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No.219

Issued: 2013.05.14

国内における新たなCO2のクレジット制度が発足(環境省地球環境局地球温暖化対策課市場メカニズム室)「国内クレジット制度とJ-VER制度を統合した『J-クレジット制度』」

目次
J-クレジット制度創設の経緯
J-クレジット制度の概要
方法論について
プロジェクトの実施とクレジットの用途
今後の予定

 J-クレジット制度は、省エネ設備の活用や森林経営などの取組による、CO2などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として政府が認証する制度です。
 2012年度まで実施されていた「オフセット・クレジット(J-VER)制度」と「国内クレジット制度」が発展的に統合した制度で、2013年度から2020年度まで制度を実施いたします。
 この制度により創出されたクレジット(J-クレジット)は、カーボン・オフセットや低炭素社会実行計画の目標達成など様々な用途があります。数多くの取組に活用されることで、国内における温暖化対策の促進と、国内各地の温室効果ガス削減プロジェクトへの資金還流の効果が同時に達成できます。

J-クレジット制度の概要

J-クレジット制度の概要


J-クレジット制度創設の経緯

 国内において達成された温室効果ガス排出削減・吸収量をクレジットとして活用できる制度としては、京都議定書の第一約束期間の発効に合わせて2008年に創設された「オフセット・クレジット(J-VER)制度」と「国内クレジット制度」の両制度がありましたが、ともに京都議定書の第一約束期間の最終年である2012年度末で一旦終了することになりました。両制度は、活用機会が増加してきたのに伴って、重複する方法論が増加し、クレジットの活用方法も重複してきて、クレジットを創出する側からも活用する側からも改善を求める声が多く寄せられました。そこで、両制度の終了を一年後に控えた2012年4月から6月にかけて、環境省など関係省では、2013年度以降のクレジット制度の検討を行うため、有識者による「新クレジット制度の在り方に関する検討会」を開催しました。この検討会では、クレジットを創出する制度が併存している状況を解消し、制度の活性化を図る上で、2013年度以降のクレジット制度の継続に当たっては両制度を統合し、以下4つの理念に基づいて新制度を構築すべき、との提言をまとめました。

  1. 現行の両制度の優れている点を取り入れ、相互補完し、多様な主体が参加できる制度とする。
  2. 環境の観点からみて信頼が得られるものとするとともに、使いやすく適用範囲の広い利便性のある制度とする。
  3. 地域資源の活用による温室効果ガス削減に向けた地域の取組やクレジットの地産地消を後押しし、地域活性化につながるような制度とする。
  4. 国際的にも評価され、海外における取組においても参考とされるような内容となることを目指す。

J-クレジット制度の概要

 関係省では検討会の提言を受けてさらに検討を重ね、2013年4月から5月にかけて、「新しいクレジット制度準備委員会」を開催し、新クレジット制度を「国内における地球温暖化対策のための排出削減・吸収量認証制度」、略称として「J-クレジット制度」とすることを発表、制度の運営に必要な文書類及び排出削減・森林吸収の算定やモニタリング方法を取りまとめた方法論(あわせて「基本文書」としています)の素案について議論していただき、パブリックコメントを通じて基本文書としてとりまとめました。

制度文書体系

制度文書体系


 基本文書については、「実施要綱」として、J-クレジット制度の基本的方針及び原則、制度管理者、運営委員会、認証委員会等の業務並びにJ-クレジット制度を利用する方が従うべき要件及び手続を定めるものを上位に定めています。実施要綱の下には、排出削減・吸収活動のプロジェクトを行う方と審査を行う方のそれぞれの制度利用の手続を定めた「実施規程」、排出削減・吸収活動のモニタリング方法や算定方法、方法論やその策定方法を定めた「モニタリング・算定規程」、「方法論」、「方法論策定規程」を体系的に定め、制度を利用する方がどの文書を参照すればよいか明確にしています。

方法論について

 J-クレジット制度における方法論は、J-クレジットの創出に向けて、排出削減・吸収に資する技術ごとに、適用範囲、排出削減・吸収量の算定方法、モニタリング方法等を定めたものです。旧両制度それぞれに多数の方法論があり、重複もあったことから、J-クレジット制度開始に合わせて旧両制度の方法論を統合した結果、56種類の排出削減・森林管理プロジェクト用の方法論を当初案として選定しました(パブリックコメントを通じて正式にとりまとめました)。
 方法論は56種類に限定されるものではありません。新たな方法論のご提案を、方法論策定規程に沿った方法論案として申請していただければ、J-クレジット制度運営委員会の審議を経て、新規の方法論として加えることができるようになっています。

プロジェクトの実施とクレジットの用途

 J-クレジット制度により排出削減・森林管理プロジェクトを実施するには、採用する方法論を決定してプロジェクト計画書を作成し、第三者審査機関による妥当性の確認と、J-クレジット制度認証委員会による審議を経てプロジェクト登録を受ける必要があります。
 プロジェクトを一定期間実施したのち、プロジェクトによる排出削減・吸収量がクレジットとして発行されます。その手順は、基本文書およびプロジェクト計画書に沿ったモニタリング・算定を行い、算定した排出削減・吸収量について第三者審査機関による検証と、J-クレジット制度認証委員会による排出削減・吸収量認証を経て、J-クレジット登録簿にクレジットとして発行されることになります。

J-クレジット制度における手続の流れ

J-クレジット制度における手続の流れ


 プロジェクトを実施される方は、排出削減・森林管理プロジェクトを実施することで、以下のようなメリットが期待できます。

  • プロジェクト費用の一部を、クレジットの売却益によって賄うことができます。
  • 高効率設備へ更新等を行うことでランニングコストの低減が図れます。
  • 自主的な排出削減や吸収プロジェクトを行うことで、温暖化対策に積極的な企業、団体としてPRすることができます。
  • 創出したクレジットが地元に縁の深い企業や地方公共団体に利用されることで、地域内における関係の強化につながります。

 また、クレジットを活用される方は、入手したクレジットを以下のように活用できます。

  • 2020年のCO2削減の数値目標を設定した低炭素社会実行計画の目標達成に利用が可能です。
  • カーボン・オフセットなどへの活用により環境への貢献をPRし、企業や製品の差別化、ブランディングに利用可能です。
  • 省エネルギー事業によるクレジットを省エネ法の共同省エネルギー事業の報告として利用可能です。
  • 温対法の調整後温室効果ガス排出量の報告に利用可能です。

 J-クレジットの用途については、旧両制度のクレジット用途を幅広に設定しています。これからの社会情勢や基本文書の改定などにより、さらに多彩な用途が設定される可能性があります。

クレジットの用途

クレジットの用途

今後の予定

 J-クレジット制度は、2013年度の早期にプロジェクトの受付などを開始する予定にしています。受付開始時期や旧両制度で行っていた支援制度の内容など、最新の情報については、環境省など関係省の報道発表やJ-クレジット制度のホームページでお伝えしていきますので、そちらについてもご参照ください。


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記事:環境省地球環境局地球温暖化対策課市場メカニズム室

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