一般財団法人環境イノベーション情報機構

EICピックアップ環境を巡る最新の動きや特定のテーマをピックアップし、わかりやすくご紹介します。

No.011

Issued: 2001.10.17

消費者は環境報告書をどう読むか

目次
企業の取り組み姿勢を読み取る
数値目標と本業での取り組み内容が記載されているか
4つのポイントはよい環境報告書の条件でもある
環境報告書から「持続可能性報告書」へ
第三者によるチェックで信頼性を高める

 今年も4月〜9月にかけて、企業の環境報告書が次々に発行されました。環境報告書を発行する企業数は年々増え、現在、500社以上といわれます。内容も充実してきています。ところが読み手の消費者側からは、「いろいろな情報が掲載されているけれど、どう読みこなしたらいいかわからない」―こんな声も聞こえてきます。そこで今回は、環境報告書を読む際のポイントをご紹介します。


企業の取り組み姿勢を読み取る

 「ポイントは4つあります。これらに注意して読めば、その企業が環境に対してどのぐらい真面目に取り組んでいるか、必ずわかります」。環境報告書ネットワークの幹事を務める森下研氏(株式会社エコマネジメント研究所代表)は、こう断言します。では、そのポイントとは何でしょう。
 「ひとつは、経営者による緒言の内容です」と森下氏は言います。環境報告書には、ほぼ必ず、冒頭に経営者の言葉が記載されています。その内容が、「一般論に終始せず、業種特有の環境負荷について正しく認識しており、その改善を社会に対して約束している」(森下氏)ようであれば、真摯な姿勢で取り組んでいる証拠です。
 たとえば、「当社の企業活動による最大の環境負荷は、製品の使用・廃棄時に発生します。そこで、使用時の消費電力量削減やリサイクルしやすい製品設計に取り組みます」といった具合です。


数値目標と本業での取り組み内容が記載されているか

 「次に注意すべきなのは、緒言で約束した内容を具体的な数値目標として定めているかどうかです」と森下氏は続けます。環境負荷の現状とその改善目標、目標達成期限を数値で示していることが重要です。「それがなければ、単なる環境パンフレットと言っても過言ではありません」。森下氏は具体的目標値の重要性を指摘します。
 もうひとつのポイントは、「具体的な取り組み内容が、納得できるものかどうか」(森下氏)。取り組み内容が針小棒大に記載されていないか、本来の業務できちんと環境負荷改善を図っているかどうかなどです。たとえばメーカーなら、いくら工場の周りに緑を植えても、生産工程での環境負荷が高ければ話になりません。きちんと製品の環境負荷改善を図っていれば、環境報告書にもその内容が具体的かつ定量的に記載されているはずです。


4つのポイントはよい環境報告書の条件でもある

環境報告書を読み解く4つのポイントとは?

環境報告書を読み解く4つのポイントとは?

 最後のポイントは、「環境事故や法律・条例違反、苦情、土壌汚染などのマイナス情報もきちんと掲載しているか」(森下氏)です。森下氏は、4つのポイントに注意して環境報告書を読む際に、「同業の数社の報告書を比較してみてほしい」(註)と言います。「そうすれば、どの企業が真面目に取り組んでいるか、必ずわかるはずです」。
 森下氏が指摘する4つのポイントは、「よい環境報告書」の条件とも言えます。現在、国内の環境報告書表彰制度には、「環境レポート大賞」(環境報告書ネットワーク主催、環境省後援)や「グリーン・リポーティング・アワード」(グリーン・リポーティング・フォーラムと東洋経済新報社が共催)があります。これらの賞を受賞した報告書を見ても、内容のわかりやすさに加え、具体的数値の記載や情報の網羅性、信頼性を高めるための工夫などが評価されています。


[註] 従来、環境報告書は企業間で比較することが困難でした。記載項目が統一されていなかったりデータの単位が違うなど、記載方法がバラバラだったからです。けれども最近では、こうした問題を解決するために環境省が策定した環境報告書ガイドラインに沿って内容や単位を記載する企業が増えました。このため、環境報告書の内容は以前より格段に比較しやすくなっています。

環境報告書から「持続可能性報告書」へ

 ところで、近年の環境報告書には、2つの大きなトレンドがあります。ひとつは、環境への取り組みだけでなく、企業活動の社会的側面や経済的側面を記載する企業が出てきたことです。社会的側面とは、労働者や女性、地域社会への配慮など。経済的側面は、財務情報などです。
 国際的なNGO、GRI(Global Reporting Initiative)では、環境・社会・経済という3つの側面を記載した報告書を「サステイナビリティ・レポート(持続可能性報告書)」と呼び、ガイドラインを作成しています。「3つの要素がそろって初めて持続可能な社会が実現できる」との考えからです。日本国内でも、持続可能性報告書を目指し、社会的側面などの記載に力を入れる企業が出てきています。


第三者によるチェックで信頼性を高める

さまざまな環境報告書が発行されています。

さまざまな環境報告書が発行されています。

 もうひとつは、「第三者検証」を受ける企業が増えていることです。第三者検証とは、監査法人などの第三者に環境報告書の内容をチェックしてもらい、データの集計方法や環境報告書の記述に誤りがないことなどを保証してもらう仕組みです。
 環境NGOによる報告書の評価を掲載したり、環境報告書を企画制作段階からNGOと協同で進めるというユニークな事例もあります。いずれも、環境報告書の信頼性を高めるための工夫です。
 こうした工夫は、自社の取り組みをよりよく伝えるための努力の表れといえます。4つのポイントと合わせてチェックしておくとよいでしょう。
 さて、このようなポイントに留意して環境報告書を読み込んだら、次に何をすべきでしょうか。前述の森下氏は、「この企業は環境に対して真面目に取り組んでいる、と思ったら、ぜひ、その企業の製品を買ったりその企業に投資してほしい」と言います。消費者や株主が行動を起こすための情報を提供する。これが、まさに環境報告書の役割なのです。


(記事:土屋晴子、イラスト:大堀由紀子)