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No.016

Issued: 2002.01.17

年賀状のリサイクル

目次
全国318の郵便局に回収箱を設置
回収したはがきは再びはがきにリサイクル
プライバシー保護も徹底
利用者の声にこたえてリサイクル実施
課題は禁忌(きんき)品の分別コスト

 毎年たくさん来る年賀状。もらうのは嬉しいけれど、処分には困ってしまう—。そんな人は多いかもしれません。「年賀状などのはがきをリサイクルしてほしい」。郵便利用者のこうした声にこたえて、郵政事業庁では使用済み官製はがきのリサイクルに取り組んでいます。

全国318の郵便局に回収箱を設置

 東京都北区・赤羽の郵便局。一人の女性が、はがきの束を局内の箱に入れていきました。箱には「使用済み官製はがき回収箱」の文字。しばらくすると、今度は別の女性がはがきを持ってきました。
 「毎年たくさんの年賀状をもらいますが、読み終わってからポイと捨ててしまうのはなんだか気が引けます。だからといっていつまでも取っておくわけにもいかず、困っていました」。区内在住のこの女性は言います。「郵便局ではがきのリサイクルをしていると知って、去年いただいた年賀はがきを持ってきたのです」
 この回収箱、全ての郵便局に置いてあるのでしょうか。郵政事業庁に問い合わせると、「全国318の郵便局に設置しています」(郵政事業庁財務課)との答えが返ってきました。回収対象は、年賀はがきや暑中はがきなどの官製はがき。2000年1月から2002年3月末まで試行的に回収・リサイクルを行っています。


回収したはがきは再びはがきにリサイクル



 郵政事業庁では、赤羽局のほかにも札幌西局(北海道札幌市)、松山中央局(愛媛県松山市)など全国の郵便局に回収箱を設置(設置郵便局は地図参照)。2000年度は263万枚の官製はがきを回収しました。
 回収したはがきはリサイクルして再びはがきになります。地球環境保全のための寄付金をつけた広告つきはがき、「グリーンエコーはがき」などの原料となるのです。グリーンエコーはがきの原料の約15%に使用済み官製はがきなどの再生パルプを使用する予定です。グリーンエコーはがきの発行枚数は、年間約400万枚。この一部に回収したはがきの再生パルプが使われます。


プライバシー保護も徹底


 回収の仕組みはこんな具合です。各郵便局で回収したはがきが一定量に達したら、集配を行う「普通郵便局」に運び、保管します。グリーンエコーはがきの発行に合わせて、専用トラックが各普通郵便局をまわってはがきを回収。いったん物流センターなどに集めてから、製紙会社に持ち込みます。
 郵政事業庁では、プライバシー保護のため、回収したはがきは厳重に管理しています。製紙会社に持ち込む際にも職員が同行し、紙を溶かしてパルプにする釜に入れるまでを確認します。


利用者の声にこたえてリサイクル実施

 「きっかけは、郵便を利用するお客様から、はがきをリサイクルしてほしいという声が多く寄せられるようになったこと」(郵政事業庁財務課)。郵政事業庁では、こうした声にこたえるため、使用済み官製はがきをリサイクルする仕組みを検討しました。
 郵政事業庁では、書き損じはがきのリサイクルは以前から実施していました。各郵便局が1枚5円の手数料を受け取って、同価のはがきなどと交換。引き取ったはがきは、ダンボールなどに再生しています。ところが、「年賀状など愛着のあるはがきなので、ダンボールではなく再びはがきにできないか」(郵政事業庁財務課)と製紙メーカーと開発を進めました。
 回収箱は、全国を12の地域に分け、各地域内のいくつかの郵便局に設置しました。設置局のある自治体と協力し、自治体が広報紙などで回収を呼びかけています。


課題は禁忌(きんき)品の分別コスト

 「利用者には好評」(郵政事業庁財務課)という官製はがきのリサイクルですが、継続には課題もあります。それは、コストです。2001年度は、このリサイクル事業に約1000万円の経費がかかりました。
 コストのほとんどは、分別にかかる費用です。シールや写真が張ってあるはがきなどは、再生に適しません。はがき用紙にしみなどが入る原因となるからです。回収したはがきを分別、リサイクルに適さないはがきを取り除きます。この作業に多くの費用がかかっています。
 郵政事業庁では、2002年3月までの試行期間の後、今後の事業化を検討する予定ですが、「取り組みを拡大したいのはやまやまだが、回収量が増えればコストも増えてしまう」(郵政事業庁財務課)と頭を悩ませています。年賀はがきの発行枚数は、年間約40億枚。官製はがき全体では約60億枚にのぼります。これらのリサイクルをどう進めるか。郵政事業庁では、そのためのさまざまな施策を検討しています。


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(記事:土屋晴子、取材協力:郵政事業庁)

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