No.033
Issued: 2002.09.12
自治体間で作成相次ぐ「ごみ分別辞典」複雑なごみ分別の悩みを解決
「卵の殻は燃えるごみ?それとも燃えないごみ?」「プラスチック製の卵容器はごみ? それとも資源?」―。ごみ分別の種類が細分化され、毎日のごみ分別に頭を悩ませることが増えました。こうした悩みを解決するために、多くの自治体が作成を始めたのが、ごみの種類と分別方法を一覧にした早見表。ごみの分別徹底に一役買っています。
世田谷区では分別に迷いそうな161種類を掲載
「分別方法を迷ったときに便利と好評です」。早見表への反響をこう言って喜ぶのは、世田谷区役所 清掃・リサイクル部ごみ減量課の五十嵐敦子さん。世田谷区は、今年(2002年)3月に「ごみ減量リサイクルハンドブック」を作成。約45万部印刷し、清掃事務所の職員が区内全世帯に配りました。
同ハンドブックは、A4版2色刷りで12ページ。161種類のごみが50音順に並べて掲載されています。「掲載数が多すぎて調べる気がしなくなると困るので、種類はなるべくしぼりこむ」(五十嵐さん)方針で作成。よく出るごみのうち、判断に迷いそうなものだけを厳選しました。種類を選ぶ際には、区内でリサイクルなどに取り組む「ごみ減量リサイクル推進委員」からも意見を募りました。
使いやすくするため、さまざまな工夫も凝らしています。たとえば、資源として回収するものは緑、区で回収しないものは灰色と色分けする、「電池」と「乾電池」など複数の呼び方があるものは、いずれも掲載するなど。
世田谷区がハンドブックの作成を決めたのは、「区民からの要請が多かったから」と、ごみ減量課 計画担当係長の松下洋章さんは話します。区では従来も、ごみの分別方法を示したパンフレットを用意していましたが、「パンフレットに記載されていなくて分別に迷うものが多い」と区民から多くの声が寄せられるようになりました。松下さんは、ハンドブックの配布により、「分別徹底に徐々に効果が表れるのではないか」と期待しています。
富良野市では1,200種類掲載の「分別辞典」を作成
1,200種類という多くのごみを掲載しているのは、北海道富良野市です。同市では、2003年度のリサイクル率99%と、ほとんどのごみをリサイクルする目標を立て、ごみの徹底的なリサイクルに取り組んでいます。
富良野市は、昨年(2001年)10月に、焼却処理する「一般ごみ」の区分を廃止。現在、14分別でごみや資源を回収しています。「高い目標を達成するには分別の徹底がカギ」と、入れ歯からサンダルまで細かに種類分けした「分別辞典」を作成しました。「うに」「魚網」などの項目もあり、地域がらも反映されています。
このほかにも、岩手県花巻市の「ごみ分別大辞典」や愛知県名古屋市の「ごみの達人心得帳」、愛媛県松山市の「一目でわかるごみ分別辞典」など、多くの自治体が趣向を凝らして作成しています。
民間企業もごみ分別アドバイスのホームページを開設
「使い切ったアルミホイルの箱を捨てる時の分別方法は」―。「ごみ分別アドバイザリングシステム名古屋市版」のホームページにアクセスし、「居間」や「洗面所」などいくつかの部屋のなかから「キッチン・ダイニング」を選ぶと、台所などで出るいろいろなごみの写真が現れます。アルミホイルの写真を選んでクリックすると、「箱=紙製容器包装(資源)」「芯=可燃ごみ」「アルミホイル=不燃ごみ」の3分別という回答が表示されました。
「ごみ分別アドバイザリングシステム名古屋市版」は、名古屋市のごみ分別方法に従って、ごみの分別をアドバイスしてくれるホームページです。システム会社の株式会社シーティーアイ(名古屋市)が、愛知県の「産学提案型情報技術活用先進システム構築事業(2001年度)」に採用されて作成したものです。
ホームページ上では、名古屋市が作成した「ごみの達人心得帳」に掲載された450種類のごみを中心に、すべて写真で紹介。「画像を使うことで、日常のごみ分別と同じように、直感的に利用できるようにした」と先端IT開発部先端技術グループの山影健一さんは言います。
部屋ごとの検索のほか、「袋類」「箱類」「カップ類」などごみの種類ごとに検索することもできます。名古屋市では、2000年8月に紙製・プラスチック製容器包装の分別回収を始めました。ところが、分別方法が難しく、開始後しばらくは市民が騒然となりました。
そこで、地域情報を提供するホームページを運営していたシーティーアイは、「住民に役立つ情報を」と、ごみ分別アドバイザリングシステムの構築を決めました。利用者からは、「引っ越してきたばかりで分別方法がわからなかったので助かった」など感謝の声が寄せられているそうです。
多くの自治体でごみ分別の指南書が作られる背景には、製品の素材が多様化・複雑化したという事情があります。分別早見表やアドバイザリングシステムは、分別の徹底に役立つだけでなく、分別・リサイクルしやすい素材の採用をメーカーに促すきっかけにもなるかもしれません。
ちなみに、卵の殻は、世田谷区・名古屋市ともに燃えるごみ。プラスチック製卵容器は、世田谷区では不燃ごみ、名古屋市では資源(プラスチック製容器包装)とのことです。
関連情報
- 富良野市 ごみ分別の手引きのダウンロード
・14種類のごみ分別収集開始に伴って作成。
・約1,200品目を列挙した「分別事典」を全戸配布。 - 花巻市の「保存版 ごみ分別大辞典」
・日常生活で使用する約420品目を50音順に並べ、分別区分を示した一覧表形式。
・「これは燃やせるの?」という疑問を一気に解消する画期的な冊子で県内では初の試み。
・冊子はA4判36ページ。
・従来のごみ分別に関する情報提供は、分別区分ごとの収集品目を列挙したものがほとんど。市民のニーズに応えて、逆に品名から検索できるのがこの冊子の最大の特徴。 - 名古屋市の「家庭での分別区分の早見表」
名古屋市の家庭から出るごみの分別方法について、一般的なごみの分別区分の具体例を示して、450項目を50音順に並べたもの。
なお、素材や大きさにより区分が異なる場合もあるとのただし書きつき。 - 名古屋市版「ごみ分別アドバイザリングシステム」
「購入した商品でアドバイス」「包装・容器でアドバイス」を選ぶと、簡単な写真/イラスト選択で捨てたいものを選び、質問に回答して、分別方法のアドバイスを見ることができる。
株式会社シーティーアイ(http://www.cti.co.jp/)らのグループで開発したシステム。 - 松山市「一目でわかる ごみ分別事典」
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(記事:土屋晴子)
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