No.035
Issued: 2002.10.17
どう減らすレジ袋シール制度やかごのレンタルなど削減の工夫が進む
東京都杉並区がレジ袋税の新設を決め、レジ袋の環境問題が一躍脚光をあびました。杉並区は、来月(2002年11月)から、税導入に先駆けてシール制度をはじめることとなり、区と事業者が協力してレジ袋の削減に取り組みます。
この他にも多くの自治体や小売店が、レジ袋を減らすために工夫しています。各地での取り組み事例を紹介します。
杉並区の目標はレジ袋辞退率60%
「小額の商品でも袋を辞退した人にはシールを渡すのか」「同業者どうしで、シールを渡す商品や金額の目安を決めてもいいのか」—。
今年9月に杉並区が開催した「すぎなみエコシール加盟店募集説明会」では、出席者から、エコシール事業への質問が相次ぎました。
杉並区は、今年(2002年)3月に、小売店が買い物客に配るプラスチック製のレジ袋に課税する「すぎなみ環境目的税」、いわゆるレジ袋税の導入を決めました。ただし、レジ袋の使用量が減れば、施行は見送る方針です。そこで杉並区は、区内事業者と連携して、今年11月に「すぎなみエコシール事業」を開始。レジ袋使用量の削減に取り組みます。
同事業は、買い物客がレジ袋を断るとシールを1枚渡し、シール25枚で100円分の金券として使える仕組みです。シールは区内共通で、金券は協力店舗であればどこでも使えます。
杉並区内の買い物客によるレジ袋辞退率は、今年7月現在で24.1%。来年(2003年)7月の目標値は、辞退率33%です。それ以降は毎年7%ずつ目標値を上げ、2007年6月には60%を目指します。区や区内の商工業者、町会などが組織する「杉並区レジ袋削減推進協議会」が定めました。60%という数字は、区内で生協が運営するスーパーでの、現在の辞退率と同じです。
毎年度の目標が達成できれば、税の施行は先送りされます。杉並区は、目標達成のため、これまでも街頭での呼びかけなどを行ってきました。エコシール制度の導入で、一気に効果を上げたい考えです。
* 杉並区のレジ袋税
杉並区は、2000年4月に自治体の裁量により課税できる「法定外目的税」が認められたのを受けて、2000年9月に、小売店が買い物客に配るプラスチック製のレジ袋に課税する「すぎなみ環境目的税」、いわゆるレジ袋税の構想を発表。今年3月に条例を成立させました。
税収は約4億円を見込み、廃棄物減量など環境対策にあてる計画です。実施期間は5年間を目処とし、レジ袋使用量が減れば廃止します。
税の導入時期は、今後のレジ袋削減量や経済状況などを考慮し、議会の同意を得て決めます。レジ袋使用量が減れば、課税は見送る予定です。
なお、杉並区内では、年間約1億7000〜9000万枚(1人あたり年間約330枚)のレジ袋が使われています。石油に換算すると、18リットルの灯油タンク20万本分。杉並区によれば、全てごみとして処理されているとすると、処理費用は年間約1億円にのぼるということです。
豊田市ではシール制度で買物袋持参率が年間8%上がった
すでに同じようなシール制度を導入し、効果をあげている自治体もあります。愛知県豊田市です。同市では、市内共通の「エコシール」を発行。買い物時にレジ袋を断るとシールが1枚もらえ、シール20枚で100円分の金券として使えます。2000年6月にシール制度を始めた豊田市では、買い物袋の持参率が実施前年の7.4%から15.6%に倍増。年間1360万枚のレジ袋使用量を減らした計算になります。
杉並区は、エコシール事業の狙いのひとつに地域活性化を掲げています。そのため、大型スーパーはエコシール事業の対象外とし、独自の削減策を実施するよう求めています。一方の豊田市では、市内の買い物客の8割が買い物に利用する大型スーパーの参加は効果が大きいとして、エコシール制度の対象としています。現在、シール制度への参加店舗は200。大型スーパーも、独自のシール制度を実施している1社を除き、全て参加しています。
豊田市では、市と民間事業者団体などが組織する「豊田市買物袋持参運動(エコライフ)推進協議会」がシールを発行。1枚4円で参加店舗にシールを販売し、そのうち2円を市が補助します。金券利用分は、協議会がシールの売り上げ代金から各店舗に支払います。制度の運用費用は、市と参加事業者が折半。2001年度は、約800万円ずつ負担しました。杉並区でも、同じ費用負担の仕組みを取る予定です。
「ノーレジ袋デー」やかごのレンタルなどユニークな取り組みも
この他にも、埼玉県狭山市が、市内の商店がレジ袋を渡さない「ノーレジ袋デー」を実施したり、東京都板橋区が区内全域でのレジ袋有料化を検討するなど、多くの自治体が独自の取り組みを進めています。
商店街の取り組みとしては、品川区商店街連合会が今月(10月)に始めた「ノーレジ袋コイン」などがあります。1回断るごとにコインが1枚もらえ、250枚で500円分の区内共通商品券と交換できる仕組みです。
小売店側でも、さまざまな工夫をしています。たとえば、大丸ピーコックや西友など、多くのスーパーが、レジ袋辞退者にポイントを付与するポイント制度を実施しています。
ダイエーでは、レジで袋を断る手間を省くため、「お買物袋いりません」と書かれたカードを作成。一部店舗で店の入り口に置き、袋のいらない人は、店内で使うかごにカードを入れて、意思表示できるよう工夫しました。
レジ袋を使わないですむように、店内で使うかごのレンタル制度を実施しているスーパーもあります。北海道のスーパー、マックスバリュ・札幌フードセンターでは、かごを1つ300円でレンタル。レジで支払いを済ませたら、商品をかごに入れたまま持ち帰ることができます。西友でも、2001年度から、同様の「マイバスケット会員制度」を実施。47店舗でかごのレンタルを行っています。
国内のレジ袋使用枚数は、年間約313億枚。国民一人あたりでは、年間平均約260枚になります。生活のなかにすっかり定着したレジ袋をどれだけ減らせるか、各地での取り組みが注目されます。
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(記事:土屋晴子)
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