No.292
Issued: 2024.08.07
これからのファッションを持続可能に
ファッション産業は大量生産・大量消費・大量廃棄により、製造にかかる資源やエネルギー使用の増加、ライフサイクルの短命化などから環境負荷が非常に大きい産業と言われるようになり、国際的な課題となっています。このため、衣服の生産から着用、廃棄に至るまで環境負荷を考慮したサステナブルなファッションへの取組が近年急速に広がっています。
また、政府では2050年カーボンニュートラル及び2030年度削減目標の実現に向けて、国民・消費者の行動変容、ライフスタイル転換を強力に後押しするため、「デコ活」を展開しています。私たちが生活者として、サステナブルなファッションの取組を行うことも「デコ活」の一つです。
どのようなことが出来るか一緒に考えていきましょう。
1.ファッション産業の特徴と環境負荷の実態
ファッション産業では、衣服を作る工程において、原材料の調達、紡績、染色、裁断・縫製と様々な工場で分業されていることが多く、日本の小売市場で売られている衣料品の約98%が海外からの輸入です。
また、服一着を作るにも多くの資源が必要となり、それぞれの段階で環境負荷を与えています。製造プロセスではCO2が排出され、原料となる植物の栽培や染色などでも大量の水が使われます。生産過程で余った生地などの廃棄物も出ます。
そんなファッション産業ですが、国内における供給量は増加する一方で、衣服一枚あたりの価格は年々安くなり、市場規模が下がっています。衣服のライフサイクルの短期化や低価格化がより多くの服を生み出し、消費される、いわゆる大量生産・大量消費型に拡大しているのが現状です。
2.手放したあとの行方
みなさんはどんな方法で服を手放していますか?大きく分けて、「リサイクルショップなどで古着として譲渡や売却をすること」、「資源として回収してもらうこと」、「可燃ごみ・不燃ごみとして廃棄すること」、の3つがあげられますが、3つ目の可燃ごみ・不燃ごみとして手放されることが最も多く2022年度の調査では全体の約7割を占めています。焼却・埋め立てされる衣類の総量はなんと1日あたり1,200トンと言われており、これは大型トラック120台分に及びます。
手放した服がリユース・リサイクルされるのは約34%となっておりますが、その中には海外への輸出も多く、輸出された後の実態は把握できていません。国内で再利用・再資源化される割合はごくわずかです。
3.わたしたちができること
この現状に対して、わたしたちが取り組める5つのアクションを紹介します。
1つ目は、今持っている服を長く大切に着ること。適切なケアをして服を長持ちさせたり、お直しをすることなどで今所有している一着を長く着ることで環境負荷を減らせるだけでなく、愛着も沸いてきます。
2つ目は、リユースすること。シェアリングサービス等を活用することで購入しなくても様々なアイテムを気軽に試すことができます。また、古着を楽しむことも環境に優しく、経済的です。
3つ目は、先のことを考えて買うこと。セールなどで安いからと言って衝動的に買い、そのまま着ていない衣服はありませんか?本当に必要かどうかを見極めましょう。長く着ることができる品質を選ぶことも大切です。
4つ目は、作られ方を見ること。商品タグや表示ラベルを見たり、店員さんやブランドに聞いたりしてどのようにして服が作られているのか確認してみましょう。自分の着ている衣服がどんなストーリーを持って作られているか分かるのも楽しいですね。
5つ目は、服を資源として再活用すること。古着回収をしている店舗や自治体に持ち込み、資源として回収してもらいます。可燃ごみ・不燃ごみに出せば廃棄、焼却されてしまいますが、処分の方法を変えるだけで衣服も生まれ変わります。
現状、リサイクルについては技術面やコスト面での課題も多く、まずは服を服のまま使用することが最も重要です。
4.おわりに
ファッションは暮らしを彩り、豊かにします。
また、価値を創造し、時代を作ります。
そんなファッション産業を守るためにも、私たちが出来ることから始め、楽しみながら将来世代の環境を大切にしていきましょう。
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〜執筆者〜
環境省地球環境局地球温暖化対策課デコ活応援隊(脱炭素ライフスタイル推進室)
令和4年10月から「デコ活」を展開中!