社会はあったのか?

Aさんそれはないけれど...。

H教授だから例えば 第13講のヒートアイランドのところで「クーラーなんていうけど、じつは室内の熱を外に出して外を暖めてるんだから、地域にとってはヒーターですもんね」みたいなことを言ったりする。

Aさんえっ、ちがうんですか。

H教授冷房を止めたらどうなる?

Aさんだんだん暑くなり、最後は外気温と一緒になります。

H教授ということは、時間が経つうちに部屋の冷気は外部に出てしまう、つまり結果的には外を冷やすということになる。
部屋の熱気を表に出す際、さらにエネルギーが必要だけど、そのエネルギーは大半は水を蒸発させるためのエネルギー(蒸発潜熱)となり、直接熱として出るのは一部だけ、これを差し引いても冷房は街を冷やすということになる。
こんなことは中学程度の理科をきちんとマスターしていればわかるはずだ。
ま、確かにエアコンの室外機からは、むーとした熱気が漂うから、キミのような錯覚を起しても無理はないけど。

Aさんあのう...、でも...。

H教授なんだ、どうした。

Aさん冷房が街を暖めるといつか授業で言ったのはセンセイですよ。
それに何故、いまごろ言うんですか。


H教授え、そうだっけ? ま、初期のエアコンだったら、冷房効率がよくなかったし、室外に出すエネルギーも顕熱が大半だったろうから、全体として街を暖める効果の方がおおきかったかもしれない。

Aさんだったら、みんながみんな高効率のエアコンを持ってるわけじゃないから、いまでも全体としては暖房効果を持っているかもしれないじゃないですか。大体、センセイがそう言ったのはほんの1、2年前ですよ。街を冷やすって話だって、だれかに教えてもらったんでしょう!

H教授ばれたか、某業界誌にそういうことが書いてあったって話を、さっき言ったI先生の随想【*】で知ったんだ。
でね、先生が言うには、高効率のエアコンだったら街を冷やすという答えで満足しちゃいけないんだって。
使用する電気のおおもとが火力発電や原発なら廃熱が出て、その周辺を暖める。火力発電の場合はCO2も出すので、その温室効果も考えなくちゃいけない。さらに水蒸気が気温に与える影響は非常に複雑でよくわからないところがある。
そうしたことすべてを考え合わせないと、軽々に冷房は街を冷やすなんて結論は出せないそうだ。

Aさんへへ、そうか高校程度の理科社会をマスターしろってのはご自分に言いきかせてたんですね。


BSEと鶏インフルエンザ雑感2

H教授ま、いいじゃないか。
それから第14講でBSEの話をして、そのなかで、羊のヤコブ病の「スクレーピー」はヒトや他の動物には感染しないといったけど、スクレーピーがBSEの源泉だという説は完全に否定されたわけじゃないというお便りをいただいたんで紹介しておこう。
なお、ネットで検索してたら、BSEは肉骨粉を食べさせたからでなく、農薬のせいだという説を唱えている人がいてびっくりした。
マンガンの過剰摂取でプリオンと結合して起こるというんだ。
奇説・珍説の部類かもしれないが、一応報告しておこう。


Aさん鶏インフルエンザの方は?

H教授これもお便りなんだけど、鶏卵が一個10円、物価の優等生なんてこと自体がおかしいと現在の養鶏システムを全否定するようなご意見をいただいた。
その方から教えてもらったHPでは、鶏にしても豚にしてもいろんな病気にかかってあたりまえ。それで死ぬものは死に、抗体を獲得するものは獲得する。一頭がかかれば全滅するような養鶏、養豚というシステムがそもそもおかしい、鶏舎に窓をなくし、徹底消毒するような対策はきわめて不自然で根本から間違ってる って書いてたな。

Aさんセンセイのご意見は?

H教授ま、確かに養鶏場にしても養豚場にしても農業じゃなくて工業だって感じで、不自然きわまりないことは事実だ。
でもねえ、そういう効率性を極限まで追求したからこそ、安価に肉や卵が食べられるんだ。
そのこと自体をネガティブにとらえれば、そういうことになってしまうね。
たしかにこどもの頃、野菜に魚が中心で、肉や卵は毎日食べなかったもんなあ。
ただ、そうした考えは正しいにしても、現時点で一般化するのはやはり非現実的で、一部の物好きにしか受け入れられないだろうな。


Aさんセンセイはその物好きに入るんですか?

H教授観念ではね。
それにエネルギーの効率性から言っても、穀物を飼料にするよりも、直接人間が食べた方がいい。
ただねえ、困ったことにボクは肉も卵も大好きで、毎日でも食べたいんだ。

Aさんしようがないセンセイですねえ。
そういえば、先日農水省が日本が食料輸入をストップしたとき食卓はどうなるかって予測してましたね。
肉や卵は10日にいちどで、夕食のおかずはほとんどなくなって魚一切れだって。牛乳は5日にコップ1杯。穀類は米と芋だけだそうです。


H教授ま、食料自給率アップのキャンペーンだろうけど、わかりやすくていいね。
でも、そうなれば自然とそういう食生活にならざるをえなくなるよ。

Aさんさ、センセイ本論にいきましょう。第12講の「環境省百手観音」で今年度中に環境省がやるってこといっぱい挙げてたでしょう。あれを一個一個片付けていきましょうか。

H教授まだ早いよ。ああいうのはずれこむのがふつうだから、もっと後にしよう。


Aさんセンセイ、さぼってて、その後のフォローしてないのでしょう!
じゃ、今回はなにを?

環境ホルモンのいま

H教授いつかやるって予告してた環境ホルモン論でもどうかな。

Aさんセンセイ、そういえば新聞でもあまり見なくなったですねえ。

H教授ま、たまには出てるけど、ぐっと減ったのは事実だ。


Aさん立花隆先生なんかは地球温暖化など問題ではない、環境ホルモンが人類を滅ぼすなんて、盛んに警鐘を乱打されてましたねえ。

H教授とにかくイジメも学力低下も酒鬼薔薇聖斗も全部環境ホルモンのせいにしていたもんな。
なのに、1、2年で興味をなくしたみたいだね。それがホントだったら、もっとフォローして「環境ホルモンのいま」をみんなに知らせるべきだと思うけど。

Aさんじゃ、それをセンセイがするってわけですね。どうせ受け売りでしょうけど。

H教授ヒトコト多いね、キミは。
じゃ、環境ホルモンの基礎知識編だ。知ってることをいってごらん。

Aさんえーと1996年に出たコルボーンらの「奪われた未来(原題 "Our Stolen Future")」で、環境ホルモンのことが広く知られるようになりました。


H教授その本では「環境ホルモン」というコトバは使われていない。
環境ホルモンというのはたしかNHKの造語じゃなかったかな。
いまでも学界での正式用語は「外因性内分泌攪乱化学物質」で、カタカナでは「エンドクリン」という。
内分泌は、ボクなんかは「ナイブンピツ」と読むんだけど、「ナイブンピ」と読むひともいる。
ついでに言っておくと、攪乱は正しくは「コウラン」だけど、いまではみんな「カクラン」と読むようになってしまった、どうでもいいことだけど。

Aさんほんと、どうでもいいことですよね。

H教授うるさい、はい、つぎ。

Aさん世界各地で野生生物の減少の原因として、乱獲だとか生息地の破壊だとかよくいわれますけど、最大の原因は人為的な化学物質による、性機能異常つまり生殖不能個体が増えたことだという仮説を挙げています。
つまり、妊娠後に一部の化学物質が内分泌系を司るホルモンと間違われてホルモンレセプターが受容してしまうのが原因だというわけですね。

H教授うん、野生生物に関してはかなりの部分正しい。
環境ホルモン作用というのは他にも、ほんもののホルモンをレセプターが受容するのを妨害することも含まれる。


Aさんそれから人間に関しては、そのう...男性のオタマジャクシ...。

H教授はっきりいいたまえ。精子!

Aさん(赤くなって)そうです、精子の数が減り続けていること、精巣ガン、子宮内膜症や尿道下裂などが増えていることを挙げ、それもこうした、いわゆる環境ホルモンが原因ではないかという仮説を発表しました。

H教授その後の検討で、こうした前提となるデータ自体の信憑性が問題になった。確かに精子の数が50年で半減したというデータもあるが、地域によってはそうじゃないデータもあって、精子の数が減ったかどうかも定かでないんだ。
データもばらついている。測定方法自体もむつかしい。何日禁欲期間を置くかだけで、がらっと結果は変わる。
仮に減ったとしても、その原因はいまのところわからないというしかないということで、検証に耐えうる調査を今後立ち上げようということになった。
その他の病例にしても、ほんとに増えたかどうかも定かでない。
生活水準の上昇により医者にかかるひとが増えただけかもしれない。

Aさんそれはともかくとして、この本が大べストセラーになり、ひきつづいてイギリスでも「メス化する自然」という本が出版されてベストセラーになるなど、世界各地で大騒動になりました。日本でも、環境庁、―つまり現・環境省では、SPEED'98【1】という調査プロジェクトを立ち上げ、環境ホルモン作用が疑わしい67物質をリストとして発表するなど、一大ブームになったんですけど、その後、どういうわけかあまり聞かれなくなりました。

H教授ひとつはSPEED'98で優先的に調べられた20種類ほどについての調査結果が逐次発表されたんだけど、一口に言えば、白もしくは白に近い灰色、つまり実験動物に対しては微弱な環境ホルモン作用はあるけど、ヒトには認められなかった。
まあ、こういう結果はいくら環境省が大々的に発表してもマスコミはあまり大きく取り上げないということがあるね。

Aさんじゃ、環境ホルモンは空騒ぎだったと?

H教授いや、そんなことはない。この本の挙げている諸事実は以前から知られていたことが多いんだけど、それを内分泌攪乱物質、つまり環境ホルモンというキーワードで体系付けた仮説として提唱したことに意味があるんだ。そして環境ホルモン作用の潜在的脅威を明らかにした。
ただねえ、環境ホルモン作用の大きいものは、実ははるか以前に対応策がとられていたと考えてもよい。


Aさん例えば?

H教授DDTやそれの分解物であるDDE、PCBやいわゆるダイオキシン。それから人工ホルモン薬のDES。
五大湖の水鳥の性機能異常なんてのは、こうしたものの影響だろうな。
環境ホルモン作用のことを意識していたかどうかはともかくとして、その有害性や遺伝毒性がわかった段階で厳重な規制を行った。
いまではDDTは途上国で一部使われているだけだし、PCBも使用製造禁止だし、DESも使われなくなった。
非意図的にできてしまうダイオキシンも現在では随分と減ってきた。
だから五大湖の水鳥も正常になりつつあるらしい。
あとは、TBTやTPTだね。

AさんTBTとかTPTってなんですか。

H教授船底や魚網に塗られる塗料で、トリブチルスズとかトリフェニルスズとかいう、スズ(錫)を含んだ有機物だ。
貝がつかないように、ごく少量のそうした物質が溶け出すようになっているんだけど、これが原因でイボニシという巻貝のメスに、―インポセックスというんだけど―ちっちゃなオチンチンができてしまい、不妊になることが1970年代末にはわかり、1990年に厳しく規制。
いまではほとんど使われておらず、最近になりイボニシも増えてきたみたいだ。


Aさんでもそれ以外にもいっぱいあるでしょう。
ビスフェノールAだとか、ノニルフェノール、フタル酸エステル...。
だって67も疑わしいのがあるってんだから。

H教授だから、それらの特に懸念された物質を逐次調査して、一部に実験動物に対して微弱な環境ホルモン作用が認められたものの、到底ヒトに影響を与えるレベルじゃないって環境省が逐次調査結果を発表してきただろう。
ボクに言わせると、そうしたものが疑われる最大の原因になったのは、「奪われた未来」で言われた低用量仮説なんだ。

Aさんどういうことなんですか。

H教授いままでの常識では、化学物質でも薬でもそうなんだけど、ある量まではなんともなくて、それ以上からは身体に影響が出てきて、増えるにしたがってその影響は大きくなる。その「ある量」のことを閾値といい、閾値を越してから影響が出始める。その影響が「死」になるような量を致死量という。
また発ガン物質なんかでは、閾値はないとされていて、摂取量や曝露量が増えるにしたがって、発ガンのリスク、つまりガンになる確率が増えていく。
つまりどちらにしたって、量が多いとそれだけ影響が大きくなる。
ところが環境ホルモンはそうじゃないという仮説だ。
ボクはこの本の最大のポイントは、この低用量仮説だと思うよ。

Aさんどういうことですか。

H教授つまり、量が問題ではない。
むしろ、量が多すぎるとホルモンレセプターがほんもののホルモンじゃないと見破ってしまう。
場合によっては、ごく微量の方が影響が大きいかもしれないという仮説だ。
そして量よりも問題は、摂取・暴露の時期だというんだ。
そしてそれを裏付ける実験結果もあるとしたんだ。

Aさんへえ、そりゃ革命的な仮説ですねえ。


H教授その後、多くの科学者が追試をしたけど、ついに肯定的な結果はえられなかった。
つまり低用量仮説は成立しないという認識を多くの科学者が共有するようになるにつれ、環境ホルモン騒動は下火になっていったというのが、ボクの仮説だ。
つまりビスフェノールAにしても何にしても、現在ぐらいの量や濃度なら人間に対する環境ホルモン作用は無視できるといえそうだ。
つまり、やっぱり量や濃度が問題で、多ければそれだけ悪影響があるんだ。

Aさんじゃ、魚がメス化するという話はどうなったんですか。

H教授それは事実みたいだ。そして原因もはっきりしてきた。
じつは「メス化する自然」で、イギリスの河川の一部でコイ科のローチという魚にメス化現象が生じていて、それはノニルフェノールの環境ホルモン作用のせいではないかとして話題を呼んでいたんだ。でもこの件についてはメス化の主たる原因は下水処理場の放流水にあるそうだ。つまり処理水に含まれる女性の尿中の女性ホルモンが主犯で、それ以外のいわゆる環境ホルモンの寄与は無視できるレベルだそうだ。

Aさんえー、おしっこ?

H教授そう、女性ホルモンが分解するにはある程度の時間が必要なんだけど、下水処理場の排水中には未分解の女性のおしっこに起因する女性ホルモンが相当含まれているそうだ。
日本でも多摩川のコイのメス化が問題になったけれど、これも下水処理水が原因だったようだ。つい先日、東京湾の魚類のメス化現象の原因が下水処理水だという記事が出ていたけど、数年前から主犯は女性のオシッコだというのが、定説になっているみたいだ。
これも都市化・人口の増加と集中がもたらした環境問題だね。


Aさんなあるほどねえ。

H教授ただ、メス化しても不妊ではなくメスとしての生殖機能はあるという話を聞いたことがある。もともと遺伝子で性を決定する哺乳動物や鳥類とちがって、魚類の性の決定因子はかなりいい加減で温度なんかでも変わるらしい。
それから環境ホルモン作用を有する天然物質もあって、これのほうが圧倒的に量が多い。
大豆なんかは多いらしいよ。
ま、毎日トーフしか食べないなんて食生活を送るのでない限り、気にする必要はないと思うけど...。

Aさんいままでのセンセイのお話、なんかネタ本があるんでしょう?

H教授変な言い方をするなあ。環境ホルモンについて客観的な事実を知りたければ環境省のHP以外に、最近出された「環境ホルモン」(西川洋三、日本評論社)が参考になるし、安井先生や中西先生のHPも見てみるといい。

Aさんじゃ、そうします。
環境ホルモンに関しては、もうなにも心配することはないと考えていいんですか。

H教授そうも言い切れないと思うよ。
戦線縮小してほかの面に人員や研究費を振り向けることは必要だけど、地道な調査研究はこれからも必要だと思う。
副産物としての貴重な科学的発見もあったようだしね。
とくに動物や生態系への影響なんてのは、これからもきちんと調べる必要がある。
TBTを最初に規制したEPA(米国環境保護局)の責任者が、大騒ぎして膨大な予算を使ってイボニシというただ一種の貝をすくっただけだったと自嘲まじりの述懐をしたそうだけど、人類の叡智をしぼって貝を救ったって、もっと堂々と胸を張ってほしいよ。
中南米なんかでは、現在でもカエルなどの両棲類が種類も数も減少しているという話を聞いたことがあるもんな。
それに合成ホルモンが随分使われてるけど、これの環境影響だって十分に調べられているかどうか…。

Aさん合成ホルモン?

H教授体内で生成される生体ホルモンの補強や代替品として、意図的に合成されるホルモン剤などさ。
たとえば、経口避妊薬のピルだよ。
とりあえず人体には影響はないとされているけど、自然界の生態系に影響を与えないかどうかきちんとこれからも調査していくべきだね。新規化学物質なんかの審査に環境ホルモン作用の有無をきちんとチェックすべきだと思うよ。
それに過去の遺産のPCBや農薬起源のダイオキシンだってきちんと調査し、必要な対策をとらねばならない。
そしてなによりも環境ホルモン作用の有無や大小にかかわらず、人為的な化学物質の自然界への排出はこんごとも最大限の抑制努力が必要だと思うな。

Aさんところでホルモン焼きってホルモンと関係あるんですか?

H教授内臓部分だから「放る(捨てる)もん」といったのが語源だそうだ。

Aさんウッソー(絶句)。


H教授ついでにいえば、レバやタンはわかると思うけど、焼肉のハツは心臓、ハートが語源だ。
そういえば腹減ったなあ。ホルモン焼き食いにいくか。

Aさんイヤ〜! 帰ります!

注釈

【*】I先生の随想
冷房は暖めるのか冷やすのか
【1】SPEED’98
環境ホルモン戦略計画

執筆 平成16年4月21日