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H教授の環境行政時評環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。

No.004

Issued: 2003.05.01

第4講 或る港湾埋立の教訓

目次
イラク戦争終結
マニフェストを巡って
静脈産業の健全化
或る港湾埋立の教訓

イラク戦争終結

Aさんセンセイ、イラク戦争がやっと終わりましたね。

H教授ああ、ひどい話だけどね。でもアメリカが軍事的に勝利するのははじめからわかってた。問題は政治的に勝利したかどうかだ。ぼくはロングタームでみると政治的にはとりかえしのつかない敗北だったと思うよ。


Aさんと、いうと思った。でもアメリカ政府も国民の大多数もそうは思ってないんでしょう?

H教授そう、まさにそれが問題。あとねえ、フセイン政権は降伏するでもなく、徹底抗戦するでもなく、国民だけを残してある日突然蒸発しちゃった。そんなのありかよおって感じだよね。

Aさんで、おきざりにされた国民は自暴自棄に略奪行為に走った・・・


H教授まあ、そうなんだけど、それは一部の国民だろう? ぼくはまえに反フセイン・反ネオコンの市民革命が起きてほしいと言ったけど、その種子はこの一月の間で撒かれたんじゃないかな。

Aさん(小さく)また、センセイの年甲斐もないロマンチックな妄想が始まった・・・

マニフェストを巡って

H教授ところで、キミ、マニフェスト【1】って知ってるか?

Aさんうーん、よく覚えてないけど、確か産業廃棄物に関することじゃなかったですか?


H教授お、さすがにぼくのゼミだけはあるな、って言いたいんだけど、もっと新しい意味に使われだしたんだ。

Aさんえっ、そうなんですか? たしかマニフェストって「宣言」って意味がありましたよね。


H教授そう、「共産党宣言」は「マニフェスト・オブ・コミュニストパーテイ」と、言うんだね。
つい、先日統一地方選挙があっただろう? 選挙になると「公約」ってことがよく言われていたんだけど、いままではあれもします、これもしますと言う口当たりのいい抽象的なことばっかりだった。今回の知事選挙では、かなりの候補者が、そんないままでの「公約」じゃなくて、具体的な数値目標を明らかにし、達成期限や財源も明示して県民と契約を交わす「政策綱領」のような意味でマニフェストというコトバを使いだしたんだ。

Aさんふーん、で、こんどの統一地方選挙の結果はどう評価されているんですか?

H教授知事選では、ほとんどの候補者が、雇用の確保とかに加えて、公共事業の削減を言い出した。中央とのパイプの太さを誇示して、公共事業を誘致して補助金を取ってきますという手合いが姿を消したし、政党色も薄めてきた。マニフェストも、そうした流れのなかで、出てきたんだ。

Aさんでも、みんなそうなら、有権者も困っちゃうんじゃない?

H教授そうなんだ。結局、言うことはみんな変わらないから、組織選挙をやるか、勝手連タイプの選挙をやるかどうかがほんとうの改革派かどうかのリトマス試験紙だった。そういう意味では、従来型の組織選挙が辛うじて機能したんじゃないかな。
いずれにせよ、ほとんどすべての候補者が口先だけは開発より環境や生活優先にシフトしたことは特記されていいことだと思うよ。

静脈産業の健全化

Aさんで、廃棄物行政用語の「マニフェスト」ってなんでしたっけ。

H教授産業廃棄物【2】の処理責任は排出者、つまり工場にあった。でも、実際は専門の廃棄物処理業者に委託するのがふつうなんだ。
で、以前は産業廃棄物が不正処理や不法投棄された場合、その責任は事実上処理業者に転嫁されたけど、それが問題だということになった。


Aさんでも、工場はそれが不正処理や不法投棄されることは予期してなかったんでしょう?

H教授それはそうかもしれない。でもね、工場にしてみれば、産廃の処理費なんて安ければ安いに越したことはない。だから、できるだけ、安く請け負ってくれる処理業者に委託しようとするから、ダンピングがはじまりかねない。
でも、ダンピングで請け負った処理業者にしてみれば、法令どおりに適正に処理しようとすると赤字になるから、手抜き処理したり、不正処理や不法投棄に走ったりすることもあった。

Aさんつまり悪貨が良貨を駆逐しかねないということになったんですね。

H教授そう、そしてダイオキシン問題やらなんやらもあって、産廃処分場をめぐって住民の反対運動がほうぼうで起きた。そのため不正処理や不法投棄された場合、委託した工場も共同責任を背負わされるように廃棄物処理法を改正したし、それだけではなく、産廃処理が適正に行われているかどうかをチエックするために工場からマニフェストという管理票をつけて処理業者に出し、処理業者はきちんと処理したというそれを工場に戻し、その写しが県庁にも行くようにした。
これがマニフェスト制度で、当初は厳重な処理が必要な産廃に限られていたけど、いまでは全産廃に義務付けられた。

<産業廃棄物の処理の流れとマニフェストの受け渡し (STEP1〜9まであります。)>


Aさんでも、その管理票の偽造とか、わざとデタラメを書くとか言うのはないんですか?


H教授もちろん、それを防ぐために抜き打ち検査もするし、罰則とかも設けられたよ。
でも、やっぱり跡を絶たないみたいだね。こういう規制の強化は必要だし、いまも廃棄物処理法の規制強化と不法投棄原状回復法案がセットで国会審議されているけど、それだけでは限界があるね。


Aさんじゃ、どうすればいいんですか?

H教授キミも含めて、就職するときは環境関係の仕事に就きたいとよく言うよね。

Aさんええ、当然じゃないですか。ワタシだって、環境マネジメントの仕事をやってみたいもん。
世のため、人のために。

H教授じゃ、廃棄物処理業に就職したい?

Aさん・・・

H教授ほらね。環境にもっとも関わりが深く、世のため人のためになるというのに、廃棄物処理業に就職したがらないだろう? 汚いとか、薄暗いとか、なんとなくこわいとかいうイメージがあるんだろう?
だから、こうした静脈産業【3】をもっと明るいものにしなければいけないんだ。その明朗化・近代化に税制等を使って行政は支援しなければいけないし、キミたち自身の「廃棄物は汚い」という意識も変えなくちゃいけない。
徴兵制は大反対だけど、成人までの間の半年くらいはこうした廃棄物処理や老人介護などへの参画を義務付けたっていいと思うよ。

Aさんセンセイの意見はわかりました。でもセンセイだって、口先だけじゃないんですか?

H教授ぼくが国立公園のレンジャーのとき、地域のごみ拾いや便所掃除を率先してやったさ。
...(小さく)ま、前任者がやってたから、しようがなく、引継いだだけだったけど。


Aさんはいはい。で、他に最近の動きは?

H教授うーん、忙しくて今回はパスしよう。じゃ、また来月・・・

Aさんダメですよ、逃げちゃ。センセイの経験談を話すって約束だったじゃないですか。今回も逃げたら、読者は完全にセンセイを見放しますよ。

H教授わかった、わかった。でも編集部がOKしてくれるかなあ。

Aさんごちゃごちゃ言ったら、ワタシが文句言います。このコーナーはワタシで持ってるみたいなもんだから。

或る港湾埋立の教訓

H教授わかった、じゃ、今回はひとつだけ。
数年前のことだけど、瀬戸内海で、ある県が港湾の拡張で大規模な埋立計画を構想した。そこは国立公園のすぐそばなんだけど、国立公園には入っていない。でも、万葉集でも知られた国立公園内の展望台からの景観は台無しになっちゃうんだ。
県は地元住民をツンボ桟敷に置いたまま計画を進め、港湾計画の変更を地方港湾審議会で通しちゃった。その時点ではじめて計画を公表。それを知った地元住民は怒って激しい反対運動が起きた。

Aさんその県の環境部局はなにしてたんですか。


H教授計画の初期の段階で港湾部局と大喧嘩したらしい。で、最後は環境部局は一切責任を持てないから勝手にしろって、投げ出しちゃったという話だ。
もっとも埋め立て材が建設廃材で、処分場不足に悩む環境部局の廃棄物担当課は賛成という内部事情もあったらしいんだけど。結局、港湾部局が知事を説得してゴーサインが出されたらしいよ。

Aさんへえ、で、それから?

H教授港湾計画変更は地方港湾審議会のあと国の港湾審議会に諮られる。環境庁、つまり、現・環境省はそのメンバーなんだ。この話は環境庁時代の話だから環境庁で以下統一するよ。
通常、こういう案件は地方港湾審議会に諮られる前に、環境庁と非公式の事前調整を行うんだけど、このケースの場合一切なしで突っ走った。しかも、場所が瀬戸内海だから「埋立ての基本方針」に適合するかどうかっていう問題がある【4】

Aさん話の腰を折るようですが、「埋立ての基本方針」ってなんですか?

H教授瀬戸内海環境保全特別措置法では、埋め立てに関して瀬戸内海の特殊性に配慮しなければならないとし、具体的なことは審議会で審議されるとしているんだ。
これを受けて、審議会が「埋立ての基本方針」というのを定めているんだが、これには前文で「埋立ては厳に抑制すべきであり」と埋立抑制の理念を謳い、本文で「やむをえず埋立てを認める場合の方針」がごちゃごちゃと書いてある。もっともやむをえず認める場合ってどんな場合かってのは一言も書いてないんだけど。

昭和50年〜52年免許の埋立事業

昭和53年〜59年免許の埋立事業

昭和60年〜63年免許の埋立事業

平成元年〜8年免許の埋立事業

平成9年〜13年免許の埋立事業


法施行後の埋立状況
昭和48年に施行された瀬戸内海環境保全特別措置法を契機に、埋立事業の許認可面積の伸びが鈍ってきていることが、各年面積の棒グラフの伸びや、累積面積の折れ線の傾きなどから読みとれる。


Aさんなんですか、そんなのおかしいじゃないですか。

H教授おかしいたって、そうなっているんだから、仕方がない。
だから瀬戸内海では、まずこの前文の「やむをえず埋立てを認める場合」かどうかで開発部局と環境部局、場合によっては環境庁とのチャンチャンバラバラがはじまる。それを無視して突っ走ったもんだから環境庁は怒った。
反対運動の激化のなかで、環境庁は港湾審議会の場で瀬戸内海環境保全特別措置法に違背する疑いがあり、景観保全の観点から問題ありって発言。
港湾計画の変更は埋立計画だけじゃなかったから、結局、「おおむね適当である。ただし、埋立てに関しては景観保全の点からさらに検討されたい」ってなっちゃった。で、県は急遽「景観検討委員会」なるものを設置することにした。


Aさんふーん、で、センセイはどういう立場でかかわってたんですか?

H教授ぼくは、当時すでに役所を辞して、大学に籍を置いていた。で、その検討会の委員として委嘱されたんだ。どうだい、ぼくも学識者の一人ということになったんだぜ、エヘン。

Aさんへえ、センセイが学識者ねえ。楽色者のまちがいじゃないんですか。

H教授え?

Aさんいや、なんでもないです。
でも、どうしてセンセイがねえ。ひょっとして環境庁から県に圧力でもかかったんじゃないですか?

H教授(答えずに)外部評価、内部評価って聞いたことあるだろう?
外部評価がいいというのが当たり前になってるし、そのとおりだと思うけど、外部評価ったって、その外部評価をやるメンバーをだれがどうして選ぶのかが問題だよねえ。


Aさんふうん、で、その港湾の拡張計画ってほんとに必要だったんですか。

H教授そう、じつは最大の問題はそこなんだ。景観破壊はもちろんだけど、それ以前に需要予測が現実離れしてないか、ほんとうにそんなものが必要なのかって議論がいるんだよねえ。で、それをみっちり審議するはずの地方港湾審議会では簡単にOKを出したんだけど、専門家の中には需要予測が過大すぎるって意見も強かったし、環境庁も内心そう思ってたんだと思うよ。
でも環境庁は公式には環境保全や景観の観点からしか異論を述べられない。だから景観保全検討会も景観保全の観点からしか意見が言えないんだよね。
で、県は、埋立面積を若干削って、あとはそこに緑地を増やすなどしてお茶を濁そうとしたんだよね。

Aさんで、センセイはどうしたんですか?

H教授いやあ、困っちゃったよ。反対派の女性メンバーからはラブレターが続々届くしね。だから頑張った。
検討委員会の枠をはみだして、埋立て自体に懐疑的・否定的な発言するもんだから、常に孤立した。


Aさん鼻の下を長くしてカッコいいこと言ったから、引っ込みつかなかったんじゃないですか。

H教授そう言うなよ。ぼくは女性には甘いからな。

Aさんで、結局どうなったんです。

H教授県はどの程度に縮小するかを暗示する方針を出してきたけど、これは環境庁が飲みそうにない程度の方針。ぼくは当然反対したけど多勢に無勢で決まりそうになった。
ぼくは、こんな程度の縮小では絶対環境庁は飲まないからやめろってこっそり個人的に忠告したんだけど、それで強行突破しちゃった。で、そのあとその方針でどうかって内々環境庁に打診したらしいけど、当然のことながらデッドロック。
最後は環境庁が飲めそうなぎりぎりのところまでの大幅縮小案をその検討委員会に出したんだけど、その頃は反対派住民は、「一切の埋立てそのものに反対」にまで態度を硬化させていた。
吉野川第十可動堰や藤前干潟埋立の反対運動も大きく動きだした時期だったし、反対派住民も需要予測がどう考えてもデタラメだと考えるようになってきて、港湾課のやり方自体に徹底的に不信感を持つまでになっていたんだ。
で、最後の検討委員会でぼくは、「この埋立ては必要性に疑義があるし、なによりも地元住民の不信を買うようなやり方で進められている。だから、一旦白紙に戻した方がいい」という声涙下る発言をしたけど、結局はごまめの歯ぎしり。その案で地方港湾審議会をあっさり通しちゃったし、国の港湾審議会も認めちゃった。こんどは環境庁も反対できなかった。

Aさんなぜ反対できなかったんですか。

H教授つまるところ必要性の判断主体と権限問題に帰着する。
というのはね、例えば港湾の必要性を判断するのは運輸省、いまの国土交通省になっている。あと、強いて言えば予算を付ける大蔵省、つまり今の財務省だ。
当時の環境庁はむろん、環境省に格上げされた今も、必要性の判断権は与えられていない。だから環境保全上の観点からしか公式の意見がいえないんだ。しかも、「必要かもしれないが、あるいは必要であるとしても、環境保全上からは到底容認できない」と言うには、法律上の具体的な権限、つまり土地利用の許認可権を持っている国立公園の核心部のようなところでなければダメなんだ。ま、それだってどこまで頑張れるか疑問だけど。
この場合は国立公園でもないし、「埋立ての基本方針」の前文にしても、ぎりぎり詰めていくと、具体的な規制といえるかどうかあやしい。そういうなかで半分近くまで縮小、展望台からの距離も離し、緑化にも力を入れるというものを現行の霞ヶ関ルールでは反対できなかった。


Aさんなんだ、結局敗北しちゃったんじゃないですか。

H教授そうじゃないんだよ。県は環境アセスメントに着手したんだけど、反対派はその後も反対運動をつづけたし、その頃から公共事業に対する反対運動が方々で激しさが増し、吉野川では住民投票まで行われ、反対派の圧勝。
その夏の総選挙では都市部で自民党が惨敗したんだけど、それは地方への公共事業バラマキに対する都市住民の不満が爆発したとの分析で、自民党自らが大型公共事業見直しを言いだし、中海干拓の中止や吉野川可動堰白紙撤回を決めちゃった。
一方では整備新幹線予算を付けたりしてるから、一種のパフォーマンスというかガス抜きなのかも知れないんだけど、これでパンドラの箱を開けちゃった。
で、その港湾拡張なんだけど、まずそこの市長 ―このあいだ落選してその後、汚職で逮捕されちゃったけど─ がこうした流れの中で反対に転じた。県のほうも、その後、知事が引退、誕生した新知事は改革派知事と言われるひとりなんだけど、この埋立計画の凍結を宣言しちゃった。
財政的にもムリだってのがはっきりしたんだろうね。港湾計画上は生き延びてるものの、もうあの埋立計画は完全に破綻したんじゃないかな。


Aさん要はセンセイや環境庁の力じゃなかったんだ。

H教授そりゃそうだ。色男にカネもチカラもあるわけないじゃないか。だけど、一応言うべきことは言っただろう?
でもその後、反対派の女性メンバーからのラブレターはぴたっと途絶えたなあ。
ま、この場合は結局のところ、反対派住民の言うところの -そしてぼくもそうだと思うんだけど- ムダな公共事業を止めたのは、環境行政ではなく、住民の声をバックにした首長だった。
このこと自体は正当だけど、多くの公共事業がそうはなっておらず、形式、つまり審議会だとか議会だとかの手続きだけを踏んで、それでよしとしてきたところが問題だと思うよ。
ま、こうした事例もこのあいだの統一地方選挙の結果からみると、どんどん減ってくると思うよ。
さ、これで約束を果たしたろう?

Aさんダメですよ。いまのは役人時代の話じゃないじゃないですか。役人時代のことを話すって約束ですよ。


H教授わかった、わかった。それは次回以降。それよりもぼくは無神論者なんだけど、無辜のイラク国民のために祈ろう。

注釈

【1】マニフェスト制度
産業廃棄物の収集・運搬や中間処理(無害化や減量化などの処理)、最終処分(埋め立て処分)などを他人に委託する場合、排出者が委託者に対して「マニフェスト(産業廃棄物管理票)」を交付し、委託した内容通りの処理が適正に行われたことを確認する制度。
なお、先の統一地方選などで、知事や県連レベルの政党などが公約を具体化した「政策綱領(マニフェスト)」という意味での『マニフェスト』に関しては、英国の政党が公約を有権者に具体的に分かるように、目標数値や裏付けとなる財源確保を説明したのが始まりといわれる。
廃棄物処理法(1970年制定)では、1991(平成3)年の法改正で制度が創設、1993(平成5)年より一部の産業廃棄物(特別管理産業廃棄物)の委託処理に対して義務づけられ、さらに1997(平成9)年の改正により全ての産業廃棄物に適用されるようになった。
マニフェスト(管理票)は、7枚つづりの伝票(A・B1・B2・C1・C2・D・E)で、産業廃棄物の種類や数量、運搬や処理を請け負う事業者の名称などを記載する。収集・運搬や処理などを請け負った者は、委託された業務が終わった時点でマニフェストの必要部分を委託者に渡すことで、適正に処理を終えたことを知らせる。紙のマニフェストのほか、電子データで同様のやり取りをする電子マニフェストも利用できる。
法令による指定情報処理センターである、(財)日本産業廃棄物処理振興センターの電子マニフェスト(JWNET)
環境省報道発表資料 廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律案の閣議決定について(H9/3/27)
【2】産業廃棄物
廃棄物処理法(1970)により、事業活動に伴って発生する特定の廃棄物の定めた区分。
多量発生性・有害性の観点から、汚染者負担原則に基づき排出事業者が処理責任を有するものとして現在20種類(うち、特定の事業活動に伴って発生するものに限定される品目が7種類)の廃棄物が区分されている。これら以外を一般廃棄物と呼び、処理責任を市町村が果たす。
性状による区分ではなく、処理責任の所在に着目したこの区分は、日本独自の制度といえる。
総排出量は2000年度実績で年40,600万トン、汚泥・動物ふん尿・がれき類の上位3品目で8割を占める。排出事業者が責任をもって処理することを原則とするが、実態は7割までが処理業者に委託される。特定の発生源から同質の廃棄物が大量に発生することから、約4割が再生利用され、減量化も含めて最終処分量は1割強になる。しかし処分場の残余年数は3.9年(首都圏1.2年、ともに2001年4月現在)と逼迫する。
環境省報道発表資料 産業廃棄物の排出及び処理状況等(平成11年度実績)について(H14/1/25)
【3】静脈産業
自然から採取した資源を加工して有用な財を生産する諸産業を、動物の循環系になぞらえて動脈産業というのに対して、これらの産業が排出した不要物や使い捨てられた製品を集めて、それを社会や自然の物質循環過程に再投入するための事業を行っている産業を、静脈産業と呼んでいる。
工業社会には、廃棄物の処理処分にかかわる技術インフラの整備という側面があり、その分野では、中間処理過程が複雑化し高度化するにしたがって、動脈産業と静脈産業とは、資本と技術の両面で一体化を進めて来ざるをえなかった。他方、リサイクル資源の回収や廃棄物の処理・処分サービスに直接たずさわる領域では、依然として資本装備率が低いうえにコスト形成過程も不明確なままの事業者が多く存在し、本来的に需要依存型の業態意識から抜け出せないでいる例が少なくない。
静脈的な機能を果す諸産業は、巨大技術や資本をもつ企業群と工学的な技術をほとんど必要としない零小事業者たちとに分化している。静脈産業という自己規定は、1960年代後半、リサイクル関係業者のなかから生まれてきたが、日本独自の概念であり、明確な定義はない。
【4】瀬戸内海環境保全特別措置法と埋立の基本方針
瀬戸内海環境保全特別措置法は、1973(昭和48)年に制定された「瀬戸内海環境保全臨時措置法」(議員立法)が、1978(昭和53)年に恒久法化されたもの。
瀬戸内海の環境保全上有効な施策を推進するために、国による瀬戸内海環境保全基本計画とそれに基づく関係府県による府県保全計画の策定、特定施設の設置及び変更にかかわる規制、水質汚濁防止法に基づく総量削減基本方針の策定による汚濁負荷量の総量の削減、関係府県のよる自然海浜保全地区の指定による対策の促進、また埋立てについての特別の配慮 などを定めている。
関係府県は、瀬戸内海沿岸の京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、福岡県、大分県(2府11県)。
埋立てについての特別の配慮事項として、府県知事は公有水面埋立免許に当たり、「埋立ての基本方針」(昭和49年5月瀬戸内海環境保全審議会答申)に照らし、環境保全上から特別の配慮をしなければならないとされている。
「埋立の基本方針」の概要(財団法人国際エメックスセンターHPより)
せとうちねっと 瀬戸内海環境保全特別措置法に基づく対策
旧運輸省審議会「港湾審議会」
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(参考:南九研時報27号)

(2003年5月1日、文:久野武)

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