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H教授の環境行政時評環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。

No.002

Issued: 2003.03.06

第2講 Hキョージュ、循環型社会形成推進基本計画案を論じ、環境アセスメントの意味を問う

目次
師弟、世界情勢を憂う
資源生産性概念を論じる -循環型社会形成推進基本計画案公表
脱ダム宣言と淀川水系流域委員会提言について
環境アセスメント私論
ミテイゲーション私論
戦略アセスと政策決定システム

師弟、世界情勢を憂う

Aさんセンセイ、イラク情勢は風雲急を告げてますねえ。どうなっちゃうんでしょう?卒論なんてやってる場合じゃないですよねえ。だから留年することにしました。


H教授こらこら、他の単位を落として、留年せざるをえなくなっちゃったんだろう。まったくさぼってばっかりいるからだよ。
ま、キミのいうように確かにイラク問題はひどいねえ。石油利権のために侵攻しようとしているのがミエミエだもんなあ。無理が通れば道理が引っ込むとぼやきたくなるよねえ。
救いはここにきて、国際的な反戦の動きが大きなうねりを見せ始めたことだねえ。ま、あのブッシュがそんなことでめげるようなタマじゃないだろうけどね。このことは環境問題にも大きな影を投げかけてる。


Aさん戦争は最大の環境破壊ってことですね。

H教授それもそうだけど、それだけじゃないんだ。EUはいま環境問題に熱心だけど、それは環境問題をテコにEU統合をさらに推し進め、米国に軍事的にではなく、政治的・文化的に対抗し、世界での求心力を高めようとする戦略だった。それが今度のイラク対応でまっぷたつに割れそうだもんな。

Aさんそれにしても日本の対応はお粗末ですねえ。

H教授キミもそう思うか、ぼくは...(はっと気付き)こらこら、環境行政に話を絞れって前回言ったのはキミだぞ。

Aさんそりゃそうですけど、政治でも経済でも、一見環境に関係なさそうなことにも常に関心を払えっていったのはセンセイですよ。

H教授そうだなあ、あれから30年か...

Aさんセンセイ、世界が戦争になるかどうかってときに、昔の思い出にひたってたんですか?

H教授30年前、アメリカは泥沼化し、敗色濃くなったベトナム軍事介入をついに断念、平和協定を結び、地上兵力の撤退をはじめた。腐敗しきった南ベトナム政府は見捨てられ、ついにサイゴンは陥落した。アメリカもこれで理のない軍事介入の愚を悟ったかと思ったけど、全然なんにも学んでないね。人間ってほんと愚かだと思うよ。

Aさん30年前か、ワタシの生まれる10年以上もまえのことですね。センセイはそのころ環境庁の室長かなんかやってたんでしたっけ?

H教授こらこら年齢詐称は犯罪だぞ。それにぼくをいくつだと思ってるんだ。

Aさんカンオケにはまってるんじゃなかったですか。確か、そんなこと言ってましたよ。

H教授はまってるのはカンオケじゃなくて、カラオケ!。さあ、はじめるぞ!

Aさんでも、イラクや北朝鮮問題に霞んで、環境問題なんてまったく問題にならなかったんじゃないんですか。

資源生産性概念を論じる ─循環型社会形成推進基本計画案公表

H教授そんなことはない、例えば、年度内には循環型社会形成推進基本法に基づく、「循環型社会形成推進基本計画」が制定されることになっているけど、1月末にはその案が公表されパブリックコメントが求められている【1】

Aさんでも、世間でそれが一大話題になっているわけじゃないでしょう?

H教授だから、それを話題にしていこうとしているんじゃないか!

Aさんセンセイ、いつもあんな基本計画なんてものはお経の文句だって言ってなかったですか。

H教授そのお経の文句を世論が支持、歓迎すると、各省だって、予算や人員もそれにシフトさせていくよ。それが積み重なっていくと、やがてお経の文句じゃなくなるんだ。それが日本型コーゾーカイカクの真髄。だけど、世論が無関心だったら、いつまで経ってもお経の文句のままで、やがて忘れ去られていくんだ。

Aさんはいはい。 で、その基本計画案の目新しい点はなんですか?

H教授数量目標を明示したんだけど、最終処分量とかごみの発生量という出口だけでなく、「資源生産性」といういわば入口の指標を公表した【2】

Aさん資源生産性?

H教授前回、資源と環境を一体にとらえるべきだと言ってただろう? やっぱり環境省でも似たような問題意識を持っていたようだ(→第1講より)。

Aさんセンセイの場合は外国人の名刺からの思いつきだけでしょう。

H教授うるさい。単位あたりの投入資源で生み出すGDP量をどれだけ増やすかって目標を立てたんだ。いままでの資源生産性の推移もデータとして出しているんだけど、現在でも世界一だし、バブル崩壊以降のいわゆる「失われた十年」の間も一貫して上昇していることがわかる(→図2)。したがって、これをさらに増やすとともに、その投入資源中の循環資源の割合も増やそうってわけだ(→図3)。

図1 平成12年度 日本における物質フローの模式図 (環境省発表資料をもとに作成)



Aさんどういう手段で? それに環境省にそんな政策手段はあるんですか。

H教授残念ながら担保はなにもないし、政策手段ももってない。規制的手段ではむつかしいから、税制その他で経済的に誘導していくしかないんだけど、それは財務省や経産省がどれだけこの基本計画という閣議決定に協力的かによる。それとさっきも言ったように、市民パワーがどれだけ発揮できるかにかかっている。ま、それでも意欲的なんじゃないの。
ただねえ、ぼくは結果的にはGDPは減少してもやむをえないと思っているんだけど、最終的にGDPをどこまで伸ばせるのか、伸ばせばいいのか、という点をまったく議論していないのは残念だねえ。他にはなんかなかったかい?

脱ダム宣言と淀川水系流域委員会提言について

Aさんそう言えば1月に淀川水系流域委員会が脱ダムを提言しましたねえ【3】。あれには国土交通省も怒り狂ってるんじゃないですか。

図4

H教授そんなことはないよ。国土交通省も承知の上の出来レースに決まってるじゃないか、委員を選ぶのは国土交通省なんだから。つまり、国土交通省は大きな反対運動が予想できるようなところでのダム建設はあきらめるって遅まきながら宣言したんだと思うよ。
そしてこれからは人目につくところでは環境配慮型事業、さらには自然再生型事業にも軸足を置くようになるんじゃないかな。彼らだってだれからも歓迎されないようなものはもうヤーメタってことになったんだと思うよ。
自然再生推進法が1月1日に施行され、27日には基本方針案を発表した【4】し、3月には第3回世界水フォーラムが関西で開かれる【5】。こうしたものを睨んでの発表じゃないのかな。

Aさんへえ、すごい方向転換ですね。全国的にそうなんですか?

H教授そんなことはないよ。旧来型の首長で、住民も目立った反対をしないところでは、必要性もコストパフォーマンスも関係なくやっていくと思うよ。ただ重要なのは、かなりの住民が反対し、マスコミでもそれが大きく取り上げられるような公共事業は、もはやムリ押しが効かなくなってきたということだと思うよ。

Aさんそのまえからもあったじゃないですか、白保空港だとか、藤前干潟、三番瀬、吉野川第十可動堰、愛知万博、中海干拓、諫早干拓(→図4)。そうしたものの教訓を学んだということですか。

H教授そう、よく知ってるね。キミがいま挙げた例は国際的なNGOが反対してきた例が多い、なんせ日本は外圧に弱いから。でも、いまやそれにとどまらなくなってきて、環境省の先手を打って方針転換を図ったんだと思うよ。

環境アセスメント私論

Aさんだけど、環境アセスメント【6】がそういうことのためにあるんじゃないですか。そういう公共事業の必要性と環境影響のマイナス面とを比較する仕組みじゃないんですか?

H教授ちがうよ。アセスは基本的に環境にもっとも配慮された空港だとか道路だとか港湾を作るためのツールにしか過ぎない。空港や道路、港湾の必要性や効果、コストパフォーマンスまで問うものではないよ。

Aさんえ? そうなんですか。だけどアメリカなんかじゃ、なにもしないという選択肢も含めて代替案をいくつも準備してアセスをやるんでしょう。

H教授それはそうなんだけど、日本のアセスの制度と運用は少しちがうんだ。事業の必要性をどう判断するかについては、また後で触れるとして、日本のアセスメントがアワスメント【7】だと言われてきたのを知ってるよね。ま、これはこれでやむをえない面があった。だって、日本の場合、事業の構想・計画時点で環境部局との調整だとか非公式の各省協議があって、そこで必要なら縮小などの変更を行い、実質的な調整がついてはじめてアセスするのが通例だったからね。だから、環境部局や環境省のがんばりでやめたものだって結構あるんだけど、それは表にでないからね。いま話題になったのは調整がつかないまま事業部局、事業官庁が突っ走ったものが多い。

Aさんセンセイ、センセイも係わったものもあるんでしょう? その話をしてください。センセイのつまんない一般論より、そういう生臭い話が聞きたい。

H教授わかった、わかった。でも、それは次回にしょう。乞うご期待だな。

H教授さて、閣議アセス【8】からアセス法アセス【9】になって大きく変わった点がいくつかある。
それは計画の早期の時点で、事業計画が公開され、一般市民が意見が述べられるようになったこと、そして環境基準をクリアしてるかどうかだけでなく、環境影響を最小限にするための最善の努力、いわゆるミテイゲーション【10】をしたかどうかという視点を評価に取り入れたこと、さらに生物多様性の確保、住民の自然との触れあいという観点からも評価するようになったことが挙げられる。

Aさん最初の2つはなんとなく分かるんですけど、最後の点は?

H教授大体貴重な動植物や自然なんて、わざわざアセス調査するまでもなくわかってることが多いから、そういう場所はふつう外して計画する。でも貴重な自然でなくても、生物多様性の観点から生態系を評価する、また、住民の自然との触れあいということになれば、いわゆる里山なんかも評価の対象になる。

Aさんなるほど愛知万博の海上の森がそうだったですね。でもなんで海上に森があるんだろう?

H教授(相手にしない)愛知万博も計画を検討する段階でシデコブシとかサクラバハンノキといった貴重種があるところをはずしたんだ。そのうえで施設計画を作ってアセスを始めたんだが里山を潰すなという大合唱が起こった。
もっと効いたのは生物多様性の評価で、その一つとして上位性という考えを環境庁が示したこと。つまり食物連鎖の頂点にいる動物が重要になった。

Aさんそれがなにか?

H教授貴重種のありかは文献を調べればあらかた判るけど、上位種として典型的な猛禽類の営巣地は文献ではよく分からないんだ。アセス調査ではじめてワシ、タカの営巣が確認されたりしたら、事業者にとってピンチになるし、反対派にとっては絶好の攻撃材料になる。愛知万博もそれが効いた。オオタカの営巣地がアセス調査で見つかったんだ。
ダメ押しは博覧会国際事務局(BIE)【11】のクレームだったけど。

ミテイゲーション私論

Aさんじゃ、事業官庁はアセスに戦々恐々ですか。

H教授そんなことはないよ。アセスに金をかけたり、アセス対応でミテイゲーションすることはある意味では生き残り作戦でもある。

Aさんどういうことですか? 頭がこんがらかってきたじゃない。

H教授ミテイゲーション、つまり環境影響緩和措置にもいろいろある。環境影響をゼロにするのは計画を断念することが考えられる。でもふつうは断念などするわけないから、いろいろカネをかけてマイナスの影響を小さくしようとするし、極端な場合は壊した自然と同量同質のものを別の場所に造成することだってある。

Aさんそんな馬鹿な。わざわざ丸坊主にしてカツラを被るようなもんじゃないですか。

H教授例えば干潟を埋め立てする場合には、埋め立てた前面か近くに同じだけの干潟を造成することなんてよくやられてるよ。藤前干潟だってそうしようとしたんだから。人工海浜なんかもそうだ。これを代償(ダイショウ)ミテイゲーション【12】という。いろんなやりかたがあるけどね。

Aさん規模もさまざまなんですね? だからダイショウ(大小)ミテイゲーションか。

H教授(無視して)組織が一番困るのは、仕事がなくなって予算と組織が小さくなることだよ。もうあらかた必要な事業を終えたとしても、ムリにでも理屈をこねて、仕事を作って予算を確保し、組織を維持拡大しようとする。そうすれば土建屋も喜ぶし、しかもそれで地域が一見うるおう。最近の公共事業ってそういうのが多いよ。
組織にとっては造られるものが必要なわけじゃなくって、造るための事業(仕事)が必要なんだ。だからミテイゲーションで事業ができるなら大助かりという面だってあるんじゃないかな。

Aさんそれで環境が守れるんなら、それに越したことないじゃないですか。

H教授さして必要とも思えない、新しい公共事業とそのミテイゲーションの費用はだれが払うの?

Aさんあ、そうか。廻り廻ってワタシたちやこれから生まれる世代のところに来るんだ。なるほどこの社会ってちゃんと循環してるじゃないですか。

H教授(聞いてない)もはや700兆円とかいわれる借金を未来の世代にしてるんだよ。


戦略アセスと政策決定システム

H教授だからほんとうに必要なのは、そうした公共事業がほんとうに必要かどうかだよね。 で、さっきも言ったように、アセスは本来そのための場じゃないんだけど、開かれた政策決定システムが不在だし、閣議アセスよりも早期に、かつより広範な市民の声を聞くようになったから、反対派・批判派はアセスをそういう場の代替として使いかねないということさ。 だからこそ、最近では戦略的環境アセス(SEA)ということが言われている【13】

Aさんなんですか、それは?

H教授個々の事業計画に先立つ、政策や計画についての環境アセスメントのことだよ。例えば高速道路については、個々の路線が決定してからでなく、もっと漠然とした全国高速道路網計画立案の時点でアセスを行うことをいう。
その戦略的アセスを政策決定システムと統合させようというのが環境省の狙いみたいだね。ただ、問題は政策決定システム自体の公開性・透明性が未だ欠けているということ、そして財源の問題だね。多くの公共事業は国の補助金で地方自治体が事業主体になっている。だから国から補助金を取ってきて新しい公共事業をやるのが首長の腕みたいに思われてるんだけど、それじゃ、地方の時代なんて絶対こないね。税制を変えて大半は地方税にしなくっちゃダメだよ。そうすれば収入の範囲で支出を考えるって健全な姿になるよ。

※大雑把に言うと税収は国が2で地方が1、実際使うのは国が1で地方が2。国から地方にその分補助金、交付金が流れていて、地方をいままで支配してきた。

そうしないといつまで経っても、オール与党で、ろくに議論もせず、ひたすら国頼みになってしまう。大体野党といったって地元はたいていは開発推進派だったし、開発に懐疑的な市民だって、いろんなしがらみがあるから、選挙になれば推進派に投票するってケースを腐るほど見てきてるからね。
でもここへきてだいぶ変わりつつある。三番瀬だとか、この淀川にしてもそうだけど、NGOや市民の声を聞く円卓会議【14】のようなものがはじまったのに注目しておきたいね。まだまだ夜明けは遠いけど、やっぱり地方からしか夜明けは始まらないと思うよ。

Aさんでもそうすると地方と都会の格差がますます広がる一方じゃないですか。

H教授お、キミもいいこというようになったねえ。でもねえ、少々貧しくたって豊かな自然と暖かい共同体に育まれたのんびりした暮らしの方がほんとうはリッチかも知れないよ。それに水源税だとか通過税だとか、都会からカネを環流させる知恵をみんなで絞るということだってあるんじゃないかな。ま、今日はこのあたりにしておこう。あ、それからこの特別講義は隔月じゃなく、毎月になったからな。

Aさんえー、そんなのいきなりヒドイじゃないですか。どうして断ってくれなかったんですか。

H教授しかたないよ。これも浮世の義理だ。それだけ反響が大きかったと思えばいいじゃないか。

Aさんあーあ、もう恥ずかしくって街を歩けないよ。
でも、こんどこそ、センセイの生々しい経験談を話してくださいね!
でないと、もうドロン(死語)して指導教官を変えますからね。


注釈

【1】「循環型社会形成基本計画(案)と資源生産性」
環境省では、循環型社会形成推進法(2000年6月制定)第15条の規定に基づく同基本計画(循環基本計画)策定のための検討を行っている。
現在、中央環境審議会環型社会計画部会においてとりまとめられた循環基本計画案が2003年1月28日(火)に公開され、2月17日(月)までの期間で広く一般からの意見募集を行っている。
循環型社会の形成に向けて、経済社会におけるものの流れを全体的に把握するための「物質フローの模式図」(図1)を作成し、3つの断面を代表する指標、資源生産性(入口)・循環利用率(循環)・最終処分量(出口)と、それぞれの数値目標を設定している。
なお、循環基本計画は、2002年9月に開催されたヨハネスブルク・サミットで国際合意された実施計画に基づき、各国が策定する持続可能な生産・消費への転換を加速するための10年間の枠組みとしても位置づけている。
各国が策定する10年計画を同じ指標によって立てることで、地球全体の資源保全・有効利用に資することから、特に先進諸国の協調をめざして「資源生産性」の共通指標化をG8環境相会合などの国際会議の場で呼びかけたいとしている。
循環型社会形成基本法
循環基本計画案に対する意見募集
循環基本計画(案)(PDFファイル)
【2】「資源生産性という指標」
資源資産性は、産業や人々の生活がいかにものを有効に利用しているかを総合的に表す指標として環境省が提案。有限であり、かつ、採取に伴って環境負荷が生じる天然資源やそれを用いて製造された輸入製品などは、利用後など最終的には廃棄物等となる。
このため、より少ない投入量で効率的に生産活動を生み出すことができれば、環境負荷の軽減につながると考え、国内総生産(GDP)に対する天然資源等投入量の比率として「資源生産性」を算出することを提案している。
なお、「天然資源等投入量」とは、国産・輸入天然資源および輸入製品の量を示し、直接物質投入量(DMI)とも呼ばれる。

資源生産性の推移(環境省資料より作成)


バブル崩壊以降のいわゆる「失われた十年」の間も一貫して上昇していることがわかる。

【3】「淀川流域委員会と脱ダムの提言」
平成9年の河川法改正により、河川管理の目的として、従前の「治水」・「利水」に加えて、「河川環境の整備と保全」が追加されている。
これまでの「工事実施基本計画」に替わり、長期的な河川整備の基本となるべき方針を示す「河川整備基本方針」と、今後20?30年間の具体的な河川整備の内容を示す「河川整備計画」が策定されることになった。後者では、地方公共団体の長や地域住民等の意見を反映する手続きを導入。これに基づき、全国20水系で流域委員会が設置され、すでに8流域において整備計画が作成されている。
淀川水系の整備計画についての意見を聴く場として2001年2月に近畿地方整備局により設置された「淀川水系流域委員会」は、河川や防災、環境などの専門家や自然保護活動団体の代表など55人で構成。2003年1月にまとめた同委員会の提言「新たな河川整備をめざして ?淀川水系流域委員会 提言?」では、ダムについて「生活の安全・安心の確保や産業・経済の発展に貢献してきている」と評価する一方で、「地域社会の崩壊など」をもたらすことや「河川の生態系と生物多様性に重大な悪影響を及ぼしている」などと批判し、計画段階や工事中のものも含めて「原則として建設しない」と明記した。
淀川水系流域委員会
同 脱ダムの提言について
【4】「自然再生推進法」
過去に損なわれた自然環境を取り戻すため、行政機関、地域住民、NPO、専門家等多様な主体の参加により行われる自然環境の保全、再生、創出等の自然再生事業を推進するため、2002年12月議員立法により制定された法律。所管は環境省、農林水産省、国土交通省。
自然再生の基本理念として多様な主体の連携、科学的知見やモニタリングの必要性、自然環境学習の場としての活用等が定められており、また、自然再生を総合的に推進するため「自然再生基本方針」を定めることとされている。
この他、自然再生事業の実施に当たっては、関係する各主体を構成員とする「自然再生協議会」を設置することや「自然再生事業実施計画」を事業主体が作成すること等が定められている。
自然再生基本方針案へのパブリックコメント (→2月24日まで/締め切り済み)
自然再生推進法について(環境省自然環境局)
基本方針案(PDFファイル)
【5】「第3回 世界水フォーラム」
来る3月16日から23日に、琵琶湖・淀川流域の2府1県、京都・滋賀・大阪を会場に開催される国際大会。水問題を通じて地球の将来について考え、行動につなげていくことを目的としている。参加人数は8千人を超える見込み。
国際シンクタンクの「世界水会議」が呼びかけてはじまったもの。1997年3月にモロッコのマラケッシュで開催された第1回世界水フォーラムで「世界水ビジョン」の作成が提案され、2000年3月にオランダのハーグの第2回でビジョンが発表された。第3回では、これを実行するための方法論や問題点などについて、各地の現場での経験を分かち合いながら議論される。
会期の最後、22・23日には世界の水担当閣僚による閣僚級国際会議も行われる。フォーラムにはNGOや一般市民も参加登録できるほか、水に関するフェアや子ども水フォーラムなども開催される。
第3回世界水フォーラム
【6】「環境アセスメント」
道路、ダムなど、環境に著しい影響を及ぼす恐れのある行為について、事前に環境への影響を十分調査・予測・評価し、結果を公表して地域住民など関係者の意見を聞き、環境配慮を行う手続を総称して「環境アセスメント」と呼ぶ。
1969年に米国で法制化されたNEPA(国家環境政策法)に環境アセスメントの沿革が求められ、環境配慮のための民主的意思決定、科学的判断形成方法として考案されたのが、もともとの意味。米国では複数の代替案から最適案を選出する手続が最大の特徴となるが、国による諸事情を反映した制度構築が試みられている。
日本における環境影響評価法に基づく環境アセスメントでは、代替案の比較検討は必須要件ではなく、環境基準等の環境保全目標の遵守や環境影響の低減に向けた方策等により評価することとしているが、評価手法、評価手続の客観性の確保、環境アセスメントの結果そのものの拘束力の確保など、多くの課題が指摘される。
【7】「アワスメント」
形式上実施されるだけで、結果は「環境に及ぼす影響は軽微である」などと事業計画を追認するにすぎないことの多い現状の環境アセスメント制度を批判的に揶揄するもの。計画に評価を「合わす」とアセスメントの語呂合わせによる造語。
日本では事業計画立案時に環境部局と非公式に協議し、必要があればその時点で縮小や計画変更を行うなどの調整が整ってはじめてアセスメント手続きに入ることが一般的であり、アワスメント的な環境アセスメントになるのはやむをえないとの指摘もある。
【8】「閣議アセス」
1984年に、国レベルの大規模事業を対象とする環境アセスメントの実施が閣議決定され、環境アセスメントの要綱が作成された。これに基づく環境アセスメントを、通称、「閣議アセス」と呼ぶ。この閣議アセスに基づく環境アセスメントは、環境影響評価法が全面施行された1999年6月まで実施され、案件は448件に及んだ。
環境アセスメントの法制化作業は、1972年「各種公共事業に係る環境保全対策について」の閣議了解が行われた頃にはじまる。
1981年に当時の環境庁により国会提出されたものの審議は終了せず、1983年までに3回に渡って継続審議されたが、産業界や政府内部の反対を受けて難航し、審議未了のまま断念、廃案となった。閣議アセスはこれに代わって制度化されたもの。
【9】「アセス法アセス」
環境影響評価法の手続により行われる環境アセスメントの略称・通称。これに対して、法制定以前の閣議決定に基づいて行われた環境アセスメントは、しばしば「閣議アセス」と称される。
環境影響評価法は、施行からまだ年月が短いことから、このような過渡的な略称・通称が用いられている。
【10】「ミティゲーション」(環境影響緩和措置)
人間の活動によって発生する環境への影響を緩和、または補償する行為をミティゲーションと呼ぶ。急激な湿地帯の減少に対処するため、1970年頃に米国で生まれた。ミティゲーションの対象は、現在でも湿地が主流となっているが、必ずしも湿地に限るわけではない。米国の大統領府直属の環境諮問委員会(CEQ)による整理では以下の5段階をあげている。
1) 回避(Avoidance):ある行為をしないことで影響を避ける。
2) 最小化(Minimization):ある行為とその実施に当たって規模や程度を制限することによって環境に与える影響を最小化する。
3) 修正・修復(Rectifying):影響を受ける環境を修復、回復、復元することによって、環境に与える影響を矯正する。
4) 軽減(Reduction/Elimination):ある行為の実施期間中、繰り返しの保護やメンテナンスを行うことで環境に与える影響を軽減もしくは除去する。
5) 代償(Compensation):代替資源や環境を置き換えて提供することで、環境へ与える影響の代償措置を行う。
より簡易に、「回避」、「低減」、「代償」の3段階に分類することも多い。
これらの5ないし3段階はその順に検討することとされるとともに、米国では、ミテイゲーションの結果、環境影響をトータルでゼロにするノーネットロス原則が前提となっている。日本ではアセス法アセスの評価においてミティゲーションの考え方が採り入れられたと言われているもののノーネットロス原則は前提とされていない。
本来的意味合いから離れ、代償ミティゲーションのみをミティゲーションとみる矮小化されることも多い。
豆知識:「海上の森(かいしょのもり)」
瀬戸市郊外の里山。内陸部にあって「海の上にある森」と記す地名の由来は諸説あるが、太古に東海地方が海の底に沈んでいた頃、この辺りだけ海の上にあったとする説、かつては他に先駆け開いた場所という意味の「開所」から代わったとする説が有力。
「東海丘陵要素植物群」と呼ばれる固有の希少種が群生するほか、オオムラサキやオオタカの生息・営巣なども確認されている。
【11】「博覧会国際事務局(BIE)」
国際博覧会条約(1928年制定)の運用管理と保証の確保を目的として、1928年にフランスのパリに設立。2000年5月現在の加盟国は、88カ国。
5年に1回を越えない頻度で開催する国際博覧会(登録博)と、発展途上国などでの開催機会を設けるために、5年を経ずに1回だけ開催が認められる小規模の博覧会(認定博)がある。これらの開催計画の審査と開催の承認、また博覧会の運営についての指導、助言及び監視をおこなっている。
【12】「代償ミティゲーション」
開発等の行為に際して、代替資源や環境を置き換えて提供することで、環境へ与える影響の代償措置を行うことを、代償ミティゲーションという。例えば、干潟を埋め立てする場合には、消失する干潟の前面や近くに同じだけの人工干潟を造成するなど。
日本ではミテイゲーションといえば代償ミテイゲーションを指すことが多いが、元来はミテイゲーションの諸段階の中でもっとも検討優先度の低い、いわば最後の手段にあたる概念とされる。
【13】戦略的環境アセス
事業計画が固まった段階で行う現行の環境アセスメント(いわゆる事業アセス)より早期の、事業実施段階(Project段階)に至るまでの行政意思形成過程(戦略的な段階)に対して実施する環境アセスメント。
戦略的段階とは、一般的に「Policy(政策)>Plan(計画)>Program(プログラム)」の3つのPをさすと説明されるが、抽象的であり、具体的にどの段階から戦略的環境アセスメントとなるか、厳密な定義は難しい。従前、計画アセスとよばれていたものより概念的には広い。
計画熟度が高まった事業の実施段階より、環境配慮の柔軟な取り込みがしやすいと期待される。環境庁(現・環境省)では、2000年8月に戦略的環境アセスメント総合研究会報告書をまとめ、現在、導入に向けた検討が再開されている。また先進的な自治体において、戦略的環境アセスメントを試行しているところもみられる。
【14】円卓会議
公共事業などの政策や計画の立案に際して、これまで住民等の意見を反映する機会や仕組みはほとんどなかった。近年の環境意識の高まりや住民紛争の頻発等を受け、行政による市民参加の受け入れの動きも出てきた。手法のひとつに円卓会議がある。
円卓会議では、利害関係者や市民の代表が一堂に会して話し合いを重ね、合意形成をめざす。意見対立を経て対話が前進するなど一定の成果をあげる事例がみられたことなどから、全国的に注目され、広まってきている。