一般財団法人環境イノベーション情報機構

EICピックアップ環境を巡る最新の動きや特定のテーマをピックアップし、わかりやすくご紹介します。

No.015

Issued: 2001.12.20

どうなってるの?中古衣料のリサイクル

目次
中古衣料は集まりすぎではない?
集まった中古衣料の2割はリサイクルできない
従来のリサイクル品需要は先細り
新たなリサイクル方法の開発が急務

 「中古衣料の集まりすぎで繊維リサイクル業者が悲鳴」 ― 一時期、こうしたセンセーショナルな報道が流れました。その後、果たして集まりすぎは解消されたのでしょうか。なぜ、こうした事態が起こったのでしょうか―。

中古衣料は集まりすぎではない?

 「集まっていること自体は、問題ではないのです」。中古衣料や工場から出る繊維くずのリサイクル業を営むナカノ株式会社(神奈川県横浜市)【1】社長の中野總恭(としやす)さんは、こう切り出しました。「本来ならば、もっと集まってもいいはず」と中野さんは言います。なぜなら、中古衣料のリサイクル率は、93年現在、推定約10%(約20万t)。スチール缶の83%(98年度)やアルミ缶の74%(同)に比べると、少なすぎるぐらいの量だからです。それでは、いったい何が問題なのでしょう。
 「問題は、集まった衣料の出口がないことです」。中野さんは、こう断言します。かつては、繊維の原料や機械の油ふき用の「ウエス」と呼ばれる工場用雑巾【2】という大きな受け入れ先がありました。ところが、これらの需要が減少。そこで海外への古着輸出を増やしたけれども、これは事業として採算があわない。追い討ちをかけるように、化学繊維などリサイクルできない素材の衣料品が増えてきた―。これまでのやり方では、中古衣料のリサイクルが立ち行かなくなってきたのです。


集まった中古衣料の2割はリサイクルできない

 「現在は、集まった中古衣料の2割を廃棄しています」と中野さんは言います。理由のひとつは、リサイクルしても受け入れ先がないこと。もうひとつは、リサイクルできない素材でできた衣料品があることです。「もったいないと思うかもしれませんが、廃棄せざるをえないのです」。
 残った8割の処理方法の内訳は、古着として輸出する割合が約5割、繊維原料への再生3割、ウエスにするもの2割。かつては、廃棄するものはほとんどなく、輸出・繊維原料・ウエスの割合がちょうど3分の1ずつだったといいます。
 それでは、繊維原料やウエスの需要はなぜ減ったのでしょう。まず、繊維原料はどうでしょう。「海外から安いバージン原料が入ってきたので、再生繊維原料への需要が減った」と中野さんは説明します。中古衣料を繊維にリサイクルする工程は、全て手作業なのでコスト高になってしまうのです。繊維リサイクル業者は、集まった衣料品の中から繊維原料に適したものを選び、ボタンやファスナーなどを取り除きます。
 これを反毛(はんもう)工場に運び、機械で細かくほぐして繊維にします【3】。これは、ぬいぐるみなどの中綿やフェルト、軍手などの原料に使われます。
 「自動車販売量の減少も、再生繊維原料の需要が減った理由」と中野さん。自動車の断熱材用フェルトは、再生繊維の大きな用途だったからです【4】


従来のリサイクル品需要は先細り

 一方、ウエスの需要が減った理由のひとつは、国内でウエスを使う機会そのものが減ったこと。製造業の不振や工場の海外移転が増えたことが原因です。もうひとつは、海外から安いウエスが入ってきたこと。
 さらに、「ゼロエミッション(埋め立て廃棄物ゼロ)の影響もある」と中野さんは指摘します。多くの企業が工場のゼロエミッションに取り組んでいますが、ウエスを使えば廃棄物が出るとして、レンタル式や紙製ウエスなどに切り替える企業が増えているというのです。こうした動きに対して中野さんは、「ウエスはもともと廃棄物を再利用した製品。社会全体のゼロエミッションには役立っているはず」と異論を唱えます。
 それでは、輸出のほうはどうでしょう。「古着として輸出しても採算はあわない」と中野さんは言いますが、それでも在庫をかかえておくのはもっと困ります。主な輸出先は東南アジア。ところが東南アジアでも、韓国から安い中古衣料が流入し買い手市場になっているといいます。暑い国なのでTシャツなど薄手の衣料の需要が多いものの、国内で回収される古着には上着のほうが多いという需給のズレの問題もあります。古着100kgあたり1万円で売れれば採算は取れるということですが、現在の売価は5000円程度と採算割れしてます。


新たなリサイクル方法の開発が急務

 「出口がないのに回収ルートの整備が進んでしまった」と中野さんは嘆きます。リサイクル品の受け皿が減っている一方で、自治体などの中古衣料回収は活発になっているからです。消費者が衣料品を買ってから捨てるまでのサイクルも短くなり、中古衣料の排出量自体も増加しているとみられます。リサイクル品の需要が先細りの現状では、回収量が増えても、リサイクルできず廃棄する量が増えてしまいます。
 業者にとって廃棄処理費用は大きな負担になっており、中野さんは「業界がこの負担に持ちこたえられるだろうか」と危惧しています。「このままでは、繊維リサイクル業者は生き残れません。そうなると、10%のリサイクル率ですら維持できなくなるでしょう」。そんな事態を避けるために、中野さんをはじめとする繊維リサイクル業者では、新たな用途開発や、ウエスやリサイクル繊維などを優先的に使う仕組みの構築を訴えています。


【1】ナカノ株式会社
繊維リサイクルの歴史、今後のありかたへの提案のほか、関連新聞記事、行政の動向など繊維リサイクル関連情報を説明。
ナカノ株式会社のホームページ
【2】「ウエス」と呼ばれる工場用雑巾について
ナカノ株式会社「繊維リサイクル・製品製造」
【3】ナリセン株式会社の反毛製造工程
再生繊維からフェルトなどを生産するメーカー。
【4】株式会社中部・新東海フエルト
再生繊維からフェルトなどを生産するメーカー。

関連情報

(記事:土屋晴子、写真:下島寛、取材協力:ナカノ株式会社)