一般財団法人 環境イノベーション情報機構

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No.159

Issued: 2009.03.06

洞爺湖サミットのこぼれ話 実録・環境省レンジャーものがたり(第1回)

目次
北海道ならではの温暖化防止広報〜雪まつりや雪合戦でも〜
洞爺湖地域の取組み〜チーム洞爺湖・マイナス50%事業〜
大型仮設環境学習施設「エコ・ギャラリー」オープン!
サミット記念環境総合展2008年
外国人対応のための「多言語化」
国内外メディアを対象とした「洞爺湖地域エコツアー」の実施
いよいよ!G8洞爺湖サミット開幕!
「エコ・ギャラリー」での様々な関連イベント
そしてエコ・ギャラリー閉館。それから・・・

国立公園洞爺湖

 昨年(2008年)7月、国立公園洞爺湖を眼下に見下ろすザ・ウィンザーホテルを会場に、世界の首脳が一堂に会し、地球規模の環境問題を主要議題とするG8北海道洞爺湖サミットが開催されました。
 環境省北海道地方環境事務所では支笏洞爺国立公園の保全管理をはじめとした環境保全に取り組んでいます。サミット開催前年の07年5月、洞爺湖温泉街に全国でも最大規模の国立公園情報発信施設「洞爺湖ビジターセンター」を整備したこともあって、国内外の注目が集まるこのサミット開催を好機として、「国立公園」を切り口に幅広い環境分野の取組みに関する広報事業を展開することとしました。
 サミットに関連したいくつかの取組みを紹介させていただきます。


北海道ならではの温暖化防止広報〜雪まつりや雪合戦でも〜

 「さっぽろ雪まつり」は冬の北海道の一大イベントです。07年2月の第59回大会、北海道地方環境事務所では「温暖化で雪が降らなくなると雪まつりができなくなっちゃいますよ」というメッセージを込めて、地球温暖化に対する取組みを呼び掛ける看板(ぼんぼり)を雪まつり会場20カ所に設置しました。看板に掲載したサミット参加国の国旗は、一致団結して温暖化に対して取組む必要性を訴えるデザインとなり、観光客の目を引きました。
 また、国立公園にも指定されている壮瞥(そうべつ)町の昭和新山では、国内外から150チームが参加する「昭和新山国際雪合戦」にも協力しました。ここでも同じように大会パンフレットや横断幕などで来場者に対して温暖化対策の運動を呼び掛けました。大会自体も環境負荷の少ない運営となっており、出場チームの参加料の一部を温暖化の取組みに積極的な団体に対して寄付(雪玉チャリティー)したり、会場の飲食テントの一部でリユース食器を使用したりと、環境保全に取組みました。

さっぽろ雪まつり

昭和新山雪合戦


洞爺湖地域の取組み〜チーム洞爺湖・マイナス50%事業〜

 洞爺湖地域では、2030年までに同地域から排出される温室効果ガスの半減を目的とした「チーム洞爺湖・マイナス50%事業」が始まりました。これは環境省が実施する「環境と経済の好循環のまちモデル事業」のひとつで、このモデル事業によって洞爺湖地域の4市町(伊達市、壮瞥町、豊浦町、洞爺湖町)に、雪蔵貯蔵施設やBDF製造施設の整備、ホテルや旅館向けのペレットストーブの設置と燃料となるペレット工場の建設、温泉ヒートポンプ施設の導入等が進められました。

洞爺湖地域温暖化対策まちづくり協議会事業計画

洞爺湖地域温暖化対策まちづくり協議会事業計画
拡大図


雪蔵

 このうち、「JAとうや湖」の雪蔵野菜貯蔵施設では、冬季中に建物内に蓄えた大量の雪を冷房に利用して野菜を保存する仕組みになっており、電力を用いた冷房が不要になる上に、湿度も適度に得られることから、作物が熟成してよりおいしくなるとされています。地元産のジャガイモを「雪蔵じゃがいも」として出荷したのに引き続き、にんじんやキャベツなども「雪蔵物語」としてシリーズ化するなど、同施設の積極的な活用を通じた温室効果ガスの削減が期待されます。


大型仮設環境学習施設「エコ・ギャラリー」オープン!

 北海道環境事務所では、“サミットが開かれる洞爺湖”に訪れる国内外の数多くの来訪者に対して、国立公園の自然環境保全のほか、幅広く地球温暖化や生物多様性、3R等の環境問題についてわかりやすく紹介するための環境学習展示施設「エコ・ギャラリー」(ケナフ生地で再利用可能な大型仮設テント)を、サミット開催期間を含む6月1日から8月31日までの3ヶ月間、洞爺湖ビジターセンター敷地内に設置しました。
 エコ・ギャラリーの展示物は、「環境について考え、学び、行動するきっかけに」してもらうことをねらいとして、見た目に楽しく、子どもにも理解できるようにと、再利用可能な段ボール素材の立体的展示物を基本に構成してみました。
 オープンまでの正味3ヶ月間はそれこそ目の回るような作業スケジュールの中、幅広い分野の展示内容検討、資料収集、編集など、事務所一丸となって寝不足で製作作業に携わりました。また、テントや展示物以外でも、使用電力は太陽光発電のものを使用したり、小型雪冷房施設の実証展示をしたり、北海道産の植物を使った壁面緑化の展示をしたり、仮設トイレにおが屑処理のバイオトイレを導入したりと、あちらこちらに環境配慮を取り入れました。オープン中の3ヶ月間は、常設展示のほか、様々な企画展示や関連のイベントも実施しました(後段でご紹介)。


段ボールの展示


サミット記念環境総合展2008年

 6月19日から21日の3日間にかけて札幌ドームで開催された「北海道洞爺湖サミット記念環境総合展2008(環境総合展)」に北海道地方環境事務所も出展しました。
 出展ブースは「地球温暖化」がメインテーマ。家庭から出る1人当たりの二酸化炭素量を表す高さ4mのペットボトルタワーや、温暖化の進行で予測される北海道に起こる影響を示す段ボール製の立体展示物など、エコ・ギャラリー同様、体験・体感を重視した展示を行いました。
 また、「体験ひろば」を設けて、その場で気軽に参加できるカードゲームや紙芝居、環境理科実験などの環境教育プログラムや、タレントのさかなクンや愛知万博公式キャラクターのモリゾー&キッコロによるステージショーなどを実施し、エコライフの実践を広く訴えました。


外国人対応のための「多言語化」

 サミットを契機に一気に増加が見込まれた外国人来訪者への対応として、ビジターセンターの展示物や映像、国立公園をPRするパンフレットやホームページなど、これまで日本語のみ、もしくはあっても英語版だけだった広報物を多言語化しました。
 G8各国の言語(英語、イタリア語、ドイツ語、フランス語、ロシア語)のほか、以前から洞爺湖への観光客の中でも高い割合を占めてきた中国や韓国からの来訪者のため、中国語(繁体字、簡体字)と韓国語にも、可能な限り翻訳しました。
 北海道の大自然を紹介するために作成した国立公園ガイドブックは、エコ・ギャラリーの開催期間を通じて幅広く国内外の方々に配布したほか、サミット関係で来日している政府関係者や報道陣などにも配布して、広く北海道の自然の魅力を広報しました。


国内外メディアを対象とした「洞爺湖地域エコツアー」の実施

 サミットを契機に、会場となった洞爺湖の美しい自然や文化の魅力を広く知ってもらおうと、国内外のメディアを対象としたエコツアープログラムを実施しました。洞爺湖地域の火山の自然や恵み、野生生物を紹介するものです。
 参加者からは、火山のそばに位置する洞爺湖地域での暮らしについて驚きの声が聞かれたり、北海道でのエゾシカ増加の問題などを通じて自然と人間との共生の難しさを感じたなどの感想が聞かれました。ツアー体験の様子などは、参加したメディアを通じて世界の各地で情報発信されました。
 このプログラムはサミット前に試行的に実施したものですが、実施結果のフィードバックを踏まえて、08年12月に「洞爺湖地域環境体験学習プログラムづくりの提案」としてとりまとめました。今後は、様々な実施主体による活用が期待されます。


いよいよ!G8洞爺湖サミット開幕!

 各国の政府関係者と全国各地から集まった警察官で物々しい雰囲気になった洞爺湖地域。いよいよサミットの開幕です。大型仮設テントの「エコ・ギャラリー」はサミット開催期間中も営業?し、各国から取材などで訪れているメディアや政府の関係者など多数の来訪者が展示を見にやってきました。
 北海道地方環境事務所では、G8サミットと並行して実施された、J8(ジュニア・エイト)サミットにも協力しました。支笏湖で開催されたJ8のオープニング記念式典では、国立公園となっている支笏湖を管轄する環境省レンジャーが、青空の下で歓迎の挨拶と乾杯(注:牛乳です)発声をしました。各国から参加した若者(主に高校生)たちを対象に、支笏湖のフィールドトリップで自然解説なども行いました。
 G8サミット最終日には、G8各国首脳夫人とJ8参加者の交流イベントが洞爺湖ビジターセンターで催され、有珠山の噴火映像鑑賞や和やかな歓談の場を提供するなど、可能な限りの協力をしました。


「エコ・ギャラリー」での様々な関連イベント

 3ヶ月間と長期にわたるエコ・ギャラリー開催中、展示を見るだけでなく、エコ・ギャラリーから外に飛び出して、国立公園洞爺湖を体感してもらうための各種イベントや、様々な関係機関との連携協力による企画イベントも実施しました。そのうちいくつかのイベントをご紹介します。


「洞爺湖八景フォトサイクリング」

 洞爺湖周辺で美しい眺望を満喫できる場所として、「洞爺湖八景」を選定しました。記念撮影などにも活用してもらうための案内標識を整備しました。
 7月12日(土)には、自然風景写真家の石津 聰氏を講師に、サイクリングで洞爺湖八景選定地を巡りながら写真撮影のテクニックなどを教わりました。当日はまずまずの天候に恵まれ、爽やかな風を感じながらナイスショットを求めて盛んにシャッターを切る参加者たちの姿が見られました。


「洞爺湖ウチダザリガニ捕獲駆除体験」

 洞爺湖に生息する「ウチダザリガニ」。元は日本にはいなかった外来生物で、ニホンザリガニなど在来の生き物の生息を脅かすことから防除活動を行っています。
 エコ・ギャラリーでは、そのウチダザリガニをダイバーが素手で水中捕獲する様子をモニター越しに見学したり、捕獲個体の計測体験を行ったりしました。また、エコ・ギャラリーで飼育展示しているウチダザリガニとニホンザリガニを見比べながら生態について解説したり、広く外来生物問題について学べる紙芝居を行ったりと、自然環境保護の大切さを訴えました。
 参加者は親子連れが多く、よい経験ができたとの感想が聞かれました。


「希少野生動物の染め絵や彫刻の展示」

 6月14日から6月17日までの間、動物彫刻家の小笠原 み蔵氏と染め絵画家の植田 莫氏による作品展示を実施しました(円山動物園との共催)。作品は希少野生動物などの生態をイメージさせる内容となっており、子どもから大人まで熱心に見入っていました。


「DMV(デュアル・モード・ビークル)の試乗会」

 道路と線路の両方で走行可能な、環境にも優しい交通手段として実用化が期待されているDMV。その試乗会を、7月12日から7月27日までの土曜日・日曜日・祝日に、洞爺湖ビジターセンター駐車場で実施しました(JR北海道との共催)。実際にレールの上を走るDMVは子どもたちに大人気でした。


「洞爺湖カヌー体験と水辺の生き物探し」

 湖でのカヌー体験や生き物探しを通じて、洞爺湖の豊かな自然を感じ、水辺で遊ぶことの楽しさや自然の大切さに気付くきっかけとして、またカヌーや水辺での安全な遊び方を身につけてもらうために、親子参加型の体験イベントを実施しました。
 カヌー遊びでは、最後に親子揃って湖にザブン!と飛び込んで、文字通り洞爺湖を「体感」してもらいました。


「北海道レンジャーも集結!」

 期間中、北海道の各国立公園で活躍する自然保護官(レンジャー)が、それぞれの現場でどのような仕事をしているか、クイズなどを交えながら楽しくわかりやすく来場者に紹介しました。
 また、自然保護官補佐(アクティブレンジャー)による、「動物折り紙講習会」なども実施し、ヒグマやシマフクロウなど、ユニークな動物折紙の折り方と、いろいろな動物達の生態や特徴をわかりやすく子どもたちに教えました。


そしてエコ・ギャラリー閉館。それから・・・

 洞爺湖サミット開催前後の3ヶ月間にわたり開設していた「エコ・ギャラリー」では、最終日の8月31日に5万人目の来場者を迎えました。期間中の入場者数合計は50,185人。  エコ・ギャラリーの展示や自然体験プログラムをはじめとする関連イベントには国内のみならず海外からの来訪者等、多くの来場がありました。  来場者からは、「国立公園をはじめとする日本の美しい自然を改めて認識した」、「世界の環境問題を身近に考えるようになった」、「環境問題を親子で話し合う機会となった」など、多くのご好評をいただきました。3ヶ月間のエコ・ギャラリー開催を通じて、地元洞爺湖地域をはじめ国内外からの幅広いご来場の皆様の環境保全に関する意識高揚に寄与できたものと考えています。  北海道地方環境事務所では、エコ・ギャラリーの展示物を、今後も、地元洞爺湖町が開設を予定しているサミット記念館(仮称)や、いろいろな環境イベントの機会に引き続き活用していくことにしています。


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記事・写真:北海道地方環境事務所 国立公園・保全整備課 公園計画専門官 宮内 拓郎)

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