世田谷区では分別に迷いそうな161種類を掲載

世田谷区の「ごみ減量リサイクルハンドブック」。緑色に塗られている行は資源として回収する項目、灰色の行は区では回収しないもの。ハンドブックの上部に開けられた穴は、ヒモを通して適当な場所にぶら下げられるようにと要望があったものとのこと。細かいところで利用者への配慮が行き届いている。
「分別方法を迷ったときに便利と好評です」。早見表への反響をこう言って喜ぶのは、世田谷区役所 清掃・リサイクル部ごみ減量課の五十嵐敦子さん。世田谷区は、今年(2002年)3月に「ごみ減量リサイクルハンドブック」を作成。約45万部印刷し、清掃事務所の職員が区内全世帯に配りました。
同ハンドブックは、A4版2色刷りで12ページ。161種類のごみが50音順に並べて掲載されています。「掲載数が多すぎて調べる気がしなくなると困るので、種類はなるべくしぼりこむ」(五十嵐さん)方針で作成。よく出るごみのうち、判断に迷いそうなものだけを厳選しました。種類を選ぶ際には、区内でリサイクルなどに取り組む「ごみ減量リサイクル推進委員」からも意見を募りました。
使いやすくするため、さまざまな工夫も凝らしています。たとえば、資源として回収するものは緑、区で回収しないものは灰色と色分けする、「電池」と「乾電池」など複数の呼び方があるものは、いずれも掲載するなど。
世田谷区がハンドブックの作成を決めたのは、「区民からの要請が多かったから」と、ごみ減量課 計画担当係長の松下洋章さんは話します。区では従来も、ごみの分別方法を示したパンフレットを用意していましたが、「パンフレットに記載されていなくて分別に迷うものが多い」と区民から多くの声が寄せられるようになりました。松下さんは、ハンドブックの配布により、「分別徹底に徐々に効果が表れるのではないか」と期待しています。
富良野市では1,200種類掲載の「分別辞典」を作成

名古屋市の「ごみの達人心得帳」。
450項目が並んでいる。
1,200種類という多くのごみを掲載しているのは、北海道富良野市です。同市では、2003年度のリサイクル率99%と、ほとんどのごみをリサイクルする目標を立て、ごみの徹底的なリサイクルに取り組んでいます。
富良野市は、昨年(2001年)10月に、焼却処理する「一般ごみ」の区分を廃止。現在、14分別でごみや資源を回収しています。「高い目標を達成するには分別の徹底がカギ」と、入れ歯からサンダルまで細かに種類分けした「分別辞典」を作成しました。「うに」「魚網」などの項目もあり、地域がらも反映されています。
このほかにも、岩手県花巻市の「ごみ分別大辞典」や愛知県名古屋市の「ごみの達人心得帳」、愛媛県松山市の「一目でわかるごみ分別辞典」など、多くの自治体が趣向を凝らして作成しています。
民間企業もごみ分別アドバイスのホームページを開設

愛知県の産学提案型情報技術活用先進システム構築事業で開発された「ごみ分別アドバイザリングシステム」。同事業については、愛知県企画振興部情報企画課のホームページへ
「使い切ったアルミホイルの箱を捨てる時の分別方法は」―。「ごみ分別アドバイザリングシステム名古屋市版」のホームページにアクセスし、「居間」や「洗面所」などいくつかの部屋のなかから「キッチン・ダイニング」を選ぶと、台所などで出るいろいろなごみの写真が現れます。アルミホイルの写真を選んでクリックすると、「箱=紙製容器包装(資源)」「芯=可燃ごみ」「アルミホイル=不燃ごみ」の3分別という回答が表示されました。
「ごみ分別アドバイザリングシステム名古屋市版」は、名古屋市のごみ分別方法に従って、ごみの分別をアドバイスしてくれるホームページです。システム会社の株式会社シーティーアイ(名古屋市)が、愛知県の「産学提案型情報技術活用先進システム構築事業(2001年度)」に採用されて作成したものです。
ホームページ上では、名古屋市が作成した「ごみの達人心得帳」に掲載された450種類のごみを中心に、すべて写真で紹介。「画像を使うことで、日常のごみ分別と同じように、直感的に利用できるようにした」と先端IT開発部先端技術グループの山影健一さんは言います。
部屋ごとの検索のほか、「袋類」「箱類」「カップ類」などごみの種類ごとに検索することもできます。名古屋市では、2000年8月に紙製・プラスチック製容器包装の分別回収を始めました。ところが、分別方法が難しく、開始後しばらくは市民が騒然となりました。
そこで、地域情報を提供するホームページを運営していたシーティーアイは、「住民に役立つ情報を」と、ごみ分別アドバイザリングシステムの構築を決めました。利用者からは、「引っ越してきたばかりで分別方法がわからなかったので助かった」など感謝の声が寄せられているそうです。
多くの自治体でごみ分別の指南書が作られる背景には、製品の素材が多様化・複雑化したという事情があります。分別早見表やアドバイザリングシステムは、分別の徹底に役立つだけでなく、分別・リサイクルしやすい素材の採用をメーカーに促すきっかけにもなるかもしれません。
ちなみに、卵の殻は、世田谷区・名古屋市ともに燃えるごみ。プラスチック製卵容器は、世田谷区では不燃ごみ、名古屋市では資源(プラスチック製容器包装)とのことです。