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H教授の環境行政時評環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。

No.006

Issued: 2003.07.03

第6講 半年継続記念 読者の声大特集(付:コーべ空港断章)

目次
読者の声大特集
最近の動向
コーベ空港・断章

読者の声大特集

Aさんセンセイ、今回は第6講ですね。EICネットに登場してもう半年経ったんだ。

H教授そう、キミのようなのを相手によく続いたと自分でも感心しているよ。これもお便りをくださった読者のみなさま方のお陰だよ。おかげで研究する時間が取れなくなった(笑)。

Aさん(ニッコリ)よかったですね、研究しない言い訳ができて。

H教授こらこら、またそういう憎まれ口を。ちょっとは口を慎めよ。こんなお便りがあったぞ。
「これほどぼろくそに言われる教授は信頼できない」(2/28)。

Aさんそのとおりじゃないですか(笑)。

H教授な、なんだと!

Aさんでもほらこんなのもありますよ。
「H(水素)なんて軽いから吹き飛ばせ、がんばれAさん」(5/3)。
「Aさんの、教授を教授と思っていない、生意気ぶり。なかなかですね」(6/6)。
ほかにも「Aさん、がんばって!」(1/17)みたいなお便りが20通程度は来てますよ。そのうちファンクラブでもできるんじゃないかしら、ウフッ。
それにねえ、ワタシって謎の美女みたい。「Mis.A is really existed? If so,make clear her profile some degree,couldn't you」(4/7)だって。

H教授(しみじみと)写真じゃなくてイラストでよかったねえ。


Aさんシッツレイねえ。ジェラシーじゃないですか。そうか、センセイは昔、パーク・レンジャーだったんだよね。ジェラシックパークレンジャー。

H教授なにをわけのわかんないことを言ってるんだ。「Aさんの存在がじゃま」(1/13)ってのもあったぞ。それにぼくだって「H教授とは誰ですか。実在の人ですか」(1/16)みたいなのがいくつもあったよ。

Aさんで、トータルのアンケート結果はどうなんですか?

H教授6月末までの集計では下の表のとおりだ。

  第1講 第2講 第3講 第4講 第5講
アンケート回答数 160 81 79 31 41
Q1. このページは・・・?
 ・いつも楽しみにしている
 ・たまに見ている
 ・はじめて見た
*注1
141
5
14
*注2
42
4
35

40
5
34

21
6
4

24
8
9
Q2. 今回の記事は読みやすいですか?
 ・とても読みやすい
 ・まあまあ読みやすい
 ・読みにくい
 ・非常に読みにくい
 ・どちらともいえない

77
67
10
3
3

43
34
4
0
0

52
23
1
2
1

17
13
0
1
0

24
17
0
0
0
Q3. 今回の内容についてのご感想
 ・目からウロコ!
 ・少し参考になった
 ・新しい発見はない
 ・つまらない
 ・どちらともいえない

27
112
12
3
6

23
53
2
0
3

23
45
10
1
0

8
22
0
1
0

8
30
2
0
1
ご意見・ご感想(件数) 70 42 38 10 16
ヒット件数(2月末以降の累積) 約7千+ 約1万2千件 約1万2千件 約8千件 約6千件

注1:第1講のQ1の質問項目は、上から
 ・おもしろい、大いに期待している
 ・あまり期待できそうにない
 ・まだわからない
に該当。

注2:第2講のQ1の質問項目も同様に、上から
 ・前回から、心待ちにしていた
 ・たまには読んでみようかな
 ・今回はじめて読んだが今後も期待したい
に該当。

注3:第1講については、公開直後(1月9日)から2月末までのデータが欠損している(下のグラフの点線部分は推測による)。なお、各講当りのヒット件数の推移は、ページの総計を週ごとに区切って集計したもの。


ちなみに、下のグラフは、過去各講の累積ヒット件数の推移を表わしたものだ。
一部にデータの欠損があって、完璧ではないが、概ね毎回1万ヒットほどを記録しているらしい。公開と同時にドーッと閲覧件数が伸びるなど、毎回心待ちにしていただいているようすが伺えてうれしい限りだよ。



Aさんすっごーい。大好評じゃないですか。


H教授でもなあ、一目見てつまんないと思う人はふつうアンケートに答えたり、便りを寄越したりはしないよ。それだのに「主旨が読みにくい、長すぎる、それでどうした。...(中略)...大学と学生の会話は程度が低く、他の内容にしたらどうか」(1/17)なんてのもあるし。


Aさんヒッドーイ、センセイのレベルに合わせてあげただけなのに。

H教授それはこっちのセリフだ。他にも「教授もAさんも漫画的にパターン化された馬鹿丸出し」(1/17)というのもあったし...(落ち込む)。

Aさんでも暖かい励ましもいっぱいあったからいいじゃないですか。外国からのお便りもありましたよ。英語だから読めなかったかもしれないけど、好評でしたよ。

H教授馬鹿にするな! あの程度の英語は読めるぞ。(小さく)ちょっと自信はないけど...。

Aさん音信が途絶えてた人からもお便りがあったみたいだし。残念ながら男性だったけど(笑)。それから注文や質問も結構ありましたよねえ。

H教授そう、第1講では「表やグラフがあるとわかりやすい」(1/9)とか「文章中から関連HPへリンクできると便利です」(1/14)みたいな投書が10通ほども来たよ。

Aさんで、第2講から即座に要望に応えたもんねえ。センセイ、なんにもしなかったけど。

H教授そう、あれは全部編集部というかEICがやってくれてるんだ。たいへんだと思うよ。そのうち内容に対するクレームや圧力からじゃなくて、EICの人たちから労働過重でもう連載をやめてくれって言われるかもなあ。
でもEICの編集部は凝り性でねえ、第4講の図で産廃を積んだトラックが動くアニメーションがあったけど、帰りは空荷だからってスピードを上げるようにしたんだって(下図参照)。

Aさんセンセイ、あの図表の挿入やリンクで勉強になったでしょう。

H教授(しみじみと)そうなんだ、うろ覚えでしゃべった内容をあとからじっくり勉強させてくれるから、感謝感激だよ。
読者の方でも、
(第2講)「循環利用率の解説の図3で、分子が資源利用量となっていますが、循環利用量では?」(4/10)とか、
(第3講)「Co-PCB、TCDD、TCDFの置換基の番号付が反時計回りとなっていますが、IUPAC命名法によると時計回りのはず(中略)。左右対称分子ですので、実質的にはかわりがないのですが、...(中略)化学を専門としない方もごらんいただく機会も多いと思いますので、正しい方に統一したほうがよいのではないかとおもいます。」(4/7)
なんて指摘も届いていたから、ちゃんと見ててくれているんだなあと感心するよ。
スミマセン、これらのご指摘は、さっそく直しておきましたから。

Aさんとっても答えられないような質問もあったじゃないですか。

H教授そう「炭素税における先進国(欧州)の理論と現状」(1/10)だとか、「食品リサイクル法施行後の全国の動向やバイオプランと今後の方向性」(1/12)なんてのは、うっかり取り上げるとボロがでちゃいそうだしね。
粘土採掘の具体的な事例を挙げられて「鉱業法と自然環境保全の問題を論じてください」(3/13)と言われたり、「国土交通省が進めているPFIの環境アセスの評価方法」(3/15)と言われてもお手上げだもんなあ。
「遅効性肥料製造時のトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン」(4/5)とか「肥料用硫酸カリ製造からかつて高濃度のダイオキシンが排出されていた」(同)なんてのはまったく初耳だった。

(読者を向いて)申し訳ないですが、こうした専門的な話題はEICネットの「環境Q&A」や「フォーラム」欄で問題提起していただければと思います。
「廃掃法の曖昧さ、各省庁の横の繋がりのなさ」(1/9)、「環境ホルモン」(4/11)、「戦略アセスと政策決定システム」(3/7)、「里海=沿岸海域の環境論」(4/28)などはいずれなんらかの形で取り上げようと思っていますのでよろしく。


Aさんセンセイは具体論に弱いんですよね。自然保護全般は論じられても、樹の名前も鳥の名前も知らないもんねえ。これで昔、パークレンジャーだったなんて信じられない。

H教授シー、それは内緒だって(笑)。

Aさんそうそう、これはどうですか。「タバコの間接喫煙の害について」(4/11)。

H教授(顔を顰め)厭な子だねえ。

Aさんワタシじゃないですよ。読者のお便りですよ。
「タバコはやめた方が良いと思います。がんばれ、ネオコン!!!戦争は勝たなきゃね!!!」(4/19)なんてのもありました。「蛇足が多すぎる。イラク問題などは不要でないか」(5/5)というのもありましたしねえ。

H教授でも「イラク問題を自主規制するのはやめてほしい。H教授の独断で突き進んでほしい」(1/9)だとか、「劣化ウラン弾による健康被害も含めて、戦争が及ぼす環境影響について、是非教えていただけないでしょうか」(4/11)というのもあったよ。
もっとも後の問題もぼくは専門家じゃないんで答えられないけど。


Aさんあとセンセイの意見への異論反論もありましたねえ。第1講では「田舎のようなスローな生活というのは多分起こらないと思います。むしろ田舎が情報ネットワークの普及により、高速化され、地方と都会の差が縮まるというのが理想だと思います」(1/10)という意見がありました。

H教授うん、それはそうだと思うよ。でも、心の持ちようはスローにってヒトが増えればいいなあと思うんだけどねえ。

Aさんそれから第3講へのお便りで「データが定量的でないのが致命的...いい話してるのに、価値半減」(5/29)と言うのがありましたよ。

H教授(シュンとして)そんなこと言われてもなあ。

Aさんセンセイに代わってお答えしますね。センセイは定量的なデータを収集、解析して仮説を立て、緻密に論証していくことが苦手というかできないんですよね。経験と雑学を基にした「直感プラス思い付きプラスハッタリ」の人ですから。

H教授(真っ赤になって)おいおい、そこまで言うことないじゃないか。かりそめにもぼくはキミのシドウ・キョーカンだぞ!

Aさんドウドウ(なだめる)、まだ、後がありますから。でも、その言説が結構正鵠を射ているかもしれないから、こんなたくさんの読者からの反応があるんですもんね。センセイの研究論文よりこっちのほうがワタシは好きですよ。


H教授(急にニコニコ)うん、うん。

Aさんところで、こんな痛烈なお便りも来てましたよ。以下が全文です。
「アンケートにつまらないではなく、『ひどい内容だ』というのを加えて欲しい。
環境省がダイオキシンとんでも本と同じことをいってるとは思わなかった。結局、環境省はダイオキシン対策を講じながら、自分でやりすぎといっているわけだ。もっと慢性毒性に言及するべきところを、タバコとダイオキシンを同列において、問題をすりかえるとは情けないですね。」(6/12)。

H教授(目を白黒させて)ふーん、でもぼくの意見のどこがおかしいか具体的な指摘がまったくないから、コメントのしようがないね。ま、ぼくの意見が『ひどい内容』かどうか、『情けない』かどうかは、読者の判断に委ねるしかないなあ。
でもねえ、なんでぼくの意見がそのまま環境省の意見になるわけ? ぼくも困るし、環境省だって迷惑だと思うよ。この時評をそういうふうに読む人がいること自体、ぼくには驚きだよ。

Aさんそうよねえ、センセイの授業って環境省の悪口ばっかりだもんねえ。センセイって最初は環境省のこと大嫌いなんかと思いましたよ。

H教授愛するが故の憎まれ口ってことかな。

Aさんあとは、「環境を学びたいけど、どんな本を読めばいいか教えてください」(3/9)とか、「環境を学ぶにはどこの大学がいいか」(5/8)なんて問い合わせもありましたけど。

H教授その質問は漠然としすぎているからパスだ。

Aさん「連載が終われば本にしてください」(4/4)というのもありましたよ。センセイ、実現すれば初の著作になるんじゃないですか。印税はワタシの結婚資金にね(笑)。

H教授そんなもの売れるわけがないだろう。ところで「たまには2人以外のパーソナリテイもだしてください」(6/6)というのがあったな。キミのお父さんにでも出てもらうか。

Aさんえー、あのダッサイおやじ? やーだよ。あんなおやじ出したら、絶対だれも読まなくなって、この時評はポシャっちゃうよ。


さいごに、「CO2にしても、石油資源にしても、廃棄物にしても、『工業生産』を減らせば一石三鳥で改善するはず」(5/3)という意見がありましたけど、これはどうですか?

H教授それこそ簡にして明な正論だと思うよ。でも、それを自発的にやりとげられるほどヒトは賢くない。だって、歴史上敗戦以外で工業生産を大々的に減らしたのは90年前後からの旧ソ連圏だけだ。ベルリンの壁崩壊みたいなことがなければ絶対ムリだろうな。
だからこそ、燃料電池だとか核融合だとかいった技術的なブレークスルーに期待したがるんだけど、ヒト社会を他の生物種並に2,000万年とは言わないまでも1,000年くらいはこの先持続させようとすれば、ほんとうに必要なのは工業生産の低減というか、資源、エネルギーの総抑制だし、先進国では現状の3分の1だとか、場合によってはヒトケタくらいは落とさなきゃいけないかもしれない。
だからこそ、社会的なあるいは意識や価値観のブレークスルーが必要なんだけど、問題はどうすればそれが可能になるか、そもそも可能なのかが、だれもわからないということだ。

最近の動向

Aさんさあ、じゃあこれからも読者の暖かい応援に期待するとして、最近の動きはなんかありました?

H教授ああ、いっぱいあるよ。国際的にはエビアンサミットがあり、そのなかで「水問題についての行動計画」がまとめられた【1】。2015年までに安全な飲み水を利用できない人口を半減するという合意がなされた。もっともこれ自体はヨハネサミットや水フォーラムでも同様の合意がされていることだからなあ【2】
それよりもっと面白いことがあるよ。アメリカで3つの州が、EPA(連邦環境保護庁)を相手取って、CO2規制をやらないからって連邦地裁に提訴した。そのEPAのホイットマン長官がブッシュの反環境路線に嫌気がさしたかそのまえに辞意を表明【3】
一見威勢のいいアメリカだけど、イラクの大量破壊兵器だって見つかりそうにないし、いよいよ底辺からの亀裂が入りだしたかって感じがするねえ。


Aさんそりゃ、センセイの儚い願望じゃないですか。


H教授いいじゃないか。夢を語ったって。


Aさんはいはい。で、国内ではどうですか? 有事法制だとかイラク新法の話なんてなしですよ。

H教授わかった、わかった。ちょっとまえの話になるけどPRTR法が施行されて初めての報告が3月末になされたこと【4】、6月に入ってから世界遺産の候補地が3箇所選ばれたこと【5】、廃掃法が改正され不法投棄未遂にも網の目がかかったこと【6】とか他にもいろいろあるけど、それは来月以降おいおい取り上げていこう。第5講でも言った環境教育法もいよいよ国会マターになりそうだ【7】。でもねえ、そもそものきっかけになったNGOの骨子案の目玉である環境教育という科目をカリキュラムに入れて専任教員を置くというのは、どっかに行ってしまうかもしれないし、これからも目を離せないね。
ま、でももう時間だから、今日はこれまで!(立ち上がる)

Aさん逃げちゃダメ! 役人時代の経験をひとつでいいから話してください。未だ1回もないじゃないですか。

H教授第4講でもいろいろクレームついたりしたんだよねえ(はや逃げ腰)。

Aさんダメと言ったらダメ!

H教授(溜息)わかった、わかった。でも紙数が尽きた。それは来月。

コーベ空港・断章

Aさん(無視して)ね、センセイ、第4講で、瀬戸内法と「埋立ての基本方針」を話してくれましたよね【8】。例のコーベ空港はどうだったんですか。

H教授(苦い顔)いいたくない、それにぼくは最後のときには関わっていない。

Aさん(憤然として)わかりました、ワタシ、指導教官を変えてもらいます。


H教授(泣き出しそうに)わかった、わかったよ。知ってる限りのことは話すよ。
平成になるかならないかの頃だ。ぼくがまだ環境庁(当時)の役人だったときに、マスコミがあることで取材に来た。

Aさんえっ、マスコミの取材を受けるようなポストにいたんですか?

H教授ぼくだって管理職だった。もっとも端くれの一人だったけど。
その記者が帰りがけに「ところでコーベ空港にはどう対応されるんですか」と聞いてきた。

Aさんコーベ空港は「埋立ての基本方針」に照らすとノーだったんですか?

H教授(答えず)「埋立ての基本方針」以上に、コーベ空港にはいろんないきさつがあって、環境庁としては、というかぼくらは、まえから苦々しく思っていた。

Aさんへえ、なんで?

H教授もともと関西空港はコーベ沖が最有力候補だったんだけど、コーベ市が公害の元だというんで断ったんだ。で、いまの場所に決まったという経緯がある。


Aさん今の関空は「埋立ての基本方針」ではOKだったんですか。

H教授ま、関空は国家プロジェクトだしねえ。それに伊丹廃港と引き換えだということもあって認めざるをえなかった。伊丹では公害問題で、周辺市町が移転を要求していたし。

Aさんだって、伊丹空港は今でもあるじゃないですか。

H教授そう、周辺市町が移転から存続に180度方針転換しちゃったからさ。さらにこの頃からいちどは自分の方から断ったはずのコーベ市が空港建設を言い出し、市議会の全党派が公害なき空港をという始末。
でもぼくらにしたら、ここでコーベ空港なんか認めたら「埋立ての基本方針」が泣くという思いがあった。

Aさんそりゃそうだ。踏んだり蹴ったり、泣きっ面に蜂ですね。

H教授運輸省がどう思っていたかは知らないけど、「環境庁さんをクリアするのが先決です」と環境庁に下駄を預けてきた。
コーベ市は正攻法じゃダメと思ったんだろうな、政治的に動きだした。

Aさんじゃ、コーベ市からは連日の陳情ですね、接待もたっぷり受けたんでしょう。

H教授(吐き捨てるように)冗談じゃない! 接待どころかただのいちども説明にも陳情にも来なかったよ。コーベ市は市役所内に空港整備室を作ったりしてどんどんと進めてるみたいだったけど、環境庁には一切接触なし。わざと避けていたとしか考えられない。ぼくらは市の環境部局にしかパイプがないから、環境部局に問い合わせるんだけど、私らにはまったくわかりませんと言うばかりで、いちど説明に来るように伝えてくれと言っても馬耳東風のありさま。

Aさんなんでですか?

H教授事前調整というのが日本的ルールだけど、別に法律で事前調整を義務付けているわけじゃないし、第一、環境庁がどういうかわかりきっていただろうから、環境庁をまったく無視して政治的に外堀を埋めようとしていたんだと思う。
もうこっちはイライラ、カリカリさ。そこにマスコミが来たんだから結果は想像が付くだろう?

Aさん(ワクワクしながら)ええ!

H教授翌日の新聞一面トップに「環境庁、コーベ空港認めず」の大見出し。

Aさんへー、先生の発言が新聞の一面トップに! (小声で)もう一生ないでしょうけどね。
それで? そういう場合って、議員さんからの圧力もすごいんじゃないですか? (ワクワク)


H教授あまり言いたくない。想像に任せるよ。

Aさんえ〜そんなぁ。じゃあ、環境庁のトップはどうだったんですか?

H教授もちろん説明して納得してもらったさ。ま、ほんとうに納得したかどうかは別にしてね。で、あるとき「某代議士先生に説明を求められた、君の方から説明しといてくれ」っていわれて、某議員室まで行った。

Aさんへええ、面白そう。

H教授思いっきり、頭ごなしに、怒鳴られちゃった。議員室に入るなり「貴様らは国賊だ!」ってね。
でも一緒に行った局長はえらかったよ、「国賊と言われましても、それは見方次第でございますから」って平然と答えてたね。

Aさん本当は、もっといろんなこと言われたんじゃないですか? 「木っ端役人のくせに!」とか「政治の力を見せつけてやる!」とか?

H教授(顔をゆがめつつ)思い出したくない...。

Aさんまあいいや。で、最後にはどうなったんですか?

H教授ぼくはそのあとすぐ異動したから知らないが、数年間はがんばりとおしたみたいだよ。

Aさん地元の反対運動はなかったんですか?

H教授年に1回反公害デーというのがあって、被害者団体や公害反対運動の人たちが環境庁に来る。瀬戸内海でもそういう市民運動の連合体があってコーベがその中心なんだけど、いろんな要望というか要求を環境庁に突きつけるんだ。ま、一種の団体交渉みたいなもんだ。その年の公害デーは、この騒動の直後で、ぼくがその交渉の相手役をやらされていた。
さいごにぼくは言ったよ。
「みなさん、瀬戸内海を守れといろいろおっしゃいますが、要望書にはコーベ空港については一言も書いてないのはどういうわけですか、先日の新聞で環境庁は認めないと言ったわけですが、いろんな圧力がかかって困っています。みなさんは環境庁の味方をしてくれないんですか、空港建設に賛成なんですか」って。
とたんにそれまでの勢いはどこへやら、コーベ空港については、なかにいろんな意見がありましてなかなかまとまりませんって一気にシュンとなっちゃった。

Aさんでも、環境庁も最後はゴーサイン出しちゃったじゃないですか。

H教授その事情はぼくは知らない。海外勤務中だったからね(註)。それなりにミティゲーション【9】したんだろうけど、なんでも阪神大震災が転機だったらしい。コーベが元気出さなければいけないって。
でもねえ、ぼくは未だにわからないんだ。だって震災復興で空港どころじゃないってのがふつうだろう? なんでそんなになったのか。

Aさんセンセイがそのときいればストップできました?

H教授そんなわけないじゃないか! たかが木っ端役人になにができる!

Aさんで、皮肉なことに、ちょうどその頃から反対運動が強くなってきたんですよね。

H教授つまりその頃から、時代は急に変わりだしたんだ。環境の問題というよりは、借金漬け財政の批判がはじまり、政策決定の不透明さが問題になり、住民参加や地方分権、情報公開が言われだし、公共事業への風当たりが強くなった。そういう意味でもあの反対運動の波及効果は大きかったと思うよ。
ま、いま工事中のコーベ空港をどう評価するかは歴史が判断するんだろうけど。

Aさんあのとき造っといてよかったって評価されるかもね。センセイがコーベ空港に反対したのは高邁な理念からじゃなくて、「埋立ての基本方針」っていうものに愚直に囚われてただけの融通の利かない愚かな役人根性だって評価が下されるかもしれないですしね。

H教授そのときは甘んじて自らの不明を恥じるよ。

Aさんコ−ベを垂れてでしょう?

注釈

【1】エビアンサミットと「水問題についての行動計画」
開発・環境分野:「水に関するG8行動計画 [本文・概要]」(同上より)
「主要国首脳会議(エビアン・サミット)特集」(首相官邸HP)
【2】ヨハネスブルグ・サミット(持続可能な開発に関する世界首脳会議)
(外務省HPより)
ヨハネサミット(ヨハネスブルグ・サミット)と世界水フォーラムにおける水問題についての合意等
世界水フォーラム「水行動集(Portfolio of Water Actions (PWA))」
【3】ホイットマン長官 辞任について
(EICネット「環境ニュース(海外)」より)
「EPA ホイットマン長官 辞任へ」
【4】PRTRデータの集計・公表について
(環境省環境保健部「MOE PRTR DATA PAGE」より)
詳細ページへ
【5】世界自然遺産の候補地決定について
環境省自然環境局「世界自然遺産候補地に関する検討会」のページ
詳細ページへ
第4回 世界自然遺産候補地に関する検討会(H15.05.26) [概要・検討会資料]」(同上より)
【6】改正廃棄物処理法(3月11日国会提出・6月11日参議院審議可決・6月18日公布)
環境省報道発表資料「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律案について」(平成15年3月10日)
衆議院 議案一覧(第156回国会)
【7】環境教育法の経過 第5講注釈より:環境教育法案について
いわゆる「環境教育法(案)」については、与党三党と、民主党がそれぞれ独立した動きとして、法案や骨子を作成し、議員立法による法制化をめざしている。
1. 与党三党では、『環境教育推進に関する小委員会』(委員長・鈴木恒夫衆院議員)が設置され、検討・調整がされている。
 「環境保全の普及及びこのための環境教育の振興に関する法律案」(仮称)骨子
  (同小委員会メンバーで公明党の田端正広議員の政策ページ より)
2. 民主党では、平成14年9月に骨子案がまとめられ、明けて2月19日に民主党内で承認され、同時に第156回国会議案として受理されている: 民主党「環境教育振興法案」 / 第156回国会議案 参第七号「環境教育振興法案」

これらの背景として、以下の関連や影響が伺える。
● NPO法人環境文明21内「環境教育部会」が平成14年5月に法案の骨子案を提案。同年8月には関係者等に呼びかけて「環境教育・環境学習推進法をつくろう!推進協議会」(会長・愛知和男元環境庁長官)が組織され、議員への働きかけなど積極的なロビイングがされてきた。 「持続可能な社会のための環境教育・環境学習推進法案」の骨子案
● 環境省では、環境保全活動の活性化や底上げの方策に関して、環境大臣から中央環境審議会に対して平成14年4月に諮問され、同年12月に中間答申が公表された。この中では、環境教育を環境保全活動推進のための方策と位置づけている。 中間答申「環境保全活動の活性化方策について」
● また直接的な連動・関連はないものの、ヨハネスブルク・サミットにおいて日本政府が提案し、国連で採決された「国連・持続可能な開発のための教育の10年」推進に向け、国内法整備や国際社会への発意等も指摘される。
 「『国連持続可能な開発のための教育の10年』に関する決議案の国連総会における採択について」(外務省HP)
● 一方、サミットに向けて「持続可能な開発のための教育の10年」の提言とりまとめに関わってきた市民セクターでは、環境だけでなく、開発、人権、平和など社会的課題に関する教育に取り組む団体・個人の交流や意見交換を促進するための新たなネットワーク設立の動きも見られる。 「持続可能な開発のための教育の10年」推進会議(ESD-J)設立について
参考:フォーラム「環境教育推進法を考えよう!」
こうした環境教育を巡る立法化の動きに対して、どのような考えの下に、どのような人たちによって、どのようなプロセスで進められているのかを明らかにし、公開で議論を進めていこうと、環境教育に携わってきた研究者・実践者を中心に呼びかけられ、2003年4月に立ち上がったもの。これまで東京で、2回の集会が開催されている。
与党三党案の概要(田端正広議員の政策ページより)