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首長に聞く!自治体首長に、地域の特徴や環境保全について語っていただきます。

No.012

Issued: 2022.11.21

第12回 福井県大野市長の石山志保さんに聞く、「清水(しょうず)のまちのサスティナブルへの取り組み」

大野市長 石山志保(いしやま しほ)さん

ゲスト:大野市長 石山志保(いしやま しほ)さん

  • 愛知県安城市出身。
  • 平成9年に東京大学工学部卒業後、当時の環境庁入庁。
  • 平成17年に環境省を退職して大野市役所に入庁。
  • 平成30年6月の市長選に当選して第17代大野市長に就任。
  • 令和4年6月の市長選で再選して、現在2期目を務めている。
  • 趣味は、まち歩き・むら歩き。

聞き手:一般財団法人環境イノベーション情報機構 理事長 㓛刀正行

目次
滋味のあるまちの、進取の気象
今ある風景を残して、人々の生活を暮らしやすくするための持続可能性が大きな課題
湧水文化の象徴的な存在になっている、小さな淡水魚の「イトヨ」
アーバン・ナイトスカイプレイス部門では、アジア初となる星空保護区認定をめざして
人口3万1千人くらいの大野市ですべてを揃えるのは、なかなか難しい
ぜひとも大野に訪れていただけるとありがたい

滋味のあるまちの、進取の気象

㓛刀理事長(以下、㓛刀)― この「首長に聞く!」コーナーは3年ほど前から始めており自治体の様々な取り組みをお聞きすると同時に、それを広く知っていただくことを目的としています。
新型コロナウイルスの感染拡大によって、対面でお会いすることができなくなり間が空いてしまいましたが、大野市の石山市長に、今回12回目としてご登場いただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。
私は大野市に初めてご訪問することになりましたので、昨日の夕方に大野入り、今日4時間ほどかけて街の中を歩いてまいりました。
一番びっくりしたのは、水の音がどこを歩いていても響いてくることでした。ちょろちょろと流れている音だったり、結構大きく聞こえてきたり、水の街を実感しました。小さな路地にも用水が通っていて、街角には地下水位を測った看板が立っていて、水位の浅いところから深いところまで複雑な設計がされていること、白山山系の山並み、水が湧き出ている「水のまち」ということを強く感じました。町並みには日本的風情が感じられる家屋がたくさんあって、歴史ある街だなということをつくづく感じました。
そんな緑豊かな自然とおいしい水・食に恵まれた歴史文化の伝統が息づく大野市の特徴について、石山市長からご紹介ください。

石山市長― 大野市の面積は福井県内の約20%を占めますが、市域の87%は森林です。白山山系の山々に囲まれた田園風景の盆地が広がっていて、その中に越前大野城や城下町の風情が色濃く残る市街地があって、人々が暮らしています。
そこに、今おっしゃられたような清らかな水が川となり、水路となり、あるいは湧き水となって流れています。
どこか懐かしい日本の原風景の中で人々が丁寧に暮らしているというのが、大野市の姿ではないでしょうか。
国宝級のものや世界遺産といった、強烈なインパクトで人を惹き付けるものはないのですが、人々の丁寧な暮らしや自然は、大変興味深い事柄がたくさんありまして、大野に来て、人々と触れ合っていただくと、おもしろさが湧いてくるんですね。その意味で私は、“滋味のあるまち”と大野市を紹介しています。

㓛刀― ゆっくりと、味わってほしいということでしょうか。

石山市長― そうなんです。市外から訪れた方には、「どこか穏やかな街ですね」とよく言われますね。時がゆっくり流れるようなイメージを受けられるようです。
大野市街地は、喧騒ある町並みとは違って落ち着いていますし、人がゆっくり歩いておられて、話し言葉も「ほやの~」と非常にゆったりしている感じがあります。
そうかと思いますと、幕末の大野藩に象徴されるのですが、先取りしてチャレンジをしていく気風がありまして、これを私たちは「進取の気象」と言っています。
大野市には海がありませんが、幕末期、飛び地領地で海があった大野藩が帆船を仕立てて蝦夷地(北海道)をめざしていますし、あるいは明倫館という藩校を設けて武士だけでなく庶民の子どもたちにもしっかり学ばせようといった先進的な取り組みがされてきました。この史実にあやかって、市中心街にあった小学校の移転改築を行う際に公民館及び生涯学習センターとの複合施設を学びの里「めいりん」と名付けて、市民の教育文化活動の拠点として整備しています。
それから、今も感染症が深刻になっていますが、当時は天然痘が猛威を振るいました。藩主のお子さんが幼くして亡くなったこともあると思うのですが、天然痘の予防接種も取り入れていました。
そういった先見性、人育て・人づくりと、“やってみよう”という気風が息づいているまちだと思います。

雲海に浮かぶ天空の城 越前大野城

雲海に浮かぶ天空の城 越前大野城

越前大野城と城下町(空撮)

越前大野城と城下町(空撮)城


市民のシンボル 越前大野城

市民のシンボル 越前大野城

白山山系の山々と大野盆地(空撮)

白山山系の山々と大野盆地(空撮)


今ある風景を残して、人々の生活を暮らしやすくするための持続可能性が大きな課題

㓛刀― ありがとうございました。
次に、石山市長ご本人のことについてご紹介いただければと思います。石山市長は愛知県安城市のご出身で、東大工学部卒業後、平成9年に当時の環境庁に入庁され、平成17年にご結婚を機に退職、ご主人のふるさと大野市役所にご就職されたと伺いました。その後、平成30年の市長選に当選され、第17代大野市長に就任されました。今年6月の市長選で再選され、2期目を迎えられています。大野市への想いや、市政の中で大事にされていることなど、お聞かせいただけますでしょうか。

石山市長― 私の政治姿勢は、持続可能なまちづくりです。地方自治体の持続可能性というと、財政健全化として捉える方も多いようです。財政健全化も、もちろん首長としては大切な点ですが、どちらかというと、今まで申し上げたような大野の豊かな自然、歴史や文化で築き上げてきた城下町といった面を大事にして、今の大野らしさを将来につないでいきたい、人々と自然が共に生きていく、そういったタイプの持続可能なまちづくりというのをモットーにさせていただいているところです。

㓛刀― 持続可能性というのは、非常に難しいですよね。どうしても持続可能な発展といって“発展”の方がメインになってくるケースも多く、うまく持続させるというのはなかなか大変だと思います。地方都市の場合、いろいろな制約や問題があるでしょうから、その中でいいものを残しつつ、かつあまり遅れてもいけないということで、難しい舵取りをなされていることと思います。

石山市長― 今、私たちが直面している社会は人口減少社会の中にありますが、そういう中で大野らしく住み続けていくことができるようにすること。その大野らしさの中の、豊かな山や清らかな川と水を守りつつ、人々の生活を暮らしやすく、住み続けていけるようにするための持続可能性というのは、おそらく今の日本の首長にとって非常に大きな課題であり、立ち向かい、付き合っていく課題なのだと思います。

湧水文化の象徴的な存在になっている、小さな淡水魚の「イトヨ」

㓛刀― 冒頭で触れましたように、大野市は霊峰白山山系の雄大な自然と、その山々に涵養された豊かな清水──こちらでは「しょうず」というのだそうですね──が、大野市にとって大事な資源になっていると思います。古くから受け継がれてきた湧水文化を後世に引き継ぐための総合的な取り組みを進められ、令和3年には国の水循環基本計画に基づく流域水循環計画として県内で唯一認められた「大野市水循環基本計画」を策定されました。また令和2年3月には「大野市水に関する学習研究施設設置条例」に基づいて、地域の環境保全や名水の歴史を学ぶ「越前おおの水のがっこう」も開設されています。
健全な水循環の保全と活用について、さまざまな取り組みがされていますが、少し詳しくご紹介いただけますでしょうか。

石山市長― そうですね。大野市水循環基本計画は、国の水循環基本法に沿った地域の計画ですが、そのために作ったというより、大野市の場合は、大野の大切な水、とりわけ地下水は市民の皆さんが長い年月をかけて苦労しながら、保全に努めてきたという歴史がありましたので、これまで大野市地下水保全条例、あるいは地下水保全に関する計画もいくつか作ってきた中で、この機会に一つの方針に沿った形にまとめ直して、今の時代に合う部分も付け足して取りまとめたのが、大野市水循環基本計画です。

大野市の中でも、とりわけこの城下町あたりの市街地は、上水道を整備しなくても地下水を使って生活することができるエリアでした。
ところが、昭和50年代に、井戸から水を汲み上げすぎてしまったことで、家庭用井戸などで井戸枯れが発生しました。その時に、「地下水は使いすぎてはいけない」「地下水はみんなのものだ」「毎日地下水位を見ていかなくてはいけない」、そんな意識が高まり、みんなで地下水を守る活動をずっと続けてきたのですね。
現在、大野市内の70%の方が自家用井戸を使っていると言われています。実際には上水道や簡易水道の水源も地下水の場合が多いので、実質的にはみんな地下水を飲んでいることになります。その地下水位が下がりすぎると井戸水が汲めなくなってしまいますから、今の地下水位がどういう状態なのかというのを、住民の皆さんが毎日手測りをしているのです。

一方、地下水の水質は、市が定期的に調査していますし、上流区域に広がる田園地帯では地下水涵養域として「冬水田んぼ」を行っています。冬水田んぼは全国的にも取り組まれていると思いますが、大野の場合は動植物のためにというわけではなくて、人々の生活のために地下水を涵養するということで随分昔からやっています。人々の生活を維持し、守るためにも、地下水とうまく付き合ってきた歴史があるということです。
そうした中で、これは国の水循環基本法でいう「流域マネジメント」という言葉にあてはまるのかもしれませんが、我々が経験したことや直面した困難に対していろいろと手探りで乗り越えてきたこと、あるいは科学者の方の助言をいただきながら、市民と共に取り組んできたことを、流域という単位でまとめることができた計画になります。

㓛刀― 川の水ってものすごく少ないですよね。それに対して、湖であるとか地下水の方が表流水よりもずっと多い。
実は私もいろいろなところで講義をするのですが、そうしたときに、川の水──私はフローと言っていますが─フローしている水は本当に少ないけれども、どうしてそれで文明が維持できるかというと、それはストックがあって、そこからフローしてくるからだというように、ストックとフローで考えないといけないという話をしています。
まさに、ストックである地下水は、涵養するためにはものすごく時間がかかる。どんどん使えば当然減る。その辺のバランスをうまくやっていかないと、おっしゃるとおり、水の循環がおかしくなって、いろいろな障害が出てきます。昔は雪を融かすために地下水をかなり使ったため、それでかなり地下水が減ってしまったとお聞きしました。

石山市長― それも一つの要因であったかと思います。地下水は年間を通じて一定の水温が保たれますので、夏は冷たく、冬は温かく感じられ、3℃から10℃近くの水温があれば雪は融けますので、かつては融雪に使っていました。
また当時の当市は繊維産業が大変盛んな地域でしたので、繊維を作る行程でも多くの地下水が使われたということもあって、一時、冬場の水位が下がるときにバランスが崩れたということかと思います。

㓛刀― まちの何か所かに、「本日の地下水位」というのが掲示されていました。あれは、見える化としてやられていることでしょうか。非常にいいですよね。

石山市長― そうなんです。先ほど申し上げたように「観測井」を市内に何か所も設けて、近所の方々が毎日手測りして、掲示を変えているんですね。日常生活のために必要な、大切な取り組みなんです。
名水百選「御清水」にほど近い場所に、古民家を改修して整備した「越前おおの水のがっこう」は、水循環についてと、地下水や表流水、森の働きといった水一般のことについて学べる施設です。水環境のバロメーターとして湧水文化の象徴的な存在になっているのが、イトヨという小さな淡水魚です。平成13年7月に池の中の自然の姿のイトヨが観察できる施設「本願清水イトヨの里」をオープンしていますが、やはり当時、市民の方々によるイトヨを守っていこうという盛り上がりがあったわけです。イトヨを守るということは、いい湧水があるからだと。この魚も、冬に凍ってしまう池には棲めないですし、夏も水温が上がりすぎると棲めなくなりますので、年間を通じて、水温が一定で清らかな水が湧いている池にだけ棲息できるということになります。

㓛刀― イトヨは、ここが南限だそうですね。

石山市長― 陸封型のイトヨの南限地になっています。夏は冷たく冬は温かい年間を通じて地下水温が適温に保たれているということが大事な点だと思います。

市民の手計で掲示される「本日の地下水位」の看板

市民の手計で掲示される「本日の地下水位」の看板

冬水田んぼ

冬水田んぼ

地下水の水源涵養地 平家平のブナ林

地下水の水源涵養地 平家平のブナ林


天然記念物イトヨ生息地

天然記念物イトヨ生息地

イトヨ

イトヨ


アーバン・ナイトスカイプレイス部門では、アジア初となる星空保護区認定をめざして

㓛刀― ありがとうございました。星空の話についてもお聞きしたいと思います。平成16年・17年に、2年続けて環境省の全国星空継続観察で「全国で最も星空の観察に適している」と認定されるなど、星の輝く夜空も大野市の特徴となっていると伺っております。
来年度(令和5年度)開催される「星空の街・あおぞらの街」全国大会の誘致や、国際ダークスカイ協会「星空保護区」の認定をめざした取り組みなども含めて、大野市の夜空に象徴される自然環境とその保全や活用についてご紹介いただけますでしょうか。

石山市長― はい。先ほどの水環境については、むしろ市民生活を維持していくために大切なことです。環境にいいことでもあるかもしれないですが、日常生活に密接なので皆さん取り組む意欲が出ているということなのですね。
星空の関係につきまして、平成16年・17年の星空認定というのは、大野市内の星の愛好団体の方々が観察してくださったおかげです。
市民が住み続けていくためには、地域経済活性化ということは大変重要なことですので、新たな施設を作るのではなくて、大野市にある自然環境をうまく生かしていく工夫の一つとして星空についても考えています。

今、大野市に中部縦貫自動車道という高速道路が、初めてつながることになります。大野インターチェンジは既に接続していますが、大野市内の約35キロ区間が未完成のため、高速道路空白地帯になっているのです。それがあと数年で、50年かけて待ち望んできた高速交通網につながります。
「見たことのないもの」とか、「あそこに行かないと体験したり味わったりすることができない」といったことが大野市にあることで、大野市を訪問し、滞在していただけると思います。この日本一に輝いた星空が、持続可能な発展という意味で、地域に住む・暮らす人たちの幸せと、環境の維持・保全との関係、それから社会的配慮も含め、それらが一体的な形の中で活きるプロジェクトになると思っています。

星空保護区という、アメリカのNGOである国際ダークスカイ協会による認定制度がありまして、6つほどのカテゴリーの中で、大野市が取ろうとしているのは、アーバン・ナイトスカイプレイス(Urban Night Sky Places)部門という、比較的都市の人が住む場所に近い場所でしっかりと暗闇になっていて、星が見える場所を認定するものです。これは認定されればアジア初になるといわれていて、令和5年度に取得できるように準備を進めています。

今でも天の川が見えるきれいな夜空ですが、認定条件には、光害対策がきちんととられているエリアということ、それから住民や子どもたちに光害や星空に関する教育活動ができていること、それによって星空が何等星までちゃんと見えているといった条件があります。
光害対策につきましては、市で昨年度から今年度にかけ、地区の方々のご了解を得まして、防犯灯を光害対策タイプのものに変えています。

星空保護区は、日本国内でいうと沖縄県八重山諸島の西表石垣国立公園、東京都の神津島、そして岡山県井原市美星町が認定されていて、大野市が認定されれば、部門は違いますが、4か所目になると思います。
岡山県井原市で導入された防犯灯タイプと同じものを大野市でも導入して、さらに県道用のもう一回り大きな防犯灯もメーカーさんと一緒に開発、設置しています。
コロナ禍前には、スカイランタン打ち上げイベントも開催して、観光客を誘致する取り組みなどもしながら、居心地のよい空間づくりあるいは光害対策や天体観測に対するサポートなどを福井工業大学にも関わってもらい、産学官、また地元の方とも一緒に進めているところです。

㓛刀― 私も望遠鏡を覗く方なので、星がクリアに見えるところって、やはり素晴らしいですね。

石山市長― 市内で度々星空ハンモックという星空観望会が開催されています。私も2年前に六呂師高原での観望会に参加しましたら、運よく雲がなくて、素晴らしい星空が広がっていました。先生方に教えてもらったところによると、天の川がきれいに見える星空は、日本の国土のうちの約20%だそうです。

㓛刀― そうですか。今は確かに光害が本当にひどくて、どこでも、とんでもなくライティングで明るいですからね。
ちょっとズレますけど、先ほどの光害対策防犯灯は、どういう仕組みになっていますか?

石山市長― 丸い電球だとそのまま上にも光が漏れて星空が見えにくくなりますが、上空に光が漏れないようになっているLED照明です。防犯灯なので、住民の生活空間はちゃんと明るく照らしますが、夜空の方向には光を出さないというものです。

㓛刀― ありがとうございます。ちょっと脱線してしまいました。

石山市長― いえいえ。星空はロマンチックなので、市民にも「こういう夜空を楽しむ空間を作ってみんなで見たい」とお話しすると、若い方から年配の方まで皆さん賛同してくださいます。

光害対策で導入した防犯灯

光害対策で導入した防犯灯

星空ハンモック

星空ハンモック


人口3万1千人くらいの大野市ですべてを揃えるのは、なかなか難しい

㓛刀― ありがとうございました。少し話題を変えさせていただきます。
2050年カーボンゼロをめざす取り組みは、グローバルな取り組みとして重要な一方、人口減少・高齢化が進む地域社会の健全化や持続可能な発展にとっても重要な課題となっています。大野市では、令和3年3月に2050年ゼロカーボンシティの実現を宣言され、現在は「大野市脱炭素ビジョン」の策定に向けた協議が続いているとお聞きしています。2050年カーボンゼロの実現と大野市の地域課題、脱炭素の取り組みなどについて、特に市民の皆さんとの対話の中で感じることなどをお聞かせいただければと思います。

石山市長― そうですね。「ゼロカーボンシティ」と言ってしまうのですごくハードルが高いのですが、「カーボンニュートラル」をめざすということです。これはとても大変な目標なんですよね。ゼロカーボンシティについては、取り組んでいかなくてはならないことですから、まずは市長が手をあげることが大事だと思いましたので、大野市の環境基本計画を策定して、それを発表すると同時に地球温暖化対策を盛り込んだ形で「やります」という宣言をさせていただきました。
ゼロカーボンシティはこれからみんなで作っていくものです。これまでとは全然違う世界をめざすことですから、市民の皆さんから提案を募り、できる人を募って「一緒にやっていきませんか?」ということだと思うのです。
私がゼロカーボンシティ宣言をした時の市民の皆さんの反応は、「ところで、私は何をしたらいいでしょうか」「どうしたらいいんでしょうか」と聞かれることが多かったです。
今は、大きな変革期なので、まずは皆さんの心がけからでいいですから、こまめに電気を消すとか、省エネ家電を使うとか、ごみゼロやリサイクルを進めようとか、まずは自分の得意な分野で始めていってくださいということをお願いしました。大野市役所の中も同様ですね。公用車を控えて、例えば自転車や公共交通機関を使いましょうと。ペーパーレス化も進めていて、できることから何とかやろうとしているところです。

国の動きも加速していまして、2030年までに2013年に比べて46%削減することが国全体の目標になっていて、これは大変なことだと感じています。2050年にめざす姿を描いて、そこに向けてどの方策でやっていかないといけないのか、またその前段として、大野市の現状のCO2排出量と吸収量もみんなで理解しないと難しいのかなと思います。ですから、脱炭素ビジョンを作っていく必要があるということで、作業に取りかかりました。環境省の関係者にも教えていただき、学識経験者の方にも関わっていただき、発電事業者の方や消費生活に関わる方、交通事業者などいろいろな分野の方々にも関わってもらい、策定協議会やワークショップなどを行いながら、今、作成しているところです。

チームマイナス6%やクールチョイスといった普及啓発から、本当にどういう改革をしていかないといけないのか、そこの理解をするのが、国民運動にしていくうえで大きな課題だと思います。
それから、一つの自治体の中でも再生可能エネルギーに転換したり、省エネをしたりといろいろなことをしていかなくてはいけないと思いますが、市役所だけで完結できることでは到底ありませんので、いろいろな技術を持っている方々に教えていただいたり、参加していただいて、そういった方々とタッグを組んでいかないとできないんだろうと思っています。今はビジョンづくりの段階ですから、まだ確定的にどういうふうになるかわかりませんけれども、今後の課題です。

㓛刀― 私どもが環境省からお預かりしている補助金の中でも、特にPPAを使った太陽光発電の普及はものすごく評価が高くて、募集するとあっという間に埋まってしまう状況です。うまくマッチングすると良いのですけど、なかなかまだ十分なサポートができているとはいえない中で、地方の方々と試行錯誤しながら進めていく必要があると思います。実際に行政をやっておられて、その中でこれだけ大きな事業をやらなくてはいけないということは、本当に大変だろうとつくづく思います。

石山市長― そうなんですよね。環境省からも脱炭素の話を伺ったりしていますが、国民運動として行動を起こすためには、災害対策に資するからという危機感から入る、あるいは市民の生活が脱炭素と地域課題を掛け合わせて、よりよくなっていく、こんな未来が描けるんだというメッセージと必要性をしっかり伝えてほしいと国の方々にはお願いしました。

㓛刀― 再生可能エネルギーにしても、地域によって適・不適がありますから、地域に合った適切なエネルギーをサーベイするいいシステムか、シンクタンクのアドバイスなどをもらえることなどが必要で、全部お任せしますだけだと困ってしまいますよね。

石山市長― 本当に困ってしまいます。太陽光発電一つにしても、太陽光パネルの設置方法や積雪地における発電効率、それから蓄電池の活用方法などさまざまな検討課題がありますし、小水力発電にしましても、水量・発電量を計算して、最終的には収支が保たれるのかどうかまで検証していく必要があります。また、送電に関することや、事業として成立する条件や資金繰りの面など、専門知識が決して環境分野だけではないところも難しい点です。そうしたすべてを、人口3万1千人くらいの大野市で揃えられるかというと、なかなか難しいですよね。
国の方にも助言をいただきながら、専門家の方を含め、「こういう地域づくりを大野市では目指しているので、いっしょにやる方はいませんか」というやり方で、進めていけたらいいなと思います。

㓛刀― 日本だけでなく、全世界的な課題で、みんなやらなければならないのはわかっているけど、実際となるとなかなかもう一歩進まない。そうはいってもやらざるを得ないですからね。

石山市長― 大野市では、まだ昨年度から始めたところで、今は大きなビジョンづくりを進めながら、エコな生活というのが大事だよと普及啓発をしているところです。それもせっかくやるなら楽しくやろうと、エコ遊園地、エコ落語、エコ紙芝居といったやり方を取り入れています。
大野市だけでPRするのは大変なので、国の方や、学識経験者の方のインプットとともに、まちの電器屋さんや住宅業者さんなどにもエコな商品をお勧めしてもらうなど、輪を広げ協力いただいています。

㓛刀― 大きな問題ですから、地道にやっていくしかないのでしょうね。

石山市長― これから進んでいくには、避けては通れないことです。
私がこういう話をすると、地方都市にある事業者であっても、海外と取引のある事業者の場合、取り扱いの条件に入ってきているので環境配慮を抜きにはできないとおっしゃっていただけます。

Eco紙芝居

Eco紙芝居


ぜひとも大野に訪れていただけるとありがたい

㓛刀― 最後になりますが、これまでお話いただいたことと重複する部分もあるかもしれませんけれども、石山市長からEICネットの読者の方々に向けたメッセージがございましたらお願いします。

石山市長― そうですね。大野市は自然環境や歴史、あるいは人柄が、味わい深い”滋味”のまちなんですけれども、おいしい水に育まれたお米、里芋をはじめとする野菜、あるいは丁稚羊かんなどのスイーツ、お酒等々、本当にシンプルにおいしい食材が育っている。またそれを調理したおいしいものが育っている場所だと思います。
ですから、機会がありましたら、今ほど申し上げたようなところの視察でもいいですし、癒し旅でもいいですし、ぜひとも大野に訪れていただけるとありがたいなと思います。

㓛刀― ありがとうございます。これからは、星もあるし、私は乗り鉄ではないのですけど、制覇しておきたい鉄道もありますし。

石山市長― そうなんです。先ほど申し上げたように、中部縦貫自動車道が今年度末、来年と順次開通を迎え、そして令和8年にはいよいよ岐阜県境とつながっていくという段階まで来ていますので、マイカーやバスで気軽に来ていただけます。北陸新幹線の金沢敦賀間も、令和5年度末に開業ということなので、ぜひ来ていただきたいと思います。福井駅からは越美北線(九頭竜線)という単線の列車でゆっくり旅していただいて。自転車の旅にも適したまちだと思います。

おろしそば

おろしそば

里芋の煮っころがし

里芋の煮っころがし

ハナモモと越美北線

ハナモモと越美北線


㓛刀― 昨日、九頭竜線に乗ってきましたが、それまで山の中で、この奥に本当に大野市があるのかなと思っていて、トンネルを抜けた瞬間に、パーっと平野が広がって、ああやっぱりあったと思いました。

石山市長― ありがとうございます。福井から来られると、そういう印象を持たれるようです。岐阜県境側から来ましても、山々を抜けて大野盆地に入りますと、視界がパーッと開けてきます。その途中の九頭竜渓谷の緑や春のハナモモ、またこの季節の紅葉はそれは見事ですから、自然豊かできれいなところに来たなと思っていただけると思います。

㓛刀― ありがとうございました。

大野市長の石山志保さん(右)と、一般財団法人環境イノベーション情報機構理事長の㓛刀正行(左)