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H教授の環境行政時評環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。

No.011

Issued: 2003.12.04

第11講 浄化槽と下水道 −浄化槽法20年

目次
忠臣蔵の季節到来
トピック1 京都議定書を巡るロシアの対応
トピック2 「環境省3Rプロジェクト」―環境役人生態学序説
浄化槽と下水道秘聞

忠臣蔵の季節到来

Aさんセンセイ、いよいよ師走ですねえ。

H教授そう、またくだらない忠臣蔵をTVでやるのかと思うと、うんざりするねえ。

Aさんえー、どうして? 艱難辛苦の末に主君の仇を討つ物語でしょう。なんどみても感動的じゃないですか。


H教授なんで主君の仇なんだ。別に吉良が浅野を殺したわけじゃない。
それどころか、吉良は浅野に殺されかけたんだぜ。
殺し損ねたからといって、その手下が徒党を組んで危うく難を逃れた被害者宅に押し入り殺す物語に拍手喝采なんて、あんまりじゃないか。

Aさんそんな身も蓋もない。全国の忠臣蔵ファンから怒りの手紙が殺到しても知らないですよ! まあ、環境問題と関係のない話はここまでにしましょうよ。


H教授そんなことはない。だいたい、歌舞伎の美化されすぎた話が、さも史実のように定着していること自体がおかしい。
そもそも、吉良は一方的な被害者なのに、ひどすぎると思わないのか。...

Aさんあ、センセイ。センセイの主張は結構ですから、要するにどこがどう環境問題とつながるかを教えて下さい。

H教授...うっ、ここからが佳境に入るんだがなあ。まあいいや。
つまり、なぜこんなに忠臣蔵物語がもてはやされたのかをきちんと見極めることだ。それは世論操作のせいといってもいいんじゃないかな。環境問題だって、マスメディアや官庁情報だけに頼っていると、規制しないでいいものを規制したり、規制しなくちゃいけないものを見逃したりすることもある。情報公開だけではなくて、その情報を自分の健全な市民的常識で判断することが必要なんだ。

Aさんう〜ん、なるほどね。でも、センセイのは「健全」かな? ただ、アマノジャクなだけなんじゃないですか。


H教授うるさい。そんな憎まれ口ばかり聞いているから、キミの就職が一向に決らないんだ。

Aさんあ、もうそれはいいんです。ワタシ、大学院に行くことにしましたから。センセイ、これからもよろしくね(ニッコリ)。

H教授う、うう。ようやく来春、キミの面倒から解放されると思ったのに...。


Aさんへへえ、解放(カイホウ)されなくて残念でした、その代わりにこれからも介抱(カイホウ)よろしく。ね、センセイ。

H教授(あきらめ顔で)わかった、わかった。

トピック1 京都議定書を巡るロシアの対応

Aさんえーと、まずはトピックですね。最初に、12月1日から気候変動枠組条約締約国会議の第9回会合がイタリアのミラノで開催されますね。京都議定書【1】の発効を受けての会合となる見込みが、まだ発効していないどころか、なにやら先行きがあやしくなってきましたねえ。

H教授あとロシア1国で、発効するし、ロシアも批准に前向きな発言していたけど、最近ちょっとおかしくなったよね。プーチン大統領もロシアは北国だから、温暖化した方がいいなんて物騒な冗談を飛ばしていたしねえ。


Aさん結局、どうなるんでしょう。

H教授ロシアは2008〜2012の第一約束期間【2】でも、対'90年比の温室効果ガス排出量は相当程度マイナスになりそうなんだ。ソ連崩壊からの工業生産復興がまだ遅れているから。
で、そのマイナス分は京都メカニズム【3】の排出権取引【4】って奴で、他国、例えば日本に売れることになっている。これを買えば買った国はそれだけ削減したとみなされるからね。
これをホットエアー【5】と言うんだけど、どうも思ったほどは高く売れそうにないんで、ゆさぶりをかけてるんだと思うよ。
そうは言っても、売れなきゃたいへんだから、来年中には批准すると思うんだけど、米国の大統領選がどうなるかを見極めてからということになるかも知れないなあ。

京都議定書の批准国の排出量内訳と、発効のカギを握るロシア

■議定書発効の条件は、
1) 55カ国以上の批准を得ること
2) 附属書I国による1990年当時の総CO2排出量のうち、批准した附属書I国の排出量合計が55%以上を占めること
2つの条件が整い次第、90日以内に発効することとされている。このうち、第1の条件については、すでに120カ国(2003/11現在)が批准しており、問題はない。
一方、第2の条件に関しては、最大排出国であるアメリカ(基準年の排出量の36.1%を占める)が離脱を表明したことで、議定書の発効には17.4%を占めるロシアの動向がカギを握ることとなった。なお、すでに批准している日本、カナダ、EUなどの排出量を足し合わせても44.2%に過ぎない。


Aさんブッシュがこけて米国に京都議定書復帰の動きが出れば、ホットエアーの値が高騰するかもしれないと言うことですね。

H教授ま、そういうことだ。地球環境政策を考えるには、こうした国際的な動向をよくみておかなければならないんだ。そのためにはキミも大学院に行くんなら、英語を日本語と同じぐらいに使いこなすようにならなければだめだぞ。


Aさん(呆れて)Thank you とNice to meet you しか知らないセンセイがよくそんなこと言えますね。

H教授その代わり、関西弁、東京弁だけじゃなくて、岡山弁、飛騨弁、鹿児島弁もなんとかなるぞ。

Aさんバッカバカしい。それ以外になんかトピックはありますか。本論のページ数がなくなっちゃいますから簡便にね。

トピック2 「環境省3Rプロジェクト」―環境役人生態学序説

Aさんほかに何かトピックはありますか。

H教授うん、この10月、環境省のなかで「国民の期待に応えるECO行政!!」を旗印にして20代若手職員を中心に、「環境省を変える若手の会(仮称)」というのが発足した。組織名も活動内容も総称して3Rプロジェクトとしているそうだ。
彼らは環境省の現状・問題点を正確に把握するためにまずアンケートを実施、来年2月を目途に具体的な提言を打ち出すとしている。


Aさんどんなアンケートなんですか。

H教授ま、主として勤務実態だね。それによると、4分の1の職員が24時以降まで残業するなど、4分の3の職員の退庁時刻は20時以降になるそうだ。業務繁忙期には半数の職員の退庁時刻が24時以降になるなど、ほとんどの職員が深夜まで残業ということになっている。

Aさんえー、休まず・遅れず・働かず、じゃないんだ。

H教授あたりまえだよ。公務員とはいったって、その態様は千差万別だけど、休まず、遅れず、働かず、接待漬けで高給取って天下り、の各項目の大半が該当する公務員なんているわけないじゃないか。

Aさんセンセイが現役の頃も残業がすごかったんですか。

H教授そうだよ。霞ヶ関なんて不夜城だったよ。

Aさんじゃ、たっぷり残業手当が出たんでしょう。

H教授なにバカなこと言ってるんだ。残業手当の予算は決っているから、課によって少しづつ配分のやり方はちがうけど、もらう残業手当の3倍とか5倍くらいサービス残業してるんじゃないかな。
大蔵の主計だけが満額取ってたって話もあったけど。

Aさんへえ、いまのセンセイ、夜7時には確実に下校だけどねえ。

H教授へへ、BS放送で「おしん」見なくちゃいけないから。


Aさん気楽なものですねえ。ワタシャ卒論で泣かされてるっていうのに。
でも、そんな忙しいんですか。日本は公務員がいっぱいで、それを削減しなけりゃいけないだとか、民営化推進だとかってよく新聞に出てるじゃないですか。

H教授公務員の数が多いかどうかは国民あたりの公務員数で決る。それで見りゃ、一目瞭然だ。
アメリカに比べれば国家公務員が多すぎる、フランスに比べりゃ地方公務員が多すぎるなどと言われるけど、アメリカは連邦国家だし、フランスは超中央集権国家だから、それはあたりまえで、タメにする議論だ。国家・地方合わせての公務員、いわゆる役人の数でいえば、日本は欧米など諸外国の半分から1/3なんだぜ。

Aさんウッソー!

H教授だから、いわゆる狂牛病でも原発事故でもなんでもそうだけど、なにか問題が起きれば、米国に較べて職員の数が1割以下だとかなんとか言われるんだ。
日本はもともと役人が少なくてすむような社会システムになっていたんだ。談合や天下りがよく批難されるけど、それはこういうシステムと無縁じゃない。
もちろん、公務員が少ないという話とは別に、ろくに働きもしない公務員がいるってのは事実だけどね。

Aさんセンセ、センセイ。どんどん環境問題から外れてしまうんだけど。

H教授そうか、じゃ、話を元に戻そう。「環境省3Rプロジェクト」のアンケートはこういう勤務実態を暴きだしているんだけど、これだけ見ればいままでの組合青年部がやってることとあまり変わらない。
だけど、このアンケートでは残業を不可避にしている要因はなにかとか、仕事内容の満足度とか、現在の環境省は国民からの期待に応えていると思うか という設問をしている。つまり、勤務実態を改善して、豊かなプライベートライフを確保するだけじゃなく、業務効率化によって生み出した時間をよりよい政策を作るための時間に充てようとしているんだ。

Aさんで、アンケート結果は?


H教授仕事の進め方に7割弱の職員が問題があると回答している。つまり、省内手続きの煩雑さだとか、管理職のマネジメント能力のせいでムダな仕事が多いとか、だね。

Aさんセンセイの管理職時代を振り返ると、思い当たることがいっぱいでしょう。

H教授うるさい。そして環境省が国民からの期待に対応しているかどうかでは、ノーと「わからない」がどちらも半数弱で、「応えている」というのは1割弱という結果が出た。

Aさん若手って言ったって、いろんな職場にいろんな人がいるんでしょう。そういう人をちゃんと網羅しているんですか。

H教授そうそう、それを言うのを忘れてた。この若手の集まりは本省も出先も、事務官も技官も、I、II、III種職員も全部含んでいるんだ。
もちろんぼくらの頃も勤務条件の改善みたいな話は全員で組合でやっていたよ。でも、仕事の方向性だとか、自然保護行政の今後のあるべき姿だとか、そういうことに関しては、例えばレンジャーだけが集まって、ああでもない、こうでもないとやったものだけど、それらを全部結集したというのはすばらしいね。
以前のお便りで「今私の心配はむしろ若手官僚にかつての『日本の公害経験』(1991年)をまとめた人たちのような意欲や気概があるのだろうかということです。忙しい仕事に振り回されているだけで、物事の本質を見失っていないだろうかという心配です」(2003/3/7 第2講へのアンケート回答)というのがあったけど、杞憂だったみたいだね。

Aさんところで、いまセンセイがおっしゃったようなことは、どの役所でも共通ですよね。環境省の特殊性ってなにかあるんですか。

H教授そうだね、他省庁からの出向者が多いってことは知ってるよね。他には2点ほど指摘しておこう。
第1点はI種試験合格者、いわゆる広義のキャリアが異常に多い集団であるということだろうな。
通常行政職(行一)ではI種以外の人、いわゆるノンキャリと言われる人たち20人にキャリア1人の割合らしいが、環境省ではほぼ1対1。つまりキャリアといえど泥臭い仕事や地味な作業を山ほどこなさなければならないということだし、またノンキャリもキャリアと1対1で接することが多いから、そういう意味ではノンキャリとの相互理解、親近感は他省より必然的に深いんじゃないかなあ。
お粗末なキャリアよりは優秀なノンキャリの方が昇進が早いという革命的な先例をつくるのに相応しい役所だと思うよ。
第2点は都道府県の環境部局との関係だ。自治体の役人が霞ヶ関に出張する場合、あらかじめアポをとって、国の課長補佐に対しては県の課長、係長に対しては課長補佐が対応、それも県の方は立ったままということが多いと聞くんだけど、環境省では通常アポなしで行っても椅子に座らせてくれるし、県の係長に対して環境省の課長が話することもいくらでもある。まあ、この辺は個人差があるけどね。


Aさんセンセイも県にいたとき、そういう経験があったんですか。

H教授うん、某省にアポなしで行ったら、ひどく冷たかったな。
ま、逆にいうと、環境省は人手が少なく、予算も権限も小さいから、県の環境部局に指示するというより、お願いすることが多く、そういう意味では上下意識よりも仲間意識が強いと思うよ。
この点は地方分権・主権の時代、他省庁もぜひ見習ってほしいね。


Aさんじゃ、ポストもそうすべきですね。国から県に20代の課長が行くなんてことはすべきじゃないですね。

H教授ま、県の場合、結構いろんなしがらみがあって、しがらみがない国の役人が行った方がいいという場合もあるけど、あんまり若いのはどうかと思うな。
ボクは40歳で課長級として行った。他省庁より10歳ぐらい遅かったけど、それでも若すぎるかもしれない。
ま、この辺の役人生態学みたいな話はここまでにして、この話題を終えよう。
最後にこの3Rプロジェクトが来年2月にどういう提言をするかわからないけど、熱いエールを送っておこう。

浄化槽と下水道秘聞

Aさんさ、センセイ。ぼちぼち本論に行かないと。今回は浄化槽法【6】の制定20周年にちなんで、浄化槽【7】と下水道【8】の話題でしたね。

H教授うん、そのためにはまず歴史のおさらいをしておこう。
キミのご両親が子どもの頃は多分汲み取り便所だったはずだ。大の場合、ボチャンと落ちてはねかえりを防ぐため、お尻をひょいとあげなきゃならなかった。下を見れば、蛆虫が蠢いていてね。

Aさんキャー、やめてよセンセイ、気持ち悪いじゃないですか。そんな汚い話はやめてください。

H教授し尿を汚いと思うところからしてそもそも間違っている。欧米では、し尿は汚物として1日も早く系外に─つまり、河川に放流しようとした。それが下水道の起源だ。
日本ではし尿は貴重な資源として近在の農民が買いにきたんだ。それは高度経済成長のまえまで続いた。ボクもかすかに覚えているよ。畑の片隅にはそのし尿を熟成させる「肥え溜め」が必ずあった。だから、日本の河川は欧米と比較にならないほどきれいだったんだ。


Aさんそんなアナクロなこと言ったって...。

H教授ところが進駐軍がそれを不衛生だとして嫌い、また、一方では化学肥料が出現して一変。
かくてし尿は資源から汚物になり、市町村がバキュームカーなどで収集し、し尿処理施設【9】で処理したあと河川に放流したり、未処理のまま直接海の沖合いに投棄(海洋投棄【10】)するようになった。
いまでもごく一部は海洋投棄してるんだぜ。

Aさんまっさかあ。そんな不潔な。

H教授近々禁止になるけどね。でも、貧栄養の沖合いじゃ、漁業にとってよかったのかもしれないよ。
ま、いずれにせよ高度経済成長とともに生活の欧米化が進行し、公共施設などではトイレの水洗化がはじまり、それから各家庭でも水洗化のニーズが急激に高まってきた。それを可能にしたのが下水道だったし、マンションなんかでの大型の合併処理浄化槽【7】だったんだ。
いずれも微生物の働きで有機物を分解する、自然界での浄化作用をより効率的にしたものなんだ。

Aさん合併って何軒もの家庭排水をまとめて処理するからですね。

H教授ブー。それは集合処理【11】という。
合併というのは、し尿と台所排水などの生活雑排水をまとめて処理するものをいうんだ。
こうして昭和33年に下水道法【12】ができ、大都市部を皮切りに自治体による国の補助を受けての下水道整備が本格化したんだ。

下水道普及率の推移
(国交省 都市・地域整備局 下水道部の発表資料より作成)


Aさんでも下水道整備ってオカネと時間がかかりますよね。下水道地域や大型マンションの人はもちろんのこと、それ以外の人たちだって水洗化しているところありますよ。

H教授そういう人たちのために各家庭用のし尿だけを処理するいわゆる小型単独処理浄化槽がすごい勢いで広まっていったんだ。これが昭和40年代から50年代にかけて起こった。

Aさんワタシの生まれるまえだ。


H教授......。
さて一方、昭和30年代から40年代にかけて都市周辺の河川や内海内湾での水質汚濁はひどいものとなっていた。そして40年代半ばにそれへの不満が爆発。これで一気に公害規制が進んだんだ。
例えば、周辺地域で下水道が整備された隅田川なんかは産業排水規制とあいまって、うんときれいになった。だけど、多くの場合、都市周辺の河川や内海内湾の汚濁は必ずしもそうでなかった。

Aさんつまり生活系の負荷、それもし尿以外の生活雑排水の負荷が無視できないほど大きく、しかも、下水道の整備がそれに追いつかなかったんですね。

H教授そう、下水道などの生活排水の合併処理は水洗化が主たる目的だったんだけど、この頃から河川などの水質浄化の決め手として認知されたんだ。そして、各家庭用の小型合併処理浄化槽が開発された。
ところが家庭用の小型浄化槽はじめ、浄化槽ってのはいずれにしても清掃だとか保守点検だとかのきっちりした維持管理が必要なんだ。でも、建築基準法で設置時の性能基準が定めてあるだけで、そうしたソフト面の規制がなかったんだ。
もちろんマンションなどの大型の浄化槽は水質汚濁防止法で規制されていたけど、小型の家庭用のはフリーパス。
これじゃいけないというんで、関係業界が運動し、議員立法で成立したのが浄化槽法なんだ。昭和58年に制定され、60年に施行された。
そして、62年には各家庭用の小型合併処理浄化槽(以下、小型合併と略)に対する国庫補助制度がはじまった。

Aさんえ? 個人に国から補助したんですか?

H教授うん、小型合併は単独浄化槽より高くつく。正確に言うとその差額分の全額を個人に補助しようとする市町村に対して、県と厚生省(現在の所管は環境省)が1/3づつ補助するようにした。
また、それに先立って農村集落などでの農業集落排水処理事業(農排)【13】という集合処理の小型下水道みたいなものに対する農水省補助事業もはじまっていた。この農排も法的には大型の浄化槽ということになる。
つまり昔の役所で言えば建設、厚生、農水3省の競争というか縄張り争いがはじまった。とくに建設と厚生の対抗意識が強かった。


Aさん当時の環境庁の対応はどうだったんですか。

H教授ぼくは当時水質規制課にいたんだけど、環境庁の立場では、下水道でも農排でも小型合併でもなんでもいいから早く家庭雑排水の処理をしてくれの一語に尽きた。

Aさんそりゃ建前はそうでしょうけど...。

H教授建設省に言わせると、小型合併だとか農排は下水道が整備されるまでの「つなぎ」にしかすぎない。21世紀の遅くない時期に下水道の普及率を国民の9割にまで上げると公言していた。いまでもその旗は降ろしていないんじゃないかな。
これに対して厚生省は、小型合併は性能面でも下水道と対等の施設だと主張していた。
一方、建設省は小型合併は維持管理がきちんとできていないことが多いじゃないかと反論してた。

Aさんそうなんですか?

H教授うん、それはそうなんだ。浄化槽法では義務付けてあるけど、実効性のある罰則がなく、実際の法定検査率が低いのは事実。

Aさんじゃ、やっぱり下水道の方がいいのかなあ。

H教授確かに都市部では下水道の方が効率的だよ。
でもねえ、田舎みたいなところじゃ、延々と下水管をはりめぐらさなければいけないから、圧倒的にコストが高くつく。
ウルグアイ・ラウンドで公共投資の大幅増を国際公約にしちゃったから、多くの市町村が下水道に飛びついたんだけど、下水道は金喰い虫で、それで自治体赤字がぐっと膨らんだという話もある。
それに下流でまとめて処理してから放流するわけだから、その間の河川の水量が低下するという問題だってある。
個人的見解だけど、現在の普及率はほぼDID(Densely Inhabited District/人口集中地区)人口に達した【14】んだから、面的整備よりも高度処理【15】したり、合流式【16】の欠陥是正の方に転換すべきじゃないかな。

Aさん高度処理? 合流式?


H教授高度処理は富栄養化対策で窒素やリンなどを処理すること。また、都市部では雨水排除という機能も持たせるため、雨水も一緒に処理することが多く、これを合流式というんだけど、大雨のときは汚水と一緒になって未処理のままオーバーフローしちゃうんだ。

Aさんでも小型合併は維持管理の問題があるんでしょう?

H教授平成6年度から市町村が事業主体になって各家庭に小型合併を設置し、使用料金等を徴収して維持管理も市町村が行うという事業に対する補助制度もスタートした。これがもっともリーズナブルだと思うな。
小型合併の管理者が各家庭だなんて言ったって管理できるわけがなく、清掃業者、保守点検業者任せにしかならないんだから、遅きに失したとさえいえるんじゃないかな。

Aさんところで単独浄化槽というのはどうなったんですか。

H教授うん、これも長い間の懸案だったけど、ようやく平成12年に浄化槽法が改正され、単独浄化槽は原則禁止となった。いままでの単独浄化槽は「みなし浄化槽」ということで、更新の時期が来るまではそのままということになったけど。


Aさんふうん、で、センセイのところはどうなってるんですか。

H教授(小さく)中古住宅で単独浄化槽だった。
でも市役所に聞いたら、下水本管があと100メートルほどのところまで来ていて、1〜2年内に下水道区域になるので、補助制度はないし、二重投資になるのは資源の無駄遣いになるからそのままにしてるんだ。

Aさんでもまだ下水道区域になってないんですね。

H教授一体どうなってるんだろう。まったくお役所仕事というやつは。
(急いで話題を変えるように)それからね、下水道は特別会計で独立採算が原則なんだけど、多くの自治体では赤字になっていて、一般会計から赤字補填してることがよくあるんだ。でも、これなんか、恩恵を蒙らない人々の税金と合わせて補填してるんだからおかしいよね。ましてや小型合併で処理している人の税金を使うなんてとんでもないことだ。
それからせっかく小型合併にしても、何年かして下水道区域になれば下水道への接続義務が生じるんだ。これも二重投資だからやめるべきだよね。


Aさん(聞いてない)ふうん、センセイのところはまだ単独浄化槽なんだ、この環境の時代に。雑排水を垂れ流しているんだ。ふうん。


H教授(消え入るように)だから、てんぷら油なんかはふき取ってるし、味噌汁だと米のとぎ汁だとかそんな濃厚な排水は裏の庭に撒いてるよ。クルマだって7年間いちども洗車してないよ。
そんな目でみるなよ。だって仕方ないじゃないか。

Aさんはいはい。で、浄化槽の方の問題はないんですか。

H教授いっぱいあるよ。まずは窒素、リンも処理できるような技術開発だよね。それからあとは下水道も共通だけど、水洗では大量に水を使うよね。やっぱり、節水型の水洗便所とそれに対応した浄化槽開発が必要じゃないかな。さらには浄化槽排水や下水道排水の中水としての循環・再利用。
それから浄化槽汚泥【17】なんだけど、現在は大半がし尿処理施設や下水に投入され、最終的には脱水・乾燥したあと焼却処理している。これを有機農業【18】、環境保全型農業【19】とリンクさせて、農地還元【20】するシステムづくりだとか、ローカルな循環型社会を考える際に浄化槽抜きでは考えられないね。

Aさんところで浄化槽の主管省庁は厚生省から環境省になりましたよね。建設省、つまり今の国土交通省だとか農水省との関係はどうなんですか。やっぱり縄張り争いみたいなものがあるんですか?

H教授今は3省の連絡会議みたいなのもあるし、昔のようなことはないと思うけど、浜の真砂とお役所の縄張り争いはなんとやらというから、見えないだけであるのかもしれない。ま、いい意味での競争ならいいんじゃないの
それにどれも補助事業なんだから、むしろ受け皿の都道府県の方で政府のタテ割りの弊害をなくすような組織的な措置を取ればいいと思うよ。

Aさんセンセイはそういう意味での縄張り争いに巻き込まれたことはなかったんですか?

H教授昔、ボクも水質規制課時代、よんどころない事情で、汚濁小河川を直接浄化するという補助制度を創設しなければならない羽目にあったことがあったんだけど、これなんてこの3省庁の事業や建設省河川局の事業との隙間事業で競合しかねないものだったね。

Aさんへえ、面白そう。その話をしてくださいよ。


H教授もう時間切れだ。また、こんどね。

Aさんなあんだ、つまんないの。
今度は年明けですね。

H教授そう年内にちゃんと卒論のメドをつけろよ。
じゃ、読者のみなさまも、少し早いけど、よいお年を。


注釈

【1】京都議定書(Kyoto Protocol)
1997年12月京都で開催されたCOP3で採択された気候変動枠組条約の議定書。2003年12月現在で、未発効。日本は1998年4月28日に署名、2002年6月4日に批准。2003年11月現在の批准国数は、120カ国。
先進締約国に対し、2008〜12年の第一約束期間における温室効果ガスの排出を1990年比で、5.2%(日本6%、アメリカ7%、EU8%など)削減することを義務付けている。また、削減数値目標を達成するために、京都メカニズム(柔軟性措置)を導入。京都議定書の発効要件として、55カ国以上の批准、及び締結した附属書I国(先進国等)の1990年における温室効果ガスの排出量(二酸化炭素換算)の合計が全附属書I国の1990年の温室効果ガス総排出量(二酸化炭素換算)の55%以上を占めることを定めている。
The Convention and the Kyoto Protocol(UNFCCC) 英語
京都議定書の概要(環境省地球環境局)
京都議定書の締結及び地球温暖化対策推進法の一部を改正する法律について (環境省地球環境局)
京都議定書の骨子(外務省)
【2】第一約束期間
京都議定書で定められた第一段階の目標期間で2008年から2012年までのこと。
京都議定書では温室効果ガスの削減への取り組みの第一段階として、締約国の温室効果ガス総排出量を1990年から少なくとも5.2%を削減しなければならないと規定されている。
京都議定書の締結の決定に当たって
【3】京都メカニズム(Kyoto Mechanism)
温室効果ガス削減数値目標を達成を容易にするために、京都議定書では、直接的な国内の排出削減以外に共同実施(Joint Implementation: JI、第6条)、クリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism: CDM、第12条)、排出量取引(Emission Trading: ET、第17条)、という3つのメカニズムを導入。さらに森林の吸収量の増大も排出量の削減に算入を認めている。これらを総称して京都メカニズムと呼んでいる。
共同実施と排出量取引は先進締約国間で実施され、コミットメント達成を目的とした国内行動に対して補完的であるべきと要求されている。CDMは先進国の政府や企業が省エネルギープロジェクトなどを途上国で実施することである。この京都メカニズムや、その無制限の適用に関してはNGOやEUからの批判も強い。
「京都メカニズム情報コーナー」(環境省地球環境局)
「京都メカニズムに関する検討会」(環境省地球環境局)
【4】排出権取引(Emissions Trading)
全体の排出量を抑制するために、国や自治体、企業などの排出主体間で排出する権利を決めて割振る排出権制度を導入するケースが増えてきている。このとき、権利を超過して排出する主体が、権利を下回る主体との間でその権利の売買をすることで、全体の排出量をコントロールする仕組みを、排出権取引(制度)という。
二酸化炭素(CO2)など地球温暖化の原因とされるガスに係る排出権や、廃棄物の埋立に関する排出権などの事例が見られる。
京都議定書では、温室効果ガスの排出権取引が第17条として採択された3つのメカニズム(京都メカニズム)のうちのひとつにあげられている。国や企業が温室効果ガスの削減目標を達成するための補完的手段として、先進締約国(Annex B)の温室効果ガス排出削減量が京都議定書の定める所の削減目標値を達成し、更に削減できた場合に、その余剰分を金銭を対価として他国へ売却できる仕組み(または逆の場合には購入する)。イギリスは2002年4月に世界初の国内取引市場を作り、日本も2005年以降に国内市場を作ることが予定されている。
京都メカニズム情報コーナー(環境省地球環境局)
イギリス温室効果ガス排出取引 1年目の成果を発表(EICネット 海外ニュース)
Emissions Trading Schemes(英文)
【5】ホットエアー(Hot Air)
京都議定書で定められた温室効果ガスの削減目標に対し、経済活動の低迷などにより二酸化炭素(CO2)の排出量が大幅に減少していて、相当の余裕をもって目標が達成されることが見込まれる国々(旧ソ連や東欧諸国)の達成余剰分のこと。この余剰分の排出枠が先進国に「排出権取引」を通じて売却され、先進国の実質的な排出削減を阻害することが懸念されている。
なお、英語の"Hot Air"には、熱気、温風、暑気などのほか、くだらない話、ナンセンス、大言壮語、空手形などの意味を持つ。これらの国の余剰分は、自国の努力による削減量ではないため、「空手形」という意味を込めて揶揄され、定着していったという経緯がある。
【6】 浄化槽法(Low for Combine Household Wastewater Treatment Facility)
この法律は、浄化槽の設置、保守点検、清掃及び製造について規制するとともに、浄化槽工事業者の登録制度及び浄化槽清掃業の許可制度を整備し、浄化槽設備士及び浄化槽管理士の資格を定めること等により、浄化槽によるし尿等の適正な処理を図り、生活環境の保全及び公衆衛生の向上に寄与することを目的とする(1983年法律43号)。国土交通省及び環境省所管。 単独処理浄化槽は、汚濁負荷の大きい雑排水を未処理で放流するだけでなく、し尿による汚濁負荷も大きいため、公共用水域の保全に対して大きな弊害となっている。このため、生活排水対策への社会的意識の高まりに対応して、単独処理浄化槽の新設禁止のために浄化槽法を改正し、2001年4月1日より施行している。
浄化槽法 条文(総務省法令データ提供システム)
【7】浄化槽(Household Wastwater Treatment Facilities)
水洗トイレ汚水(し尿)と、台所や風呂、洗濯などの生活雑排水を、微生物の働きにより浄化処理する装置。処理水は終末処理下水道以外に放流される。市町村の設置する「し尿処理施設」は含まない。
具体的には、1戸建ての住宅で利用される家庭用浄化槽から、集合住宅や住宅団地、集落で利用される共同排水処理施設などをさす。
し尿のみを処理する「単独浄化槽」(生活雑排水は未処理で放流)と、生活雑排水もあわせて処理する「合併浄化槽」の2種類があるが、浄化槽法(1983)の改正等によって、単独浄化槽の新設は実質的に禁止されているため、現在では浄化槽といえば合併浄化槽を意味するようになってきている。
下水道と同レベルの浄化能力を持ち、原排水の汚濁物質の9割方は除去される。設置に際しては、国と自治体の補助金交付制度が適用され、個人負担を軽減している。
「浄化槽関連」(環境省廃棄物・リサイクル対策部)
「単独処理浄化槽の新設禁止について」(環境省廃棄物・リサイクル対策部)
【8】下水道(Sewarage)
下水を排除するために設けられる排水管、排水施設、処理施設およびポンプ施設その他の施設の総体を下水道という。日本における近代下水道は、雨水による浸水問題や停滞した汚水による伝染病の発生を防ぐことを目的として明治初期にスタート。1900年「土地の清潔を保持する」ことを目的とした下水道法が制定され、昭和初期から戦後は失業対策、戦災復興事業として整備さた。1958年に新下水道法が制定され、合流式下水道を中心とした都市内の浸水防除、都市における汚水の排除による生活環境の改善を柱とした下水道の整備が本格化した。その後高度経済成長による公害問題の深刻化の中1970年下水道法が改正され、流域別下水道整備総合計画及びその規定が新設され、生活環境の改善、浸水の防除及び公共用水域の水質保全を目的とした現在の下水道の整備目的が確立された。
下水道部(国土交通省 都市・地域整備局)
【9】し尿処理施設
「し尿」とは、人体から排泄される「屎(し)」と「尿」の混合物のことで、排出量は平均1リットル/人・日、「し」と「尿」の比率は概ね1:9。広義には、家庭や事務所、公共施設の便所から出る汚水を指し、水洗トイレ排水を含むが、法律では、汲取り作業によって収集・処分しているものだけを指して「し尿」という。汲取りし尿は、一般廃棄物として自治体が収集、運搬、処分をしなければならない。 「し尿処理」は、上記のし尿を処理する施設をさし、すなわち水洗化されていない便所の汲み取り処理のことを意味する。「し尿処理施設」は、そのための施設をいい、市町村が設置するもの。 回収されたし尿は、し尿処理施設で集中処理をした後、下水道へ放流される。放流水は、河川、海域等の富栄養化の要因である窒素、リンの除去及びし尿の色や臭気の除去がされる。
【10】し尿の海洋投棄
海洋汚染防止(1970)法施行令では、し尿・汚泥など海洋還元型廃棄物の投棄について、速やかに拡散するように、少量ずつ航行しながら投棄するように定め、その排出海域について「海流に乗せやすく廃棄物が漂着しない領域基線から50海里以上の海域」と指定されている。
環境省の統計によると、平成12年度中のし尿処理量16,165,032キロリットルのうち615,338キロリットル(約3.8%)が、また浄化槽汚泥処理量14,929,802キロリットルのうち882,753キロリットル(約5.9%)が海洋投棄されている。
なお、海洋汚染防止条約(MARPOL73/78条約)の附属書IV「国際航海に従事する船舶からのふん尿及び汚水の排出に関する規制」が2003年9月27日に発効することを受け、国土交通省では海洋汚染防止法施行令を改正している。
また、環境省はし尿等の海洋投入処分禁止に関して、廃棄物処理法(1970)施行令の一部を改正し、2002年2月から5年以内に全面禁止としている。
海洋汚染防止法施行令(総務省法令データ提供システム)
「海洋汚染防止条約の附属書発効に伴い、海洋汚染防止法施行令が改正」EICネット 国内ニュース(2003.09.05発表)
廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令等の一部を改正する政令について 環境省報道発表(平成14年1月10日)
【11】集合処理
汚水処理方式は、下水道のように複数戸からの汚水を管渠で集約的に処理する「集合処理」と、個々の発生源ごとに(敷地内で)処理した処理水を放流する「個別処理」に大別することができる。前者は下水道や農業集落配水施設による処理が該当し、後者については合併処理浄化槽が該当する。
集合処理・個別処理にはそれぞれ特性があり、果たす役割も異なるため、優劣はつけがたい。地域の実情に応じて適切な方式を選択していくことが求められる。
環境省では、平成14年3月に合併処理浄化槽、下水道、農業集落排水施設の3事業について、建設費用、維持管理費用、施設の使用実績等を鑑み、集合処理と個別処理のエリア分けによる、生活排水処理施設の整備について、経済的効率性の観点からのマニュアルを示している(「生活排水処理施設整備計画策定マニュアル」)。
ここでは、世帯当たりの管渠距離で計算する「家屋間限界距離」という指標を提案し、これによって個別処理と集合処理のエリア分けを検討することを提示している。
生活排水処理施設整備計画策定マニュアルの概要 (環境省廃棄物・リサイクル対策部)
【12】下水道法(Sewerage Law)
旧下水道法(1900)を廃止して、1958年制定。1970年流域別下水道整備総合計画 の項目を追加。流域別下水道整備総合計画の策定に関する事項ならびに公共下水道、流域下水道及び都市下水路の設置、その他の管理の基準等を定めて下水道の整備を図る。これにより都市の健全な発達及び公衆衛生の向上に寄与し、同時に公共用水域の水質の保全に資することが目的。国土交通省所管。特定施設の届出。除害施設の設置。排水基準の遵守等。特定事業場から公共下水道・流域下水道に排除される下水について下水道法施行令の改正を行い、改正された政令は、2001年7月1日から施行される。健康項目の下水排除基準に「ほう素及びその化合物」、「フッ素及びその化合物」「アンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物及び硝酸化合物」が追加指定され水質規制を実施する。
下水道法(総務省法令データ提供システム)
下水道部からのお知らせ(国土交通省 都市・地域整備局)
【13】農業集落排水処理事業(Agricultural Community Effluent Treatment Programs)
農業集落からのし尿、生活雑排水または雨水を処理する施設を整備する事業。農地や農業用排水路に汚れた水が流れ込むのを防ぎ、生活環境を向上させるとともに、窒素、りん等を除去し、公共用水域の水質保全および農業用用排水施設の機能維持または農村の生活環境の改善を図り、生産性の高い農業の実現と活力ある農村社会の形成に資することを事業目的としている。農業集落排水施設は、主として集落を単位とした小規模分散システムであるため、処理水が農業用水などとして集落内で反復利用され、地域の水環境の保全に役立つ。また施設より発生する汚泥についても、緑農地利用、建設資材利用、熱利用等農地還元を通じて資源のリサイクルを図り、土づくりの面から環境保全型農業に資するなど、農業集落排水施設は生態系と調和をとりながら農村環境の保全に適したシステムといえる。
農業集落排水事業への融資
汚水処理施設連携整備事業の認定について
汚水処理施設連携整備事業の実施状況等について
【14】 DID人口と、下水道による処理人口
統計データに基づき、一定の基準によって都市的地域を定めた指標のこと。昭和35年以来、5年おきに実施される国勢調査で得られた結果を用いて算出している。
背景には、昭和28年に施行された町村合併促進法による、いわゆる昭和の大合併が進行し、市区(市部)の領域内には市街地だけでなく、田畑や山林など農村的な要素が組み込まれていったことがある。市部と郡部(町や村)という行政区域が、都市部と農村部の対比として単純に捉えることができなくなったため、都市的地域の人口や面積を示すための新たな指標が必要となってきた。
DIDは、国勢調査の調査区を単位として、(1)人口密度が4,000人/km2以上)、(2)人口5,000人以上 の2つの条件を満たす区域を指す。
DIDは、都市計画や地域開発計画、市街地再開発計画、産業立地計画、交通計画、環境衛生対策、防犯・防災対策 など、各種行政施策や学術研究、また民間の市場調査などに広く活用されている。
平成12年の国勢調査によれば、人口集中地区(DID)の人口は、8,281万人(平成14年版国土交通白書)。一方、平成14年度末の下水処理人口は、約8,257万人(平成12年度は約7,803万人)と、ほぼDID人口に達してきている。
総務省統計局 「論より数字 勘より統計」 人口集中地区
平成14年版国土交通白書
平成14年度末の下水道整備状況について(H15.8.22)
【15】高度処理
富栄養化対策として、窒素やリンを除去する排水処理方法。
現在の標準的な下水処理方法は、有機物(=汚れ)の除去には効果がある一方で、栄養塩類である窒素やリンが十分に除去できない。栄養塩類の流入が増加すると、それを栄養素にして、生物の繁殖が活発になる。この現象を富栄養化といい、藻類等の異常増殖を招き、その結果、水中の酸素消費量が高くなって貧酸素化したり、また藻類が生産する有害物質による魚介類の死滅を引き起こすこともある。水質は累進的に悪化し、透明度が低く、水は悪臭を放つようになる。
現在の標準的な処理方法は、下水に活性汚泥(微生物の塊)を入れて空気を吹き込むことで、下水に含まれる有機物を微生物の力で分解する。分解後は、汚泥を沈殿槽で分離し、処理水は塩素消毒をして、放流する。
高度処理では、酸素条件を変えた反応槽を通すことで、窒素とリンを効率よく除去することができる。下水中のアンモニア性窒素は好気性条件で硝化細菌によって硝酸化され、その後無酸素槽で脱窒細菌の呼吸によって窒素ガスとして大気中に放出される。一方、リンは好気条件で微生物体内に蓄積され、沈殿汚泥といっしょに取り除かれる。
[下水道のお話](横浜市下水道局)
【16】合流式下水道(Combined Sewer System)
汚水と雨水を同一の管路で下水処理場まで排除する下水道を合流式下水道と呼ぶ。合流式では、雨水が洗い流した道路上の汚濁物質も下水処理場で処理できる上、管路が一つで済むため整備コストが安く効率的などの利点がある。東京都や大阪市など早くから下水道事業に着手した自治体では合流式が多い。しかし、雨天時・融雪時にはポンプ場や雨水吐で、一定量を超える汚水が未処理のままで公共用水域に放流され、大腸菌群数増加等の水環境の悪化を招くという問題がある。 国土交通省では合流式下水道の改善に向けた検討を進め、水道の取水や水浴場の上流など対策を急ぐべき水域を明確化し、雨水の流出抑制を進める観点から、都市の舗装を透水性舗装にしたり、再開発時に分流式に変換したり、雨水の貯留や浸透施設を設置する等と共に、雨天時放流水の効率的な消毒技術、処理技術等の技術開発、開発技術の事業への導入を促進すべきとした。
国土交通省都市・地域整備局下水道部
下水道と暮らし(東京都下水道局)
合流式下水道改善事業(北九州市建設局)
【17】汚泥
一般には、水中の浮遊物質が沈殿または浮上して泥状になったものをいい、工場排水、や下水、浄水などの水処理施設の沈殿槽などで水から分離された汚濁物が泥状化したものや、河川や湖沼の水底に沈殿している底質などがある。これらの微細な固形物と水との混合物である汚泥は、もっともありふれた産業廃棄物で、1999年の排出量は、18,700万トン、全産業廃棄物の47%を占めていた。汚泥には、無機汚泥と有機汚泥とがあり、土木工事現場や浄水場、鉱山や金属メッキ工場などから出る廃汚水からは、無機質のみの汚泥が発生する。建設汚泥は、とりわけ含水率が高く取り扱いにくいが、無機汚泥の大部分を占め、年間1,400〜1,500万トンに達する。無機汚泥は固化材を加えて脱水するが、水銀、クロム、ニッケル、亜鉛などの金属を含む無機汚泥は、再利用可能な資源として捉らえ直される気運が生じている。有機汚泥は、生産過程で生じた動植物の残滓や老廃物、家畜排泄物などからなる泥状のものであり、生産工場や動物の飼育場から発生する。し尿処理汚泥は一般廃棄物である。
【18】有機農業(Organic Agriculture)
農薬や化学肥料等に過度に依存した近代農業によって、周囲の環境に悪影響が及ぶだけでなく、農地が本来有する生産力も損なわれることとなったことなどへの反省から、農業の本来の姿に回帰しようとする運動の中で生まれた農業生産方式。農薬や化学肥料を原則的に使用せず、家畜や農作物残さに由来するたい肥の施用等によって土づくりを行い、手作業や天敵の利用、機械除草等によって病害虫管理を行う。消費者の食の安全・安心への要求が高まる中で、2000年には有機農産物の日本農林規格も制定された。
特定非営利法人 日本有機農業研究会
【19】環境保全型農業
一般的には可能な限り環境に負荷を与えない(または少ない)農業、農法のこと。農業の持つ物質循環機能を生かし、土づくり等を通じて化学肥料や農薬の投入を低減し、環境負荷を軽減するよう配慮した持続的な農業生産方式の総称。有機農業や自然農法、代替農業、低投入持続型農業などが含まれるが、化学資材の使用はまったく認めない無農薬・無化学肥料栽培という最も厳格な立場から、多少の使用は認めるという減農薬・減化学肥料という立場まで幅がある。
国では、1999年に持続農業法を制定し、認定農業者に対する農業改良資金の貸付や農業機械の課税に対する特例措置などを設けて支援を行なっている。なお、同法では「持続性の高い農業生産方式」について「土壌の性質に由来する農地の生産力の維持増進その他良好な営農環境の確保に資すると認められる合理的な農業の生産方式」と定義し、具体的には、(1)たい肥などの有機質資材の施用に関する技術で土壌改良効果の高いもの、(2)肥料の施用に関する技術で化学合成肥料の施用を減少させる効果の高いもの、(3)雑草・害虫等の防除に関する技術で化学合成農薬の使用を減少させる効果の高いもの をあげている。
農林水産省環境保全型農業対策室
持続農業法関連法令等(農林水産省環境保全型農業対策室)
【20】農地還元
農地還元

(平成15年11月24日執筆・文:久野武、同月末日編集終了)
(参考:南九研時報22号(平成12年4月)同42号(平成15年12月))