フロン類の排出増加
HFCの2020年排出予測と機器使用時の漏えい源の内訳
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冷凍空調機器と呼ばれるエアコンや冷凍・冷蔵機器の冷媒として使用されているフロン類は、紫外線から地球上の生命を守るオゾン層を破壊してしまう物質として、国際条約に基づいて生産量及び消費量が規制されています。代わって使われるようになったのが、オゾン層破壊効果のない代替フロン(HFC(ハイドロフルオロカーボン))ですが、このHFCは、二酸化炭素の数千倍も高い温室効果を示すため、地球温暖化防止のために排出を抑える必要があります。
我が国では平成13年に「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(フロン回収・破壊法)」を制定し、フロン類の排出削減に取り組んできましたが、代替物質として使用されるHFCの排出量が増加してきて、問題視されています。
また、フロン類の排出は、冷凍空調機器の廃棄時だけでなく使用時における漏えいの問題が指摘され、機器の管理も大きな課題となってきました。
こうした社会的要請を背景に、平成25年6月にフロン回収・破壊法が抜本的に改正され、新たな内容を加えた「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(フロン排出抑制法)」が本年(平成27年)4月から施行されることになりました。
改正法の全体像
フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(フロン排出抑制法)の概要
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法改正の目的は、これまでのフロン回収・破壊にとどまらず、フロン類の製造から廃棄に至るライフサイクル全体の包括的な対策を講じることにあります。関係主体ごとに取り組むべき具体的な内容について、以下に紹介します。
ガスメーカーによる取り組みでは、フロン類の代替物質の開発等を進めて、新規の製造量・輸入量の削減をめざします。
製品メーカーによる取り組みでは、フロン類を使用する製品について、国内外の技術進歩や市場の動向等を踏まえつつ、ノンフロン製品や地球温暖化への影響が少ない低GWP製品への転換を促します。
業務用の冷凍空調機器で冷媒にフロン類を使用している第一種特定製品を所有する「管理者」には、その使用等に際してフロン類が漏えいしないように、適正な管理を求めます。
また、フロン類の回収に加えて充填する場合も業の登録制とし、適正なフロン類の取り扱いがなされるような体制を整えるとともに、従来は原則として破壊するのみだった回収後のフロン類の再生利用を図ることになりました。このため、新たに国の許可による再生業を設けています。
機器ユーザーによる冷媒管理の徹底
管理者に求められる点検の内容
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業務用エアコンの修理(社団法人 日本冷凍空調設備工業連合会提供)
今回の法改正によって、特に規制対象が大きく広がるのが、第一種特定製品の「管理者」です。「管理者」は、原則として当該製品の所有権を有する企業・法人が該当します。官公庁も公的施設に業務用エアコンが多く使われているため、対象に含まれます。
管理者は、従来どおり冷凍空調機器の整備時や廃棄時にフロン類の回収が行われるように適正な処理を依頼する義務を負うとともに、今回の法改正によって機器使用時におけるフロン類の漏えい防止にも取り組むことが求められるようになりました。
(1)機器使用時におけるフロン類の漏えい防止対策
第一種特定製品の管理者は、機器使用時におけるフロン類の漏えい防止を図るため、次のような「管理者の判断基準」の遵守が義務付けられます。遵守の状況については、各都道府県が指導・監督を行います。
- [1] 機器の設置環境・使用環境の維持保全
機器が損傷しないような場所への設置等が必要です。
- [2] 簡易点検・定期点検
管理する機器の種類や規模に応じて、右表のような点検を行う必要があります。
- [3] フロン類の漏えい時の措置
点検等の結果、漏えいや故障などが確認された場合には、修理を完了するまで原則としてフロン類の充填が禁止されます。
- [4] 点検・整備の記録作成・保存
管理する機器について、点検や修理の実施状況、充填・回収したフロン類の種類・量等を記録して、機器を廃棄するまで保管する必要があります。
(2)フロン類漏えい量の算定・報告・公表
フロン類の年間漏えい量が二酸化炭素換算量で1,000トン(例えばR410a冷媒であれば約500kgに相当)を超える機器の管理者は、フロン類の漏えい量等を国(事業所管大臣)へ報告することが義務付けられました。その量は、環境省・経済産業省が集計して、事業者名等とともに公表します。漏えいの実態を公表することで、事業者の自主的な取り組みをより一層促進することが期待されます。
フロン類の漏えい量は、都道府県に登録されている「第一種フロン類充填回収業者」から交付される「充填証明書」及び「回収証明書」を元に、追加充填量を計算して算出します。算定漏えい量の第1回目の報告(平成27年度分)は平成28年の7月末日までに行うことになるため、充填証明書や回収証明書を保管しておくか、整備の記録を確実にとっておくことが必要となります。
(3)フロン類の充填及び回収の委託義務
第一種特定製品を整備する場合、冷媒であるフロン類を充填したり、抜き取って回収したりする必要があるときには、第一種フロン類充填回収業者に委託する必要があります。特に充填については、従来は自ら実施することもできましたが、改正法が施行された後は、第一種フロン類充填回収業者に登録されない限り禁止されるため、注意が必要です。
充填または回収の際には、前述のとおり「充填証明書」又は「回収証明書」が交付されますが、国が指定する情報処理センターを利用することにより、これらの証明書を電子的に受理し、管理することが可能となります。
このように、本年(平成27年)4月に改正法が施行されると、業務用冷凍空調機器にかかわる事業者には多くの取り組みが求められます。
日本の多くの企業は、すでに省エネルギーの推進、再生可能エネルギーの導入など様々な地球温暖化対策に取り組んでいますが、フロン類の管理についても第3の柱として位置づけ、積極的に対応されることをお願いいたします。