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No.294

Issued: 2024.12.17

国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)に参加して公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES) 所長 小野 洋

目次
1.COP29の成果
2.サイドイベント会場から
3.おわりに

1.COP29の成果

COP29会場

COP29会場

 気候変動枠組条約やパリ協定の実施に関する様々な課題を締約国間で議論するため毎年1回締約国会合が開催されています。第29回目となるCOP29は、2024年11月11日(月)から11月24日(日)の間、アゼルバイジャン共和国の首都バクーで開催されました。当初予定していた会期を2日間延長して交渉が行われ、気候資金の数値目標などの成果が取りまとめられました。
 今回のCOP29は当初から資金COPと称され、2025年以降の気候資金の数値目標が最大の課題でした。結果として、「2035年までに少なくとも年間3,000億ドル」の途上国支援目標が決定されました。これは2025年までの目標額の3倍に相当する額です。さらに、全てのアクターに対し、全ての公的及び民間の資金源からの途上国向けの気候行動に対する資金を2035年までに年間1.3兆ドル以上に拡大するため、共に行動することを求める旨も決定されました。
 もうひとつの大きな成果は、パリ協定第6条の完全運用化です。国際的な市場メカニズムに関しては、すでにその実施に必要なルールは合意されていましたが、今回、細目も含めて完全運用化が実現しました。これにより、環境保全やSDGsに配慮した質の高いカーボン・クレジットの国際取引が活発になることが期待されます。
 そのほか、緩和作業計画、適応に関する世界全体の目標、グローバル・ストックテイクなどについても議論が行われました。

2.サイドイベント会場から

 COPでは政府間の交渉に加えて、むしろそれ以上に盛大にさまざまなサイドイベントが開催されます。COP29でも、各国、国際機関、NGO団体などがパビリオンを設置し、趣向を凝らした展示や活動内容をアピールするイベントを行っていました。筆者は、COP29の第1週目にサイドイベント等に参加する機会を得ましたので、感想を交えて紹介したいと思います。なお、掲載写真はすべて筆者が撮影したものです。


【COP29パビリオンエリアに設けられた各国のパビリオン】

日本パビリオン

日本

ウクライナパビリオン

ウクライナ

インドネシアパビリオン

インドネシア


 今回特に目についたのが、カーボン・クレジットに関するイベントです。各国の削減目標を深掘りし、同時に民間投資も促進する点から、パリ協定6条の国際的な炭素市場ルールの完成が交渉でも一つの焦点でした(前述)。サイドイベント会場でも、日本、韓国、シンガポール、ブラジルなどの国々に加え、国際機関や民間団体パビリオンでも、多くの関連するイベントが開催されていました。数年前は日本などごく限られた数でしたが、いよいよ本格化する機運が感じられます。ちなみにIGESは、このパリ協定6条の実施支援センターの事務局を務め、途上国の能力強化を支援しています。


【パリ協定6条に関するサイドイベント】

UNFCCCパビリオン

UNFCCCパビリオン

ブラジルパビリオン

ブラジルパビリオン

UNFCCC公式サイドイベント

UNFCCC公式サイドイベント


 また、政府の取組だけでなく、さまざまなステークホルダーが参加するイベントも数多く開催されていました。気候変動は非常にすそ野の広い取組が必要で、政府だけに任せていればよいというものではありません。IGESでも力を入れていますが、都市のユニークな取組を情報共有して、横展開、スケールアップするための熱のこもった議論が行われていました。下の写真は、日本パビリオンで行われた都市の取組に関するイベントで、東京都の小池百合子知事、さいたま市の清水勇人市長、クアラルンプール市のマイムナハ・モヒド・シャリフ市長、カリフォルニア州環境保護庁のヤナ・ガルシア長官などが参加されていました。ガルシア長官からは「大統領が変わっても州の気候変動対策が弱まることはない!」という力強い発言もありました。


都市の取組に関するイベント

都市の取組に関するイベント


 ユース団体が主催するイベントもありました。日本を始めとする大学生らのユース団体の参加者が、自分たちの取組を共有し、真摯な議論を交わす姿が印象的でした。


議論を交わすユース団体の参加者

議論を交わすユース団体の参加者


3.おわりに

 市内や最寄りの駅から会場への足として、数多くの電動バス・タクシーが使われており、とても快適に利用できました。また大勢のボランティアが配置されていてとても親切に対応していただきました。この場をお借りして感謝の意を表したいと思います。


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〜著者プロフィール〜

岡山県出身。東京大学工学系大学院修士課程修了(都市工学専攻)。1987年環境庁(現環境省)入庁。自動車環境対策課長、廃棄物・リサイクル対策部企画課長、大臣官房審議官(地球環境担当)、水・大気環境局長、地球環境局長などを歴任し、環境省地球環境審議官を最後に退官。2024年1月より公益財団法人地球環境戦略研究機関特別政策アドバイザー、2024年9月より現職。