一般財団法人 環境イノベーション情報機構

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No.176

Issued: 2010.05.17

シリーズ・もっと身近に! 生物多様性(第21回)WWFジャパンが南西諸島生物多様性を評価する地図を公表

目次
「南西諸島生物多様性評価プロジェクト」の概要
地図を活かして、次のステップへ

サンゴ礁の調査

 2010年は国際生物多様性の年ですが、2008年は国際サンゴ礁の年でした。
 日本政府は、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)に向けてサンゴ礁の保全とネットワークを打ち出しています。日本国内で培われたノウハウを活かして、専門家同士の情報交換や訓練機会の提供など、国際貢献に取り組んでいます。
 COP10では、沿岸海洋域や淡水などが詳細に議論される予定になっています。また国内では、生物多様性国家戦略の改定に向けて、国内の長期的な生物多様性関連の指標や目標づくりに関わる動きが活発となっています。生物多様性総合評価も公表が予定されており、そのなかで、サンゴ礁などが関わる島嶼、内陸水、沿岸域の生物多様性が他の生態系と比べても危機的な状況にあることが示されています。
 また政府だけではなく、NGOや民間企業の取り組みも重要となります。
 今回は、NGOであるWWFジャパンによる、サンゴ礁などの生態系保全のための評価指標検討の取り組みについて紹介します。

「南西諸島生物多様性評価プロジェクト」の概要

 気候変動政策と経済との関係についてのEUの基本的な考え方は、時間の経過を通じて振り返ると、近年大きく変わってきていることが窺われる。
 1997年に京都議定書が採択された当時、EUにとっても気候変動政策は経済に負担がかかるものと捉えられていた節がある。すなわち、軍縮競争と同様、温室効果ガスの削減幅は他国に比べてできるだけ少なくしたほうが、少なくとも経済の観点からは有利であるという考え方である。これに対して、現在のEUは、2009年末に予定されていた気候変動対策にかかる国際枠組みの合意を待たずに、2020年までに1990年比で20%の温室効果ガス削減を行うことを一方的に決定している。

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関係者が話し合う様子


南西諸島生物多様性評価プロジェクト 表紙

 このプロジェクトの目的は、生物多様性の観点から優先的に保全すべき地域を抽出することと、それを通じて南西諸島における生物多様性の保全と持続的な利用を促進することでした。サンゴ礁、森林やマングローブ林などの生態系、イリオモテヤマネコなどの希少種などについて生物多様性の観測の評価レポートが発表されました。また、ヤンバルクイナなど侵略的な外来種によって危機的状況に陥っている希少種の問題や、法的な保護区の不足などが指摘されています。
 プロジェクトでは、生物群レベルの多様度や島々に生息する固有種の分布、自然度の高い植生や海岸環境の有無、集水域等を考慮し、全生物群の重要地域をあわせた領域が最低でも3割以上が抽出されるような条件を設定し、南西諸島の生物多様性優先保全地域として抽出し、地図を作成しました。


地図を活かして、次のステップへ

 現地調査では、沖縄本島のやんばる地域におけるオキナワトゲネズミ分布域の把握や南大東島での新種甲殻類発見への貢献など、貴重な成果を得ることができました。アンケートでは約2000件の回答を得て、事業主体別に自然資源の利用や保全に関する認識を整理しました。
 作成した地図は、行政関係者、研究者、地域NPO、事業者、地域住民などの関係者が、南西諸島の生物多様性を、今後、どのように保全し、利用していくかを検討していく上で、利用価値の高い資料になっています。ただし、本地図における優先保全地域は、南西諸島全域を包括的、試行的に捉えたもので、直ちに保護区として指定すべき重要な地域を厳密に表しているものではなく、従って、優先保全地域以外の領域が開発適地ではないということも忘れてはなりません。
 今回公表された地図は、南西諸島の特異な生物多様性に対する地域の関心を喚起し、利害関係者の意見交換のたたき台として共有されることが期待されています。このような地道な活動が地図という見える形となることで、南西諸島の生物多様性地域戦略が策定され、各地域で自然資源の保全と持続的利用とを両立した取り組みにつなげていくことが次の段階といえます。

<主な成果物>

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