No.010
Issued: 2001.09.25
『フロン回収・破壊法』が成立冷媒用フロンの放出削減に期待
オゾン層破壊は、依然として急速に進んでいる―。気象庁が9月に発表した調査結果【1】で、こうした状況が明らかになりました。オゾン層破壊の原因となるのは、CFC(クロロフルオロカーボン)をはじめとするフロンです。日本は、過去には世界第二位のフロン生産国でしたが、国内のフロン回収は遅々として進んでいません【2】。そこで今年6月に「フロン回収・破壊法」が成立。2002年4月から施行されます。法の仕組みや制定の背景を整理しました。
法の内容と仕組み:カーエアコンでは自動車メーカーに費用負担を義務付け
法の対象となるのは、業務用エアコンとカーエアコン。業務用エアコンには、ビルの空調設備やスーパーのショーケース、自動販売機などが含まれます。両者で、冷媒用フロンの約8割をカバーします。(残り2割は家庭用冷蔵庫の冷媒として使用されており、家電リサイクル法でフロン回収が義務付けられています)。
それでは、業務用エアコンの回収・破壊の流れをみてみましょう。まず、ビルのオーナーなど業務用エアコンを廃棄する者が、フロン回収業者に使用済み製品の引き取りを依頼します。回収業者は引き取ったエアコンからフロンを回収。これをフロン破壊業者に引き渡し、破壊業者が破壊します。回収・運搬・破壊費用は、廃棄する者が負担します。
カーエアコンの場合は、少し仕組みが違います。回収業者が回収したフロンは、いったん自動車メーカーが引き取ります。それからフロン破壊業者に引き渡すことになります。費用の負担者も違います。カーエアコンについては、自動車メーカーが回収・運搬・破壊費用を負担します。ただし、これらの費用はユーザーに請求することができます。
ユーザーからの費用徴収方法は、この法律では定められていません。現在審議中の自動車リサイクル法に合わせることになっています。徴収方法としては、製品価格に上乗せする方法と廃棄時に支払う方法などが考えられます。自動車リサイクル法では、「廃棄時支払いは不法投棄を招く」として、製品価格上乗せ方式の採用が濃厚になっている[3]ようです。
法制定の背景:効果あがらなかった業界の自主取り組み
冷媒用フロンの回収は、これまで業界の自主的な取り組みにまかされてきました。ところがフロンの回収率は、業務用エアコンが56%、カーエアコンが18%(いずれも99年:環境庁・通産省調査結果)と決して高い数値とはいえません。特にカーエアコンからのフロン回収は、遅々として進みませんでした。
一方で、オゾン層破壊物質であるCFCなどのフロン排出量がピークを迎えるのは2001年頃と予測されていました。一刻も早く手を打つ必要がありました。「フロン回収・破壊法」は、こうした状況を見かねた与党議員からの議員立法により成立しました。
回収の対象となる物質は、CFCのほか、代替フロンと呼ばれるHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)とHFC(ハイドロフルオロカーボン)。HFCはオゾン層破壊物質ではありませんが、強力な温室効果作用があります。CFCとHCFCも温室効果ガスです。
このうちCFCとHCFCは、オゾン層保護のための「モントリオール議定書」で生産が禁止されました。ところが生産は禁止されたものの、回収については何の義務も定められていませんでした。そこで、一部の自主的な取り組みを除き、これまでに多くのフロンが大気中に放出されてしまったのです。
残る課題:断熱材用フロンの回収をどうするか
「フロン回収・破壊法」の制定により、冷媒用フロンの回収には一定のめどがつきました。ただし、これでフロン問題が全て解決するわけではありません。たとえばCFCの場合、冷媒用として使われているのは32%(97年化学品審議会試算)にすぎません。57%は、冷蔵庫や建築物の断熱材など発泡材として使用されているのです。
これら断熱材などに含まれるフロンをどのように回収していくのか。それが今後の大きな課題です。「フロン回収・破壊法」でも、政府に対して断熱材用フロンなどの回収・破壊方法を調査研究するよう求めており、環境省では、効果的な回収システムや破壊技術などの検討を進めています。
- 【1】調査結果
- 気象庁報道発表資料「オゾンホール、今年も大規模に発達か」
- 【2】
- 自動車リサイクル法の費用徴収方法(日本工業新聞)より
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(記事:土屋晴子、イラスト:大堀由紀子)
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