No.007
Issued: 2001.07.30
「燃料電池」実用化に向け開発が進む
EICネットでは...
(1)国内ニュース【検索結果 3件】
- 自動車の環境負荷低減の起爆剤に 低公害車開発普及アクションプラン(発表日:2001.07.11、環境省)
- 燃料電池乗用車の公道走行試験が活発化(発表日:2001.07.04、国土交通省)
- 水素燃料の燃料電池自動車を初めて試験自動車として認定(発表日:2001.06.18、国土交通省)
(2)海外ニュース【検索結果 8件】
- ドイツ政府 コージェネレーション政策を促進(発表日:2001.07.04、ドイツ)
- カナダ政府 交通部門の温室効果ガス対策に追加(発表日:2001.06.11、カナダ)
- 水素燃料電池バス 世界9都市でデビュー(発表日:2001.03.21、イギリス)
- IPCC 気候変動対策に関する報告書を公表(発表日:2001.03.05、その他)
- EPA&エネルギー省 燃料電池発電所計画を公表(発表日:2000.10.26、アメリカ)
- 気候変動国別実施戦略、ビジネスプランで合意(発表日:2000.10.17、カナダ)
- 国別気候保全プログラムを閣議決定(発表日:2000.10.18、ドイツ)
- クリーン自動車への支援策 117億円 発表(イギリス)
(3)環境用語【関連用語2件】
(4)環境イベント【検索結果 2件】(注:すでに終わっています)
- [全国] 環境改善調査研究成果発表会(2001.06.18) - 公健協会 事業課 No.141
- [東京都]東京都「環境の日」行事「エネルギー施設見学会」(2001.06.13) - 東京都環境局 No.140
実用化に向け開発が進む燃料電池
「究極のクリーンエネルギー」「21世紀の主力エネルギー供給源」。燃料電池にこんな期待が高まっています。なにも根拠のない期待ではありません。現実に産業界では、実用化に向けたし烈な開発競争が繰り広げられています。
すでに産業用の燃料電池は実用化されており、工場やホテルなどで使われています。
そして、現在国内外のメーカーが開発に力を注いでいるのは、家庭用や自動車用の燃料電池。各社とも、2005年頃の実用化をめどに開発を進めています。
燃料電池の用途は多岐に渡る
燃料電池は、過去にも何度かブームになったことがありますが、これまでは、期待ほどの広がりはありませんでした。その理由は、発電所用など用途が限られていたことです。
ところが、今回は違います。家庭用や自動車用のほかにも携帯電話やパソコンなどのモバイル機器用など、用途は多岐に渡ります。
これらが実用化されれば、燃料電池メーカーだけでなく、自動車メーカーや家電メーカー、周辺機器メーカーや燃料を供給するエネルギー産業など、経済への波及効果は相当大きくなります。産業界からの期待が大きいのは、こうした理由もあります。
燃料電池は環境負荷の少ない発電装置
ところで、燃料電池とは何でしょうか。「電池」と呼ばれこそすれ、これはれっきとした発電装置です。水素と酸素の化学反応で、電気を生み出します。
化学反応でできるのは、電気と熱と水だけ。有害物質は出ません。だから、クリーンな発電装置として注目を集めているのです。
そのほかにも、環境面で優れた特徴が多くあります。たとえば、発電効率がいいこと。熱も利用してコージェネレーション(熱電併給)にすれば、発電効率は80%と高くなります。
また、電気を使用する場所の近くで発電するので、送電ロスもなくなります。
いろいろな燃料を使って発電できるのも魅力です。ガソリンなどの化石燃料も使えますが、メタノールなどの非化石燃料も使えます。メタノールなどを活用すれば、化石燃料の使用を減らすことができます。さらに、ごみを発酵させて取り出したメタンガスまで燃料にできるのです(→環境性能)。
業界を超えた連携で開発を推進
ただし、燃料電池を実用化するには、まださまざまな課題が残されています。最大の課題は、コストです。例えば自動車用燃料電池の場合、1キロワットの電力を起こすのに必要なコストは100万円以上。これに対して現在使われている内燃機関はたったの5000円。これに対抗するには大幅なコストダウンと、そのための技術的なブレイクスルーが必要となります。
こうした課題を整理し対策を検討するため、99年12月に資源エネルギー庁の私的研究会「燃料電池実用化戦略研究会」が発足しました。産学官から構成されるこの研究会は、今年1月に報告書を取りまとめました。また、燃料電池導入の目標も定め、2010年までに自動車5万台(自動車全体に対する普及率0.07%)、家庭・業務用約210万キロワット(普及率4.7%)などとしてています。
この研究会の報告を受け、今年3月には、約90社の企業が集まり「燃料電池実用化推進協議会」を設立しました。電気機器、自動車、エネルギーなどさまざまな業界から参加した企業が、燃料電池実用化に向けた調査や提言活動を行います。業界の垣根を越えた企業の連携が、燃料電池の実用化をさらに開発を加速させることでしょう。
関連情報
- 燃料電池全般(発電の仕組み・種類・特徴・用途・開発の歴史など)
(一社)日本ガス協会 - 燃料電池のメリットや開発動向
経済産業省(「燃料電池実用化戦略研究会」の報告書) - 燃料電池の仕組みと発電方法
物質工学工業技術研究所 無機材料部 エネルギー材料グループ - 燃料電池の導入状況
(財)新エネルギー財団 - 燃料電池の導入事例
東芝インターナショナルフュエルセルズ - 燃料電池の開発動向に関する情報
燃料電池開発情報センター - 自動車用燃料電池1
毎日新聞 - 自動車用燃料電池2
みどころ:自動車燃料電池の仕組みをわかりやすく解説。詳しく知りたい人向けに技術解説集も掲載。
レベル:入門者向け
おすすめ度:★★★ - トヨタ自動車
- 携帯電話用燃料電池の開発状況
みどころ:携帯電話用燃料電池の開発に関する動向を解説。
レベル:中級向け
おすすめ度:★
連絡先:cnet@sphere.ad.jp - CNET JAPAN TECH NEWS
- 燃料電池実用化推進に向けた企業の動き
みどころ:燃料電池実用化推進協議会(事務局:(財)新エネルギー財団)の設立と会員募集のお知らせなど。
おすすめ度:★
連絡先:public@nef.or.jp - (財)新エネルギー財団
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(記事:土屋晴子、イラスト:中川恵子)
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