一般財団法人 環境イノベーション情報機構

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No.189

Issued: 2011.03.08

【エコポイント寄付特講】ドイツの地球温暖化対策と都市・地域づくり 事例1)注目される自治体の街灯対策

目次
街灯の電力消費量は自治体全体の3分の1
デュッセルドルフ市:発光ダイオードの導入
パベンブルク市:街灯の改修
ノウハウの共有
防犯や景観から温暖化対策へ

美しい街並みを街灯でライトアップ(提供:ミュンスター市)

 ドイツでは、自治体の温暖化対策としての街灯対策が注目を集めつつあります。エネルギー消費量や二酸化炭素排出量の削減だけでなく、自治体の歳出削減にも大きな効果を持つため、各地の自治体で具体的なプロジェクトが始動しています。

※このレポートは、エコポイントによる環境寄附により作成しました。


街灯の電力消費量は自治体全体の3分の1

 街灯は、道路や橋、湖や川の岸辺、公園などに設置され、街を彩る存在です。人々の移動を安全にし、生活の質の向上をも実現します。一方で、街灯が消費する電力は膨大で、ドイツ国内全体で毎年120万世帯の電力消費量に相当する30万キロワット時から40万キロワット時にもなります。
 街灯の多くは自治体所有のため、街灯の電力消費量は自治体全体の電力消費の3分の1を超えている状況です。また、街灯の3分の1は、少なくとも20年以上前に設置されたもので、年間わずか3%の改修・交換率となっています。
 このような現状に対して、最新の技術を導入することで、街灯の利用に伴う二酸化炭素排出量は半減化され、同時に照明の質も大幅に改善されることが指摘されています。

デュッセルドルフ市:発光ダイオードの導入

 デュッセルドルフ市は、ドイツ西部に位置し、58万人の人々が暮らす都市です。市の交通管理局は、2007年に地域内のエネルギーや交通を供給するデュッセルドルフ都市公社、南ヴェストファーレン専科大学と共同で、ドイツ初の発光ダイオード(LED)照明を用いた街灯パイロットプロジェクトを実施しました。現場は、ライン川のすぐそばの住宅地にある全長300メートルの道路。様々な照明技術の測定や調整を実証するため人通りが比較的少ない通りが選ばれ、電力消費量36ワットの多様な種類のLED照明を取り付けた高さ6メートルの街灯が30メートル間隔で設置されました。また、現場に設置されたパイロットプロジェクトを紹介する掲示板には、3色発光ダイオード(RGB-LDE)が利用され、遠隔操作で色を調整できる仕組みを取り入れました。
 プロジェクトの結果、通常のガス灯と比較すると、年間1800ユーロ(約20万7000円。1ユーロ115円換算)の光熱費の削減と8.6トンの二酸化炭素削減が実現できることが証明され、ドイツ各地の自治体でLED街灯の導入を促進する結果となりました。

取り付けられたLED照明のひとつ(提供:デュッセルドルフ都市公社)

LED街灯により照明の範囲が広がりCO2削減が達成された(提供:デュッセルドルフ都市公社)


パベンブルク市:街灯の改修

 オランダとの国境の町パペンブルク市(人口3万5000人)は、市内の住宅地の街灯を全面改修するプロジェクトを実施しました。プロジェクトの目的は、エネルギー消費量と二酸化炭素排出量を削減すること。住宅地は1960年代の半ばに開発され、その後繰り返し拡張、1995年に現在の姿になりました。敷地面積は約15ヘクタールで、一軒家が立ち並び、162世帯が生活しています。設置されている街灯は、開発当時のものがほとんどで、15年以上前に設置された古い街灯ばかりです。
 パペンブルク市は、これらの街灯を住宅地で暮らす住民の需要に適した利用に変更し、特に高い効率を持つ最新の街灯に交換しました。街柱をすべて取り替え、これまで街灯一基につき消費電力125ワットの照明を用いていたものを、消費電力18ワットの照明2つに変更しました。さらに、人通りが少なくなる19時以降は、2つの照明のうち1つを自動消灯します。これらの対策により、照度の配分、そして質は大幅に改善され、さらに年間7.6トンの二酸化炭素削減を達成する結果となりました。プロジェクトにかかった約6万ユーロ(約690万円)の費用のうち、9111ユーロ(約104万7000円)がニーダーザクセン州の温暖化防止プログラムから拠出されました。

街灯改修前の照度範囲(提供:パペンブルク市)

街灯改修後の照度範囲(提供:パペンブルク市)


改修前の様子(提供:パペンブルク市)

改修後の様子。必要な箇所の照明の実現、エネルギー消費の削減が達成された。(提供:パペンブルク市)


ノウハウの共有

 各地で街灯における温暖化対策が進むにつれ、ノウハウの共有も始まっています。ドイツ連邦環境省の委託を受けた自然保護団体「NABU」は各地の取り組みを調査し、街灯対策を実施する自治体に対し、次の点を考慮するよう提言しています。

  1. 需要に適した利用
     街灯間の距離の変更や街灯設置数の削減、暗くなれば自動点灯し、明るくなれば自動消灯するスイッチの導入、照度の削減など。需要を明確にするために交通量調査の実施が重要。
  2. エネルギー効率の高い照明技術の選択
     照明設備の新規設置や改修時に、最新技術が用いられたエネルギー効率の高い設備の選択。ここでは、エネルギー効率の他に、ランニングコスト(使用可能期間、メンテナンスの間隔)、並びに環境配慮が重要な選択基準となる。
  3. 再生可能エネルギーの導入
     街灯に消費電力に再生可能エネルギーを調達。また、太陽光発電設備が設置されたソーラー街灯の導入。
  4. 生態系への考慮
     人工的な光源は、照明時間帯、その長さ、照明の強弱や色によって、光に敏感な生態系に影響を与えるため、その必要性や影響範囲の調査。

 また、ドイツ連邦環境省は、2008年から2009年にかけて、連邦コンテスト「エネルギー効率の高い街灯」を実施しました【1】
 コンテストは、前半戦「照明技術部門」と後半戦「自治体部門」の2部門に分けて実施され、「照明技術」では、照明技術のメーカーが最新の技術を競い、その結果、エネルギー高効率を実現するための手法や技術、具体的なメーカー名や商品名が紹介された400ページ弱のパンフレット【2】が作成されました。
 また、「自治体部門」では、自治体が自ら作成した街灯改修コンセプトが審査され、優秀な内容のコンセプトに対し、環境技術革新プログラムからコンセプト実行のための助成金が授与されました。

防犯や景観から温暖化対策へ

 防犯対策やライトアップを目的にした街灯は、最初の設置費用ばかり考慮されがちです。一方で、一度設置されると改修や交換の機会が極端に少なく、長期に渡る電力消費量とこれに伴う電力費用について、これまで、十分に検討されてきませんでした。
 街灯の改修や交換には、二酸化炭素排出量やエネルギー消費量を削減するだけでなく、緊迫している自治体財源の支出を緩和するなど、重要なポテンシャルを秘めています。ドイツ連邦政府や州政府、欧州連合による自治体の街灯対策への直接の助成も開始しており【3】、街灯の温暖化対策の今後の展開が期待されます。

【1】連邦コンテスト「エネルギー効率の高い街灯」
ドイツ 街灯のエネルギー効率・コンセプトを競うコンテストを開催
【2】「エネルギー効率の高い街灯」のパンフレット
Sammlung energieeffizienter Techniken fu(e)r die Stadtbeleuchtung
【3】自治体の街頭対策への助成制度
ドイツ、自治体の温暖化防止対策への助成が再開
EU、自治体の都市交通や街灯のエネルギー効率化プロジェクトに対し1億1500万ユーロを供与

 一般財団法人環境情報センターは、環境省・経済産業省・総務省が実施する「エコポイントの活用によるグリーン家電普及促進事業」(家電エコポイント)及び国土交通省・経済産業省・環境省が実施する「エコポイントの活用による環境対応住宅普及促進事業」(住宅エコポイント)における環境寄付団体として選定を受けております。
皆様からお寄せいただいた寄附金は、地球温暖化防止に向けた事例収集および普及啓発に活用させていただいています。本記事はその一環として作成したものです。
ご協力いただきました皆様に厚く御礼申し上げます。

※詳しくはエコポイントにおける環境寄附のお礼をご覧ください

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記事:近江まどか(プロフィール

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